煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード14-3

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ここ最近になってようやく、夫は普通の目線が違っているからと藻掻いていいるようにも見える。

でも、いけない考えがよぎったこともある。

夫はもしかして汐音を煩わしく思っているのではないだろうか、と。
だから私にだけ押し付けているのではないのか、と。
もしかして、生まれなければ良かったと思っているの?と。

そんな想像が頭の中を支配したこともあった。
いや実際にそう感じたから、色んなことに不公平だと感じているのだ。

でも、最近のあの汐音を見る温かい眼差しを考えるとそんなことはないと思いたい気持ちで一杯になった。

いろんな逡巡が頭の中で大きくなって、いつの間にか私達にできた大きな溝に飲み込まれそうで、汐音のことから目を離してしまっていた。

ただ従順に時間まで大人しく待っていると思っていたのだ。
子供なんだから、待ち切れない感情が爆発して、予想できない行動をするということにまで至らなかった。

そして、夫も同じ家にいるという意味のない安心感が支配していたというのもある。

今日はお客さんが来る。
この先を考えるのは明日以降にしよう。

今日は汐音が招いたお客さんがくるのだから。
初めて招く相手が同年代の子たちじゃないのは何だか不思議だけど。

今日はやることも考えることも多い気がしてはいた。
だから、夫が外に出たことにも気づかなかった。

お酒は冷やしてある。
料理は調理が進み合間に盛り付けも進んでいる。
すぐに食事にならない可能性も考慮して、おつまみ系も用意してある。
汐音が森さんと食べることを想定して選んだカットフルーツの盛り合わせはどのタイミング

まだ外はかなり明るく、外では何やら賑やかな声も聞こえる。

随分と日が長くなったものだ。

時間は5時半を過ぎたあたりを時計は差していた。


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