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先生の一日 その2(工藤先生視点)
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一つ一つただ目の前の出来事をこなす。人生とは常に目の前の出来事をこなす事に費やされる。それがイイか悪いかは分からないけど、それは働きアリのように味気ない人生。
恋というのはきっと、そんな味気ない時間を彩るスパイスなんだろうね。
例えそれが、どんなに身勝手でも、どうしようもなくても止められないモノ。
「なんて言っていられるのはきっと、学生の頃までなんでしょうね~はあ~」
朝のホームルームの地獄?を潜り抜けて、大きなため息を吐きながら職員室へ戻る。
辿り着くと、グタっと体を机に預けて、誰も見えないように顔を隠しながらもう一度、大きくため息を一つ。
すると、胸元に付けている白ユリのブローチがカチっと机にぶつかったので、ちょっとだけ体を浮かして、傷つかないようにする。
「何を黄昏ているのですか? 工藤先生~」
「ああ~西野先生~? いや、ちょっとね…思ったよりも皆、弁当持参が面倒なのかな?って意外に思ってさ」
私の頃は…弁当持参組が多かった気がする。それにこれを企画した校長先生の時代ではそもそも、購買組という考え方そのものが無いのかも知れない。
学生たちには伝えなかったが、趣のある歌を作りたいのであれば、市販の弁当では心が満たされないであろう。という事を考えているみたい。
「ああ~~確かにそれはありますよね。共働きで親が忙しくて頼めないのかと思ったら、単純に親子の会話がないのも影響してたり、それで頼みずらいみたい…」
「連絡事項をSNSで終わらせるってのも、時代なのかなって思うけど、私は慣れないんですよね~」
これでもまだまだ若いつもりなのに、現役学生の頃から同級生たちと話題が噛み合わなかったから、まあ…今更なんだろうけど、SNSで皆にテストや紅葉狩りを激励する描写というのが、すごい違和感で一杯…激励したかったから、教室でやれば良いのにって思ってしまう…
「あら…工藤先生はまだ若いんだから、そういうの得意かと思いました」
「はっはっはっは…家の父は古風な人でしたから、小さい頃から古文や歴史書などに埋もれた生活してて、大学まで携帯も持ちませんでしたし、PCとかさっぱりで…」
もっと言えば、家では未だにインターネットというモノ自体にも馴染みがなく、いつもキーボードと格闘しちゃう…なんて姿はもちろん生徒には見せない。
見せたらかなり恥ずかしいからね…今も家で参考書片手に頑張って覚えております!
「珍しい家なのね~、あたしもアナログ人間だから最近の子の話題にはついていけなくてさっぱり~」
「時代は変わりましたよね~」
学生たちの会話を聞いていると、すでに縁側で茶をすするおばあちゃんになった気分。
などと悟られたら恥ずかしいので、そういった会話には入らずに淡々と、違う話にシフトチェンジさせるんだけど、誰も気づいていないよね…きっと(;^ω^)
「あなた…まだ若いのに何を言ってるのよ?」
「どうなんでしょうね~まだ若いと思いますが、すでに学生たちの会話についていけない…ほんの数年前にはあの世界にいた筈なのに~」
そう思い出す学生時代…は……何もなかったね、うん~
とりあえず、午前は授業も無いから、書類整理でもしよう~っと♪
ちなみに普段は、口元に手をあてながら上品に笑う、ただのオシャレなおばさんなんだけどね…西野先生は~
ちなみに彼女、料理に化粧の臭いが移るのがイヤだと言って、ほとんど化粧する事がないんだけど…どういう訳か、綺麗に見えてしまう!
「それじゃ、あたしは授業があるからいくわね~♪」
「は~~い、いってらっしゃい~~」
この高校で数少ない女性職員としてよく西野先生とは会話するのだけど、一回りも年上なので相談をしているんだよね。料理は愛と根気と味見が大事だと口酸っぱく言う人なんだけど…
「愛だけじゃ、料理は出来ないんだよね~実際」
とくに、『愛』よりも『根気』と『味見』を大事にしているみたい。その理由を訊ねると何か、料理は愛情だと言って勢いよく材料をぶち込んで、ゲテモノ料理を恋人に食べて♪とにこやかな顔できょうは…ではなく、お願いをするという喜劇…ではなく、悲劇を見た事があるらしいのだ…!
「その悲劇を食い止める為に、今週は調理実習が満載なんだよね…お弁当に使えそうな料理になってるのかな~?」
両親に頼めないなら自分たちで作ればいい…のは分かるけど、男の子ばっかりだからね~
素直に料理してくれる人って、どれぐらいいるんだろう?
机に肘を附き、顎を乗せながら、もう片方の手で花柄のペンを回す。思い出すのは、朝のホームルームの時の東谷君の表情。お弁当持参と聞いてものすごく汗を流していたんだよね。
何があったのか訊きたかったんだけど、時間がなくて訊けなかったんだよね…
――――
その後、調理実習室で何があったのかは分からないんだけど、ちょっとした騒ぎを起こしていたみたい…ほんと、何があったんだろう??
何となく首を突っ込みたくなる楽しそうな雰囲気があったんだけど、書類が溜まりすぎていて、そんな暇もなく、そのままお昼になっていた。
「ああ~~~終わった…もうちょっと効率的に仕事出来れば、こんな事にはならないのにな~~~う~~~~~ん!」
凝り固まった筋肉を伸ばす様に、イスに座りながら大きく背伸びをする。ちなみに、ゆったりとしたブラウスを着ていたので、背伸びしておへそが見えちゃうような出来事はない!
―――という意思を込めた視線を周りに向けると、何故か若い男の先生がこちらをジッと見ていた~♪ ふふふ……
「どうかしましたか~?」
「いっ…いいえ! …なっ、何でもありません…!」
彼も若いな~って思いながら、首を軽く回してから、音も無く立ち上がる。
カバンから持参した手作り弁当を取り出すと、先生や生徒たちが食事をする一階のオープンフロアへと足を向ける。
先程視線を向けて来た先生がお昼を一緒にどうですか? と尋ねて来たがやんわりと断りを入れる。何となく…ねえ~頼りないというか…興味が沸かない人なんだよね~
フロアに着くと、生徒たちが思い思いのイスに座り、テーブルを囲みながら談笑していた。
誰を探しているという訳じゃないんだけど…もしかしたら…と思い、視線を動かすと…
「こんにちは、東谷君♪ 今日は一人なの?」
「ああ…工藤先生…」
「どうしたの? そんな落ち込んだ顔して……」
その日の彼は珍しく一人のようだった。肩を落とし、ため息を吐きながら悩んでいるみたい。
今朝もそうだったけど、彼に何かあったのかな?
「もしかして、お弁当ないの?」
「いえ…そうじゃなくて…えっと、ああいや…弁当がないのは確かなんですが…」
「あら? そうなの~だったら、先生の分けてあげるから、一緒に食べましょう♪」
「ええっ…!?」
かなり戸惑っているみたいだけど、今回は少しだけ強引に同じテーブルに座り、恥ずかしがる彼にウィンクをしながら、いやらしくない程度に距離を開け、自分の弁当箱を開く。
中に入ってるのは私が好きなおかずを沢山入れているんだけど、今回は煮物や佃煮、ほうれん草のおひたしに、それに俵型のご飯にゴマを振りかけている。
「他には果物も持ってきたけど…嫌いなものある?」
「いえ…俺は嫌いなモノはないんですけど…その…気になる事があって…」
「な~に?」
「ふふふ…先生、何かにやけてますよ~?」
「そうね~♪ 東谷君の落ち込む姿なんて新鮮なんだもん~♪」
「もう~~~意地悪ですね~」
私が笑いかけると少しだけ元気が沸いてくれたみたい。落ち込んでいた表情が少しだけ笑顔になってきた♪
何も食べていないだろうからお腹が空いてるみたいだけど、今は食べる事よりも、お話をした方がイイかな?
前に屈み、目線を彼よりも下にしながら、少し見上げるように。
上目遣いにしながら『私先生だし、何かあったのなら話してみて?』と言ってあげると、彼もリラックスしてくれたみたい♪
「実はさっきまで保健室にいたんですけど…実は樹が倒れちゃったみたいで…」
「へえ~そうなんだ~~って……ええっ!?」
恋というのはきっと、そんな味気ない時間を彩るスパイスなんだろうね。
例えそれが、どんなに身勝手でも、どうしようもなくても止められないモノ。
「なんて言っていられるのはきっと、学生の頃までなんでしょうね~はあ~」
朝のホームルームの地獄?を潜り抜けて、大きなため息を吐きながら職員室へ戻る。
辿り着くと、グタっと体を机に預けて、誰も見えないように顔を隠しながらもう一度、大きくため息を一つ。
すると、胸元に付けている白ユリのブローチがカチっと机にぶつかったので、ちょっとだけ体を浮かして、傷つかないようにする。
「何を黄昏ているのですか? 工藤先生~」
「ああ~西野先生~? いや、ちょっとね…思ったよりも皆、弁当持参が面倒なのかな?って意外に思ってさ」
私の頃は…弁当持参組が多かった気がする。それにこれを企画した校長先生の時代ではそもそも、購買組という考え方そのものが無いのかも知れない。
学生たちには伝えなかったが、趣のある歌を作りたいのであれば、市販の弁当では心が満たされないであろう。という事を考えているみたい。
「ああ~~確かにそれはありますよね。共働きで親が忙しくて頼めないのかと思ったら、単純に親子の会話がないのも影響してたり、それで頼みずらいみたい…」
「連絡事項をSNSで終わらせるってのも、時代なのかなって思うけど、私は慣れないんですよね~」
これでもまだまだ若いつもりなのに、現役学生の頃から同級生たちと話題が噛み合わなかったから、まあ…今更なんだろうけど、SNSで皆にテストや紅葉狩りを激励する描写というのが、すごい違和感で一杯…激励したかったから、教室でやれば良いのにって思ってしまう…
「あら…工藤先生はまだ若いんだから、そういうの得意かと思いました」
「はっはっはっは…家の父は古風な人でしたから、小さい頃から古文や歴史書などに埋もれた生活してて、大学まで携帯も持ちませんでしたし、PCとかさっぱりで…」
もっと言えば、家では未だにインターネットというモノ自体にも馴染みがなく、いつもキーボードと格闘しちゃう…なんて姿はもちろん生徒には見せない。
見せたらかなり恥ずかしいからね…今も家で参考書片手に頑張って覚えております!
「珍しい家なのね~、あたしもアナログ人間だから最近の子の話題にはついていけなくてさっぱり~」
「時代は変わりましたよね~」
学生たちの会話を聞いていると、すでに縁側で茶をすするおばあちゃんになった気分。
などと悟られたら恥ずかしいので、そういった会話には入らずに淡々と、違う話にシフトチェンジさせるんだけど、誰も気づいていないよね…きっと(;^ω^)
「あなた…まだ若いのに何を言ってるのよ?」
「どうなんでしょうね~まだ若いと思いますが、すでに学生たちの会話についていけない…ほんの数年前にはあの世界にいた筈なのに~」
そう思い出す学生時代…は……何もなかったね、うん~
とりあえず、午前は授業も無いから、書類整理でもしよう~っと♪
ちなみに普段は、口元に手をあてながら上品に笑う、ただのオシャレなおばさんなんだけどね…西野先生は~
ちなみに彼女、料理に化粧の臭いが移るのがイヤだと言って、ほとんど化粧する事がないんだけど…どういう訳か、綺麗に見えてしまう!
「それじゃ、あたしは授業があるからいくわね~♪」
「は~~い、いってらっしゃい~~」
この高校で数少ない女性職員としてよく西野先生とは会話するのだけど、一回りも年上なので相談をしているんだよね。料理は愛と根気と味見が大事だと口酸っぱく言う人なんだけど…
「愛だけじゃ、料理は出来ないんだよね~実際」
とくに、『愛』よりも『根気』と『味見』を大事にしているみたい。その理由を訊ねると何か、料理は愛情だと言って勢いよく材料をぶち込んで、ゲテモノ料理を恋人に食べて♪とにこやかな顔できょうは…ではなく、お願いをするという喜劇…ではなく、悲劇を見た事があるらしいのだ…!
「その悲劇を食い止める為に、今週は調理実習が満載なんだよね…お弁当に使えそうな料理になってるのかな~?」
両親に頼めないなら自分たちで作ればいい…のは分かるけど、男の子ばっかりだからね~
素直に料理してくれる人って、どれぐらいいるんだろう?
机に肘を附き、顎を乗せながら、もう片方の手で花柄のペンを回す。思い出すのは、朝のホームルームの時の東谷君の表情。お弁当持参と聞いてものすごく汗を流していたんだよね。
何があったのか訊きたかったんだけど、時間がなくて訊けなかったんだよね…
――――
その後、調理実習室で何があったのかは分からないんだけど、ちょっとした騒ぎを起こしていたみたい…ほんと、何があったんだろう??
何となく首を突っ込みたくなる楽しそうな雰囲気があったんだけど、書類が溜まりすぎていて、そんな暇もなく、そのままお昼になっていた。
「ああ~~~終わった…もうちょっと効率的に仕事出来れば、こんな事にはならないのにな~~~う~~~~~ん!」
凝り固まった筋肉を伸ばす様に、イスに座りながら大きく背伸びをする。ちなみに、ゆったりとしたブラウスを着ていたので、背伸びしておへそが見えちゃうような出来事はない!
―――という意思を込めた視線を周りに向けると、何故か若い男の先生がこちらをジッと見ていた~♪ ふふふ……
「どうかしましたか~?」
「いっ…いいえ! …なっ、何でもありません…!」
彼も若いな~って思いながら、首を軽く回してから、音も無く立ち上がる。
カバンから持参した手作り弁当を取り出すと、先生や生徒たちが食事をする一階のオープンフロアへと足を向ける。
先程視線を向けて来た先生がお昼を一緒にどうですか? と尋ねて来たがやんわりと断りを入れる。何となく…ねえ~頼りないというか…興味が沸かない人なんだよね~
フロアに着くと、生徒たちが思い思いのイスに座り、テーブルを囲みながら談笑していた。
誰を探しているという訳じゃないんだけど…もしかしたら…と思い、視線を動かすと…
「こんにちは、東谷君♪ 今日は一人なの?」
「ああ…工藤先生…」
「どうしたの? そんな落ち込んだ顔して……」
その日の彼は珍しく一人のようだった。肩を落とし、ため息を吐きながら悩んでいるみたい。
今朝もそうだったけど、彼に何かあったのかな?
「もしかして、お弁当ないの?」
「いえ…そうじゃなくて…えっと、ああいや…弁当がないのは確かなんですが…」
「あら? そうなの~だったら、先生の分けてあげるから、一緒に食べましょう♪」
「ええっ…!?」
かなり戸惑っているみたいだけど、今回は少しだけ強引に同じテーブルに座り、恥ずかしがる彼にウィンクをしながら、いやらしくない程度に距離を開け、自分の弁当箱を開く。
中に入ってるのは私が好きなおかずを沢山入れているんだけど、今回は煮物や佃煮、ほうれん草のおひたしに、それに俵型のご飯にゴマを振りかけている。
「他には果物も持ってきたけど…嫌いなものある?」
「いえ…俺は嫌いなモノはないんですけど…その…気になる事があって…」
「な~に?」
「ふふふ…先生、何かにやけてますよ~?」
「そうね~♪ 東谷君の落ち込む姿なんて新鮮なんだもん~♪」
「もう~~~意地悪ですね~」
私が笑いかけると少しだけ元気が沸いてくれたみたい。落ち込んでいた表情が少しだけ笑顔になってきた♪
何も食べていないだろうからお腹が空いてるみたいだけど、今は食べる事よりも、お話をした方がイイかな?
前に屈み、目線を彼よりも下にしながら、少し見上げるように。
上目遣いにしながら『私先生だし、何かあったのなら話してみて?』と言ってあげると、彼もリラックスしてくれたみたい♪
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