オゾマ

るの

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オゾマ

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なんでこんなことになった。俺はなんだってこんな目に。ここはどこなんだ。こんな場所があるはずがない。それとも俺が学生の頃、授業中ずっと寝ていたから知らないだけなのか。分からない。俺は高度な文明を持った巨大な生物に両手で掴まれどこかへ運ばれながらそんなことを考えていた。
 記憶があるのは海外旅行のために乗っていた飛行機が大きく揺れた時までだ。女子供の大きな悲鳴。男の野太く怒鳴っている声。ちなみに俺は女のように甲高い声をあげていたような気がする。そこで記憶が止まっているということは恐怖のせいで気絶しまったようだ。今思うと恥ずかしいな。
揺れた飛行機は安定することなく墜落したのだろう。そして俺は奇跡的にどこかしらの陸地に流れ着いたらしい。それがここだ。
 目が覚めて一番はじめに目に入ったのは建築物だった。現代では想像できないような奇抜な建物。空を飛び交う色とりどりの飛行物。未来的な景色。そして何もかもが大きかった。立ちすくんでいると、巨大な生物が俺に近づいてきた。二足歩行で形は人間に似ていたが、肌の色が色味のない灰色で、毛がどこにも生えていない。無機質さを感じさせる外見だった。体に薄い布のような物を羽織っており、俺には分からない言語を発していた。おそらくこの地ではその生物が文明を築いているようだ。
 俺を見つけた巨人は、理解できない言語で俺に話しかけた。俺が首をかしげると、興奮した挙動をとり、俺を掴んでどこかへ移動を始めた。そして今に至るというわけだ。
 俺を拾った巨人は子供だったようだ。その子の住処では何倍も大きなものが二人いた。両親だろう。両親は俺を見るや否や子どもと口論を始めた。子どもの話を聞いた後、親は子供を叱っているように見えた。しかし子どもは強い。最後は泣き喚いて両親はその子の言うことに同意したのだろう。先ほどまで鼓膜が張り裂けそうな叫び声をあげていた子が一転して上機嫌になり俺を強く抱きしめた。圧死するかと思った。その子は俺を目の前に持ち上げ顔を歪めた。おそらく笑っているのだろうが、ゾッとするほどおぞましく感じた。これからその子のことをオゾマと呼ぼう。
 その後俺は檻に閉じ込められ、美味くもない乾燥した何かを食べさせられた。毎日同じもので、数日もすると味が分からなくなった。排泄は檻の中に置かれている金属板の上でさせられた。檻の外からはオゾマが俺を見ている。飯を食う時も、排泄をするときも丸見えだ。見られて恥ずかしいと思わなくなるほどの日数が経った。そろそろ限界だった。もちろんここから逃げ出したい。それは諦めている。限界を感じているのは俺ではなく、俺の股間だ。これほど処理をしないのは生まれて初めてかもしれない。ほとんどの時間、オゾマに見られているので出来なかったのだが、ある時オゾマが俺のもとを離れた。今のうちにと俺は急いで右手を動かした。気持ちがいい。久しぶりだからだろうか。それともこの緊張感が快感を助長しているのだろうか。いやどうでもいい。とにかく気持ちがいい。
 自慰に夢中で気付かなかったがいつのまにかオゾマは俺の元へ戻っていたらしい。達する直前に檻が開いた。驚いた俺が固まっていると、オゾマの太く巨大な指が屹立した俺のものを不思議そうに撫でる。自慰を見られた恥ずかしさと、子どもにこんなところを見せてしまった罪悪感が俺に襲いかかる。うわーと大きな声をあげてオゾマから逃げ出そうとしたが、敵うわけがない。オゾマは暴れる俺を押さえつけ男根を指でこねくり回した。興味本位。ただのおもちゃとでも思っているのだろう。俺の体液がオゾマの指にかかっても、白いニキビを潰して膿が飛び出した時のような喜び方をしていた。もう一回やって、とでも言っているのだろうか。オゾマは言葉を発しながらまた俺の股間を指で弄び始めた。しかしさすがの俺もそれで興奮したりはしない。勃起もしないので
途中で飽きたオゾマは、俺の首や尻の穴の匂いを嗅ぎ、強く抱きしめてから檻の中へ俺を戻した。においを嗅ぐのは彼女なりの愛情表現のようだ。しかしこちらからしたら嫌悪感しかない。抱きしめるのも苦しいだけだか らやめてほしい。さらに言うならおぞましい笑顔を向けることもやめて欲しい。最後に俺の股間をいじるのも今後一切やめて欲しい。
 俺がこの陸地にたどり着いてから数年は経っただろう。だんだんと巨人が話す言語の意味がニュアンスで分かるようになった。しかし声帯が違うのか俺がその言語を話すことはできない。
オゾマは相変わらず俺を弄ぶ。気が向いた時に俺を檻から出し、股間をこねくり回して遊んでから、俺の身体中の匂いを嗅ぐ。最近噛むことを覚えたのか、いたるところに噛み付く。俺の体はオゾマの歯型だらけだ。痛いと叫んでも可愛いと言う。俺が怒ってもその表情が可愛いと映像を撮る。取り付く島がなかった。
 十年は経った。今も始めに与えられた時と同じ乾燥した食べものを食べている。これを与えていたら健康に良く長生きするらしい。長生きしなくていいからお前たちが食べている旨そうな飯を分けてくれ。
 数十年経った。飯のおかげか俺は恐らく平均寿命よりはるかに永く生きている。こんな老いぼれになっても、シワシワの俺の股間をいじめまわし、体に歯型をつけ、加齢臭漂う俺の匂いを嗅いで満足そうにしているオゾマ。檻に入れられてから一度も歯を磨かせてもらえていないので歯はボロボロになり何本かは抜け落ちた。歯茎も腫れ上がっている。そんな俺の口臭を、くさいくさいと言いながら嬉しそうに嗅ぐオゾマ。この巨人どもはみな変態なのだろうか。もういっそのこと殺して欲しい。子どもにおもちゃとして遊ばれる屈辱により俺は生きる意志を失っていた。
 オゾマも緩やかに成長し、出会った頃の二倍ほどの身長になった頃、俺は死んだ。老衰だ。おそらく百二十歳くらいまで生きていたと思う。
 死後の世界なんぞないと思っていたが、死んだ直後、俺は自分の死体を俯瞰で見ていた。しばらく俺の意識はオゾマの元で留まっていた。オゾマは俺の死にひどく落ち込み、ずっと泣いていた。彼女の両親や友人にたくさん慰められていた。巨人はオゾマにいつも同じことを言って慰める。
「彼はあなたに拾ってもらえて本当に幸せものだわ。きっと彼もそう思ってるわ。こんなに長生きできたのもあなたのおかげよ。ほら、彼の声が聞こえてくるようよ。共に過ごしてくれてありがとうって」
 
 数年の間、おそらくオゾマが俺を失った悲しみから立ち直るまでだろうか。俺はオゾマの心に留まっていた。その後俺の意識は、暮らしていた檻の中で漂うこととなった。自分の意志で場所を変えることもできず、死してなおそこで閉じ込められたままだ。オゾマが死んだ後も、彼女が住んでいた家が朽ち果てた後も、俺はずっとそこから動くことなく、オゾマ拾われたあの日を、弄ばれた日々を思い出しながら、憎しみと屈辱に囚われている。
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