熟れた果実は夢を見る

ひづき

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 他人の指を差し入れられる妄想は頻繁にする。だが、妄想と現実は別なのだという当たり前のことに驚いた。

 妄想も、妄想しながら入れる自身の指や張型も、所詮アレンの想像や意図を越えてくることはない。温度だって内部に馴染んでしまえば違和感は薄れる。だが、初めて受け入れた他人の指は、違和感しかない。急所でしかない場所で次にどのように動くか全く検討がつかない。その未知が怖い。怖いのに期待した身体が貪欲にロージーの指を締め付けて蠢く。どろりとした触感を纏う指が増やされたことに驚きと歓喜で喉が震えた。

「ひあっ」

 ジッと顔を複数の・・・視線に凝視されてアレンは己の顔を両手で覆い隠した。ロージーが天井を睨みつける。

「おい、テメェらはド素人か」

『!』

 天井裏にいるのは“影”と呼ばれる存在だ。王族のみに仕える護衛であり、騎士のように表側に出てくることはない。常に気配を消し、護衛対象や監視対象を俯瞰することで視線からバレるのを避ける、そんな訓練を積んだ者達である。訓練を積んでいても、所詮人間だ。思いがけない展開に驚きを隠せないこともある。

 アレンは昔から人の気配や視線に敏感だった。騎士学校に在籍中も、ロージーが複数の気配に守られていることには気づいていたくらいだ。それでも本人が平民と言い張るから訳ありなのだろうとは察していたが。アレンの敏感さは長所でもあり欠点でもあって。仕事や戦闘では優位に働くが、休みの日でも人の気配が気になって気が休まらないのである。日常生活では意図的に力を抜いて鈍感であろうと努めているが、今はもうそんな余裕などない。それどころではない。

 自分との行為に集中しろとばかりに指を増やされ、広げるようにズポズポとイジられ。一方では乳輪をなぞるようにロージーの舌が胸元を這い、時折吸い付かれてチクリとした痛みを与えられる。そのくせ硬くなった陰茎にも乳首にも触って貰えず、かといって強請る言葉も出せずにシーツに爪を立ててやり過ごす。その間にも天井裏からの視線が快感に解けるアレンの表情を凝視してくるから居た堪れない。

「おい、アレン。お前、奴らに見られて感じてんの?それとも俺の手で感じてんの?」

 必死に声を押し殺そうと唇を噛み締めて頭を振り乱して身悶える。怒りの篭ったロージーの声と、ぎらぎらとした眼差しにさえゾクゾクとしてしまい、最早何が何だか分からない。全身が熱い。熱いのに切ない。

 大きく片脚を上げ、横向きの体勢で男根に貫かれる。

「かは───ッ」

「く、あー、すげぇ…」

 悦に入った声が笑う。それが繋がっている場所から中に響き、他人の存在が内側にあるのだと知らしめてきて。気持ちいいなんて言葉に現せないくらい高揚する。ひとり遊びで育てすぎた前立腺をゴリゴリと嬲られるのは最早良すぎて拷問のようだ。閉じられなくなった口からは唾液と引き攣った嬌声が溢れ続ける。

「あ、あ、あ、あ、あ、」

「こん…な熟れた身体で、よく今まで無事だったなぁ、アレン」

「ひっ!ろじぃ、ちくび!ちくび、だめぇ!いく!いく!いっちゃうからぁ!!」

 指で捏ねられて泣き言を漏らすと、吸い付かれ、甘噛みされる。弱点を的確に責め立てられたアレンはびくんびくんっと痙攣しながら絶頂する。

 だからどうしたとばかりに今度はうつ伏せに押しつぶされ、抑え込まれ、貫かれる。自身が惨めな敗者になったようで、強者に支配される快感に歓びさえ覚える。

 そうこうするうちに、気づけば仰向けにされ、大の字でロージーを受け入れていた。陰茎からはいつからか分からないがずっと白濁を力なく零し続けている。容易く上り詰めるアレンの身体は最早絶頂から下りられず、ひたすら胎内のオスに媚びるばかりだ。何度か中でロージーの放熱を受け止めた気がするのに、行為の終わりは見えない。

 天井裏からの視線が好奇の目で自身の身体を隅々まで観察してくることも絶えずアレンの羞恥心を煽ってくる。そのうち騎士団員達の見ている目の前でロージーに服従セックスをさせられたら…。そんな妄想が頭を掠めただけで脳みそが絶頂し、白目をむきそうになりながらアレンは必死になってロージーにキスを強請った。





「陛下」

 行為が終わった以上、立場は弁えなくてはならない。衣服を身に纏ったアレンは、同じく身なりを整えたロゼリュスト陛下の前に膝を付く。

「アレン?」

「陛下の寵を賜ることができ、大変光栄でした。私は陛下の恩情を生涯忘れないでしょう」

 ロージーは、ロゼリュスト陛下は、決してアレンのものにはならない人である。国民の為に生きる人だ。

「───俺はこれっきりで終わらせるつもりはないぞ、アレン」

「ご冗談を」

「騎士団長殿に冤罪を吹っかけて捕らえて牢屋で毎晩可愛がれば信じるか?それとも正式に国王の愛妾として公表し後宮に閉じ込めればいいのか?いっそ国民の前で抱いてやろうか?」

 ご冗談を、と。繰り返そうとしたが、ロージーの目は血走っており、とても冗談には思えなかった。彼の提案を想像しただけでアレンは絶頂しそうになる。嬉しいと思ってしまった。

「…国王陛下と騎士団長が親密過ぎるのも如何なものかと思いますけどね。何らかの不正を疑われる要因になるやもしれません」

「めんどくせぇな。ここまで我慢してきたんだからもういいじゃねぇか。俺はもうお前以外抱ける気がしねぇんだよ。つーか、放っておいたら男の味を覚えたお前がハメを外しそうで怖いんだが!?俺以外の男を咥え込むなよ!いいか、絶対だぞ!」

 賢王と名高いロゼリュスト陛下の素がコレだなんて誰が信じるだろう。しかし彼が言うことももっともだ。張型では得られない高みを知ったアレンの身体は最早ひとり遊びで満足出来ないだろう。
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