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第八話 生徒会
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私はルメラ様とはお友達になれませんでした。ルメラ男爵家は社交をしてないんでしょうか・・。派閥に関係ない社交もたくさんこなしましたがルメラ男爵家には繋がりませんでした。ルメラ男爵家と親交のある家もわかりませんでした。
ルメラ様の件は失敗しましたが過去の人生で一番平穏な生活を送れましたわ。
ビアード公爵家はお勉強も簡単ですし、制約もあまりありません。領民と駆けまわって洋服を汚しても木の上でお昼寝しても怒られません。
ですが、とうとう12歳になってしまいました。
公爵家なので1組以外認めないとエイベルに言われたので試験は手を抜きませんでした。
学園のクラス編成は家格に関係なく成績順です。優秀な生徒は1組に集まります。上位貴族は厳しい教育を受けているのでほとんどが1組です。
ステイ学園に3度目の入学をしました。
12歳から6年間全寮制のステイ学園に通います。
平等の精神を掲げるは学びの場です。
貴族と魔力を持つ生徒は特別な事情がなければ入学を義務づけられます。入学試験が受かれば魔力のない平民でも通えます。
この学園を卒業するのがフラン王国で一人前の貴族として認められる最低条件です。
王家は貴族に最低限の教養を求めます。ステイ学園を卒業できなかった貴族はフラン王国の貴族として名乗れません。ですが国外に留学して、教養を高めることも認められています。
その際は成人までにフラン王国の卒業試験を受け認定証をもらえば王国貴族として認められます。
入学試験に落ちれば翌年の試験に挑戦することもできますが、その時点で貴族として醜聞持ち扱いです。
また魔力持ちで学園に入学を希望しない場合や入学試験に合格できなかった平民のために魔法の扱いを教える特別講習が義務付けられています。この講習はどんな理由があっても拒否はできません。
学園は平等精神を掲げていますが、貴族にとっては名ばかりです。
やはり家格の高い相手への無礼は許されないのはここでも同じです。私達貴族にとっては社交の学び場でもあります。
私は目立たないために集合時間より早めにステイ学園に入り、入学手続きをおえました。さすがに朝一番に来る生徒はいないので、教師以外は誰にも会いませんでした。
マナには荷物を預け寮の部屋を整えてもらっているので別行動しています。
オリエンテーションまで時間があるので、人気のない木の上で過ごして待とうと思います。
2度の人生で6年間も通ったので最低限の学園の地図は頭に入っています。
学園は広大なので必要ない場所は覚えていませんが・・。
そよ風が気持ちが良いです。学園で訓練の授業以外で木登りできる日が来るとは思いませんでした。最初の人生の時はリオやエイベルの木の上でお昼寝する姿に憧れがありました。口に出すと、はしたないと怒られるので口に出すことはありませんでしたが。王太子の婚約者が木登りすれば恐ろしいことになりますので。アリア様とお母様達からのお説教を思い出したら寒気がしました。
髪を揺らす風が懐かしい思い出を思い起こさせ寒気が止まりました。
学園には思い出が詰まってます。大好きなリオ兄様の笑顔を思い浮かびます。胸に手をあて大事な思い出に浸ります。
肩を叩かれ、横を向いたらフィルがいました。
「そろそろ行かないと遅れるよ」
「よくわかりましたね」
「レティシア好みの木だから。ステラも心配してるよ」
迎えに来てくれたフィルにお礼を言って木から降りて講堂に向かいました。
確かにほぼ生徒は揃っています。講堂の入り口で待っているステラと合流して空いている席に座りました。
オリエンテーションが始まりました。
学園長やクロード殿下の挨拶が終わりました。
新入生代表の挨拶はカーチス侯爵家のクラム様でした。毎年入学試験の主席が務めますが、面倒事が嫌いな主席のシオン伯爵家のセリアは断ったのでしょう。
私は入学する前に平穏な学園生活を目指すための計画をしっかりと立てました。
今世は生前とは違う交友関係を築きます。
まず面倒な取り巻きは作りません。
次に生前のお友達で令嬢に人気のクラム・カーチス様とニコル・スワン様と親しくはなりません。今世は令嬢に人気の殿方に近づきません。
クラスメイトにステラとフィルがいるので寂しくありません。生前の親友のセリア・シオン伯爵令嬢はクラスメイトではありませんでした。入学試験と同時に昇級試験を受けて最上級生として6年1組に編入したそうです。天才のセリアにとって学園の勉強はつまらないのかもしれません。セリアと友達になれないのは寂しいですが仕方ありません。
クラスメイトの顔触れは多少の入れ違いがありますが生前とほぼ変わりません。
今世こそは目立たずに平穏な学園生活が送れるように頑張りましょう。
ぼんやりしていたらオリエンテーションが終わりました。顔馴染みの先輩に声を掛けられたので挨拶を交わしながら、フィル達と一緒に教室を目指しました。
リオに声を掛けられ、焦りましたが挨拶だけかわして立ち去りました。令嬢に大人気なリオとは絶対に関わりたくありません。
リオに会っても動揺しなかったことにほっとしました。
無事に教室に辿り着き一番前の窓側の席を選びました。ステラが隣でフィルが後に座りました。
いつも変わらない先生からの入学祝いの言葉と説明を聞きながら平穏な生活が送れるように心の中で祈りました。
お昼休みに教室で食事をしていると歓声が聞こえました。学園では令嬢は人気のある殿方を見ると歓声をあげます。淑女としてどうかと思いますが誰も咎めないので気にすることはやめました。
恐る恐る歓声のほうに視線を向けるとエイベルでしたのでほっとしました。クロード殿下達ではなく良かったですわ。生前はクロード殿下やリオが入学した日に会いに来ましたもの・・・。
「レティシア、生徒会役員に名前があがっている」
食事をする手を止めてエイベルの顔を見ると冗談ではないようです。
生徒会役員なんて目立つことはしたくありません。生徒の模範で優秀な生徒が集まる生徒会は人目を惹きます。今世も役員は生徒に慕われ人気者ばかりでしょう。
「許されるならお断りを。エイベルの苦手な書類仕事はこっそりお手伝いします」
「そのうち呼び出しがある」
直接お断りしないと駄目なんですね・・。関わりたくないのに。ため息を我慢して笑みを浮かべます。私達の話に聞き耳を立てている生徒もいるので明らかに拒否の姿勢を示さば面倒なことが起きます。私の平穏生活への祈りは届かなかったようです・・。
「その時はお兄様が迎えにきてください」
生前のようにクロード殿下が迎えに来たら目立ちます。エイベルなら兄なので目立っても嫉妬の視線に焼かれることはないでしょう。クロード殿下の婚約者候補を目指す令嬢達はピリピリしているので、絶対に巻き込まれないように気を配らないといけません。
私はビアード公爵家で婿を取ると公言しているので今は巻き込まれていません。
「無理はするなよ。ステラ、悪いが頼むよ」
「はい」
私の病弱設定は続いております。ステラはビアード公爵家によく遊びに来ていたのでエイベルとも仲良しです。エイベルは苦笑して立ち去っていきました。令嬢達がエイベルに頬を染めるのは気にしません。ステラがエイベルのファンに手を出されないようにだけ気をつけます。
「いい御身分ね」
アリッサ・マートン侯爵令嬢に笑顔で嫌味を言われます。マートン侯爵家は敵対派閥で、生前から物凄く嫌われていました。社交界で会っても蔑む視線を向ける無礼な令嬢です。確かにマートン様よりも家格は高いので、いい身分なのは事実です。ただ意図はわかりませんが穏やかな笑みを浮かべます。
「マートン様もよければご一緒にいかかがですか?」
「私はステラのように取り込まれないわ」
私も貴方とお友達はお断りです。食事に誘ったのは社交辞令です。
取り込むという品のない言葉に呆れますが顔に出したりしません。
「ステラは大事なお友達ですわ。」
「貴方は友達を見る目を養った方がいいわ」
「ご忠告ありがとうございます。」
価値観はそれぞれですから。同じ派閥の令嬢を傍におかない批難など気にしません。
お友達という名の取り巻きは私には必要ありません。
私は礼をしてステラと一緒に食事を再開しました。睨まれていますが声を掛けられなければ気にしません。必要以上に相手にしないほうがいいのです。私の汚点は病弱と水属性だけです。生前ほど、しつこく絡まれないのでありがたいですわ。
「レティシア、選択授業は決めた?」
フィルが食事をおえて食堂から戻ってきました。物欲しそうに見るので、おやつのクッキーを渡すと陽気に笑って口に含みました。
「武術の授業を迷ってます。エイベルに勝てるようになりたいけど、良い成績を取れる自信が」
「そこまで気にされないだろう。俺が訓練付き合ってやるよ」
迷うと自然に背中を押してくれる優しい友人です。
せっかくなので甘えましょう。フィルなら快く付き合ってくれるのを知ってます。狩りも笑顔で付き合ってくれますから。
「よろしくお願いします」
「レティシア様、私も同じ授業を取ってもいいですか?」
愛らしいステラの言葉に首を傾げます。
「ステラには必要ないと思いますが・・。グレイ伯爵夫妻に相談したほうが良いですわ」
「説得しますわ。」
ステラに甘い伯爵夫妻が説得される姿が脳裏に浮かびました。
「ステラの綺麗な体に傷がついたらどうしましょう」
「公爵令嬢のレティシアに言われても説得力はないよ」
フィルの言葉にため息がこぼれました。
「最近、フィルがお兄様に似てきましたわ」
「エイベル様にも頼まれてる」
「どうしてこんなに信用がないんでしょうか」
「いつもお前が振り回しているからだよ。」
「なんのことかわかりませんわ・・・」
楽しそうに笑うフィルとステラに癒されながら生徒会のことは忘れることにしました。
現実逃避も虚しく、放課後に生徒会長のクロード殿下から呼び出しがありました。呼び出されたのは私とクラム・カーチス様でした。エイベルに案内され歩いていると閃きました。もしかしてこれはチャンスかもしれません。生徒会室に入りました。
生徒会室は一番豪華な部屋です。
個々の役員用の執務机に来客室に大きい本棚に使用人の控えの間もあります。
中にはクロード殿下を初め、上位貴族の先輩方がいらっしゃいました。見目麗しい先輩方、特に殿方は近づきたくありませんわ。
生徒会長の席に座る第一王子クロード殿下の周りに先輩方が控えています。
「礼はいらない。二人には生徒会に入って欲しいんだけど」
自己紹介もせず本題ですか?
穏やかな顔のクロード殿下の言葉になぜか違和感を感じながら向き直ります。
今世でお話するのは初めてです。
カーチス様より家格の高い私から答えるべきですよね。
「ご命令でないなら、辞退させてください」
「ビアード嬢を是非という声があって・・」
あら?
私の知る殿下は去る者を追う方ではありません。無駄を嫌う殿下は嫌がるならあっさり次の候補に声を掛けるはずですが・・・。
あっさり了承されて、殿下の心象も悪くなり良いことだらけの予定でしたのに。まさか・・。
「お兄様のお手伝いでしたら、妹として」
「君を推薦したのは、リオとカトリーヌだ。」
予想外の名前に驚きました。
「殿下、妹は体が弱いので、有事の際に役に立たないと・・」
「二人からはそれでも欲しいと言われている。私は面識がないが二人が押すなら是非迎えいれたい」
エイベル、疑ってごめんなさい。生徒会に入りたくない私の意図を汲んでくれていたんですね・・。
王族のクロード殿下にここまで言われたら断れません。ここで拒否すれば嫌な噂が立つかもしれません。室内にいるのは上位貴族ばかりです。なによりカトリーヌ様の心象を悪くするのは避けたいです。
「かしこまりました。精一杯務めさせていただきます」
「レティシア、大丈夫なのか?」
エイベルが心配そうな顔で見つめてきます。断れる状況ではありませんから・・。カトリーヌ様に嫌われたらお先真っ暗ですわ。
「できればお兄様のお傍にいたいですが、私は殿下の護衛としては役不足です。カトリーヌ様に師事させていただきたいです」
「リオが責任もって面倒みるって言ってるけど」
クロード殿下の言葉に息を飲みました。
今世のリオは私になにか恨みがあるんでしょうか・・。
そんなことされれば、リオのファンに目をつけられて、大変なことがおこります。ますます平穏な生活から遠ざかります。殿下の役に立つように後輩を鍛えたいとかでしょうか・・?その忠誠心は是非カーチス様でお願いしますわ。
生徒会の仕事は生前もお手伝いしていたので、指導者はいりませんとは言えません。リオからの心象が悪くなっても何も問題ありません。むしろ好都合ですわ。
「お気遣い不要です。マール様のお手を煩わせるならエイベルの睡眠時間を削ってでもお願いしますわ」
「リオが女性に嫌われるのは珍しいな。よろしく頼むよ。カーチスはどうする?」
「俺も精一杯務めさせていただきます」
クロード殿下の頼みを断るなんてできませんよね・・。
鍵を差し出されました。生徒会役員は個人で使える特別室を与えられます。
「部屋は自由に使っていい。詳しい話は明日にしようか。部屋の案内は」
「殿下。俺が」
穏やかな顔のクロード殿下に礼をしてエイベルにカーチス様と一緒に部屋を案内してもらいました。鍵を開けて部屋に入ると固まりました。執務用の机と椅子に来客用のソファとテーブルに本棚、手洗い場が見えました。部屋の狭さは構いませんが大事なものがありません。
「エイベル、どうしてキッチンがないんですか!?」
「俺の部屋にあるから、使いたいなら自由に使え。」
「贔屓ですわ。どうして」
「俺が卒業するときに譲ってやるよ。それまで我慢しろ」
「私はエイベルの部屋にお引越しします。鍵をください」
「ほら」
冗談だったのにエイベルがあっさり鍵をくれたので驚きました。
「いいんですか?」
「ああ。ただ来客時は出ていけよ」
「ありがとうございます。お兄様」
乱暴に頭を撫でられる様子にカーチス様が噴き出しました。カーチス様の存在を忘れてました。
「カーチス様?」
「すみません。想像と違ってて」
笑っている理由は私の深窓の令嬢という似合わない通り名の所為ですね。
「慣れてるので気にしないでください。エイベル、私はお部屋を整えますのでカーチス様をご案内してください。」
私はエイベル達を見送り、マナを呼んで部屋を整えることにしました。エイベルの部屋で過ごしてもお客様をもてなす支度は必要です。学園で自分の部屋を持つのは初めてです。生前は生徒会は辞退してました。いつもクロード殿下やリオの部屋で過ごしてましたわ。二人の設備の整った広い部屋に慣れていたので与えられた簡素な部屋に驚きました。今の部屋の2倍以上の広さに仮眠室にキッチンにほぼ生活に必要なものが全て揃っている部屋でしたわ。エイベルの部屋を使うので、ほとんど使わないでしょうし簡素でも問題ありません。
ビアード公爵邸から取り寄せてもらうものを手紙に書き送りました。
寮に帰ると、パドマ公爵令嬢に会いました。生前は嫌われていましたが今世は違います。
今世はパドマ様とはうまくお付き合いをしているのです。パドマ公爵家は敵対派閥の筆頭です。ルーンの政敵ですがビアードは関係ありません。派閥は違いますが、クロード殿下の婚約者候補ではない私は目の敵にされてません。パドマ様とエイベルがダンスをできるように取り持ってからは向けられる目がかわりました。容姿端麗で扱いやすい兄って便利ですわ。
「レティシア、入学おめでとう」
「ありがとうございます。これからもご指導よろしくお願いします」
「ええ。アリッサとまた喧嘩したんですって?」
「すみません。相性が悪いみたいです」
「あまりに酷いなら相談しなさい。生徒会には入るの?」
「断れる雰囲気ではありませんでした」
「可哀想に・・。またお茶しましょう。」
「はい。お兄様と一緒に喜んでお伺いさせていただきます」
エイベルにはお茶会の作法を覚えてもらいました、エイベルと一緒にお茶会に参加すると令嬢達の視線が好意的になります。エイベルが私を大事にしているのは有名なので、エイベルのファンの方々は私に無礼を働きません。私は女心のわからないエイベルと令嬢達の時間を作ることで、機嫌を取っております。目的は違いましたが派閥に関係ない大きなお茶会ばかり参加したおかげで、生前とは違った交友関係ができましたわ。
パドマ様の機嫌を取っておけば取り巻きの令嬢に絡まれることはありません。
パドマ様は私がカトリーヌ・レート様に気に入られていることを同情的に見てくれています。ルーン公爵令嬢が存在しないため、学園内の派閥の筆頭令嬢はカトリーヌ様です。カトリーヌ様なら華麗にやっかみも受け流すでしょう。私とパドマ様との関係は穏やかに微笑まれるだけです。カトリーヌ様とは同派閥なのでお茶会で知り合ってからは親しくさせていただいております。パドマ様よりもカトリーヌ様に嫌われたらまずいのでうまくやろうと思います。
ルメラ様の件は失敗しましたが過去の人生で一番平穏な生活を送れましたわ。
ビアード公爵家はお勉強も簡単ですし、制約もあまりありません。領民と駆けまわって洋服を汚しても木の上でお昼寝しても怒られません。
ですが、とうとう12歳になってしまいました。
公爵家なので1組以外認めないとエイベルに言われたので試験は手を抜きませんでした。
学園のクラス編成は家格に関係なく成績順です。優秀な生徒は1組に集まります。上位貴族は厳しい教育を受けているのでほとんどが1組です。
ステイ学園に3度目の入学をしました。
12歳から6年間全寮制のステイ学園に通います。
平等の精神を掲げるは学びの場です。
貴族と魔力を持つ生徒は特別な事情がなければ入学を義務づけられます。入学試験が受かれば魔力のない平民でも通えます。
この学園を卒業するのがフラン王国で一人前の貴族として認められる最低条件です。
王家は貴族に最低限の教養を求めます。ステイ学園を卒業できなかった貴族はフラン王国の貴族として名乗れません。ですが国外に留学して、教養を高めることも認められています。
その際は成人までにフラン王国の卒業試験を受け認定証をもらえば王国貴族として認められます。
入学試験に落ちれば翌年の試験に挑戦することもできますが、その時点で貴族として醜聞持ち扱いです。
また魔力持ちで学園に入学を希望しない場合や入学試験に合格できなかった平民のために魔法の扱いを教える特別講習が義務付けられています。この講習はどんな理由があっても拒否はできません。
学園は平等精神を掲げていますが、貴族にとっては名ばかりです。
やはり家格の高い相手への無礼は許されないのはここでも同じです。私達貴族にとっては社交の学び場でもあります。
私は目立たないために集合時間より早めにステイ学園に入り、入学手続きをおえました。さすがに朝一番に来る生徒はいないので、教師以外は誰にも会いませんでした。
マナには荷物を預け寮の部屋を整えてもらっているので別行動しています。
オリエンテーションまで時間があるので、人気のない木の上で過ごして待とうと思います。
2度の人生で6年間も通ったので最低限の学園の地図は頭に入っています。
学園は広大なので必要ない場所は覚えていませんが・・。
そよ風が気持ちが良いです。学園で訓練の授業以外で木登りできる日が来るとは思いませんでした。最初の人生の時はリオやエイベルの木の上でお昼寝する姿に憧れがありました。口に出すと、はしたないと怒られるので口に出すことはありませんでしたが。王太子の婚約者が木登りすれば恐ろしいことになりますので。アリア様とお母様達からのお説教を思い出したら寒気がしました。
髪を揺らす風が懐かしい思い出を思い起こさせ寒気が止まりました。
学園には思い出が詰まってます。大好きなリオ兄様の笑顔を思い浮かびます。胸に手をあて大事な思い出に浸ります。
肩を叩かれ、横を向いたらフィルがいました。
「そろそろ行かないと遅れるよ」
「よくわかりましたね」
「レティシア好みの木だから。ステラも心配してるよ」
迎えに来てくれたフィルにお礼を言って木から降りて講堂に向かいました。
確かにほぼ生徒は揃っています。講堂の入り口で待っているステラと合流して空いている席に座りました。
オリエンテーションが始まりました。
学園長やクロード殿下の挨拶が終わりました。
新入生代表の挨拶はカーチス侯爵家のクラム様でした。毎年入学試験の主席が務めますが、面倒事が嫌いな主席のシオン伯爵家のセリアは断ったのでしょう。
私は入学する前に平穏な学園生活を目指すための計画をしっかりと立てました。
今世は生前とは違う交友関係を築きます。
まず面倒な取り巻きは作りません。
次に生前のお友達で令嬢に人気のクラム・カーチス様とニコル・スワン様と親しくはなりません。今世は令嬢に人気の殿方に近づきません。
クラスメイトにステラとフィルがいるので寂しくありません。生前の親友のセリア・シオン伯爵令嬢はクラスメイトではありませんでした。入学試験と同時に昇級試験を受けて最上級生として6年1組に編入したそうです。天才のセリアにとって学園の勉強はつまらないのかもしれません。セリアと友達になれないのは寂しいですが仕方ありません。
クラスメイトの顔触れは多少の入れ違いがありますが生前とほぼ変わりません。
今世こそは目立たずに平穏な学園生活が送れるように頑張りましょう。
ぼんやりしていたらオリエンテーションが終わりました。顔馴染みの先輩に声を掛けられたので挨拶を交わしながら、フィル達と一緒に教室を目指しました。
リオに声を掛けられ、焦りましたが挨拶だけかわして立ち去りました。令嬢に大人気なリオとは絶対に関わりたくありません。
リオに会っても動揺しなかったことにほっとしました。
無事に教室に辿り着き一番前の窓側の席を選びました。ステラが隣でフィルが後に座りました。
いつも変わらない先生からの入学祝いの言葉と説明を聞きながら平穏な生活が送れるように心の中で祈りました。
お昼休みに教室で食事をしていると歓声が聞こえました。学園では令嬢は人気のある殿方を見ると歓声をあげます。淑女としてどうかと思いますが誰も咎めないので気にすることはやめました。
恐る恐る歓声のほうに視線を向けるとエイベルでしたのでほっとしました。クロード殿下達ではなく良かったですわ。生前はクロード殿下やリオが入学した日に会いに来ましたもの・・・。
「レティシア、生徒会役員に名前があがっている」
食事をする手を止めてエイベルの顔を見ると冗談ではないようです。
生徒会役員なんて目立つことはしたくありません。生徒の模範で優秀な生徒が集まる生徒会は人目を惹きます。今世も役員は生徒に慕われ人気者ばかりでしょう。
「許されるならお断りを。エイベルの苦手な書類仕事はこっそりお手伝いします」
「そのうち呼び出しがある」
直接お断りしないと駄目なんですね・・。関わりたくないのに。ため息を我慢して笑みを浮かべます。私達の話に聞き耳を立てている生徒もいるので明らかに拒否の姿勢を示さば面倒なことが起きます。私の平穏生活への祈りは届かなかったようです・・。
「その時はお兄様が迎えにきてください」
生前のようにクロード殿下が迎えに来たら目立ちます。エイベルなら兄なので目立っても嫉妬の視線に焼かれることはないでしょう。クロード殿下の婚約者候補を目指す令嬢達はピリピリしているので、絶対に巻き込まれないように気を配らないといけません。
私はビアード公爵家で婿を取ると公言しているので今は巻き込まれていません。
「無理はするなよ。ステラ、悪いが頼むよ」
「はい」
私の病弱設定は続いております。ステラはビアード公爵家によく遊びに来ていたのでエイベルとも仲良しです。エイベルは苦笑して立ち去っていきました。令嬢達がエイベルに頬を染めるのは気にしません。ステラがエイベルのファンに手を出されないようにだけ気をつけます。
「いい御身分ね」
アリッサ・マートン侯爵令嬢に笑顔で嫌味を言われます。マートン侯爵家は敵対派閥で、生前から物凄く嫌われていました。社交界で会っても蔑む視線を向ける無礼な令嬢です。確かにマートン様よりも家格は高いので、いい身分なのは事実です。ただ意図はわかりませんが穏やかな笑みを浮かべます。
「マートン様もよければご一緒にいかかがですか?」
「私はステラのように取り込まれないわ」
私も貴方とお友達はお断りです。食事に誘ったのは社交辞令です。
取り込むという品のない言葉に呆れますが顔に出したりしません。
「ステラは大事なお友達ですわ。」
「貴方は友達を見る目を養った方がいいわ」
「ご忠告ありがとうございます。」
価値観はそれぞれですから。同じ派閥の令嬢を傍におかない批難など気にしません。
お友達という名の取り巻きは私には必要ありません。
私は礼をしてステラと一緒に食事を再開しました。睨まれていますが声を掛けられなければ気にしません。必要以上に相手にしないほうがいいのです。私の汚点は病弱と水属性だけです。生前ほど、しつこく絡まれないのでありがたいですわ。
「レティシア、選択授業は決めた?」
フィルが食事をおえて食堂から戻ってきました。物欲しそうに見るので、おやつのクッキーを渡すと陽気に笑って口に含みました。
「武術の授業を迷ってます。エイベルに勝てるようになりたいけど、良い成績を取れる自信が」
「そこまで気にされないだろう。俺が訓練付き合ってやるよ」
迷うと自然に背中を押してくれる優しい友人です。
せっかくなので甘えましょう。フィルなら快く付き合ってくれるのを知ってます。狩りも笑顔で付き合ってくれますから。
「よろしくお願いします」
「レティシア様、私も同じ授業を取ってもいいですか?」
愛らしいステラの言葉に首を傾げます。
「ステラには必要ないと思いますが・・。グレイ伯爵夫妻に相談したほうが良いですわ」
「説得しますわ。」
ステラに甘い伯爵夫妻が説得される姿が脳裏に浮かびました。
「ステラの綺麗な体に傷がついたらどうしましょう」
「公爵令嬢のレティシアに言われても説得力はないよ」
フィルの言葉にため息がこぼれました。
「最近、フィルがお兄様に似てきましたわ」
「エイベル様にも頼まれてる」
「どうしてこんなに信用がないんでしょうか」
「いつもお前が振り回しているからだよ。」
「なんのことかわかりませんわ・・・」
楽しそうに笑うフィルとステラに癒されながら生徒会のことは忘れることにしました。
現実逃避も虚しく、放課後に生徒会長のクロード殿下から呼び出しがありました。呼び出されたのは私とクラム・カーチス様でした。エイベルに案内され歩いていると閃きました。もしかしてこれはチャンスかもしれません。生徒会室に入りました。
生徒会室は一番豪華な部屋です。
個々の役員用の執務机に来客室に大きい本棚に使用人の控えの間もあります。
中にはクロード殿下を初め、上位貴族の先輩方がいらっしゃいました。見目麗しい先輩方、特に殿方は近づきたくありませんわ。
生徒会長の席に座る第一王子クロード殿下の周りに先輩方が控えています。
「礼はいらない。二人には生徒会に入って欲しいんだけど」
自己紹介もせず本題ですか?
穏やかな顔のクロード殿下の言葉になぜか違和感を感じながら向き直ります。
今世でお話するのは初めてです。
カーチス様より家格の高い私から答えるべきですよね。
「ご命令でないなら、辞退させてください」
「ビアード嬢を是非という声があって・・」
あら?
私の知る殿下は去る者を追う方ではありません。無駄を嫌う殿下は嫌がるならあっさり次の候補に声を掛けるはずですが・・・。
あっさり了承されて、殿下の心象も悪くなり良いことだらけの予定でしたのに。まさか・・。
「お兄様のお手伝いでしたら、妹として」
「君を推薦したのは、リオとカトリーヌだ。」
予想外の名前に驚きました。
「殿下、妹は体が弱いので、有事の際に役に立たないと・・」
「二人からはそれでも欲しいと言われている。私は面識がないが二人が押すなら是非迎えいれたい」
エイベル、疑ってごめんなさい。生徒会に入りたくない私の意図を汲んでくれていたんですね・・。
王族のクロード殿下にここまで言われたら断れません。ここで拒否すれば嫌な噂が立つかもしれません。室内にいるのは上位貴族ばかりです。なによりカトリーヌ様の心象を悪くするのは避けたいです。
「かしこまりました。精一杯務めさせていただきます」
「レティシア、大丈夫なのか?」
エイベルが心配そうな顔で見つめてきます。断れる状況ではありませんから・・。カトリーヌ様に嫌われたらお先真っ暗ですわ。
「できればお兄様のお傍にいたいですが、私は殿下の護衛としては役不足です。カトリーヌ様に師事させていただきたいです」
「リオが責任もって面倒みるって言ってるけど」
クロード殿下の言葉に息を飲みました。
今世のリオは私になにか恨みがあるんでしょうか・・。
そんなことされれば、リオのファンに目をつけられて、大変なことがおこります。ますます平穏な生活から遠ざかります。殿下の役に立つように後輩を鍛えたいとかでしょうか・・?その忠誠心は是非カーチス様でお願いしますわ。
生徒会の仕事は生前もお手伝いしていたので、指導者はいりませんとは言えません。リオからの心象が悪くなっても何も問題ありません。むしろ好都合ですわ。
「お気遣い不要です。マール様のお手を煩わせるならエイベルの睡眠時間を削ってでもお願いしますわ」
「リオが女性に嫌われるのは珍しいな。よろしく頼むよ。カーチスはどうする?」
「俺も精一杯務めさせていただきます」
クロード殿下の頼みを断るなんてできませんよね・・。
鍵を差し出されました。生徒会役員は個人で使える特別室を与えられます。
「部屋は自由に使っていい。詳しい話は明日にしようか。部屋の案内は」
「殿下。俺が」
穏やかな顔のクロード殿下に礼をしてエイベルにカーチス様と一緒に部屋を案内してもらいました。鍵を開けて部屋に入ると固まりました。執務用の机と椅子に来客用のソファとテーブルに本棚、手洗い場が見えました。部屋の狭さは構いませんが大事なものがありません。
「エイベル、どうしてキッチンがないんですか!?」
「俺の部屋にあるから、使いたいなら自由に使え。」
「贔屓ですわ。どうして」
「俺が卒業するときに譲ってやるよ。それまで我慢しろ」
「私はエイベルの部屋にお引越しします。鍵をください」
「ほら」
冗談だったのにエイベルがあっさり鍵をくれたので驚きました。
「いいんですか?」
「ああ。ただ来客時は出ていけよ」
「ありがとうございます。お兄様」
乱暴に頭を撫でられる様子にカーチス様が噴き出しました。カーチス様の存在を忘れてました。
「カーチス様?」
「すみません。想像と違ってて」
笑っている理由は私の深窓の令嬢という似合わない通り名の所為ですね。
「慣れてるので気にしないでください。エイベル、私はお部屋を整えますのでカーチス様をご案内してください。」
私はエイベル達を見送り、マナを呼んで部屋を整えることにしました。エイベルの部屋で過ごしてもお客様をもてなす支度は必要です。学園で自分の部屋を持つのは初めてです。生前は生徒会は辞退してました。いつもクロード殿下やリオの部屋で過ごしてましたわ。二人の設備の整った広い部屋に慣れていたので与えられた簡素な部屋に驚きました。今の部屋の2倍以上の広さに仮眠室にキッチンにほぼ生活に必要なものが全て揃っている部屋でしたわ。エイベルの部屋を使うので、ほとんど使わないでしょうし簡素でも問題ありません。
ビアード公爵邸から取り寄せてもらうものを手紙に書き送りました。
寮に帰ると、パドマ公爵令嬢に会いました。生前は嫌われていましたが今世は違います。
今世はパドマ様とはうまくお付き合いをしているのです。パドマ公爵家は敵対派閥の筆頭です。ルーンの政敵ですがビアードは関係ありません。派閥は違いますが、クロード殿下の婚約者候補ではない私は目の敵にされてません。パドマ様とエイベルがダンスをできるように取り持ってからは向けられる目がかわりました。容姿端麗で扱いやすい兄って便利ですわ。
「レティシア、入学おめでとう」
「ありがとうございます。これからもご指導よろしくお願いします」
「ええ。アリッサとまた喧嘩したんですって?」
「すみません。相性が悪いみたいです」
「あまりに酷いなら相談しなさい。生徒会には入るの?」
「断れる雰囲気ではありませんでした」
「可哀想に・・。またお茶しましょう。」
「はい。お兄様と一緒に喜んでお伺いさせていただきます」
エイベルにはお茶会の作法を覚えてもらいました、エイベルと一緒にお茶会に参加すると令嬢達の視線が好意的になります。エイベルが私を大事にしているのは有名なので、エイベルのファンの方々は私に無礼を働きません。私は女心のわからないエイベルと令嬢達の時間を作ることで、機嫌を取っております。目的は違いましたが派閥に関係ない大きなお茶会ばかり参加したおかげで、生前とは違った交友関係ができましたわ。
パドマ様の機嫌を取っておけば取り巻きの令嬢に絡まれることはありません。
パドマ様は私がカトリーヌ・レート様に気に入られていることを同情的に見てくれています。ルーン公爵令嬢が存在しないため、学園内の派閥の筆頭令嬢はカトリーヌ様です。カトリーヌ様なら華麗にやっかみも受け流すでしょう。私とパドマ様との関係は穏やかに微笑まれるだけです。カトリーヌ様とは同派閥なのでお茶会で知り合ってからは親しくさせていただいております。パドマ様よりもカトリーヌ様に嫌われたらまずいのでうまくやろうと思います。
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