煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード9ー3

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今日は、あの少年はいないようだ。
出迎えてくれた、、御幸はこの前と同じソファーへと座るように促す。今日は、この前のように山になった吸い殻は置いてなかった。

同じように飲み物を聞かれたので、今日もお湯にしてもらった。

「本日は、急に押しかけてしまって…。」
千草は申し訳なさそうに言った。
「いいですよ、特に今日は急ぎの用もないので。」
といい、タバコをくわえた。

「あ、失礼。タバコがお嫌いでしたっけ。」
と、くわえたタバコを一度手に戻し、千草に聞いてきた。
「え、あ、いえ。嫌いとかそういうのではなく、出来ればという程度でして…。」
そうですか、と言いながら御幸はタバコをケースに戻した。
紳士的で好感が持てる。

いちいち、箱から出して、シガーケースに入れ直しているらしい。
よく見ていると一つ一つの所作に、無駄がないように見えてくる。
一瞬、彼の指に目が行った。シルバーのリングだ。ライムという名前にふさわしい黄緑色の大きな半円形の石が付いたリングが中指についている。それに見入っているとき彼はその指を3回、ポンポンポンっと叩いた。

心の中のドアを叩かれたようだった。

「先日話していただいた、夫婦間の問題は私にとってとても関心がある内容でした。」
大昔で言ったらきっと妻がこの程度の不満で何を言うんだと言うような内容。
でも、夫に言いたいことの一つ一つの深さや幅が違うけれど塵が積もって千草を圧迫しているのだ。

「他に補足はありますか?なんでも良いですよ、些細なことでも。」
そう言われて、この前後から思い出したこととかを話した。聞きながらメモを取るようなこともしないで、話しやすいように相槌をうってくれる。邪魔にならないいいリズムで。

一通り追加で話し、冷めてしまったお湯を飲む。
そのタイミングで、御幸が近づいてきた。

左端をクリップで止めた用紙を御幸は千草の前に置いた。
「せっかく来ていただいたので、試案をいくつか用意しました。荒療治ですが、まあ効き目があるでしょう。」
なんだか不思議と説得力があるような内容だった。

千草が目を通し終わると
「紙は手元にあるといつ露見するかわからないから、僕の方で処分しておきます。」
と言って、回収された。

そして不思議とうまくいくような確信を持てた。
「どんな結末になるかは、わかりません。まあ、楽しんでください。」
御幸はそういっていた。
きっとこの優しい声のせいだ。

どんなに脚本を汲んでも、その通りにならないのが、本当の世界と芝居の世界の差、あなたはアクターじゃないのだから、時の流れのままに…。と、意味深に言い放って、話は終わった。

そう、急に芝居なんてできない。
今までだって、何かにつけて流されて、流されてここまで来て、更にまた流されようとしている。
でも、もうそれ以外の生き方なんてとうに忘れてしまった。

例えば今日のカレーだってそうだ。

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