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先生の一日 その3(工藤先生視点)
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東谷君からの説明を聞いてる間、彼は時に微笑み、時に困ったような、そして親しそうに、言葉を連ねていた。
周りを見ればそれなりに時間が過ぎており、昼休みは半分を過ぎている。
それでもフロアには食後の雑談を楽しむ学生たちで溢れており、男同士の誰と誰がバスケで勝っただとか、どこかのアイドルは可愛いとか、最近話題のアニメとか、色々な話が聞こえてくる。
その話の大半が、私には分からない事に、少しだけ目を細め、笑みがこぼれた。
「どうしたんですか? 工藤先生…」
「ううん…何でもない…それで…その樹君は…その後どうしたの?」
「どうしたって…その後、友人に担がれて保健室に行って…」
東谷君からの説明はとても分かりやすく順序だてて説明してくれている。彼は時に微笑み、時に困ったような。そして親しそうに、言葉を連ねていた。
話を聞く限り、その子は辛い物が苦手なのに無理に食べて、卒倒したと。倒れた時も予想してた友人たちが、頭をぶつけないように支えてくれたみたいだね。
「その保健室で…何かあったの?」
「いえ…それは…その…何にもありません…はい…」
「うん?」
一瞬の間を置いてから、彼は少しだけ視線を横にずらし、頬を少し赤く染め。口を開いては閉じてと繰り返している。
その様子に首を傾げながら、何かトラブルでも遭ったのかと思ったんだけど…これは…
「最初は樹君が倒れた事を落ち込んでいるのかな~って思ったんだけど…ちょっと違うのかな~?」
「ぎくぅ!?」
「ふふふ……口で『ぎくぅ!?』って言う人…初めてみた~♪」
そっかそっか~、最初はすごく落ち込んでいるから深刻な事態になってるのかと思ったけど~、真相はちょっと違うのかな~? ふふふ……
「東谷君って~寝てる友人の顔に落書きとかしちゃうタイプ?」
「そっ…そんな事ありません…よ…はい…」
「あははははっ…♪ カワイイ~~♪」
少しだけイスを近づけて、そっと下から彼の顔を覗くと、視線に気づいた彼がさらに顔を背け、わざとらしく咳をして、深呼吸をしている。
あらあら~ここが二人きりの場所なら、彼の肩をツンツンしてからかってあげたくなる(*^▽^*)
「やっぱり東谷君も、年相応なんだね~ 普段は私を助けてくれたりするぐらい頼りになるのにね~」
「何を想像しているんですか? まったく…年相応も何も…俺はいつだって好きに、ありのままで生きているだけですよ」
「ありのままにね~」
恥ずかしそうに、だけど自然な口調で喋る彼にふと、学生時代の自分を思い出す。
私も昔、皆が流行りのアイドルとかドラマとかを話している間、一人で古文とかクラシックとかに夢中だったな~♪ それで、一人だけ私と話の合った子もいたけど…卒業してから会ってないよな…あ~あ…
「そうね~思えば私もそうだったな~」
「そうなんですか?」
「うん~まあ…私も個性的な子供だったからね~♪」
そろそろお昼もギリギリかな~? 私は次の授業も予定がないからイイけど…
先程職員室でも口ずさんだ映画の歌を呟きながら、自然な動きで弁当箱を開ける。
そして、塩をふりかけた俵方のおにぎりを箸で掴み、彼の口元へ…
「はい…これ…」
「えっ…その…なんですか?」
「ゴハン食べないと、午後の授業もやっていけないわよ?」
「いいから~~♪」
「いや・・・ ですが…うぐぅ!?」
何を遠慮しているか、逃げない癖に口を開こうとしなかったけど、彼が喋った隙に、強引に口の中に押し込む。
一度口に入ったモノを吐き出す訳にいかず、戸惑いながらゆっくりと咀嚼しているね♪
「美味しい~?」
「美味しいですが…強引ですよ…?」
「イイじゃない~イイじゃない~♪ 酢の物は平気かしら? 長イモとキュウリなんだけど~」
「酢の物は健康にイイので親がよく食べさせてくれるので好きですよ? って…そうじゃなくて……なんでぅ…うぐぅ」
喋る彼の口に再び食べ物を詰め込み、その後の戸惑っている癖に逃げようとしない彼に餌付け…ではなく、食料供給を続けながら昼休みは終わっていく…
その時、こちらを見つめる。二人の女子生徒の視線があったのだが、あえて気にしなかった。
もしかしたら、彼の事を気にかけてる女子でもいたのかな? って思ったんだけど、それならそれで…宣戦布告にもなるし、一石二鳥…だよね~ふふふ…♪
「何を楽しそうに…しているんですか…もう…でも…ありがとうございます」
「うんっ♪ どうしたしまして~うふふふっ」
今日は色々あったけど、とりあえず少しだけ彼と近づける事が出来て良かった♪
さすがに教師が毎日生徒の為に手料理を振舞う訳にはいかないだろうけど…落ち込んでいる彼を慰める為にも…ね♪
『あれは強敵だわ…どうする葵?』
『樹にはこれから一週間は料理の特訓よね~~うふふ』
『おう…中華スープがダメになってちょっと怒ってる?』
『怒ってないですよ~♪ ただ~、食材を無駄にする子にはお仕置きが必要よね~♪』
『これは…スパルタルート決定だな~~あははは…』
――――そんな会話が聞こえたりした気もするけど…その意味は分かんなかった(‘◇’)ゞ
周りを見ればそれなりに時間が過ぎており、昼休みは半分を過ぎている。
それでもフロアには食後の雑談を楽しむ学生たちで溢れており、男同士の誰と誰がバスケで勝っただとか、どこかのアイドルは可愛いとか、最近話題のアニメとか、色々な話が聞こえてくる。
その話の大半が、私には分からない事に、少しだけ目を細め、笑みがこぼれた。
「どうしたんですか? 工藤先生…」
「ううん…何でもない…それで…その樹君は…その後どうしたの?」
「どうしたって…その後、友人に担がれて保健室に行って…」
東谷君からの説明はとても分かりやすく順序だてて説明してくれている。彼は時に微笑み、時に困ったような。そして親しそうに、言葉を連ねていた。
話を聞く限り、その子は辛い物が苦手なのに無理に食べて、卒倒したと。倒れた時も予想してた友人たちが、頭をぶつけないように支えてくれたみたいだね。
「その保健室で…何かあったの?」
「いえ…それは…その…何にもありません…はい…」
「うん?」
一瞬の間を置いてから、彼は少しだけ視線を横にずらし、頬を少し赤く染め。口を開いては閉じてと繰り返している。
その様子に首を傾げながら、何かトラブルでも遭ったのかと思ったんだけど…これは…
「最初は樹君が倒れた事を落ち込んでいるのかな~って思ったんだけど…ちょっと違うのかな~?」
「ぎくぅ!?」
「ふふふ……口で『ぎくぅ!?』って言う人…初めてみた~♪」
そっかそっか~、最初はすごく落ち込んでいるから深刻な事態になってるのかと思ったけど~、真相はちょっと違うのかな~? ふふふ……
「東谷君って~寝てる友人の顔に落書きとかしちゃうタイプ?」
「そっ…そんな事ありません…よ…はい…」
「あははははっ…♪ カワイイ~~♪」
少しだけイスを近づけて、そっと下から彼の顔を覗くと、視線に気づいた彼がさらに顔を背け、わざとらしく咳をして、深呼吸をしている。
あらあら~ここが二人きりの場所なら、彼の肩をツンツンしてからかってあげたくなる(*^▽^*)
「やっぱり東谷君も、年相応なんだね~ 普段は私を助けてくれたりするぐらい頼りになるのにね~」
「何を想像しているんですか? まったく…年相応も何も…俺はいつだって好きに、ありのままで生きているだけですよ」
「ありのままにね~」
恥ずかしそうに、だけど自然な口調で喋る彼にふと、学生時代の自分を思い出す。
私も昔、皆が流行りのアイドルとかドラマとかを話している間、一人で古文とかクラシックとかに夢中だったな~♪ それで、一人だけ私と話の合った子もいたけど…卒業してから会ってないよな…あ~あ…
「そうね~思えば私もそうだったな~」
「そうなんですか?」
「うん~まあ…私も個性的な子供だったからね~♪」
そろそろお昼もギリギリかな~? 私は次の授業も予定がないからイイけど…
先程職員室でも口ずさんだ映画の歌を呟きながら、自然な動きで弁当箱を開ける。
そして、塩をふりかけた俵方のおにぎりを箸で掴み、彼の口元へ…
「はい…これ…」
「えっ…その…なんですか?」
「ゴハン食べないと、午後の授業もやっていけないわよ?」
「いいから~~♪」
「いや・・・ ですが…うぐぅ!?」
何を遠慮しているか、逃げない癖に口を開こうとしなかったけど、彼が喋った隙に、強引に口の中に押し込む。
一度口に入ったモノを吐き出す訳にいかず、戸惑いながらゆっくりと咀嚼しているね♪
「美味しい~?」
「美味しいですが…強引ですよ…?」
「イイじゃない~イイじゃない~♪ 酢の物は平気かしら? 長イモとキュウリなんだけど~」
「酢の物は健康にイイので親がよく食べさせてくれるので好きですよ? って…そうじゃなくて……なんでぅ…うぐぅ」
喋る彼の口に再び食べ物を詰め込み、その後の戸惑っている癖に逃げようとしない彼に餌付け…ではなく、食料供給を続けながら昼休みは終わっていく…
その時、こちらを見つめる。二人の女子生徒の視線があったのだが、あえて気にしなかった。
もしかしたら、彼の事を気にかけてる女子でもいたのかな? って思ったんだけど、それならそれで…宣戦布告にもなるし、一石二鳥…だよね~ふふふ…♪
「何を楽しそうに…しているんですか…もう…でも…ありがとうございます」
「うんっ♪ どうしたしまして~うふふふっ」
今日は色々あったけど、とりあえず少しだけ彼と近づける事が出来て良かった♪
さすがに教師が毎日生徒の為に手料理を振舞う訳にはいかないだろうけど…落ち込んでいる彼を慰める為にも…ね♪
『あれは強敵だわ…どうする葵?』
『樹にはこれから一週間は料理の特訓よね~~うふふ』
『おう…中華スープがダメになってちょっと怒ってる?』
『怒ってないですよ~♪ ただ~、食材を無駄にする子にはお仕置きが必要よね~♪』
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