煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード12-4

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そういえばそろそろ夫も帰ってきてしまうかもしれない。

そう心配しているのが伝達したのか、
「今日チーフはまだ出先ですけど、結構遠いところですし、直帰予定でしたがこの後私達の報告も上に上げてからだと思うので、あと1~2時間くらいは帰ってきませんよ。」
と教えてくれた。

しかも、森さんはうちに着いたときに、まだ時間があるからと途中まで調理中だった夕食の匂いを嗅ぎつけたらしく、
「なんなら、調理のお手伝いしますよ。」とも申し出てくれた。

カウンターキッチンの良し悪しはこういうところだろう思う。流石に手伝ってもらうものでもないので、カウンター越しに聞いてもらった。

本当は御幸との関係とかを聞いてみたかったのに、共通の人物が夫なので夫の話から自分の感じる不満の方に話が派生していった。というか、多分その方に誘導されて行ったのだと思う。

途中から、森さんは相槌だけでずっと聞いてくれていた。

頭の回転の早い人で、口下手な私の話も言いたいこととして理解してくれる。
普段、話を義家族も聞いてはくれるのだけれど、うまく説明できないからどこかで知らず知らずに溜め込んでいたようだ。

話しているうちに、千草は涙を流していた。
気がついたら森さんが隣に立ってて、背中を擦ってくれていた。

仲の良い母親や姉だったり十年来の友人のような関係性の間柄の人がいたなら、こんな風にしてくれるのだろうか。
千草は良くも悪くも一人なのだと感じていた。

軽く泣いて、落ち着いた頃に
「よかったら私が少し留守番してますんで、ほんの少しでも自分の時間を今から謳歌してきたらどうですか?」
と、言ってくれたのだ。

思いがけない申し出だった。

もちろん、はじめはお断りもしたし当たり前に遠慮もしたが黄緑色のチャームが視界に入ったあたりで出かけようという気になってきたのが不思議だった。

「大丈夫ですよ。留守番しておきますから」
と、優しく言ってくれた。

普段ならあまり知らない人には強く持つ警戒心も、病んでる心には全く効き目がなく、素直に受け入れ
 <散歩>と称したプチ家出をしたのだ。

惣菜を買ったのも、森さんの入知恵で、
「帰りにお酒か惣菜でも買ってさえ来れば、言い訳は何とでもできるので忘れずに。」
と、ウインクして送り出してくれた。

そして、夫が帰ってきたので帰宅することになったタイミングで
『ご主人が帰ってきたので、バトンタッチして帰りました。』
と、教えてくれた。

やっぱり例の御幸の関係者なのだろうか、それとも本当にただの夫の会社の同僚なのだろうか。

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