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1日目
しおりを挟むプルルルル……
事務所の電話が鳴り響き、青葉健一は慌ててソファーから飛び起きて受話器を取る。
「はい、こちら青葉探偵事務所です。」
「健一、寝起きの所悪いんだが事件だ。」
「寝起きじゃないっスよ。星野さん仕事してくれよ。」
「してるからお前を呼んでるんだよ。」
電話の相手は星野巧、高校生の時にたまたま出会った俺様刑事だ。
出会ってからは健一の才能を認め、こうやって非公式に捜査の手伝いを依頼してくるのだ。
「はいはい。で、今度は何ですか?」
「正確にはまだ起こってないんだが、とある大富豪の家に宝石を盗むと予告状が届いた。お前なら盗まれる犯人を見つけてくれると思ってな。」
「わかった、場所のメールと依頼料振り込みよろしく。」
電話を置くと健一の目の前に画面が出てきた。
『依頼を受ける→星野の好感度アップ
依頼を断わる→名声ダウン』
この画面は健一が高校生の時に突然現れた。
最初こそ戸惑っていたが、この選択肢のお陰で今や探偵として食べていける位になった。
「ま、依頼を受けるしかないよな。」
星野からのメールを開いて場所を確認していると、助手の根倉岳が出勤してきた。
高校からの同級生のよしみで、この事務所の管理等をやってくれてる。
「おはよう……事件?」
「あぁ、ちょっと今度は影響力ありそうな感じだからもしかしたら有名になるチャンスかもな。」
「ふぅん……じゃあ僕もついて行こうかな。」
「別にいいけど、珍しいな。いつも現場には来ないくせに。」
まぁ来たって選択肢ですぐ犯人は見えるから直行直帰にはなるだろうが。
「大富豪の家に行くなんて機会、ないからね。それに、健一の勘が働く姿もたまには見ときたいから。」
「勘じゃなくて、観察眼な。」
健一は選択肢が見えることは誰にも言っていない。
言ったとしても頭のおかしいやつと思われるだろう。
なので健一は周りには観察眼がするどく、犯人を違和感で見つけれると説明している。
準備をして、星野から送られた住所へと向かった。
「大富豪って聞いてたけど、日本に本当にいるんだなぁ。」
玄関から屋敷までも徒歩で歩くには距離がある、学校よりも大きな屋敷を見て健一は圧倒されていた。
「こういうの、トイレ行きたい時に困りそうだね。」
「はっ、お前のそういうリアクションどうなのよ。」
玄関のチャイムを鳴らし、中へと入るように言われて中へと入る。
玄関なのかホールと呼ぶのか、豪華なシャンデリアが飾られており、これだけでも健一にとっては別世界に来たように感じた。
どこへ向かえばいいのかと悩んでいると、奥から映画の衣装のような、貴族の服を着た男性が出てきた。
この洋館には似合ってはいるが、現代的ではない。
「あぁ、君たちが刑事さんの言ってた探偵さんだね?使用人にもこの期間は暇を出しててね。出迎え出来ずにすまない。」
「いえ、探偵の青葉健一です。こっちは助手の根倉岳です。」
ペコリと岳も会釈をする。口振りからさっするに、この男が屋敷の主人のようだ。
「私は貴州院楓だ。どうぞこちらに。」
『貴州院楓(34) 身長188㎝ 体重74㎏ 快楽主義者』
貴州院が名乗ると健一の見えている画面が名前に変わった。
初めて会う人はこうやってデータが見えるらしい。
特に見えたからと言って何があるわけではないが、岳のヤンデレが見えた時には少し心配にはなった事はあった。
貴州院に案内され、奥の部屋に入ると星野と他に2人の男性がケースに入った宝石を囲んで立っていた。
恐らくこの宝石が予告状された物なのだろう。
「どうだ、犯人はわかりそうか?」
星野にこっそり喋りかけられる。
宝石や周りを見渡すと画面の選択肢が変わった。
『犯人として星野を名指す→名声ダウン
貴州院に話を聞く→知識アップ』
ふむ、いつもならすぐ犯人の選択肢が出るのだが今回はまだ足りないのか。もしくは犯人がこの中にいないのかだ。
星野を犯人と言うのは悪手なので貴州院に話を聞くことにした。
「うーん。貴州院さん、まず宝石の事や予告状について話を聞かせて貰えませんか?」
「もちろん、立ち話でも何ですからどうぞこちらの部屋へ。」
岳には念のために宝石を見張って貰い、貴州院と別の部屋へ向かう。
部屋に着き、ソファーに座ると貴州院は紅茶をいれながら宝石の説明をしてくれた。
「あの宝石は代々受け継がれてきた由緒正しい宝石なんですよ。時価に出来ないほどの価値があります。」
「それはすごいですね、犯人に心当たりは?」
「犯人……心当たりなんて多すぎて、ねぇ。」
そういいながら貴州院は紅茶を健一の前に置くと、正面ではなく健一の隣に座ってきた。
「あ、あぁ……そうなんですか。」
隣に座るのかよ、と健一は思いながら距離を置こうと少しずれて座り直す。
「まぁこんな予告状なんてどうでもいいんですけどね、あなたみたいな美味しそうな人が来てくれて役得だ。」
唇を舐めながら貴州院は健一に迫る。
健一は立ち上がろうとするも、先に膝に乗られて動きを封じられる。
「ちょ、貴州院……さん……?」
「大丈夫ですよ、気持ちよくしてあげますからね。」
「え、まっ……んっ……んんっ……」
唇を塞がれるも、すぐに健一は貴州院を突き飛ばした。
「……にすんだ、この変態!」
息を整え、貴州院の方を見るも突き飛ばされたまま動く様子がない。
「嘘……だろ……」
貴州院を起こすと、瞳の瞳孔は開き、頭を触るとヌルリと血の感触があった。
健一の目の前は真っ暗になった。
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