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第二章
そして、悶絶へ~
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「空がまぶしいな~」
「美桜~何を言っとるの?」
「う~ん、心ここにあらずって感じだよね」
「とりあえず、湯たんぽ作ったからその上に清潔なタオルを敷いて…その上に子猫を乗せて?」
落ち込めば人は活動力がなくなり、有頂天になればどんな無茶な行動でも出来る。
空を仰げばいつでも空には太陽が…今は夜だから月か。
いや、ここは室内だからか蛍光灯の明かりしか見えないんだけど、アタイにはそれが太陽のように眩しく、目を細めて見つめていた。
何かスゴく、スゴく、ドキドキして楽しい事や、すごく大変で危機的な事が一度に起こって、頭の中がグチャグチャになっているんだけど…あ…思い出すと…
「だめだ…何があったのかよく思い出せない…」
「美桜姉ちゃん…上を仰いでいると思っていたら、顔を真っ赤にして頭を抱えて悶絶してる…」
「美桜の事だ…焦ってたから、うまく理性が働かずに大胆な事でもしたんじゃない? それにしてもこの子…結構元気良さげかな? 撫でれば、声を出せるぐらい体力あるよ」
みぃ~みぃ~と部屋に響く声が、何を伝えようとしてるのか分からないが、体が震えているのも、ある意味震える程の体力が残ってる証拠。ここからミルクを与えてエネルギーを与えれば、持ち直せそうだ…とか聞こえたが…そんな事はどうでも良かった。
「――――氷雨先輩は柔らかな笑みを浮かべていた。それにホっとしたのかな~!きっとそうだよね! そっちじゃないとアタイがあんな…あんな…ウウッ…!」
「人肌に温めたミルクをスポイトに吸って…飲んでくれるかな…おお!?」
スポイトから垂れるミルクを、吸うというよりも舐めとっているのか…面白いように口の中に入っていく。
まるでキス――じゃないよね、何か、母乳を飲んでるみたい。
その姿が微笑ましくも、何か胸にトゲが刺さったかのような痛みを感じる。
「どうしたの? 美桜…神妙な顔しちゃって」
「……ううん。何でもない…大丈夫」
そういえば…どうして赤ちゃんだと、薄い体毛しか生えていないんだろう?
ペンギンの赤ちゃんみたいに体毛を生やしてから生まれた方が…って…あれは卵から生まれるんだっけ?
哺乳類だと生えにくい…のかな? よく分からない~~でも……
「……それが必要だから、毛が薄いのかな?」
両手に感じた彼の温もりを留める為に、ギュっと両手を握りしめる。
吐く息は白くならず、温かい部屋の温度が、自分の頬を冷ましてくれない。
親の温もりを感じるために…なんてほんわかな理由―――だったら…
「これで、後はこの子の体力次第かな? 多分大丈夫だとは思うけど…美桜の所でこの子飼うの?」
「……わかんない。弟は動物好きだと思うけど、両親が何ていうか…」
多分反対する家族はいないと思う…それぐらい普段から動物好きなのは分かっていたし、飼うのを面倒がる性格でもなかったハズ。
「そう……なら今夜はボクがお世話するから…家族で相談して? 一応明日、病気を持ってるかとか、調べに病院行くけど…お金は…母さん…大丈夫?」
「ああ・・いえ、大丈夫です。アタイの小遣いで何とか出来ます…きっと」
「良いのよ、遠慮しなくて。そのうち他にも色々用意しなくちゃいけなくなるから、ここでお金を使ってたらすぐに無くなるわ」
湯たんぽを敷いて、タオルを被せ、その上にタオルに包まれた子猫が箱に入れられる。
かけられたタオルが、呼吸に合わせて上下に動く様子に、ホっと息を吐く。
そのまま温かい空気が出ないように、箱の蓋を閉める姿を少し遠くで見ていた。
「美桜?」
「……………」
子猫の顔が見えなくなった途端…不安と安堵が同時に襲ってきた感情。
その正体が分からないまま…アタイは樹に深く頭を下げて、何も言わず…子猫の事を樹に任せて、一人帰路に就いた。
「美桜~何を言っとるの?」
「う~ん、心ここにあらずって感じだよね」
「とりあえず、湯たんぽ作ったからその上に清潔なタオルを敷いて…その上に子猫を乗せて?」
落ち込めば人は活動力がなくなり、有頂天になればどんな無茶な行動でも出来る。
空を仰げばいつでも空には太陽が…今は夜だから月か。
いや、ここは室内だからか蛍光灯の明かりしか見えないんだけど、アタイにはそれが太陽のように眩しく、目を細めて見つめていた。
何かスゴく、スゴく、ドキドキして楽しい事や、すごく大変で危機的な事が一度に起こって、頭の中がグチャグチャになっているんだけど…あ…思い出すと…
「だめだ…何があったのかよく思い出せない…」
「美桜姉ちゃん…上を仰いでいると思っていたら、顔を真っ赤にして頭を抱えて悶絶してる…」
「美桜の事だ…焦ってたから、うまく理性が働かずに大胆な事でもしたんじゃない? それにしてもこの子…結構元気良さげかな? 撫でれば、声を出せるぐらい体力あるよ」
みぃ~みぃ~と部屋に響く声が、何を伝えようとしてるのか分からないが、体が震えているのも、ある意味震える程の体力が残ってる証拠。ここからミルクを与えてエネルギーを与えれば、持ち直せそうだ…とか聞こえたが…そんな事はどうでも良かった。
「――――氷雨先輩は柔らかな笑みを浮かべていた。それにホっとしたのかな~!きっとそうだよね! そっちじゃないとアタイがあんな…あんな…ウウッ…!」
「人肌に温めたミルクをスポイトに吸って…飲んでくれるかな…おお!?」
スポイトから垂れるミルクを、吸うというよりも舐めとっているのか…面白いように口の中に入っていく。
まるでキス――じゃないよね、何か、母乳を飲んでるみたい。
その姿が微笑ましくも、何か胸にトゲが刺さったかのような痛みを感じる。
「どうしたの? 美桜…神妙な顔しちゃって」
「……ううん。何でもない…大丈夫」
そういえば…どうして赤ちゃんだと、薄い体毛しか生えていないんだろう?
ペンギンの赤ちゃんみたいに体毛を生やしてから生まれた方が…って…あれは卵から生まれるんだっけ?
哺乳類だと生えにくい…のかな? よく分からない~~でも……
「……それが必要だから、毛が薄いのかな?」
両手に感じた彼の温もりを留める為に、ギュっと両手を握りしめる。
吐く息は白くならず、温かい部屋の温度が、自分の頬を冷ましてくれない。
親の温もりを感じるために…なんてほんわかな理由―――だったら…
「これで、後はこの子の体力次第かな? 多分大丈夫だとは思うけど…美桜の所でこの子飼うの?」
「……わかんない。弟は動物好きだと思うけど、両親が何ていうか…」
多分反対する家族はいないと思う…それぐらい普段から動物好きなのは分かっていたし、飼うのを面倒がる性格でもなかったハズ。
「そう……なら今夜はボクがお世話するから…家族で相談して? 一応明日、病気を持ってるかとか、調べに病院行くけど…お金は…母さん…大丈夫?」
「ああ・・いえ、大丈夫です。アタイの小遣いで何とか出来ます…きっと」
「良いのよ、遠慮しなくて。そのうち他にも色々用意しなくちゃいけなくなるから、ここでお金を使ってたらすぐに無くなるわ」
湯たんぽを敷いて、タオルを被せ、その上にタオルに包まれた子猫が箱に入れられる。
かけられたタオルが、呼吸に合わせて上下に動く様子に、ホっと息を吐く。
そのまま温かい空気が出ないように、箱の蓋を閉める姿を少し遠くで見ていた。
「美桜?」
「……………」
子猫の顔が見えなくなった途端…不安と安堵が同時に襲ってきた感情。
その正体が分からないまま…アタイは樹に深く頭を下げて、何も言わず…子猫の事を樹に任せて、一人帰路に就いた。
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