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第13話後編 第二騎士団3
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物に執着がないイリアナは荷物を持って帰らないとアマルが心配すると学んだので、荷物は訓練場の木の上に結界で覆って置いておくことにした。
イリアナは休憩中は騎士見習いと剣の手合わせをするのが日課になっていた。
「俺も混ぜて」
聞こえる声にイリアナは剣を止めた。
イリアナは声の主のもう一人の騎士見習いを見つめた。
「どっちですか?」
「イリアナ、俺にも指導してくれ」
「指導?」
「いつも俺が勝ってたのに、一昨日の手合わせで負けたのが悔しい!!」
「わかりました。二人でかかってきてください」
イリアナは騎士の育成に興味はなくても、やる気があるなら断る理由はなかった。
未熟な騎士見習いの指導は簡単なので、2対1での剣の手合わせを続けることにした。
イリアナは新たに加わった騎士見習いの剣戟に首を傾げた。
大柄な体格に反して剣撃が軽すぎた。
「もう少し、力を入れてもらえます?あと、がむしゃらに剣をふるっても無駄です」
助言を聞いてに先程よりも剣に重みがでてきたことにイリアナの口角が上がる。
「そんな感じでいいと思います。体格に恵まれ、筋力もきちんとついています。せっかくの力を剣に上手く乗せられれば、さらに良くなりますよ」
「ラーナ、移動するぞ。午後から詰め所だ」
イリアナが休憩時間に訓練場にいるのは有名なため、ヒューゴが迎えに来るのも見慣れた光景である。
訓練に夢中になると時間を忘れてしまうイリアナのため、最近はヒューゴが早めに迎えにくるようになったことを本人だけは気付かない。
「あれ?ごめんなさい。今日はここまでで。また休憩時間に声をかけてください。二人で手合わせされてもいいと思います」
「訓練に付き合ってくれるのはありがたいんだけど、イリアナはいつ食事してんの?」
「私は魔力があるから食事はいらないんです」
イリアナの言葉に騎士見習いの二人が顔を合わせた。
「ヒューゴ、悪い。まだ時間に余裕あるよな?イリアナに食事させてくる」
「食べなくて問題ないので、必要ありません」
頑なに拒否をするイリアナの頭を騎士見習いが軽く叩いた。
「成長期なんだから尚更食事は取らないとだろ?ヒューゴ、イリアナはたぶんいつも昼飯食ってない」
ヒューゴは呆れた顔でイリアナを見た。
「ラーナ、食事はどうしてんの?」
「魔導士は食事はいりません」
「成長途中の子供が何を言う。先に食事だ。行くぞ」
「嫌です」
「俺はお前の指導騎士だ。言うこと聞け。詰め所番は代わってもらう」
「大丈夫ですから、このまま詰め所に行きましょう」
「イリアナ、行くよ。仕事はできるのに子供なんだな」
「いらないんです。本当に。知り合いの魔導士に聞いてください」
騎士見習い達は強いのに、食事は嫌と頑なに拒否するイリアナに笑いが堪えられなかった。
言っても聞かないなら強制連行したほうが早いと判断したヒューゴはイリアナを抱え上げた。
「ヒューゴ、降ろしてください。荷物みたいに抱えないでください。なんで笑ってるの!?本当にいらないんです」
「子供は大人の言うことをきかないと」
「子供じゃありません。ヒューゴ、降ろして、自分で歩きます。魔導士は魔力をエネルギーに変えられるんです。だから食べなくて平気なんです。降ろしてください」
「食堂に着いたらな。食べるまで仕事に戻れないから」
「おかしいです。食事は職務規定に書かれてません」
珍しく騒いでいるイリアナに視線が集まっていた。
騒いでいるイリアナ達の隣で可笑しそうに笑っている騎士見習いにつられ周りの騎士達が笑っていることにイリアナは気付いていなかった。
この日からイリアナは食堂に連行されるようになった。
「休憩時間は自由時間だから好きにさせていたけど、ラーナの休憩時間は食事を終えてからだ。時間の調整はするから安心しろ」
「そんな優遇いらないから、放っておいてください。食事はいらない、行くから、抱えないでください!!」
イリアナはヒューゴ達の目の前で食事をしないと無理やり食堂に連行されると気づいてからは、諦めて自ら食堂に行くようになった。
****
イリアナは書類を届けるために第一騎士団に向かっていた。
最近は第二騎士団から不躾な視線をイリアナに向けられることはなくなったが第一騎士団は違った。
侯爵令嬢として生まれ、第二王子の婚約者だったイリアナは形は違えど、悪口や嫌味、妬みには慣れていたため、何を言われようが聞き流すことにしていた。
石や瓶がイリアナに向かって飛んでこようと避けられるため、何も問題はなかった。
イリアナの無関心が相手をさらに刺激し、どんどん事態が悪化していることに気付いていなかった。
「ラーナ、」
「ヒューゴ、危ない」
走って追いかけてきたヒューゴの肩にイリアナに投げられた瓶が当たった。
瓶が割れて、液体がヒューゴの肩を濡らした。
「熱っ!!」
イリアナは悲鳴をあげたヒューゴに駆け寄って、肩に刺さった破片を取り除き、手を当て治癒魔法をかける。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。悪い。は?ラーナ、どういうこと?」
イリアナの謝罪を聞いたヒューゴは嫌な予感に襲われた。
真顔で詰め寄るヒューゴにイリアナは笑みを作った。
「この国は色んなものが降ってくるみたいです。避けられるので心配ありません」
「そんなわけないだろうが!!そうじゃなくて、よくあるのか?」
ヒューゴに真剣な顔で睨まれているイリアナは厄介な人物に見つかったとため息をつきたいのを我慢した。
「気にしないでください」
「何で言わなかった?」
「バカの相手はしたくないんです。放っておけばいいんです。相手にする時間が勿体ないです。書類を届けて戻りましょう」
「ラーナ、最近毎朝訓練場に寄ってから来てるよな。なんで?」
珍しく鋭いヒューゴにイリアナは笑顔を作ってごまかすことにした。
「散歩ですよ」
「正直に話さないなら、俺は今すぐ隊長のもとに行く」
イリアナは幼稚な嫌がらせを受けている自覚はあったが、報告されるのは迷惑だった。
関わる人が多くなればなるほど余計に事態が悪化し、上司に泣きついたと思われるのは屈辱だった。
「女子更衣室のロッカー使うと荷物が水浸しになるんです。貴重品もありませんし木の上に置いてあります」
「許可を取って、ロッカーも用意するから第二騎士団の更衣室を使え。男の着替えなんて気にしないだろ?わかったな?」
「わかりました。巻き込んでしまってすみません。制服も」
「ラーナが謝ることじゃない。制服は予備があるから平気だ。手は大丈夫か?」
イリアナが手を見ると左手が切れて血が流れていた。
ヒューゴに刺さった破片を取り除く時に切ったが傷は浅かった。
「すぐ治ります」
「魔法は使わないのか?」
「魔法は万能ではありません。治癒魔法は自分には使えないんです」
「医務室行くぞ。手当てする」
「放っておけば治るから大丈夫です。この程度の傷は手当するまでもないです」
「手当するんだよ」
「書類を届けないと」
「緊急じゃないから、後でいい」
「ヒューゴ、いささか大げさでありませんか?」
「お前が無頓着すぎるんだ!!命令だ。行くぞ」
イリアナはヒューゴに手を取られてしぶしぶ歩き出した。
逆らってまた担ぎあげられて運ばれるのは嫌だった。
イリアナはすでにヒューゴに三回程、荷物のように肩に担がれ食堂に連行されていた。
イリアナは睨む視線に気づいたが、向けられる視線よりもヒューゴの後についていく事が優先である。
医務室に行き、消毒され左手を包帯で巻かたイリアナは視線を集めている事にため息をついた。
「傷が塞がってないんだから包帯は取るなよ」
「こんな些細な傷で騒ぐなんて、この国の騎士は大丈夫なんでしょうか?」
「まずは自分の心配をしようか。しばらく傷の確認するからな」
「大げさですよ」
「命令だ」
イリアナが包帯を取ろうとするたびにヒューゴに怒られ、周囲の騎士にも止められた。
ヒューゴに怒られているイリアナを騎士達は生暖かい目で見ていた。
イリアナは第二騎士団では腕が強く仕事ができるが、危なっかしい子供という認識になった。
イリアナは自分が第二騎士団に馴染んでいることも、第一騎士団のイリアナへの嫌がらせに第二騎士団全体で腹を立てていることも知らなかった。
また包帯を巻かれた左手を見てため息をつくイリアナを見て、騎士達の庇護欲がそそられ、第二騎士団の結束が強まったことは誰も気づいていなかった。
イリアナは休憩中は騎士見習いと剣の手合わせをするのが日課になっていた。
「俺も混ぜて」
聞こえる声にイリアナは剣を止めた。
イリアナは声の主のもう一人の騎士見習いを見つめた。
「どっちですか?」
「イリアナ、俺にも指導してくれ」
「指導?」
「いつも俺が勝ってたのに、一昨日の手合わせで負けたのが悔しい!!」
「わかりました。二人でかかってきてください」
イリアナは騎士の育成に興味はなくても、やる気があるなら断る理由はなかった。
未熟な騎士見習いの指導は簡単なので、2対1での剣の手合わせを続けることにした。
イリアナは新たに加わった騎士見習いの剣戟に首を傾げた。
大柄な体格に反して剣撃が軽すぎた。
「もう少し、力を入れてもらえます?あと、がむしゃらに剣をふるっても無駄です」
助言を聞いてに先程よりも剣に重みがでてきたことにイリアナの口角が上がる。
「そんな感じでいいと思います。体格に恵まれ、筋力もきちんとついています。せっかくの力を剣に上手く乗せられれば、さらに良くなりますよ」
「ラーナ、移動するぞ。午後から詰め所だ」
イリアナが休憩時間に訓練場にいるのは有名なため、ヒューゴが迎えに来るのも見慣れた光景である。
訓練に夢中になると時間を忘れてしまうイリアナのため、最近はヒューゴが早めに迎えにくるようになったことを本人だけは気付かない。
「あれ?ごめんなさい。今日はここまでで。また休憩時間に声をかけてください。二人で手合わせされてもいいと思います」
「訓練に付き合ってくれるのはありがたいんだけど、イリアナはいつ食事してんの?」
「私は魔力があるから食事はいらないんです」
イリアナの言葉に騎士見習いの二人が顔を合わせた。
「ヒューゴ、悪い。まだ時間に余裕あるよな?イリアナに食事させてくる」
「食べなくて問題ないので、必要ありません」
頑なに拒否をするイリアナの頭を騎士見習いが軽く叩いた。
「成長期なんだから尚更食事は取らないとだろ?ヒューゴ、イリアナはたぶんいつも昼飯食ってない」
ヒューゴは呆れた顔でイリアナを見た。
「ラーナ、食事はどうしてんの?」
「魔導士は食事はいりません」
「成長途中の子供が何を言う。先に食事だ。行くぞ」
「嫌です」
「俺はお前の指導騎士だ。言うこと聞け。詰め所番は代わってもらう」
「大丈夫ですから、このまま詰め所に行きましょう」
「イリアナ、行くよ。仕事はできるのに子供なんだな」
「いらないんです。本当に。知り合いの魔導士に聞いてください」
騎士見習い達は強いのに、食事は嫌と頑なに拒否するイリアナに笑いが堪えられなかった。
言っても聞かないなら強制連行したほうが早いと判断したヒューゴはイリアナを抱え上げた。
「ヒューゴ、降ろしてください。荷物みたいに抱えないでください。なんで笑ってるの!?本当にいらないんです」
「子供は大人の言うことをきかないと」
「子供じゃありません。ヒューゴ、降ろして、自分で歩きます。魔導士は魔力をエネルギーに変えられるんです。だから食べなくて平気なんです。降ろしてください」
「食堂に着いたらな。食べるまで仕事に戻れないから」
「おかしいです。食事は職務規定に書かれてません」
珍しく騒いでいるイリアナに視線が集まっていた。
騒いでいるイリアナ達の隣で可笑しそうに笑っている騎士見習いにつられ周りの騎士達が笑っていることにイリアナは気付いていなかった。
この日からイリアナは食堂に連行されるようになった。
「休憩時間は自由時間だから好きにさせていたけど、ラーナの休憩時間は食事を終えてからだ。時間の調整はするから安心しろ」
「そんな優遇いらないから、放っておいてください。食事はいらない、行くから、抱えないでください!!」
イリアナはヒューゴ達の目の前で食事をしないと無理やり食堂に連行されると気づいてからは、諦めて自ら食堂に行くようになった。
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イリアナは書類を届けるために第一騎士団に向かっていた。
最近は第二騎士団から不躾な視線をイリアナに向けられることはなくなったが第一騎士団は違った。
侯爵令嬢として生まれ、第二王子の婚約者だったイリアナは形は違えど、悪口や嫌味、妬みには慣れていたため、何を言われようが聞き流すことにしていた。
石や瓶がイリアナに向かって飛んでこようと避けられるため、何も問題はなかった。
イリアナの無関心が相手をさらに刺激し、どんどん事態が悪化していることに気付いていなかった。
「ラーナ、」
「ヒューゴ、危ない」
走って追いかけてきたヒューゴの肩にイリアナに投げられた瓶が当たった。
瓶が割れて、液体がヒューゴの肩を濡らした。
「熱っ!!」
イリアナは悲鳴をあげたヒューゴに駆け寄って、肩に刺さった破片を取り除き、手を当て治癒魔法をかける。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。悪い。は?ラーナ、どういうこと?」
イリアナの謝罪を聞いたヒューゴは嫌な予感に襲われた。
真顔で詰め寄るヒューゴにイリアナは笑みを作った。
「この国は色んなものが降ってくるみたいです。避けられるので心配ありません」
「そんなわけないだろうが!!そうじゃなくて、よくあるのか?」
ヒューゴに真剣な顔で睨まれているイリアナは厄介な人物に見つかったとため息をつきたいのを我慢した。
「気にしないでください」
「何で言わなかった?」
「バカの相手はしたくないんです。放っておけばいいんです。相手にする時間が勿体ないです。書類を届けて戻りましょう」
「ラーナ、最近毎朝訓練場に寄ってから来てるよな。なんで?」
珍しく鋭いヒューゴにイリアナは笑顔を作ってごまかすことにした。
「散歩ですよ」
「正直に話さないなら、俺は今すぐ隊長のもとに行く」
イリアナは幼稚な嫌がらせを受けている自覚はあったが、報告されるのは迷惑だった。
関わる人が多くなればなるほど余計に事態が悪化し、上司に泣きついたと思われるのは屈辱だった。
「女子更衣室のロッカー使うと荷物が水浸しになるんです。貴重品もありませんし木の上に置いてあります」
「許可を取って、ロッカーも用意するから第二騎士団の更衣室を使え。男の着替えなんて気にしないだろ?わかったな?」
「わかりました。巻き込んでしまってすみません。制服も」
「ラーナが謝ることじゃない。制服は予備があるから平気だ。手は大丈夫か?」
イリアナが手を見ると左手が切れて血が流れていた。
ヒューゴに刺さった破片を取り除く時に切ったが傷は浅かった。
「すぐ治ります」
「魔法は使わないのか?」
「魔法は万能ではありません。治癒魔法は自分には使えないんです」
「医務室行くぞ。手当てする」
「放っておけば治るから大丈夫です。この程度の傷は手当するまでもないです」
「手当するんだよ」
「書類を届けないと」
「緊急じゃないから、後でいい」
「ヒューゴ、いささか大げさでありませんか?」
「お前が無頓着すぎるんだ!!命令だ。行くぞ」
イリアナはヒューゴに手を取られてしぶしぶ歩き出した。
逆らってまた担ぎあげられて運ばれるのは嫌だった。
イリアナはすでにヒューゴに三回程、荷物のように肩に担がれ食堂に連行されていた。
イリアナは睨む視線に気づいたが、向けられる視線よりもヒューゴの後についていく事が優先である。
医務室に行き、消毒され左手を包帯で巻かたイリアナは視線を集めている事にため息をついた。
「傷が塞がってないんだから包帯は取るなよ」
「こんな些細な傷で騒ぐなんて、この国の騎士は大丈夫なんでしょうか?」
「まずは自分の心配をしようか。しばらく傷の確認するからな」
「大げさですよ」
「命令だ」
イリアナが包帯を取ろうとするたびにヒューゴに怒られ、周囲の騎士にも止められた。
ヒューゴに怒られているイリアナを騎士達は生暖かい目で見ていた。
イリアナは第二騎士団では腕が強く仕事ができるが、危なっかしい子供という認識になった。
イリアナは自分が第二騎士団に馴染んでいることも、第一騎士団のイリアナへの嫌がらせに第二騎士団全体で腹を立てていることも知らなかった。
また包帯を巻かれた左手を見てため息をつくイリアナを見て、騎士達の庇護欲がそそられ、第二騎士団の結束が強まったことは誰も気づいていなかった。
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