婚約破棄の裏事情

夕鈴

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番外編 もしもの話

第一王子のやり直し7

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「お姉様、いかがですか?」
「ありがたいご縁ね。そして殿下は」
「お姉様のお考え通りだと思います」


カローナはイナナが手に入れた極秘の情報に笑みを浮かべた。
第一王子は18歳、カローナが14歳の時に婚姻した。
二人の婚儀は王都で行い、民達にも盛大に祝福されるように手を回した。
第一王子の考えはカローナは大体わかる。
そして第一王子はカローナの前では口下手でも、王族としての演説は得意である。第二王子ほど饒舌ではないが、きちんと人の心に響く。
カローナの予想通り民達の前での第一王子の王族として最後の挨拶はうけ、荒れた伯爵領を必ず平定させると決意を述べる年若い未来の伯爵と寄り添う伯爵夫人に盛大な拍手が送られた。
荒れた領地を治めるために自ら臣下に下りた第一王子に手を出せば、民達の心象は悪くなるように保険をかけ盛大なものを準備していた。
カローナは第一王子の外見と性格を利用して民に人気が出るようにしっかりと動いていた。
そして他国の新聞にも王子の決意を乗せる手配はしていた。カローナは王都を離れても第二王子達への警戒は一切緩める気はなかった。
ただイナナからの吉報が現実のものとなれば、警戒を緩めても大丈夫な気がした。

第一王子は王宮で築いた人脈を使い、荒れた伯爵領に様々な施策を施し一月で平定した。
伯爵領は急激に豊かになり、徐々に移住者も増えた。それでも第一王子は王都よりも治安が悪く危険な場所のため常にカローナを隣から離さず、いつも手を繫いで歩いていた。しだいに仲睦まじい美しい伯爵夫妻は領民達に認められ、憧れる存在になった。
見事に伯爵領を治めている王子を国王にと押す話があっても、伯爵夫妻は決して頷かず丁重にお断りする。
王宮では視野の狭い第一王子も伯爵領を治めるには十分な視野の持ち主だった。そのためカローナの役目は仕事に集中する夫にお茶を出して休憩させることと隣にいることとなった。

****


「おめでとうございます」


カローナは予想通りの結果に笑みを浮かべて頷いた。
カローナが診察を受けていると聞いて真っ青な顔で駆け込んできた第一王子にさらに笑みを深くした。
第一王子の語った未来とは確実に違う時が流れている。

「ロナ!!王宮に」
「おめでたいことよ。お父様」

幸せそうにお腹を撫でるカローナの言葉は伝わらなかった。
察したトネリが真っ青な顔の第一王子にささやき、真っ青な顔が一瞬泣きそうな顔に歪んだ。
小柄なカローナの体に命が宿った。第一王子にとって身に覚えのあることでも色んな感情に押し潰されそうで素直に喜びを表現できなかった。


「義兄様は突っ立っているよりもやることがあるでしょう?お姉様によく似た御子が生まれるように祈願すべきですよ。お姉様、お体を大事にされてください。執務は私がしますよ。王族の声を神は特に聞いてくださるという話もありますから。初めて義兄様の血が役に立ちますね。まずは、」


意気揚々と姉の隣で診察に付き添っていたイナナが場を仕切り始めた。カローナはイナナに命じられるまま動き、いつの間にか真面目な顔で身重の妻への注意点をトネリに書き写させている最愛の夫の姿を一瞬だけ切ない顔で見つめたのが嘘のように幸せそうに微笑んだ。



「そんなことおっしゃればお嬢様は豚になってしまいます。適度な運動も必要です」
「ロナは散歩に毎日、」
「貴方様が抱き上げられて視察に行かれるのは運動になりません」


第一王子はカローナを決して一人では出歩かせない。
手を繋いで歩くのは転んでも安全な部屋の中だけである。ポプラは実は怠惰の塊であるカローナをよく知っている。そして甘やかされれば甘やかされるだけ甘えるたちであることも。
過保護になった夫に主が喜んでいると思っている。
そしてポプラの予想通りカローナは周囲に呆れられるほど過保護になった夫に内心では喜んでいた。



カローナは過保護な夫の姿とお腹に授かった小さい命のおかげで少しだけ心に余裕ができた。
夫が他の女を想うのは面白くはない。それでも、もしも同じカローナだったらと考えた。

「もしも、もしも……」

第一王子が冷たく寂しい王宮で手を差し出してくれずに、冷遇された自分と第三王子が幸せになるのを想像した。
カローナは令嬢達に仕返しをして、第一王子の執務室から追い出す姿が思い浮かんで首を横に振る。

「フィンの顔に見慣れてるのに、あの平凡いえ、特徴のないどこにでもいらっしゃる、いえ、お忍びむき?のお顔に見惚れる?え?もしも……」


どんなに考えても第三王子と幸せになれた仮定は思いつかなかったので、境遇と結果だけを真剣に考え直す。
カローナは怠惰が好きである。
そして、永年の恨み抱ける強さも情熱も持っていない。第一王子が隣にいなければ生活さえも破綻する自信があったがポプラがいるから大丈夫かと思い直す。
カローナ自身も辛い時期はあった。でもいつも第一王子が手を繫いでくれたから、いつの間にか努力しないと思い出せないほど記憶の隅に追いやられている。
カローナは自身のお腹に手を当てている第一王子の優しい瞳を見つめた。

「フィン、きっとカローナは恨んでないよ。夢の中のカローナは振り返ったんでしょ?カローナは興味がなければ近づかないし、立ち止まらない。怖くて面倒なものにも絶対に近づかない。それでも、会いに来たんだよ。フィンのもう一人のカローナは貴方をずっと憎むような非合理的な子だったの?」

第一王子はブツブツ一人言を呟きながら何か考え込んでいた妻の言葉に昔の記憶を思い出した。いつも笑顔で拒絶の言葉を聞いたのは一度だけ。
かつての自分はカローナの本当の姿を見ていなかったから、確証はない。
それでも、人を憎むような令嬢には思えなかった。
カローナは理不尽とわかっていても我慢できず第一王子を拗ねた顔で見つめる。

「妻としては不本意だけど、同じ女性としては綺麗な形で記憶に残りたい。自分を思い出し、落ち込まれるより、気分が明るくなるほうがいい。フィンが罪悪感に囚われるなら何度も言うよ。カローナは第一王子殿下の幸せを願ってる。自分が幸せなのに元婚約者が不幸になったら、気分が悪いもの。女の子はハッピーエンドが好きだから人の不幸を願わない。カローナのためにも、幸せになろうよ。それにフィンの不器用な優しさはきっと気付くよ。私と同じカローナなら。妻の言葉が信じられないの?」

第一王子は不機嫌なカローナを優しく抱きしめた。

「ずっとカローナを好いていた。私は、大切にしてるつもりが、できていなかった」
「フィンは大切にしてたんでしょ?貴方の誠意は伝わる。それにフィンは自分ばかり責めるけどお互い様よ。フィンの心を傷つけ続けるのが、カローナなら私にとっては立派な犯罪、いえ加害者よ。お婆様がおっしゃったでしょう?どちらか一方だけが悪いのは無差別な殺人と野盗だけよ。カローナとフィンがすれ違ったのはお互い様。本当に仕方ない人……。でも私はフィンの不器用な優しさに気づかなかったカローナに同情するよ。フィンのような素敵な王子様を捨てたんだもの。フィンは私だけの王子様。王子様を独り占めできるなんて、」

カローナは第一王子に口づける。
夢の世界のカローナは愚かだと思っていた。
第一王子がいかに魅力的か気づかなかった。
領民の前で自信に満ちた顔で堂々と振る舞う姿は格好良い。
弱気になって眉を下げる顔は可愛い。
不器用に愛を伝える仕草は言葉にできないほど愛らしい。
夜にしか見せない熱を帯びた甘い瞳は思考を止めさせる魔性の力を持つ。
不器用なのは言葉だけで、仕草や表情はわかりやすい。
カローナの夫は本当の姿を見せれば全ての人を魅了する魔性の持ち主である。
カローナは独占欲が強いから、できれば誰にも見せたくない。
そしてカローナは不器用ではないから夫の分も言葉にする。

「フィン、愛してるよ。ロナはどんなフィンも。酷いことをするなら止めてって言うから安心して。逃げるなら追いかけるよ。ロナが幸せにしてあげるから」
「ロナ」

カローナは第一王子にロナと呼ばれるのが好き。遠い昔に諦めて妖精に教えた名前を愛しい人に呼ばれている。カローナの諦めたものを拾わせてくれたのは手を繫いで隣にいた第一王子である。
カローナの夢は第一王子を幸せにすること。カローナは第一王子が隣にいるなら幸せだから。
カローナはハッピーエンドが大好きだから自分の物語もハッピーエンドにしたい。
不器用な王子様が幸せになるためだけに思考を巡らせる。
伯爵領は夫と優秀な臣下がいるので丸投げである。執務は誰でもできるが、不器用な王子様を幸せにする役目は誰にも譲りたくなかった。

***




第三王子はカローナと友人になった。
膝を抱えていた少女はいつの間にか兄を尻に敷いていた。周囲は気づいてなくても第三王子だけはたくましく成長したカローナに気づいて笑う。

「カローナ、幸せ?」
「どうでしょうか。物語はまだまだ途中です。きっとハッピーエンドにしてみせます」
「人は変わるものだね」
「平凡と謳われていた殿下にそのままお返ししますわ。フィンったらお忙しい殿下が会いにいらしてるのに遅い……。弟に甘えすぎですよ」
「今日は時間があるから気にしないで。せっかくだから後で兄上に手合わせしてもらおうかな」
「あまり甘やかしてはいけませんよ。呼んできます」

第三王子は伯爵邸によく訪問していた。
カローナは第一王子と第三王子が親しそうに過ごす姿を微笑ましく思っていた。
第一王子は頻繁に訪問する弟とカローナの関係を不安に思っているのはすぐにカローナに見抜かれる。
カローナは部屋に入らず佇んでいる第一王子の手を繋ぐ。

「ロナ、」

不安な顔で言い淀む第一王子が可愛く、そして鈍い夫にカローナは笑う。

「私の王子様はフィンだけだもの。第三王子殿下は義弟でお友達。私ではなくフィンに会いにきてるのよ」

カローナは第一王子の手を引いて第三王子の前に座らせ、お茶を用意するために離れる。夫にお茶を用意するのはカローナの役目なので、緊急時以外は誰にも譲るつもりはない。

「兄上、幸せにしてあげてください。いじめたら覚悟してください」
「すまぬが渡せない」
「カローナが幸せなら手を出すつもりはありません」

第三王子はカローナが幸せなら手を出さない。でも、もしまた苦しめるならいつでも奪い、潰す準備を整えるのは簡単だった。昔の無力な子供ではなく力を持つ大人になった。王族としての力はなくても動かせる力を手に入れた。
第三王子は手に入れた力を使い自由気ままに生きるだけだった。
カローナと共にいる長兄は幸せそうだが、次兄はいつも退屈そうだった。
第二王子は呆気なく終わった王位争いがつまらなかった。そして遊び道具の減った王宮は苦痛だった。
帰国した第三王子と王位争いを楽しもうとする考えは読まれていた。第三王子は継承権も王族位も放棄し第三妃を連れて王宮から去る。
第三妃は生家の伯爵家に帰り、第三王子は市井に降りた。
何も縛られずに自由に生きたかった。また父親の相手をするのが面倒になっていた。本当の理由はある情報を掴んでいたからである。
第三王子が王宮から姿を消して半年後に第二王子は隣国から皇女を正妃に迎えた。
皇女は淑やかな外見に似合わず制裁は物理を好み曲がったことが大嫌い。
第二王子にとっては相性の悪い存在だった。第二王子の遊びをすぐに見つけ、台無しにして夫に制裁をする。後宮は限られた者しか足を運べない。そのため、妃に新国王が制裁を受けていることを知る者はほとんどいなかった。知れば正妃の忠実な手駒になる未来が用意されているので知らない方が幸せである。
第二王子にとって初めての恐怖を抱く相手だった。妃に怯えながら、遊びを許されず玉座に座り、退屈な生涯を過ごし、その姿は父親にそっくりだった。
皇女は第二妃とは物理ではなく心理戦で戦っていた。隣国は全てが進んでいたため第二妃よりも義娘のほうが優秀で強かで上手だった。正妃の参謀であり情報源は今まで第二妃の目論見を邪魔し続けたマグナ公爵夫人とイナナである。無意識に策を壊したカローナがいなくても第二妃が相手にするのは難しかった。
国王は恐ろしい義娘を迎えた現実に胃を痛めながらも、話を聞いてくれる第三妃も、王子の中で一番気に入っていた無害な第三王子もいなかった。
淑やかになった第一妃も不気味で怖かった。
両親のように隠居し辺境に逃げようとした国王を義娘が許さず逃がさなかった。
皇女はカローナとイナナの従姉である。イナナは幼い頃にカローナが受けた嫌がらせを調べ上げ皇女に伝えていた。
曲がったことが嫌いな皇女は大事な従妹の処遇に腹を立てていた。そして性根を鍛え直し、報復を誓った。愚かな王族は公害である。他国とはいえ皇女はすべての民を慈しむという信念を持っていた。
皇女による後宮の掌握という名目で調教が始まった。
第一王子は民のために動いていたのとイナナが手出しを止めたので見逃された。第三王子と第三妃は市井におりたため、対象外。
そのため残った王族には恐怖の日々が待っていた。
自分の平穏のために子供を犠牲にした国王も、私利私欲のために動いていた王妃達も許せなかった。民を第一に思えない王族は許せなかった。
第二王子は被害者でも兄への嫌がらせに臣下で社交デビュー前のカローナを利用した方法が気に入らなかった。謀も潰し合いが必要なのはわかっても皇女の許容範囲を超えた。社交デビュー前の貴族の一人として認められない子供を巻き込むのは非常識だった。
第二王子は報復対象でなくても愚王にならないため、結局教育が必要だった。
王族にとっては恐怖の、臣下にとっては淑やかな皇女の本当の顔を知る者は一人しかいなかった。
皇女は側室を快く受け入れた。自身の代りに夫の相手をするなら大歓迎だった。
誰の子供でも王族としてふさわしくなるように正しく教育するつもりだった。
民のために生きる皇女は夫からの幸せを求めていない。幸せは自分で掴むものと良く知っていた。皇女の本当の名前を呼ぶのは一人だけだった。
皇女が絶対に側から離さない侍女がいた。皇女個人はその侍女さえいれば幸せなので夫に何も求めていない。ただ尊い血を持つ皇族として務めを果たすだけだった。

****

殺伐とした後宮と違い伯爵領は穏やかだった
伯爵に就任してしばらく経つ第一王子はカローナに連れられた場所で目を丸くした。

「ロナ?」
「強情なフィンが悪いのよ」

カローナは小さい墓を作りカローナとフィリップの名前だけ刻んだ。

「不本意だけど私の誕生日の半日だけ一人にしてあげる。そこであなたのカローナと過ごしていいよ」

不機嫌な顔で嫌そうに言うカローナを第一王子は抱きしめた。

「どっちも大事だから」
「私だけを選んでなんて言わないよ。貴方の心の傷はいずれ消してみせる。でも軽くする方法があるなら」

第一王子は口づけてカローナの言葉を封じた。

「ロナ、私はカローナを好いていたが心から愛したのはそなただけだ」

第一王子はもしも昔のカローナに会えたら謝りたい。弟と幸せに過ごすなら幸せにと見送れる気がした。ただ今の腕の中にいるカローナは違った。誰よりも幸せになってほしくても手離せないのがわかっていた。傷つけるのが怖い。それ以上に離れていくのが怖かった。
でもカローナは離さない、逃がさないと笑ってくれる。自分がいるなら何もいらないという言葉に歓喜するのに、言葉に出し夢が覚めるのも怖かった。昔はカローナに会えるなら夢でも現実でも構わなかった。でも今はこの夢のような世界が続いてほしいと願っていた。カローナに言えば、現実はこっちと笑われ口づけられ誘惑されるのがわかっていた。第一王子は愛しい妻に抗うすべは持っていなかった。そして妻のことしか考えられなくなるのは経験済みだった。

カローナは頬を染め、うっとり見惚れていた。口下手な夫からの愛の言葉は貴重だった。

「私もフィンを誰よりも愛してる。でもお墓せっかく作ったのに無駄になった」
「私達が使えばいい」
「まだまだ先の話ね。ハッピーエンドのために頑張らないと」

第一王子はすでに幸せだった。昔のカローナへの罪悪感は消えない。それは自分の罪だから当然だった。それでも手を繋ぎ、笑顔のカローナが隣にいるのは心が満たされた。
うまく言葉にできなくても、隣でかわりに言葉にしてくれるカローナに救われていた。第一王子はカローナへの言葉だけはうまく伝えられなかった。
カローナは鈍い第一王子への気持ちは全て言葉にして伝えた。愛の言葉も不満も要望も。
第一王子の欠点の究極の鈍さと女心のわからなさをよく理解していた。それでも、カローナは愛されているのはわかっていた。いくつになっても自分にだけは時々迷子の子供のような顔を見せ、不安を瞳に宿した夫が想う夢のカローナに面白くなくても、可愛らしくも思えていた。
頼もしくならなくていい。ただ正直に隣にいてくれること以外第一王子に望んでいなかった。
カローナにとって冷たい世界から連れ出してくれた王子様。カローナの冷たい手をいつも温めてくれた大きい手にどれだけ支えられ守られていたかを第一王子は気付いていない。
カローナにとっての太陽にうまく伝えられる言葉はまだ見つかっていなかった。
いつか不器用な王子様も抜け出してほしい。でもカローナと第一王子の物語の結末まではまだまだ時間がある。
だからカローナは諦めない。
どうか不器用な愛しい人が幸せでありますようにと。


昔の記憶を持つ不器用な王子様は憶病で怖がりになった。それでも大事な子のずっと隣にいて、守る努力だけはやめなかった。
常にはりつけた笑みしか浮かべない冷たい手のカローナの手を握っていた。傷つけるのを恐れて言葉はかけられなかった。また成長していくカローナに見惚れて意識してさらに悪化した。冷静ではない自分が伝える言葉が怖かった。
カローナのことを真剣に悩み、色んな人に相談していた。その姿を見てから、カローナが第一王子に向ける視線が変わったのに気づいていなかった。
言葉に出さなくても、いつもカローナの歩調に合わせ、危ない場所は抱き上げ、何かあれば駆けつける姿はカローナに伝わっていた。
カローナは偶然なんて信じていない。第一王子が駆けつけたのは必然である。極秘で護衛につけた騎士に保護を命じるのではなく、王子に報告させ駆けつける姿は凛々しく格好良かった。使える駒はたくさんあるのに自身で動く不器用な王子様。だからカローナは荒れた伯爵領も冷たい王宮も、見知らぬ国も怖くない。離れてもすぐに駆けつけて手を繋いでくれるのを信じられるから。

いい女は本人に気づかれずに、男を掌で転がすという母の教えをカローナは忠実に守っているつもりだった。この言葉を聞けばほとんどの者が首を横に振るのをカローナは知らない。
傍から見れば、お互いに振り回し合っているように見えていた。
人は一人では生きられない。夫婦の形もそれぞれである。
頼りになる伯爵と淑やかに寄り添う伯爵夫人の本当の姿を知るのは当人達である。
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