煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード12-2

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父をしらない。

伝聞でしかない。
母子家庭だったらしいけど、千草が小学校に入る前に母親も病死してしまったらしく当時住んでいたアパートの大家さんが色々としてくれたようでたらい回しだけは避けられたらしい。

というのも、施設に引き取られてからも何回も様子を見に来てくれて時々話してくれたからおいおいし知ったのだけれど。

ある日。本当は引き取ってあげたかったんだけど、ごめんねと言われた。

優しいおばあさん。
それが大家さんとの最後の会話だった。中学に上がる少し前のこと。
制服を作る指定の洋品店の商品券が大家さんの名前で送られてきた。ご家族からだった。

大家さんが亡くなってしまい、手紙が残されていたので送ったと簡潔にかかれていた。一旦封を切られていた商品券の封筒。

本当なら、見ず知らずの赤の他人に渡すものなんてなかったはずなのに、使い道がなかったからか、それとも本当に最後の親切で送ってくれたのかも聞くことはできなかったけれど。
その商品券で、私は指定の制服を作った。

多分、施設から以外で千草に差し伸べられた優しさはここで一旦途切れ、夫が手を差し伸べてくれるまでほとんど一人でなんとかしてきた。

それでも、同じ施設の中にはもっと寂しい思いをしてきた子も多い。
頼れる親族もなく育ったのは施設だったから、家族は全員他人の同じような境遇の子どもばかりだった。
名付けすら施設でされた子もいるのだ。

それでもかなり私は幸運な方で、そのおかげで夫と出会えた。
初めての恋人が、そのまま夫になった。
ずっとこの時間が続けばいいと思っていた。私にも、家族を持っていいんだと言ってもらえた気がしていたから。

でも、千草は圧倒的に足りないものがあった。
家族の過ごし方だ。
努力を向ける先を知ることなく今日まで来た。

一人の努力ではどうしようもないところだった。

数歩離れて歩くうちに、いつものスーパーにたどり着いた。
お子様用の小さい旗の付いた手押しカートは出払っているらしく、見つからないので汐音に諦めさせ普通の乗せるタイプに座らせようとしたけれど、両手をバンザイさせてるのに自分で押すと言い出したので、サイドを掴みながら気づかれないように舵取りをしながら、ほしいものがある売り場へと先導する。

気づけば、夫は見当たらなくなっていた。タバコでも吸いにいったのかもしれない。
義妹がいれば叱られる案件。

ここでタバコを吸いに行くなら、どうして急に付いていくと言いだしたのだろう。
不思議に思いながら、汐音のリクエストを混ぜつつカゴに入れていく。

昨晩のことを夫はまだ引きずっているのだろうか。

森さんがうちにいたのは、御幸の事務所に行った帰り道偶然会ったからだった。

翌日に家にまで行くし、気づいていないようだったので通り過ぎようと思っていたらしいが、私に元気がなく見えたから、気になって声をかけてくれたそうだ。


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