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校長先生のお話 その1 (樹視点)
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人が人を求めるのは本能なのか、それとも魂が元々たった一つのモノだからか…
他の生物にはない。本能以外の欲望。それは言葉には出来ない。純粋で、濁っていて、真っすぐで、曲がりくねった熱いもの…
その人の想いが欲しい。自分だけのものにしたい。そしてずっと宝物のように大事に懐に入れて、愛でていたい…そう願うのはきっと本能だけじゃない筈。
幾千、幾億の不完全な言葉を連ね、自分の想いを形にし、ただあるがままにその人の傍にいたい。
理屈じゃない…そもそも理屈や正論で動いてる人間なんて、きっとほとんどいない。
だからこそ、正論や理屈を並べて、相手を論破する輩というのは、本当にロクでもない。
「それを盾に恋なら何でもしていいとか…バカな事は考えちゃだめだよ?」
「なっ…何を言ってるのかな~? あははは…ボクには分からないよ…うん!!」
美桜に突っ込まれて、思わず先週の自分の暴走を思い出す。あの時は…調子に乗って辛い物を作りすぎちゃったけど…あれぐらいならまだ理性的だよね…うん、うん!
「二人とも~~何か駐車場に整列してくださいってさ。校長先生から高説を聴けるみたいよ~」
「高説…って、ただの課外学習に校長先生も同行してたの!」
「それだけこのイベントに気合を入れてるって事だろうね~うん…」
校長先生の顔なんて、普通は覚えてる学生なんていないと思うだけど、この学校の校長は…ユニークな人だと強烈な記憶を入学式に見せていた。
何しろその第一声が…お前達はバカだ…だったものな~あれは全員面くらったよね…
そんな皆の様子を見て爆笑した後、笑みを浮かべながら誰もがバカから始まり、バカである事を楽しむ事こそが、人生観を豊かにすると言っていたね~
「今回も変わった高説が聴けるのかな~?」
「ある意味、びっくり箱のような人だからね~」
普通の人ではない先生が多い気がするこの学校…人選ももしかしてあの校長がしているのかな? って予測をしてしまう…ぐらい異色の人が多い。
外に出てまず感じたのは、空が少し曇っている事だろうか? 曇天ではないけど、太陽が隠れるぐらい分厚い雲が空を覆い。山奥の駐車場に沿って土産物屋や、食事処が軒を連ねている。
どの建物も分厚そうな壁板に、立派なトタンの屋根。風に吹かれると同じ向きにたなびくのぼりと暖簾。寒いからか、どこの扉も全て閉まっている。
「ハックション…!! うああ…風邪でも曳いたかな?」
「今日はちょっと肌寒いからね~ふう~」
バスが駐車場に重いエンジン音で車体を揺らしながら静止し、先生の掛け声で一人一人バスから降りていく。
暖房の効いたバスの外は…はっきり言って想像以上に寒かった!!
吐き出す息は白く、吹き抜ける風は頬を赤く染め、胸元に冷気を送る。マフラーなんて持ってきていないから…そもそも男子学生服は首元にネクタイをしていて必要がなかったんだけど…美桜と葵は結構きついようだ…
「もうちょっと防寒具でも着こんで来ればよかったよ~~もう~~」
「先生たちも意地が悪いよね~ こんなに寒いなら教えてくれれば良かったのに~!」
どうやらボクたちが来るずっと前から、他の先生方は到着していたようだ。朝礼の時に一緒にバスに乗ったと思ったのに…一台だけ先に行っていたのか?
着物姿の校長先生が生徒たちに手を振りながら、仁王立ちで駐車場の端で待っている。
「どうやら、あそこに整列しろって事か~まあ他の車もいないし、誰にも迷惑をかけてはいないのかな?」
世の中には秋の山はロマンティックで良いとか考えてる人もいるかもだが、現実はただただ肌寒い…早いとこ…皆と一緒に整列しよっと…!
――――――――
「お前たちは自分たちがバカでないと自惚れた事を言う輩はおるまい。私も含め、誰もがどこかに愚かしい部分を持っている。だがそれは、とても幸いな事なのだ。
己がバカと皆に告白する恥よりも、『聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥』という言葉があるように、賢いふりをして、本当に大事な事を訊ねられない愚かさよりはマシだ」
この話…そうだ…この最初の言葉は入学式にも聞いた気がする。
最初はバカと言われて反発していた生徒たちも、この校長の妙なオーラに圧され、黙って聞いているのが何とも…不思議な魅力があるのかな?
「愚かである事を認識する事は学習する意義も見出せる。恐らく今回の企画、皆は面倒だとか、どうして工業高校でこんなのするんだ? とか文句を言ってる者たちも多いだろう。
今回この校外学習を企画したのは、己の得意分野ではなく、あえて苦手な事に挑み、観察する事によって新しい自分を見つける事も出来るであろう」
その話…直前にするような話なのかな? 学校で話しても良かったんじゃないかしら?
こっちは寒空の中遮蔽物のない駐車場に並び立たされて、地味に震えてる人もいるんじゃないかな?
特に学生服を着てる人たちはともかく、少数の女子生徒たちが…ちょっと生足を擦ったりして温かさを確保していた…
「はっはっはっは…老人の長話に若人をこれ以上引き留めても気の毒であるな。ここで今から夕刻まで、自由に散策して短歌なり、俳句を作るが良い。
昼食はもちろん、各自持参したお弁当を食べる事。作成が終わり暇になった者も出てくるだろうし、暇つぶし用のオリエンテーションも企画している」
その話も初耳です~ って声が生徒たちからちらほらと上がっていた。
ほんと……この校長先生が絡むと、サプライズという名の初耳という名の、うっかり忘れ? の出来事ばかりですね…この人…歳のせいかほんと時々ボケをかます時がある…
夏の体育祭の時は、演説中に入れ歯が取れても、気にせずずっと喋り続け、何を言っているか全くわからなかった時があった…(-_-;)
そんな校長先生の一番イイ所はどこかと云えば…とにかく高説が短くて分かりやすい!
「お前はバカだとか言われても、あれだけ簡単にまとめられるとありがたいね~」
「ほんと……あの校長の一番イイ所はそこだよね~名前なんだっけ?」
どんなありがたい高説でも、一つ確かなのは…生徒は大体先生の話を聞いてないんだよ…
それに気づかず、長々と話して満足する先生たちというのは…ちょっと悲しいよね。
「鳥羽玉美(とばたまみ)だよ~ちゃんと覚えておかないと?」
「樹…あんたよく覚えてるわね? 普通校長先生の名前なんて覚えてないわよ」
「ボクも普通はそうだけどさ…最近、ちょっと…短歌の勉強してたら、偶然会った時に意気投合しちゃってね…」
「「えええ…!!」」
二人揃って何でそんなびっくりしてるんだ? いや確かにそんな話してないけど…
詳しく話すとすご~く長くなるから…いずれ機会があればね…うん…
そんな悩みとは別に、校長先生の話はさくっと終わり、各教室ごとに皆が担任の元に集まり詳しい説明を受けに肩を狭めながら歩きだしていく。
「うううぅ~~これ絶対に…帰る頃には風邪曳いてるよ~サムイ…!」
「ほんとね……アンタ…寒すぎて、片言になってるわよ~?」
「二人とも? 喋れば喋るほど体温が下がるよ? 黙って静かに歩きなさい…」
寒空の中じっと立ち続けるのは辛いな~って、思っていたら……そんな込み入った話がある事もなく、皆にそれぞれ薄い本のようなモノを配られる。
それは、前ページがカラーのパンフレットのような作りだが、中身はしっかりとした周辺の地図。パラパラと軽い音と共に手元でページがめくると目の前に、可愛らしい紅葉のキャラが地図の内容を解説している…
「皆~校長先生も言っていたが、こいつがこの周辺の地図とチェックポイントだ。さっき校長先生は暇をつぶす為のモノだと説明していたが~もしかしたらチェックポイント辺りには、作品作りの為の絶景が見つかるかも知れないぞ? あくまで『かも』…だけどな」
その上手でもない、もったいぶる担任の仕草とセリフ…ページの中にはスタンプを押す為のページがあるけど…どれもが意味を持ってるんだろうな…
「それじゃ、皆解散! 各自自由に散策して良い歌を作ってくれよ!」
「「「は~~~い」」」
とりあえず、ボクは他のクラスにいる東谷君を見つけにいこっと~! どこかな? どこかな~~? むふふふ~~♪
他の生物にはない。本能以外の欲望。それは言葉には出来ない。純粋で、濁っていて、真っすぐで、曲がりくねった熱いもの…
その人の想いが欲しい。自分だけのものにしたい。そしてずっと宝物のように大事に懐に入れて、愛でていたい…そう願うのはきっと本能だけじゃない筈。
幾千、幾億の不完全な言葉を連ね、自分の想いを形にし、ただあるがままにその人の傍にいたい。
理屈じゃない…そもそも理屈や正論で動いてる人間なんて、きっとほとんどいない。
だからこそ、正論や理屈を並べて、相手を論破する輩というのは、本当にロクでもない。
「それを盾に恋なら何でもしていいとか…バカな事は考えちゃだめだよ?」
「なっ…何を言ってるのかな~? あははは…ボクには分からないよ…うん!!」
美桜に突っ込まれて、思わず先週の自分の暴走を思い出す。あの時は…調子に乗って辛い物を作りすぎちゃったけど…あれぐらいならまだ理性的だよね…うん、うん!
「二人とも~~何か駐車場に整列してくださいってさ。校長先生から高説を聴けるみたいよ~」
「高説…って、ただの課外学習に校長先生も同行してたの!」
「それだけこのイベントに気合を入れてるって事だろうね~うん…」
校長先生の顔なんて、普通は覚えてる学生なんていないと思うだけど、この学校の校長は…ユニークな人だと強烈な記憶を入学式に見せていた。
何しろその第一声が…お前達はバカだ…だったものな~あれは全員面くらったよね…
そんな皆の様子を見て爆笑した後、笑みを浮かべながら誰もがバカから始まり、バカである事を楽しむ事こそが、人生観を豊かにすると言っていたね~
「今回も変わった高説が聴けるのかな~?」
「ある意味、びっくり箱のような人だからね~」
普通の人ではない先生が多い気がするこの学校…人選ももしかしてあの校長がしているのかな? って予測をしてしまう…ぐらい異色の人が多い。
外に出てまず感じたのは、空が少し曇っている事だろうか? 曇天ではないけど、太陽が隠れるぐらい分厚い雲が空を覆い。山奥の駐車場に沿って土産物屋や、食事処が軒を連ねている。
どの建物も分厚そうな壁板に、立派なトタンの屋根。風に吹かれると同じ向きにたなびくのぼりと暖簾。寒いからか、どこの扉も全て閉まっている。
「ハックション…!! うああ…風邪でも曳いたかな?」
「今日はちょっと肌寒いからね~ふう~」
バスが駐車場に重いエンジン音で車体を揺らしながら静止し、先生の掛け声で一人一人バスから降りていく。
暖房の効いたバスの外は…はっきり言って想像以上に寒かった!!
吐き出す息は白く、吹き抜ける風は頬を赤く染め、胸元に冷気を送る。マフラーなんて持ってきていないから…そもそも男子学生服は首元にネクタイをしていて必要がなかったんだけど…美桜と葵は結構きついようだ…
「もうちょっと防寒具でも着こんで来ればよかったよ~~もう~~」
「先生たちも意地が悪いよね~ こんなに寒いなら教えてくれれば良かったのに~!」
どうやらボクたちが来るずっと前から、他の先生方は到着していたようだ。朝礼の時に一緒にバスに乗ったと思ったのに…一台だけ先に行っていたのか?
着物姿の校長先生が生徒たちに手を振りながら、仁王立ちで駐車場の端で待っている。
「どうやら、あそこに整列しろって事か~まあ他の車もいないし、誰にも迷惑をかけてはいないのかな?」
世の中には秋の山はロマンティックで良いとか考えてる人もいるかもだが、現実はただただ肌寒い…早いとこ…皆と一緒に整列しよっと…!
――――――――
「お前たちは自分たちがバカでないと自惚れた事を言う輩はおるまい。私も含め、誰もがどこかに愚かしい部分を持っている。だがそれは、とても幸いな事なのだ。
己がバカと皆に告白する恥よりも、『聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥』という言葉があるように、賢いふりをして、本当に大事な事を訊ねられない愚かさよりはマシだ」
この話…そうだ…この最初の言葉は入学式にも聞いた気がする。
最初はバカと言われて反発していた生徒たちも、この校長の妙なオーラに圧され、黙って聞いているのが何とも…不思議な魅力があるのかな?
「愚かである事を認識する事は学習する意義も見出せる。恐らく今回の企画、皆は面倒だとか、どうして工業高校でこんなのするんだ? とか文句を言ってる者たちも多いだろう。
今回この校外学習を企画したのは、己の得意分野ではなく、あえて苦手な事に挑み、観察する事によって新しい自分を見つける事も出来るであろう」
その話…直前にするような話なのかな? 学校で話しても良かったんじゃないかしら?
こっちは寒空の中遮蔽物のない駐車場に並び立たされて、地味に震えてる人もいるんじゃないかな?
特に学生服を着てる人たちはともかく、少数の女子生徒たちが…ちょっと生足を擦ったりして温かさを確保していた…
「はっはっはっは…老人の長話に若人をこれ以上引き留めても気の毒であるな。ここで今から夕刻まで、自由に散策して短歌なり、俳句を作るが良い。
昼食はもちろん、各自持参したお弁当を食べる事。作成が終わり暇になった者も出てくるだろうし、暇つぶし用のオリエンテーションも企画している」
その話も初耳です~ って声が生徒たちからちらほらと上がっていた。
ほんと……この校長先生が絡むと、サプライズという名の初耳という名の、うっかり忘れ? の出来事ばかりですね…この人…歳のせいかほんと時々ボケをかます時がある…
夏の体育祭の時は、演説中に入れ歯が取れても、気にせずずっと喋り続け、何を言っているか全くわからなかった時があった…(-_-;)
そんな校長先生の一番イイ所はどこかと云えば…とにかく高説が短くて分かりやすい!
「お前はバカだとか言われても、あれだけ簡単にまとめられるとありがたいね~」
「ほんと……あの校長の一番イイ所はそこだよね~名前なんだっけ?」
どんなありがたい高説でも、一つ確かなのは…生徒は大体先生の話を聞いてないんだよ…
それに気づかず、長々と話して満足する先生たちというのは…ちょっと悲しいよね。
「鳥羽玉美(とばたまみ)だよ~ちゃんと覚えておかないと?」
「樹…あんたよく覚えてるわね? 普通校長先生の名前なんて覚えてないわよ」
「ボクも普通はそうだけどさ…最近、ちょっと…短歌の勉強してたら、偶然会った時に意気投合しちゃってね…」
「「えええ…!!」」
二人揃って何でそんなびっくりしてるんだ? いや確かにそんな話してないけど…
詳しく話すとすご~く長くなるから…いずれ機会があればね…うん…
そんな悩みとは別に、校長先生の話はさくっと終わり、各教室ごとに皆が担任の元に集まり詳しい説明を受けに肩を狭めながら歩きだしていく。
「うううぅ~~これ絶対に…帰る頃には風邪曳いてるよ~サムイ…!」
「ほんとね……アンタ…寒すぎて、片言になってるわよ~?」
「二人とも? 喋れば喋るほど体温が下がるよ? 黙って静かに歩きなさい…」
寒空の中じっと立ち続けるのは辛いな~って、思っていたら……そんな込み入った話がある事もなく、皆にそれぞれ薄い本のようなモノを配られる。
それは、前ページがカラーのパンフレットのような作りだが、中身はしっかりとした周辺の地図。パラパラと軽い音と共に手元でページがめくると目の前に、可愛らしい紅葉のキャラが地図の内容を解説している…
「皆~校長先生も言っていたが、こいつがこの周辺の地図とチェックポイントだ。さっき校長先生は暇をつぶす為のモノだと説明していたが~もしかしたらチェックポイント辺りには、作品作りの為の絶景が見つかるかも知れないぞ? あくまで『かも』…だけどな」
その上手でもない、もったいぶる担任の仕草とセリフ…ページの中にはスタンプを押す為のページがあるけど…どれもが意味を持ってるんだろうな…
「それじゃ、皆解散! 各自自由に散策して良い歌を作ってくれよ!」
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