生贄メリーの愛欲

ひづき

文字の大きさ
1 / 4

しおりを挟む



 神様の生贄となるべく育てられた少年に名前は無い。必要ないものだからだ。

「名前が無いのですね。じゃあ…、メリーと名付けましょう」

 神様は少年に名前をつけた。

 ───生贄って何だっけ?

 メリーと名付けられた少年は考える。

「ほら、あーん」

 神を名乗る、長い銀髪の眩い、美しい青年。彼はメリーを膝上に置き、食事の世話をやく。食べたことも見たことさえない料理ばかりが並ぶが、食べろと指示されればメリーに否はない。あーんと口を開け、もぐもぐと咀嚼する。

 咀嚼しながら考える。太らせてから食べるつもりなのだろうか。



 故郷では贅沢だった入浴が、神様の元では毎日行われる。清拭だけで入浴をしたことなどなかったメリーを抱きかかえて湯船に入るし、メリーの全身を神自ら磨きあげる。

「こら、じっとして」

「だ、だって───」

 窘められ、メリーは身を固くした。白い泡をつけた神様の手で全身を撫でられると、ぞくぞくして何だか身体がおかしいのだ。ムズムズして、思わず逃げるように身じろいでしまう。

「ほら、ここも───」

「ひぐ…ッ」

 食事中と同様に神様の膝の上でされるがまま。背中を撫でていた手がお尻を撫でるのを合図に、メリーは次を覚悟して緩く脚を開いた。

 尻の穴の中まで神様の、青年の、太い指で丹念に洗われる。それも毎日。神様に出会うまで洗ったことがないそこは狭くて、優しくも力強く、やや強引に押し広げられる感覚がして。お腹の下の方が引き攣る。慣れないそれが怖いと神様に視線で縋ると、神様は眩しいものを見るような目でメリーを見つめ返した。

「良い子。今日はもう少し頑張りましょうね」

「はひ………?」

 何を言われたかわからない。神様の手にされるがまま、大きく脚を開き、片脚を胸に付くほど折り曲げられる。

 ぞくん!と一際強い痺れが駆け巡った。

「ひゃ!や!なに…ッ」

 カラクリ人形で遊ぶかのように、繰り返し的確にその一点を指がトントンと刺激する。その度にぞく!と刺激が走り、ビクッと身体が跳ねてしまう。

「逃げては行けませんよ」

 メリーがイヤイヤと首を振っていると、優しい声が、全然優しくないことを言う。半ば意味を理解しているかも怪しいまま、涙を浮かべたメリーは必死に首を縦に振る。

「や、じゃ、あ、あ…っ」

「それは、キモチいいって言うのです」

 零れた涙を追いかけて、神様はメリーの頬を舐める。しかし、指を休めることはない。

「ひ…もちぃ…?」

「そう、キモチいい」

「ぅん、ふ、」

「こちらも愛でてあげよう」

 神様の手が、メリーの股の間、控えめに頭を擡げてフルフルと震える陰茎を指で弾いた。

「─────ッ!!!!!」

 声にならない悲鳴を上げ、メリーは先端から白濁を零した。





 人間から神様と呼ばれる青年は、数年前に幼い子供と出会った。3歳ほどかと思われる子供は、人の出入りを禁じている神域に侵入し、草を齧っていた。真っ黒で、痩せ細り、ぎょろっとした目が特徴的な子供。

『何故野草をくわえているのです?』

『?』

 何を問われているのかわからないと子供は首を傾げた。

『………美味しいですか?』

『んーん』

 ぶんぶんと首を横に振りつつも、草を吐き出そうとしない。

 子供からは懐かしい気配がした。もう何百年も前に亡くなった人間の気配。同じ魂を持つ、あの人間の生まれ変わりなのだと気づくと手が伸びた。

『!』

 頭を撫でようとしただけなのに、まるで自らを庇おうとするように身を竦ませる。寸法の合わない窮屈そうな服の裾から覗く手足は傷や痣が目立つ。

 子供を掬い上げるように抱き上げ、人里に行き、人間達に『この子供を我に捧げよ。子供が成長したら迎えに来る。それまで丁重に扱え』と命じた。

 神に捧げるための子供なら虐げられることも、ないだろうと。



 成長したはずの子供は、まだまだ小さかった。メリーと名付けたのは気まぐれである。痣などは消えていたが、誤算だったのは子供が幽閉されて育てられた為に、無知だったことだろう。無知で、無垢で、あまりにも清らかで。

 ───あまりにも美味しそうで。

 前世で世話をしてくれた恩を今世で返したいだけだったはずなのに。無防備に口を開ける様が可愛くて餌付けをする。本当はその口に指を突っ込んで口の中をかき回したい。涎を零しながら喘ぐ様が見たい。

 清らかな肌を撫でたくて入浴の世話をする。最初は触れるだけで満足出来たが、擽ったいと無邪気に笑うから、違う反応を見たいという欲が出た。

「かみさま、いつぼくをお食べになるのですか?」

 無垢な瞳が真っ直ぐと射抜くから、汚してやりたいという欲がどくんと跳ねた。

「君が青年と呼べるくらい大きくなったら」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

記憶を失くしたはずの元夫が、どうか自分と結婚してくれと求婚してくるのですが。

鷲井戸リミカ
BL
メルヴィンは夫レスターと結婚し幸せの絶頂にいた。しかしレスターが勇者に選ばれ、魔王討伐の旅に出る。やがて勇者レスターが魔王を討ち取ったものの、メルヴィンは夫が自分と離婚し、聖女との再婚を望んでいると知らされる。 死を望まれたメルヴィンだったが、不思議な魔石の力により脱出に成功する。国境を越え、小さな町で暮らし始めたメルヴィン。ある日、ならず者に絡まれたメルヴィンを助けてくれたのは、元夫だった。なんと彼は記憶を失くしているらしい。 君を幸せにしたいと求婚され、メルヴィンの心は揺れる。しかし、メルヴィンは元夫がとある目的のために自分に近づいたのだと知り、慌てて逃げ出そうとするが……。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

アルファの双子王子に溺愛されて、蕩けるオメガの僕

めがねあざらし
BL
王太子アルセインの婚約者であるΩ・セイルは、 その弟であるシリオンとも関係を持っている──自称“ビッチ”だ。 「どちらも選べない」そう思っている彼は、まだ知らない。 最初から、選ばされてなどいなかったことを。 αの本能で、一人のΩを愛し、支配し、共有しながら、 彼を、甘く蕩けさせる双子の王子たち。 「愛してるよ」 「君は、僕たちのもの」 ※書きたいところを書いただけの短編です(^O^)

「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜

鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。 そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。 あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。 そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。 「お前がずっと、好きだ」 甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。 ※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています

処理中です...