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第二章
自分の不安と、希望と…
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夕焼けが人を見せる姿というのは、どこか儚く、寂しさと温かみを感じさせていた。
夜が見せる人は、闇に怯える姿と、温もりを求める姿を見せてくれている。
何がある訳でもない…ただ…ただ―――なんだ?
白い吐息が闇の中で生まれては消え、揺れる視界がああ自分は何かをしているんだ? 必死に努力をしているんだ? という事を自覚させている。
目の前の事しか考えさせていない。手の中に感じる、震えている温もりは、アタイにその子の強さと心細さを伝えているようだ。
「脇腹がいたい…くぅ~! 何で走るだけで痛くなるんだよ…! はあ はあ はあ…」
毎日歩いてる‥何度も通った道がその日ばかりは、異常に長く…辛く感じる。
その時誰か…見知った人が視界の端に映ったような気がするんだけど、その時は気づかなかった。
夜の空が、小さな光を灯し始め、街灯が地上に星を灯した頃に…小さな人影がこちらに手を振ってるのが見え…一度立ち止まり、肩を大きく揺らしながら、しばらくその場で立ち止まっていると‥その人影が近づき、こちらの肩を優しく叩いてくれた。
「美桜さん…大丈夫ですか?」
「ぜえ はあ ぜえ はあ…ありがとう凛香ちゃん…ごめんね…ちょっと…もう歩けなくて‥はあ はあ…」
あと数メートルなのに、足を進める事が出来ずに立ち止まっていた。
肩を揺らし、足が震えてる。一歩も前に行くことが出来ずにいた…
「ごめん、アタイちょっと動けないから…この子…代わりに頼めるかな? アタイもすぐに行くから…お願い…」
「あ…はい…わかりました。この子をお姉ちゃんに渡せばいいんですね」
本当ならタオルに包んだ方が良いと思ったんだけど、ハンカチじゃ逆に滑って落としそうで…凛香ちゃんに子猫を手渡し…その後ろ姿が家の中に消えるのを…黙って見ていた。
「はあ…はあ…はあ…はあ……………ふう…」
使えなかった両手を膝にあて、顔を俯かせながらじっくりと息を整える。
やがて、息が整い…自分の吐息が小さくなり…何も聞こえなくなっても…
………しばらく、その場を動けなかった…何があるわけでもないんだ。
ただ…ただ…なんだろう…思わず口元がゆがみ…情けない声が口から洩れていた。
ただ目を閉じて…何かが過ぎるのを待つように…目を閉じていたら誰かが…近づいてくる気配がした。
「―――大丈夫? 何か…辛い事でもあったのか?」
「!?」
真っ暗だった世界に、信じられないような…嬉しいような…そんな人の声がした気がした。
声のした方を振り向けばそこには…自分が…昼夜問わず想っている人の姿があった。
思わず近づいて、全身を撫でたり、叩いたり…感触を確かめたりと、綿密な審査を開始する。
「おっ…おっ…おおっ!? こりは…!!」
「なっ‥なんだなんだっ…!?」
幻か、幻覚か…幻聴か…! 疲れてありえない事でも起こってるのか…!?
しばらく、自分の欲望を満たすようにセクハ…ではなく! 自分の感覚が正しいか確かめていたら…顔を真っ赤にしている氷雨先輩と目が合って…やっと正気に戻った。
「あの…ごめんなさい先輩…その~あの…何でアタイに声をかけたんですか?」
「ああ…そりゃ…君が慌ててるのが見えてね…気になって後を追ってきたんだ…ああ…ごめん…何か…変だったよな‥ごめん」
夜が見せる人は、闇に怯える姿と、温もりを求める姿を見せてくれている。
何がある訳でもない…ただ…ただ―――なんだ?
白い吐息が闇の中で生まれては消え、揺れる視界がああ自分は何かをしているんだ? 必死に努力をしているんだ? という事を自覚させている。
目の前の事しか考えさせていない。手の中に感じる、震えている温もりは、アタイにその子の強さと心細さを伝えているようだ。
「脇腹がいたい…くぅ~! 何で走るだけで痛くなるんだよ…! はあ はあ はあ…」
毎日歩いてる‥何度も通った道がその日ばかりは、異常に長く…辛く感じる。
その時誰か…見知った人が視界の端に映ったような気がするんだけど、その時は気づかなかった。
夜の空が、小さな光を灯し始め、街灯が地上に星を灯した頃に…小さな人影がこちらに手を振ってるのが見え…一度立ち止まり、肩を大きく揺らしながら、しばらくその場で立ち止まっていると‥その人影が近づき、こちらの肩を優しく叩いてくれた。
「美桜さん…大丈夫ですか?」
「ぜえ はあ ぜえ はあ…ありがとう凛香ちゃん…ごめんね…ちょっと…もう歩けなくて‥はあ はあ…」
あと数メートルなのに、足を進める事が出来ずに立ち止まっていた。
肩を揺らし、足が震えてる。一歩も前に行くことが出来ずにいた…
「ごめん、アタイちょっと動けないから…この子…代わりに頼めるかな? アタイもすぐに行くから…お願い…」
「あ…はい…わかりました。この子をお姉ちゃんに渡せばいいんですね」
本当ならタオルに包んだ方が良いと思ったんだけど、ハンカチじゃ逆に滑って落としそうで…凛香ちゃんに子猫を手渡し…その後ろ姿が家の中に消えるのを…黙って見ていた。
「はあ…はあ…はあ…はあ……………ふう…」
使えなかった両手を膝にあて、顔を俯かせながらじっくりと息を整える。
やがて、息が整い…自分の吐息が小さくなり…何も聞こえなくなっても…
………しばらく、その場を動けなかった…何があるわけでもないんだ。
ただ…ただ…なんだろう…思わず口元がゆがみ…情けない声が口から洩れていた。
ただ目を閉じて…何かが過ぎるのを待つように…目を閉じていたら誰かが…近づいてくる気配がした。
「―――大丈夫? 何か…辛い事でもあったのか?」
「!?」
真っ暗だった世界に、信じられないような…嬉しいような…そんな人の声がした気がした。
声のした方を振り向けばそこには…自分が…昼夜問わず想っている人の姿があった。
思わず近づいて、全身を撫でたり、叩いたり…感触を確かめたりと、綿密な審査を開始する。
「おっ…おっ…おおっ!? こりは…!!」
「なっ‥なんだなんだっ…!?」
幻か、幻覚か…幻聴か…! 疲れてありえない事でも起こってるのか…!?
しばらく、自分の欲望を満たすようにセクハ…ではなく! 自分の感覚が正しいか確かめていたら…顔を真っ赤にしている氷雨先輩と目が合って…やっと正気に戻った。
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