煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード12-5

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だけどどっちにしても、帰り道にはどうでもいい事になっていた。

出かける前に森さんがいつもやっているという短時間のリフレッシュ方法を聞いて実践していた。
なんてことはない。
家の事、夫のことも汐音のことも何も考えないというだけ。

自分にできるか不安だった。
本を読むとか音楽を聞くとか普段しないからそういうツールじゃ切り替えができない。

するとまたアドバイスをくれた。
彼女に言われたとおりに、駅まで行き1駅だけ電車に乗った。そして、そこからここまでただ歩くだけ。
夫が帰ってきたら連絡するから、それまで家の事を考えないこと、と念を押された。

たったそれだけだった。
考えないなんて無理と思っていたけれど意外とそうでもなかった。

夕方でも十分明るく、学生がまだ多い時間だ。

ぶつからないように、ゆっくり歩く。普段通らない景色はたった1キロちょっとの距離しか離れていないのに、新鮮で頭の中を空っぽにすることが不安だったが小一時間だったけれど、家のことを遮断できてたいたことに驚いた。

いつもの商店街のあたりまで戻ってきたところで、森さんから連絡が来た。

家の事を何も考えない…たまに実践してみようと思えた。

花屋の前を通ったときに母の日のことを思い出して、義母へと贈るものを選んで発送したことで、さらに発散できた気がした。

そういえば、初めてのデートで花束を持ってきてくれた。
ただ出先で渡されたからどこに行くにも、結局邪魔になってしまいちょっと失敗したと落ち込んでいた事を思い出した。

それ以来、花のプレゼントをもらっていない気がする。
まあ、義母か義妹が時々鉢のものを買ってきてくれて、ベランダにいくつか咲いているからそれも理由かもしれないけれど。

帰ってきた時、玄関まで出迎えてくれた。
土日以外で、千草より先に夫が家にいるのが少し新鮮だったが一瞬の安堵の顔を彼がして、どこか少しうれしかくなった自分がいたのに。
そんな嬉しさもすぐに消えてしまった。

嬉しさの後ににじむ失望のような顔。
でもその顔もすぐに消えてしまった。

夕食の途中、いろいろ聞きたいだろうに、やっと切り出した言葉はなんの重みもなく、当たり障りもなく、そして何もなかったようにまたいつもの定位置へと行ってしまった。
そう簡単には変われないのだろうか。

夫婦って、何なのだろう。
普通の夫婦という前提を、私は知らないから比べようがないのだけれど。

さっきまで見ていた街中の明かりの下にあるだろう、
普通の家族、
普通の暮らし、
普通の夫婦たち。

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