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苦悩の果ての答えを…
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それは何気ない春の陽気な日だったと思う。その日も変わらない通学路、変わらないお喋り。変わらない日常の中、ボクは東谷君と通学路を歩いていた。
真新しいバッチを胸に、足を弾ませながら歩いていると、見慣れない本が東谷君のカバンから突き出していたのに気づいた。
「東谷君って、何か本を読むの?」
「最近な~。家の父さんの目が悪くなってきてな…新しく眼鏡を頼んだみたいなんだが、作るのに一週間ほどかかるみたいなんだ。それまでの間、俺が調べ物を代わりに読んで、教えてやろうと思ってな」
「へえ~東谷君のお父さんって目が悪くなっちゃったんだ…大丈夫なの?」
「ずっと事務仕事をしていたツケだろうけどな。仕方ないさ…」
仕方ないと言いながら、学校にまでその本を持ち込んでいく何て、そんなに面白い本だったりするのかな? ちょっとだけ気になっていく自分がいたんだ。
「どんな本を読んでるの?」
「何か歴史物がメインだけど、最近は~ダイエットの本も読んでるな…」
ああ…おじさんは確かにちょっと小太りかも…食べ過ぎだとか毎食言われていたし、あまり運動しないタイプみたいだし。それでそんな本を読んでいるのか~へえ~ほう~
「スポーツ少年の東谷君がダイエット本…プププッ…ミスマッチだよね…アハハハ…」
ボクの見た限りでは、体脂肪率が10%を切っている東谷君が、お父さんの為にダイエット本を熱心に読んでるなんて…お腹抱えて笑いたくなる。
このまま教室に入っても、読み続けるのかな? 周りのクラスメイトが何事かとビックリするんじゃないかな? ただ気になったのは、その本に挟まれている白い紙であった。
「…しおり…持ってないの?」
「そういうのは何か、面倒でな。そこいらにある紙を挟んでるんだ。どこまで読んだか分かれば良いかな~って…(;^ω^)」
そのいい加減な性格、文学少年じゃないのがモロに分かる発言だよね~。確かに要件を満たされば、それでいいって事も理解出来るけど~~!
「むむむ…それは違うんじゃないかな? そういう何気ない小物にその人の自意識とか、おしゃれさが出るんだと思うよ?」
「なるほどなるほど…それで、樹はちゃんとオシャレなしおりを持っているのか?」
「ボク…ボクは…アハハハハ…ナイショ…」
「お前も持ってないんじゃないか!」
ボクが笑いながら誤魔化しても、通じる訳もなく、逆にツッコミを受けながら通学路を、同じ歩みで進んでいた。ボクの方が小柄だったけど、自然と隣を歩いていたんだ。
「……可愛いしおりがあると、オシャレなのか…そっか…そうかもな…」
「うん?」
ひとしきり笑い合うと、オシャレか…ってこっちを見ながら色々と考えていた。
その視線の意味をその時は分からなかったんだけど…それから一週間後ぐらいだっけ? 凄く嬉しかったんだよね…泣いちゃうぐらい…
—―――
—――――――
「あれ…東谷君?」
「よう~? 元気してるか~あんまり心配かけるんじゃないぞ?」
目を開ければそこには…ボクの………な人が変わらずいたんだ。
心配しているような、それで少し焦ってるような、穏やかな眼差しでこっちを見ていた。
その視線にボクは頬を染めながら見つめていた。…胸に手を当てて、ドキドキしてるのを感じながら、変わらずそこにはボクの一番大事にしている物があった。
「東谷君ってすごく優しいからさ、困ってる人がいたらいつも手助けしていたよね…お父さんが目を悪くした時も、代わりに色々してあげてたっけ?」
「そうだったか? 覚えてないな…ただ…父さんの新しい眼鏡はサイズが小さくて、もしかして顔に贅肉ついて合わなくて、また太ったのかと騒いでいたな~ヤレヤレだった」
「そうそう♪ それでまた作り直して、またダイエット本を買い足して、読んでたよね? 凄く可笑しかった~~♪ 周りのクラスメイトは何事かと騒いでいたし…」
それ以外にも何か、歴史本とかも急に読みだして、父親と歴史談議をしていたみたいだし、いっつもそうだった…誰かをいつも助けようとしていた。
「工藤先生って頭良いけど、ちょっと天然な所もあるから、サポートしないと大変だったんでしょう?」
「ああ……まあ…な。先生はあれで最初、オドオドしてて結構、生徒たちからバカにされていたから、見ていられなくてな……」
「そうだよね…東谷君はいつだってそうだった…(本当はボクだけに優しくしてほしいけど)…そんな東谷君だからボクは………」
きっと今も嫉妬してるんだと思う。ボクの知らない所で他の女性に優しくしていた事実を。
だけど…困ってる工藤先生を放置するような人をボクはきっと、…こんなに想ったりはしないんだと思う。
「ねえ……とうやくん?」
そっと震えながら…臆病な自分の心を叱咤しながら彼の顔へと伸ばす指先。存在を確認するように、相手の心に触れるように…恐る恐る伸ばす指先…
「樹?」
「東谷君はそのままでいて? そのままのボクを受け入れてくれたように…ありがとう…」
「あ…ああ…判った」
本当はその頬を包もうしたけど出来なかった。鼻先をそっと人差し指で突くのが限界。
やっぱり、工藤先生みたいにはなれないや。恥ずかしくてその指をすぐに引っ込めてしまい。彼はそんな様子に、小さく笑っている…
「ごめんね? もう大丈夫…大丈夫だから…」
今はこの気持ちを大事にしよう。きっとこの気持ちもまた、自分の醜さのせいで忘れる時もあるかも知れない。その時はまた…思い出せば良い。この時の想いを…暖かさを…
この大事な宝物をくれたのは、東谷君や美桜…葵に…それに校長先生も…って…?
「あれ? 校長先生は…」
「あの人だったら、俺が来たら後は任せると言って、いなくなったぞ? 邪魔者は去るんだってさ…」
「邪魔者って…もう~!! そんなんじゃないのに…恥ずかしい…うううっ…」
彼からそっと体を離し、背を向けながら何度も深呼吸して落ち着かせる。さっきまでは勢いで指先を伸ばしたけど…もう限界…顔真っ赤になってるよね…きっと!
手に持ったままの紅茶を一気に飲んで、無理やり心を落ち着かせようとする。
大丈夫…ボクは大丈夫…これ以上東谷君に心配かけてもいけないし…うん……それに…
「一度、工藤先生にも説明しないといけないよね…ボクのことを」
さっきまでは、謝られたら逆に惨めでイヤだから逃げたけど…今だったら受け止めれる気がしたんだ。この気持ちが続いている今なら…向き合えると思うんだ。
そう東谷君に伝えると…優しく頷いてくれていた。
「ああ…その事についてなんだけどさ…先生さ?……色々と悩んでいたみたいだ」
「えっ?」
真新しいバッチを胸に、足を弾ませながら歩いていると、見慣れない本が東谷君のカバンから突き出していたのに気づいた。
「東谷君って、何か本を読むの?」
「最近な~。家の父さんの目が悪くなってきてな…新しく眼鏡を頼んだみたいなんだが、作るのに一週間ほどかかるみたいなんだ。それまでの間、俺が調べ物を代わりに読んで、教えてやろうと思ってな」
「へえ~東谷君のお父さんって目が悪くなっちゃったんだ…大丈夫なの?」
「ずっと事務仕事をしていたツケだろうけどな。仕方ないさ…」
仕方ないと言いながら、学校にまでその本を持ち込んでいく何て、そんなに面白い本だったりするのかな? ちょっとだけ気になっていく自分がいたんだ。
「どんな本を読んでるの?」
「何か歴史物がメインだけど、最近は~ダイエットの本も読んでるな…」
ああ…おじさんは確かにちょっと小太りかも…食べ過ぎだとか毎食言われていたし、あまり運動しないタイプみたいだし。それでそんな本を読んでいるのか~へえ~ほう~
「スポーツ少年の東谷君がダイエット本…プププッ…ミスマッチだよね…アハハハ…」
ボクの見た限りでは、体脂肪率が10%を切っている東谷君が、お父さんの為にダイエット本を熱心に読んでるなんて…お腹抱えて笑いたくなる。
このまま教室に入っても、読み続けるのかな? 周りのクラスメイトが何事かとビックリするんじゃないかな? ただ気になったのは、その本に挟まれている白い紙であった。
「…しおり…持ってないの?」
「そういうのは何か、面倒でな。そこいらにある紙を挟んでるんだ。どこまで読んだか分かれば良いかな~って…(;^ω^)」
そのいい加減な性格、文学少年じゃないのがモロに分かる発言だよね~。確かに要件を満たされば、それでいいって事も理解出来るけど~~!
「むむむ…それは違うんじゃないかな? そういう何気ない小物にその人の自意識とか、おしゃれさが出るんだと思うよ?」
「なるほどなるほど…それで、樹はちゃんとオシャレなしおりを持っているのか?」
「ボク…ボクは…アハハハハ…ナイショ…」
「お前も持ってないんじゃないか!」
ボクが笑いながら誤魔化しても、通じる訳もなく、逆にツッコミを受けながら通学路を、同じ歩みで進んでいた。ボクの方が小柄だったけど、自然と隣を歩いていたんだ。
「……可愛いしおりがあると、オシャレなのか…そっか…そうかもな…」
「うん?」
ひとしきり笑い合うと、オシャレか…ってこっちを見ながら色々と考えていた。
その視線の意味をその時は分からなかったんだけど…それから一週間後ぐらいだっけ? 凄く嬉しかったんだよね…泣いちゃうぐらい…
—―――
—――――――
「あれ…東谷君?」
「よう~? 元気してるか~あんまり心配かけるんじゃないぞ?」
目を開ければそこには…ボクの………な人が変わらずいたんだ。
心配しているような、それで少し焦ってるような、穏やかな眼差しでこっちを見ていた。
その視線にボクは頬を染めながら見つめていた。…胸に手を当てて、ドキドキしてるのを感じながら、変わらずそこにはボクの一番大事にしている物があった。
「東谷君ってすごく優しいからさ、困ってる人がいたらいつも手助けしていたよね…お父さんが目を悪くした時も、代わりに色々してあげてたっけ?」
「そうだったか? 覚えてないな…ただ…父さんの新しい眼鏡はサイズが小さくて、もしかして顔に贅肉ついて合わなくて、また太ったのかと騒いでいたな~ヤレヤレだった」
「そうそう♪ それでまた作り直して、またダイエット本を買い足して、読んでたよね? 凄く可笑しかった~~♪ 周りのクラスメイトは何事かと騒いでいたし…」
それ以外にも何か、歴史本とかも急に読みだして、父親と歴史談議をしていたみたいだし、いっつもそうだった…誰かをいつも助けようとしていた。
「工藤先生って頭良いけど、ちょっと天然な所もあるから、サポートしないと大変だったんでしょう?」
「ああ……まあ…な。先生はあれで最初、オドオドしてて結構、生徒たちからバカにされていたから、見ていられなくてな……」
「そうだよね…東谷君はいつだってそうだった…(本当はボクだけに優しくしてほしいけど)…そんな東谷君だからボクは………」
きっと今も嫉妬してるんだと思う。ボクの知らない所で他の女性に優しくしていた事実を。
だけど…困ってる工藤先生を放置するような人をボクはきっと、…こんなに想ったりはしないんだと思う。
「ねえ……とうやくん?」
そっと震えながら…臆病な自分の心を叱咤しながら彼の顔へと伸ばす指先。存在を確認するように、相手の心に触れるように…恐る恐る伸ばす指先…
「樹?」
「東谷君はそのままでいて? そのままのボクを受け入れてくれたように…ありがとう…」
「あ…ああ…判った」
本当はその頬を包もうしたけど出来なかった。鼻先をそっと人差し指で突くのが限界。
やっぱり、工藤先生みたいにはなれないや。恥ずかしくてその指をすぐに引っ込めてしまい。彼はそんな様子に、小さく笑っている…
「ごめんね? もう大丈夫…大丈夫だから…」
今はこの気持ちを大事にしよう。きっとこの気持ちもまた、自分の醜さのせいで忘れる時もあるかも知れない。その時はまた…思い出せば良い。この時の想いを…暖かさを…
この大事な宝物をくれたのは、東谷君や美桜…葵に…それに校長先生も…って…?
「あれ? 校長先生は…」
「あの人だったら、俺が来たら後は任せると言って、いなくなったぞ? 邪魔者は去るんだってさ…」
「邪魔者って…もう~!! そんなんじゃないのに…恥ずかしい…うううっ…」
彼からそっと体を離し、背を向けながら何度も深呼吸して落ち着かせる。さっきまでは勢いで指先を伸ばしたけど…もう限界…顔真っ赤になってるよね…きっと!
手に持ったままの紅茶を一気に飲んで、無理やり心を落ち着かせようとする。
大丈夫…ボクは大丈夫…これ以上東谷君に心配かけてもいけないし…うん……それに…
「一度、工藤先生にも説明しないといけないよね…ボクのことを」
さっきまでは、謝られたら逆に惨めでイヤだから逃げたけど…今だったら受け止めれる気がしたんだ。この気持ちが続いている今なら…向き合えると思うんだ。
そう東谷君に伝えると…優しく頷いてくれていた。
「ああ…その事についてなんだけどさ…先生さ?……色々と悩んでいたみたいだ」
「えっ?」
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