イオの小さな大冒険

若涼

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バサバサとイオの

イオ、りくこくについちゃった!

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「ここだ。ついたぞ」
バサバサがゆっくりと地面に降り立つ。

その背から降りたイオは、砂の上とは違う足の感触に驚いた。
じんわりと伝わるのは、冷たくてかたい岩のような感触。

「バサバサ、これなあに?」
足元のグレーを指さして問いかける。
「これは石畳、だな」
「そうなんだ! じゃああれは?」

今度は、石畳の両脇に積まれている赤茶色の四角を指さした。
「こっちはレンガ……だったかな」
「ふうん?」

石畳とレンガはずっと向こうのほうまで続いてるみたい。

「初めての陸国はどうだ、ガキ」
バサバサがイオを見て言った。

「うーん、わかんない……。けど、変な匂い!」
「ふっ、なんだそりゃ」
バサバサが笑う。

ここは、海ではかいだことのないにおいがいっぱい。
甘くて、しょっぱくて、焦げたみたいで……。
「それと……なんだかすっごくおいしそう?」

イオはおいしそうな匂いにつられて駆け出す。
「あっ! おい、ガキ! 待てよ!」
後ろからバサバサが叫ぶ声がした。

だけどイオは、匂いにつられて石畳の道をぐんぐん進む。
レンガでできた建物がいっぱい並んで、道沿いにはいろんな色の布が干されててとってもきれい。

イオは、海とは違う目の前の景色に、胸がいっぱいになって立ち止まる。

「ここが、陸国なんだ……!」

すごい! イオ、ほんとに着いちゃった。
「おい、ガキ。急に走んなって。あぶねえだろ?」
バサバサがイオに追いつく。

さらに道のむこうからはにぎやかな声が聞こえてきた。

「パンはいかがー! 焼きたてだよ!」
「採れたての野菜! どうですかー!」

石畳の道を進むたび、鼻の中にいろんな匂いが飛びこんでくる。
その時、ひときわ強い匂いがした。

「いい匂い!」
イオは匂いの元へと駆ける。
「らっしゃい! 嬢ちゃん、串焼き肉はいかが?」

布が張られたスペースで、おじさんが茶色い肉の刺さった棒をイオに差し出した。

「わーい! やったあ!」
イオが手を伸ばすと、おじさんは片方の眉をつり上げる。

「嬢ちゃん、先に代金を頼むよ」
イオは首をかしげた。

「お金だよ。ほら、払えないと食べられないよ」
おじさんがもう片方の手をひらひらさせる。

お金……? そんなの持ってないよ……。
イオ、いい匂いのやつ食べられないの?

「こら、ガキ!」
後ろからバサバサがやってきた。
「急に走んじゃねえって言っただろ!」
「だって、いい匂いだったんだもん……」

バサバサは頭をかきながら、おじさんの前に立つ。
すると、おじさんの顔が驚きに変わった。

「つ、翼の生えた人間……!? おたく、空のもんかい? いやぁ、ほんとにいるんだね」
「ああ? なんでもいいが、俺たちゃ金なんて持ってねえぞ」

おじさんはまた眉をつり上げる。
「それは困るよ兄ちゃん。いくら空のもんだからって、こっちも商売なんでね」
「なるほどな。それなら……こいつでどうだ?」

バサバサが懐から何かを取り出す。
黒くて小さい……石?

おじさんの目がまんまるになった。
「い、隕石!? 本物なのか、これは!」

バサバサはおじさんの耳元で声をひそめる。
「ああ。俺の国で見つけたもんだ。こっちで売りゃ、相当な値がつくと聞いたが?」
「ええ……、それはもう……」

「んじゃ、交渉成立だなっ」
バサバサがおじさんの肩にぽんって手を置いた。

おじさんは大慌てで串焼き肉をたくさん袋に詰めてバサバサに渡す。
「いくらでも持ってってください!」

バサバサは「こんなにはいらねえんだけどな」って言いつつ受け取ると、イオにそれを差し出した。

「ほらよ」
「いいの!? ありがとう!」
イオは袋の中から一本取り出し、ぱくっとかぶりつく。

口いっぱいにひろがる香ばしい味。
「おいしい……!」
「そりゃー、よかったな」

「ねえ、一緒に食べよう?」
二人で積まれたレンガの上に腰掛ける。
イオは夢中で串焼き肉をほおばった。

「バサバサってすごいね!」
「ふっ、そうだろ。なんてったって俺はウィーケ様だからな」

バサバサが串焼き肉をくわえながら、得意げに鼻を鳴らす。
その様子がなんだかおかしくて、イオは思わず笑っちゃった。

「バサバサは、バサバサだよ!」
イオがそう言うと、バサバサは呆れたように息を吐く。

香ばしい煙がイオとバサバサを包み、空へと舞い上がっていった。
初めて食べた陸国の味を、イオはきっと忘れられない。
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