煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード14-2

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初めて対応していたときは、ずっと私を見ていた。
同僚はよく見かける人だと教えてくれた。
次第によく目があうようになった。

彼と話せるようになったのは偶然だった。
よく一緒に受付を組まされていた子は、どちらかと言うとこの職場は合コンの延長だったようで自分の好みの相手をよくしたがる。

どうやら彼女の好みじゃなかったらしい。
「タバコの匂い、嫌いなの。」
そんな理由だった。

今もそうだが、あまり普段はタバコの匂いを感じない。
最低限のエチケットと思っているらしく、小さいスプレーボトルに入れて消臭剤を持ち歩いているくらいだ。

ただ、休みの時には気が抜けてしまうようで、それでも数回しか服などから匂いを感じたことがない。
あの人はよほど、タバコが苦手だったのだろうと思っている。

だからか、私が誰かと話している時以外は彼の対応をしなかった。
今にして思えば、彼が私に気があるのを知って譲ってくれたのかもしれない。

そのおかげか、少しずつ話せるようになった。
たまたま、少し偉そうな人と話しているところを見かけたことがあった時、ちょっとバツが悪そうだったことがある。

その数日後に話せたときに、ここが取引先の1つ、かつ、自分の父の職場だと教えてくれた。

そのすぐ後、派遣先の担当者に呼び出しされた。
普段使わないフロアに担当者に付き添われて行くと、その偉そうな人がいた。
私を案内すると、担当者は出ていってしまった。

「急にすまないね。」
そう言って、席を勧めてくれた。彼の父親と聞いていたが、面と向かって会うと、どことなく似ている。

息子が気になっているらしいから、会ってみたかったと言われた。
少し話をし、簡単な面接のようなことが始まった。
その時から、義父はとてもいい人だというのが印象的だ。

数日後、休みに一緒に出かけようと誘われた。
何回かデートをした。
普通がようやく自分の眼の前に広がったような気がしたのを覚えている。
今もこの頃も、少なくても彼は優しい人ではある。

しばらくすると、義母や義妹とも顔を合わせトントン拍子に結婚まで決まったのだ。
誰かの願う、平凡な普通を着々と手に入れそして結婚した。

子供が私達のところにやってきてくれて、幸せをまた一つ手に入れたと思っていた。

私達には足りないものがあった。
夫は家族に恵まれすぎていて、自分の見える範囲が当たり前の普通であったこと。
私は普通の枠に入り始めたばかりだったこと。

その隙間に、一気にいろんなことが押し寄せてきてそれが溝になっていることに気づくまで、はしゃいでいた二人は気づけないでいた。

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