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にいにとイオの
イオのじまんのにいにだよ
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にいにに手をひかれて、サンゴさんの山をおりた。
紺碧の流れを探してねってにいにが言うから、あちこち見ながら泳いでる。
「おっ……!」
にいにが見つけたみたい。
手を引かれる力が強くなる。
「これが連絡海流だよ」
にいにがイオの手をぎゅっとにぎる。
「うわぁ……!」
ものすごい速さで、水の粒がきらきらと走っていく。
その中に白いあわあわがはじけていった。
イルカさんが超音波で遠くに声を届けてるんだ!
にいにが話しかけてるおじさんのそばに、二人のイルカさんがいる。
水色とピンク色のイルカさん。
前にお話した子じゃないみたい。
なんだかすっごく忙しそう……
(十五の儀、参加者の……)
(うちの子は……)
(陸国の王様は……)
頭の中に声が押し寄せてくる。
なんだかくらくらして、耳の奥がいっぱい。
「……すごい音」
イオは思わず耳をふさいだ。
にいにはまだおじさんとお話してる。
早く終わらないかな。
しばらくすると、にいにが一息ついた。
……終わったのかな?
「おまたせ、イオ。あっちで座って待ってようか」
にいにと近くの岩に腰を下ろす。
まだちょっと、耳がへん。
耳を引っ張ったり、声を出したりしてたら、岩のそばにくっついてたヒトデさんを見つけた。
「ねえねえ、ヒトデさん。くすぐったい?」
つんつんしてみる。
(……ちょっとね)
イオはくすっと笑って、ヒトデさんをぺたぺたした。
にいにのほうをちらっと見たら、今度は岩に座ったままおじさんとお話してる。
なに話してるんだろ? また難しいお話かなあ。
「……親は」「……海流事故で」
にいにはすっごく真剣な顔。
でもイオは、おじさんの声もにいにの声もあんまりよく聞こえない。
お口は動いてるからお話してると思うんだけど……。
いつになったら、ふつうに聞こえるようになるのかなあ。
ヒトデさんを頭にのせて遊んでたら、後ろからにいにの笑い声がした。
「似合ってるぞ、イオ」
良かったあ!
ちゃんと聞こえる!
そのとき、いつもの優しい声が聞こえた。
「イオちゃん!」
保育園の先生だ!
すっごく息を切らして、なんだか慌ててきたみたい。
怒られちゃうかな……。
「探したのよ、もう……心配したんだから」
先生がイオの手をとる。
そっかあ、先生イオのこと心配だったんだ。
「ごめんなさい」
イオが謝ると、先生がほっと息をはいた。
そして立ち上がって、にいにに頭を下げる。
「ごめんなさいね、もっとちゃんと見ておかなきゃいけなかったわ」
「いえ、イオが勝手に抜けちゃったんですよね……。大丈夫です」
にいにが先生とお話してる。
「僕、そろそろ行かないと」
そうねって先生が言うと、二人ともイオを見た。
ああ、にいにほんとに行っちゃうんだ。
「じゃあ、イオはここまでだな」
にいにがしゃがみ込む。
いやだよ、いかないでにいに。
「にいにといく……」
「ダメだ、トンネルは十五になるまで通れないんだ」
なっ? ってにいにがイオをのぞき込んだ。
おめめに涙がたまって、にいにの顔がゆらゆらしてる。
そしたら、にいにが慌ててこう言った。
「兄ちゃんは大丈夫だって言ったろ? イオの自慢のにいになんだから」
そうだよ、そうなんだよ。
そうなんだけど……やっぱりさみしいんだもん。
にいににぎゅってする。
「早く帰ってきてね」
にいにがうなずく。
ぜったいちゃんと帰ってきてね。約束だよ。
にいにがイオの頭をくしゃってした。
「いい子にしてるんだぞ」
そう言って、にいにはトンネルのほうに泳いでいく。
その背には、やっぱりおててみたいな背鰭がゆらゆらしてた。
「……にいに」
不安が胸をよぎる。
でも、イオは信じることにした。
だってにいには、イオの自慢のにいにだから。
紺碧の流れを探してねってにいにが言うから、あちこち見ながら泳いでる。
「おっ……!」
にいにが見つけたみたい。
手を引かれる力が強くなる。
「これが連絡海流だよ」
にいにがイオの手をぎゅっとにぎる。
「うわぁ……!」
ものすごい速さで、水の粒がきらきらと走っていく。
その中に白いあわあわがはじけていった。
イルカさんが超音波で遠くに声を届けてるんだ!
にいにが話しかけてるおじさんのそばに、二人のイルカさんがいる。
水色とピンク色のイルカさん。
前にお話した子じゃないみたい。
なんだかすっごく忙しそう……
(十五の儀、参加者の……)
(うちの子は……)
(陸国の王様は……)
頭の中に声が押し寄せてくる。
なんだかくらくらして、耳の奥がいっぱい。
「……すごい音」
イオは思わず耳をふさいだ。
にいにはまだおじさんとお話してる。
早く終わらないかな。
しばらくすると、にいにが一息ついた。
……終わったのかな?
「おまたせ、イオ。あっちで座って待ってようか」
にいにと近くの岩に腰を下ろす。
まだちょっと、耳がへん。
耳を引っ張ったり、声を出したりしてたら、岩のそばにくっついてたヒトデさんを見つけた。
「ねえねえ、ヒトデさん。くすぐったい?」
つんつんしてみる。
(……ちょっとね)
イオはくすっと笑って、ヒトデさんをぺたぺたした。
にいにのほうをちらっと見たら、今度は岩に座ったままおじさんとお話してる。
なに話してるんだろ? また難しいお話かなあ。
「……親は」「……海流事故で」
にいにはすっごく真剣な顔。
でもイオは、おじさんの声もにいにの声もあんまりよく聞こえない。
お口は動いてるからお話してると思うんだけど……。
いつになったら、ふつうに聞こえるようになるのかなあ。
ヒトデさんを頭にのせて遊んでたら、後ろからにいにの笑い声がした。
「似合ってるぞ、イオ」
良かったあ!
ちゃんと聞こえる!
そのとき、いつもの優しい声が聞こえた。
「イオちゃん!」
保育園の先生だ!
すっごく息を切らして、なんだか慌ててきたみたい。
怒られちゃうかな……。
「探したのよ、もう……心配したんだから」
先生がイオの手をとる。
そっかあ、先生イオのこと心配だったんだ。
「ごめんなさい」
イオが謝ると、先生がほっと息をはいた。
そして立ち上がって、にいにに頭を下げる。
「ごめんなさいね、もっとちゃんと見ておかなきゃいけなかったわ」
「いえ、イオが勝手に抜けちゃったんですよね……。大丈夫です」
にいにが先生とお話してる。
「僕、そろそろ行かないと」
そうねって先生が言うと、二人ともイオを見た。
ああ、にいにほんとに行っちゃうんだ。
「じゃあ、イオはここまでだな」
にいにがしゃがみ込む。
いやだよ、いかないでにいに。
「にいにといく……」
「ダメだ、トンネルは十五になるまで通れないんだ」
なっ? ってにいにがイオをのぞき込んだ。
おめめに涙がたまって、にいにの顔がゆらゆらしてる。
そしたら、にいにが慌ててこう言った。
「兄ちゃんは大丈夫だって言ったろ? イオの自慢のにいになんだから」
そうだよ、そうなんだよ。
そうなんだけど……やっぱりさみしいんだもん。
にいににぎゅってする。
「早く帰ってきてね」
にいにがうなずく。
ぜったいちゃんと帰ってきてね。約束だよ。
にいにがイオの頭をくしゃってした。
「いい子にしてるんだぞ」
そう言って、にいにはトンネルのほうに泳いでいく。
その背には、やっぱりおててみたいな背鰭がゆらゆらしてた。
「……にいに」
不安が胸をよぎる。
でも、イオは信じることにした。
だってにいには、イオの自慢のにいにだから。
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