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第二章 華燭
68 華燭
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ぽかんと口を開けた蒼龍に、小蘭はきっぱり言い切った。
「だって私、貴方の一番になりたいもの。皇帝になるあんたに、どれだけ妾ができたとしても負けたくない。私が一番に蒼龍の子を産むの」
「だから、なんでそうなるんだよ……君しかいないって、いつも言ってるだろう? そもそもそれは、天の差配で決まることで……また後継がどうのって話に」
黎妃の姿が頭をよぎり、蒼龍はふと顔を曇らせた。
しかし、小蘭はさら迫った。
「大丈夫よ、私、戦うから」
はあ……。
まったく、この娘は。
小さくため息をついた蒼龍は、にっと悪戯に笑ってみせた。
「……〝子どもをつくる〟って言うけどさ。そもそも君、一体何をするのか、分かってるのか?」
「うっ……まあ、分かってるつもり……よ? さすがにもう子どもじゃないし、勉強だって……されられるから」
途端に顔を赤くした小蘭に、艶っぽく目を流す。
「ほーそうか。では訊くが、この流れだと、今すぐにでも、ってことでいいのか? 俺と、ここで」
「……」
急に勢いを無くし、俯いた小蘭の腰を、意味深にぐっと引き寄せる。
「あ、あのっ」
「今まで散々、人のことを変態呼ばわりしてた癖に――どういう心境の変化だ? 妃よ」
顔を隠すようにして縮こまる小蘭に、蒼龍は息を含ませ囁いた。
「そ、それは……さっき言ったじゃない」
いつもとは違う様子に強張る身体。
蒼龍は、素早く小蘭の顎下に手を入れた。目が合うと、小蘭は所在無さげに視線を逸らす。
「まあ、君がそこまで乗り気なら、仕方がないな」
「乗り気って、私は真剣に……!」
「まあ聞け。小蘭、夏国四千年の歴史には、度重なる試行の末、皇家にのみ伝わる閨房の術が……ある」
「な、何それ、怖いんだけど」
蒼龍がぐっと顔を寄せたから、小蘭は同じだけ身を引いた。
「それは、催淫の香や媚薬の開発だったりするわけだが……帝王学の末、俺はこれらを超える究極の技を手に入れた。すなわち……」
「ちょ、待って! まだ心の準備が」
「こうだっ」
「きゃあっ」
蒼龍は、膝上の小蘭を思いっきり抱きしめると、緩やかな傾斜の草地を下方に向けて、ごろんごろんと転がり出す。
「あははははははははははっ」
「きゃあああっ――!」
緩やかな坂の下でふたりの回転は止まった。
小蘭を胸に抱いたまま、上体を起こした蒼龍に、小蘭は思い切り文句を言った。
「ちょっと、いきなり何するのよっ、髪飾りも衣装も、ボロッボロじゃない。何が夏国四千年の技術よ……せっかく頑張って整えたのに」
「あっはっは。でもさ、これで俺たちいつも通りだろ?」
「……まあ、確かに」
「つまるところ、色恋の秘訣は〝癒し〟ってことで」
息を飲んだ唇に、蒼龍の指が微かに触れた。
「――なんてな」
蒼龍は、小蘭を見て愛おしそうに目を細めると、そっと身体を離した。
「けれど――今はまだ、ダメだ」
「え、何で」
小蘭は、またいつもの通りかと、眉を下げた。
だが今夜――それを語る彼の目は真剣だった。
「小蘭、まじめな話だ。……俺は、多くの人に期待され、してもらってばかりいる。何も返せていないんだ。そんな俺が、まだ何も成さぬままに君を抱いたなら――どうだ?」
一拍間を置き、小蘭は小さな声でつぶやいた。
「――よくないと、思う」
蒼龍が、軽く微笑む。
「そうだろう、日鳳たちに、〝そんなことしてる場合じゃない〟って怒鳴られてしまう」
ひときわ強く、蒼龍は小蘭を抱きしめた。
「君が好きだよ、愛してる――ただ……」
蒼龍が落とした視線に、まっすぐに凝視する瞳がぶつかった。
深い翠ーー吸い込まれそうに透明な。
「俺が行くのは修羅の道だ。君は、生涯を後宮に囚われるだろう。自由も、普通の幸せも望めない。今なら引き返すことも出来る。……それでもいいか?」
小蘭ははっきり頭を振った。
「蒼龍と居るのがその道しかないなら――それでいい」
「俺は――いつか、変わってしまうかもしれない。権力に酔い、民を顧みない恐ろしい王に。そうなったら――」
「任せて。その時にはーー殴ってでも止めてやるわ」
「……え?」
蒼龍は、一瞬止まって、小蘭の腰から手を離した。
腹上で、神妙な顔で見下ろす顔をまじまじと見、それからまた笑い出した。
「くっ、ははっ、はははははっ」
「ちょっと、何がおかしいのよっ、私は真面目に答えてるの!」
真っ赤になって眉尻を上げた小蘭に、蒼龍はまた、腹を抱えた。
「いや、はははっ、悪い。まさか、そうくるとは思わなかったから……ははっ」
「ちょっと、笑いすぎ……わっ」
ひとしきり笑った蒼龍は、再び小蘭の頭を胸に抱き寄せた。
「ありがとうな――ならば俺は、君と征こう。待てるな? 小蘭」
真っすぐにこちらを見つめる瞳が、再び明るく輝いた。
「うん……分かった」
ふと、空を見上げると、月に寄り添う惑い星が、微笑むように瞬いた。
ふいに、別の顔が脳裏をよぎる。
ああ――そうか黎貴。
君はずっと、態度で見せてくれていたんだな。
前に進めと、振り返るなと。
大人しい君が、声にもださず――
そうか。俺はもう、とっくに選んでいたんだな。
*
月の白い光に照らされ、星の瞬きに見守られながら、二人は広い草地に寝転んでいる。
藍を基調とした金糸の皇衣を惜しげもなく下に敷き、薄絹の衣を上にして、蒼龍の腕を枕にすると、小蘭はすっぽりと彼の腕に包まれてしまう。
「明後日、発つ」
「――そんなに早く」
大きな手が、肩の曲線を優しく撫でた。両手で顔を包み込み、じっと見つめる。深緑色の瞳が、何かに魅入られたかのように、動きを止めた。
「戻ってくるよ。必ずだ」
「分かってる。私、信じるわ」
「――ああ、だから。すべてが終わってその時は――」
軽く唇を合わせと、小蘭はすっと目を閉じた。
二人の影が、ひとつになって重なった。
「蒼龍のこと、愛してる」
「ああ、俺もだ。ずっと、永遠に――」
月はまだ、何も告げずに、二人を照らしていた。
《第二章 おわり》
「だって私、貴方の一番になりたいもの。皇帝になるあんたに、どれだけ妾ができたとしても負けたくない。私が一番に蒼龍の子を産むの」
「だから、なんでそうなるんだよ……君しかいないって、いつも言ってるだろう? そもそもそれは、天の差配で決まることで……また後継がどうのって話に」
黎妃の姿が頭をよぎり、蒼龍はふと顔を曇らせた。
しかし、小蘭はさら迫った。
「大丈夫よ、私、戦うから」
はあ……。
まったく、この娘は。
小さくため息をついた蒼龍は、にっと悪戯に笑ってみせた。
「……〝子どもをつくる〟って言うけどさ。そもそも君、一体何をするのか、分かってるのか?」
「うっ……まあ、分かってるつもり……よ? さすがにもう子どもじゃないし、勉強だって……されられるから」
途端に顔を赤くした小蘭に、艶っぽく目を流す。
「ほーそうか。では訊くが、この流れだと、今すぐにでも、ってことでいいのか? 俺と、ここで」
「……」
急に勢いを無くし、俯いた小蘭の腰を、意味深にぐっと引き寄せる。
「あ、あのっ」
「今まで散々、人のことを変態呼ばわりしてた癖に――どういう心境の変化だ? 妃よ」
顔を隠すようにして縮こまる小蘭に、蒼龍は息を含ませ囁いた。
「そ、それは……さっき言ったじゃない」
いつもとは違う様子に強張る身体。
蒼龍は、素早く小蘭の顎下に手を入れた。目が合うと、小蘭は所在無さげに視線を逸らす。
「まあ、君がそこまで乗り気なら、仕方がないな」
「乗り気って、私は真剣に……!」
「まあ聞け。小蘭、夏国四千年の歴史には、度重なる試行の末、皇家にのみ伝わる閨房の術が……ある」
「な、何それ、怖いんだけど」
蒼龍がぐっと顔を寄せたから、小蘭は同じだけ身を引いた。
「それは、催淫の香や媚薬の開発だったりするわけだが……帝王学の末、俺はこれらを超える究極の技を手に入れた。すなわち……」
「ちょ、待って! まだ心の準備が」
「こうだっ」
「きゃあっ」
蒼龍は、膝上の小蘭を思いっきり抱きしめると、緩やかな傾斜の草地を下方に向けて、ごろんごろんと転がり出す。
「あははははははははははっ」
「きゃあああっ――!」
緩やかな坂の下でふたりの回転は止まった。
小蘭を胸に抱いたまま、上体を起こした蒼龍に、小蘭は思い切り文句を言った。
「ちょっと、いきなり何するのよっ、髪飾りも衣装も、ボロッボロじゃない。何が夏国四千年の技術よ……せっかく頑張って整えたのに」
「あっはっは。でもさ、これで俺たちいつも通りだろ?」
「……まあ、確かに」
「つまるところ、色恋の秘訣は〝癒し〟ってことで」
息を飲んだ唇に、蒼龍の指が微かに触れた。
「――なんてな」
蒼龍は、小蘭を見て愛おしそうに目を細めると、そっと身体を離した。
「けれど――今はまだ、ダメだ」
「え、何で」
小蘭は、またいつもの通りかと、眉を下げた。
だが今夜――それを語る彼の目は真剣だった。
「小蘭、まじめな話だ。……俺は、多くの人に期待され、してもらってばかりいる。何も返せていないんだ。そんな俺が、まだ何も成さぬままに君を抱いたなら――どうだ?」
一拍間を置き、小蘭は小さな声でつぶやいた。
「――よくないと、思う」
蒼龍が、軽く微笑む。
「そうだろう、日鳳たちに、〝そんなことしてる場合じゃない〟って怒鳴られてしまう」
ひときわ強く、蒼龍は小蘭を抱きしめた。
「君が好きだよ、愛してる――ただ……」
蒼龍が落とした視線に、まっすぐに凝視する瞳がぶつかった。
深い翠ーー吸い込まれそうに透明な。
「俺が行くのは修羅の道だ。君は、生涯を後宮に囚われるだろう。自由も、普通の幸せも望めない。今なら引き返すことも出来る。……それでもいいか?」
小蘭ははっきり頭を振った。
「蒼龍と居るのがその道しかないなら――それでいい」
「俺は――いつか、変わってしまうかもしれない。権力に酔い、民を顧みない恐ろしい王に。そうなったら――」
「任せて。その時にはーー殴ってでも止めてやるわ」
「……え?」
蒼龍は、一瞬止まって、小蘭の腰から手を離した。
腹上で、神妙な顔で見下ろす顔をまじまじと見、それからまた笑い出した。
「くっ、ははっ、はははははっ」
「ちょっと、何がおかしいのよっ、私は真面目に答えてるの!」
真っ赤になって眉尻を上げた小蘭に、蒼龍はまた、腹を抱えた。
「いや、はははっ、悪い。まさか、そうくるとは思わなかったから……ははっ」
「ちょっと、笑いすぎ……わっ」
ひとしきり笑った蒼龍は、再び小蘭の頭を胸に抱き寄せた。
「ありがとうな――ならば俺は、君と征こう。待てるな? 小蘭」
真っすぐにこちらを見つめる瞳が、再び明るく輝いた。
「うん……分かった」
ふと、空を見上げると、月に寄り添う惑い星が、微笑むように瞬いた。
ふいに、別の顔が脳裏をよぎる。
ああ――そうか黎貴。
君はずっと、態度で見せてくれていたんだな。
前に進めと、振り返るなと。
大人しい君が、声にもださず――
そうか。俺はもう、とっくに選んでいたんだな。
*
月の白い光に照らされ、星の瞬きに見守られながら、二人は広い草地に寝転んでいる。
藍を基調とした金糸の皇衣を惜しげもなく下に敷き、薄絹の衣を上にして、蒼龍の腕を枕にすると、小蘭はすっぽりと彼の腕に包まれてしまう。
「明後日、発つ」
「――そんなに早く」
大きな手が、肩の曲線を優しく撫でた。両手で顔を包み込み、じっと見つめる。深緑色の瞳が、何かに魅入られたかのように、動きを止めた。
「戻ってくるよ。必ずだ」
「分かってる。私、信じるわ」
「――ああ、だから。すべてが終わってその時は――」
軽く唇を合わせと、小蘭はすっと目を閉じた。
二人の影が、ひとつになって重なった。
「蒼龍のこと、愛してる」
「ああ、俺もだ。ずっと、永遠に――」
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《第二章 おわり》
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