煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード12-3

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声をかけられてすぐに気付けなかった。
きちっとしたスーツ姿で、化粧も雰囲気も抑えめ。仕事ができるというのをドラマとかで表現するようないでたちだったから。

御幸の関係者かも。
そう思っている一方で、確かなのは夫の会社の社員である事実。
パート雇用じゃないのは、この前のBBQで会った時の関係性からは間違いない。

そんな彼女。
たまたまこの近くに自分の担当の営業先の方におすすめされた店があって、次回の話題のために足を運んだそうだ。

千草からなにか言いたげなのを感じたからなのか、この後もう1か所行くところがあるそうだが、少し時間があるからと近くのカフェに誘っていただいた。

汐音は予定外に森さんと会えて嬉しそうだ。そこに輪をかけて、こんもりとホイップが乗った飲み物を目にしたので大好きなソフトクリームが乗っていると勘違いしてはしゃぐ姿がなんとも微笑ましいようで、せっかくだからとホイップ付きのデザートを頼んでくれた。

あんまり甘くなく、そして冷たさのないクリームを食べたときの驚きようは可愛いさでいっぱいだった。
トッピングをチョコレートにしたので、甘くなくても冷たくなくても付属のフルーツやパンケーキに付けながら、なるべく手を汚さないようにと、子どもながらに努力して食べている。

せっかく場所を確保し子どもをスイーツで夢中にさせて時間稼ぎをしたのに、千草がなかなか言い出せないのを更に感じ取ってくれたらしく
「焦らないでください、次のところはすぐ終わるのでその後話しましょう。」
そう言うと、連絡先だけその場では交換し、森さんはコーヒーだけ飲むと汐音にまた後でね!と言って店を出て行ってしまった。

気がつけば、伝票もすでに持って行ってしまっていて支払済だった。
その好意が嬉しくて、店を出た後急いで買い物とか済ませて家に戻った。

甘いスイーツを食べたからなのか、さっきのことではしゃぎすぎたからなのかわからないけれど、家に戻ったときには眠そうだったので、簡単にできるものを作って出すと睡魔が襲っていたのだろう。これから楽しみにしている森さんがやって来るというのに。でも子供の体は正直で食べている途中でぐずり出し、ついには森さんが来る前に眠ってしまった。

なので、早速森さんには教えてもらったばかりのSMSに
「チャイムは鳴らさずに、着いたら教えてください。」と連絡を送った。思い返せば、最近付き合いのある友人も居ないので、家族以外の人にこうやってSNSすら送るのも久しぶりだった。

17時を過ぎたころ森さんは来てくれた。


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