僕のスライムは世界最強~捕食チートで超成長しちゃいます~

空 水城

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3巻

3-3

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 カラカラと特有の音を発しながら抜刀すると、すかさずライムと黒狼が交戦しているところに飛び込んでいく。
 上段に構えた木剣を、ライムを取り囲む一匹に振り下ろした。

「う……らぁ!」

 気合を上げながら放った一撃は、当然のことながら避けられて、むなしく空を切る。
 しかし、一匹が飛び退いてくれたおかげで隙間すきまができた。
 ライムはそこから抜け出してくる。
 僕は相棒と共に後ろに下がり、三対二の構図に戻った。
 しかし、怒りの咆哮とともに一匹がはじかれるように駆け出してくる。
 ――速いっ!?
 驚いたのもつか、すでに黒狼はライムに噛みつくべく跳躍ちょうやくしていた。
 僕は瞬時に両者の間に割って入る。
 木剣を横に倒し、盾のようにしてそれを構えた。
 ここからが、僕たちの新しい戦いだ。
 ガツッ! と音を立てて、木剣の腹に黒狼が噛みつく。
 その重さで手にしびれを感じながらも、僕は奥歯を噛みしめて両足を踏ん張る。
 そこそこ丈夫なはずの木剣がギリギリときしんで、悲鳴を上げる。
 しかしその程度で済んだのを確認すると、黒狼を振り払うように木剣を振り上げた。
 はずみで歯が外れ、マッドウルフが宙に浮く。
 すぐさま僕は素早くしゃがみ、背後に隠れていたライムがぴょんと跳ねた。

「【限界突破リミットブレイク】!」
「キュルル!」

 頭上を通り過ぎざま、ライムが赤熱せきねつしたように赤くまる。
 そして空中で身動きが取れないマッドウルフに、ドンッ! と全力の体当たりをお見舞いした。
〝ギャンッ!〟と大きな悲鳴を上げて吹き飛んだ黒狼は、はるか後方の大木に激突し、その根元にパタリと落ちた。
 予想以上に連携が上手うまくいき、僕はライムと笑みを交わす。
 しかし、仲間をやられて怒りを覚えた残りの二匹が、一斉にこちらに向かって走り出してきた。
 二匹とも僕を狙っている。
 しかし今度はライムが間に割って入って、一匹の動きを止めた。
 もう片方のマッドウルフを僕が相手にし、無理やり一対一の構図に持っていく。
 これなら相手に連携をとられる心配はないし、単体相手なら【限界突破リミットブレイク】を使ったライムの方が上だ。
 僕が木剣で牽制けんせいしてなんとか一匹を止めていると、後ろからズシンッ! と衝撃しょうげき音が聞こえてきた。
 どうやらライムがもう一匹のマッドウルフを大木に吹き飛ばしたらしい。
 さすがライム、と心中で賞賛しょうさんの声を送りながら、相棒に負けじと僕も突っ込む。
 けれど、やはり人間とモンスターとでは力の差がありすぎる。
 木剣を避けられ、目眩めくらましにと足でり上げた泥も回避されて、打つ手がなくなってしまった。
 しかし、この一瞬の隙を生んだだけでも、僕にしては上出来だ。
 黒狼の後方から、水色の影が迫る。 
 僕に気を取られていたばかりに、マッドウルフは後ろからのライムの接近を許してしまった。
 ドンッ! と鈍い音が薄暗い森の中に響き、枝葉がガサガサとおどり狂った。
 ようやくこれで、三匹のマッドウルフは、皆ライムの攻撃で魔石へと姿を変えたのだ。
 長らく続いていた緊張をいて、僕は深く息を漏らす。
 木剣を左腰のさやに戻すと、体が赤いままのライムを頭に乗せて振り返る。
 そこには笑顔でパチパチと拍手をする、クロリアの姿があった。僕と同じく、ミュウを頭の上に乗せている。

「お見事です! ルゥ君、ライムちゃん!」
「ミュミュウ!」
「ありがとう、二人とも」
「キュルキュル!」

 僕たちは笑顔で手を打ち合わせた。


 戦闘後の僕と同じくらい、クロリアの手が熱い。きっと僕たちの戦いをハラハラとした気持ちで見守っていたからだろう。
 無茶なことをしたと内心で反省しながら、マッドウルフの魔石を回収する。
 その最中、クロリアがため息まじりにこぼした。

「戦いの前に〝僕とライムだけでなんとかするから〟と言われたときは何事かと思いましたけど、今の連携を試してみたかったんですよね、ルゥ君」
「うん、そうだよ」

 僕は二つの黒い結晶をポーチに仕舞いながら頷いた。
 僕がそう言ったのは、何を隠そう、新しい戦い方を試してみたかったからである。

「僕が敵の攻撃をいなして、その隙にライムが攻撃する。今まで全部ライムに頼りっきりだったから、少しでもライムのサポートができたらいいなと思ってさ。これなら、一緒に戦えるし」

 僕は左腰の木剣に手を当てながら言う。
 僕にできることなんて、本当に限られている。
 その中の一つとして、敵の攻撃を受ける役になれないかと考えたのだ。
 ビィと直接戦ったとき、互いの実力差はそんなにかけ離れていないと感じた。
 しかしBランク以上の従魔が持つ、アビリティなる特殊な力のせいで、勝敗が逆転してしまったのだ。
 改めてテイマーとしての実力不足を痛感させられた。
 もっと戦術のはばを広げられないかと思って考えついた作戦が、この戦法。
 僕が敵の攻撃を〝弾きパリィ〟し、すかさずライムと〝交代スイッチ〟する。
 これこそが僕たちの新しい戦い方。
 いつも今みたいに上手くいくとは限らないけれど、確かな手ごたえを感じて頬が緩む。
 それを見て、クロリアがなんだか感慨かんがい深そうに呟いた。

「新しい戦い方を、見つけたんですね」
「……うん。って言っても、本当に小さな前進だけどね」

 苦笑まじりにそう返すと、彼女はくすくすと笑った。
 小さな前進。たとえ新しい戦い方を見出したとしても、それで僕たちが急激に強くなるわけじゃない。
 この戦法が通じる相手は限られている。
 さっきのマッドウルフみたいに、僕の体でも受け止められるくらいの、そこまで力が強くないモンスター、もしくは攻撃が単調な敵にしか通用しない戦い方だ。
 それでも、こうしてライムと一緒に戦えるようになったのだから、小さくても前進は前進だ。
 ――従魔よりも前に出て、代わりに戦ったことがあるのか?
 テイマーズストリートで会った、有力パーティー『正当なる覇王フェアリーロード』の〝あの男〟は、僕にそう問いかけてきた。
 自分は従魔よりも前に出て、敵と斬り結んでいるが、お前はどうなのかと。
 確かにあのとき僕は、ろくに敵の前に出ようとはしていなかった。
 でも、次はちゃんと言い返してみせる。
 お前が従魔よりも先行して戦うのなら、僕はライムと一緒に、並んで前に出る。
 決して自己中心的にならず、互いを支え合って戦ってみせると。
 そしてもう、誰にも負けない。
 そこで僕は、ふと思い出す。

「そういえば、クロリア?」
「……はい?」
「僕がペルシャさんに魔石鑑定の依頼を出した後、クロリアも何か依頼してなかった?」
「えっ? あぁ、あれはそのぉ……」

 なぜかクロリアは、冷や汗を流しながら言いよどむ。
 あのとき、僕が鑑定依頼をした後、見送りに出てくれたペルシャさんに、クロリアも何か頼み事をしていたような気がする。
 僕に聞こえないように小声でやり取りをしていたみたいだけど……

「な、なんでもありませんよ。さあ、早く先に進みましょう。エリア探索はまだ始まったばかりなんですから」

 クロリアはそう言って〝あはは〟と何かを誤魔化すように笑って歩き出した。

「あっ、うん」

 意気揚々いきようようと獣道を進みはじめた彼女の背中を慌てて追いかけて、となりに並んでみる。
 するとやはり、ひたいには玉のような汗をにじませていて、同時にすごくぎこちない笑みを浮かべていた。
 ……なんか怪しい。



 3


 しげる木々や花が特色のエリア、フローラフォレスト。
 わずかに木漏こもれ日が入るものの、森は薄暗く、奥に進むほど木々は密集していく。
 そして出現するモンスターに極端なかたよりはなく、温厚おんこうなものから好戦的なものまで、主に森で見られる野生モンスターたちが数種類集まっている。
 現在は『不正な通り道ローグパス』の影響でレベル変動が起きているので、油断できないエリアだ。
 そんなフローラフォレストにも、心安まる瞬間はある。
 まるでかくれんぼをするように、茂みの陰に美しい花が咲いていて、それを見つけたときの達成感は計り知れない。
 まあ、その花探しに夢中になるあまり、森の奥へと迷い込んでしまいそうになるのは困りものだが。
 そんな一喜一憂いっきいちゆうのエリア探索を続けること数時間。
 僕たちは『マッドウルフの魔石』五つと、『フェイトの花』五つ、それから『チュリムの花』四つを入手することができた。
 いったいこの量でどれくらいの額になるのかはよく分からないけど、まだ日は高いのでエリア探索は続行だ。
 やる気満々で森を進んでいると……
 森の喧噪が耳に入ってきた。
 草木が揺れる音、動物の鳴き声やモンスターの咆哮。
 そして……それらに交じる人々の話し声。
 思えば、エリア探索を開始したときからずっと気になっていた。
 ――やけに騒々そうぞうしくて、人の気配が多い気がする。
 現在は立ち入りが制限されているはずのエリアに、どうしてこんなに人がいるのか。
 僕たちと同じでエリア探索に来た冒険者にしては、なんだか人数が多い気がする。それに、まだ直接顔を合わせてはいないけど、ずいぶん殺伐さつばつとした雰囲気をはなっている。
 乱暴に踏み荒らされた足跡、樹木に刻み込まれた傷や折れた枝葉。
 それらに視線を向けながら、僕は首を傾げた。

「あっ、またありましたよ。チュリムの花」

 ふと、クロリアの声が耳を打った。
 彼女は片手に花を持っている。
 いつの間にか空はだいだい色に変わり、森は夕日に赤く染められていた。
 野生モンスターは夜の方が活発になるので、早めに森を出たい。
 そんなことを考えながら、僕は花をんできたクロリアに声を掛けた。

「じゃあ、僕のカバンに入れておこうか」
「はい」

 彼女は僕の後ろに回り、腰のカバンに花をす。
 花は繊細せんさいもろいので、無理に詰め込まずに頭を出すようにしてカバンに仕舞っているのだ。
 戦闘直前にはカバンごとクロリアに渡すようにしているので、つぶれてしまう心配もない。
 ちなみに、魔石はクロリアが持っている。
 本当なら男子の僕が持つべきなんだろうけど、素早く戦闘に移行できるようにとクロリアが気をかせてくれているのだ。なんとも心苦しい限りだけど。
 花の数には及ばないまでも、彼女が背負うカバンも魔石でそれなりに膨らんでいた。
 クロリアは互いのカバンを交互に見ながら、わくわくした様子で聞いてくる。

「これでどれくらいになりますかね?」

 僕は腕組みをしながら答えた。

「三……ん~、四万ゴルドくらい……」
「……ですかね?」
「いや、それくらいだったらいいなぁ、って」

 正直、エリアランクが再設定された後の報酬は、皆目かいもく見当がつかない。
 そんな僕の返答を受けて、クロリアはこくこくと頷いた。

「……そ、そうですか。まあ、高いに越したことはありませんからね。テイマーズストリートで生活するためですもん」
「うん、そだね」
「……ところで、テイマーズストリートで暮らすと言っても、具体的にはどうするつもりなんですか? 安い宿屋でも転々とするんですか?」
「えっ?」

 そういえば、クロリアには拠点を移すとしか言っていなかった。
 具体的な引っ越し案はまだ話し合っていない。それだけの情報で了承してくれたクロリアの度量もたいしたものだけど。

「うぅ~ん、できればどこかで部屋を借りたいなぁ。宿屋を転々とするってのも面白そうだけど、色々と不安定だし。もっと贅沢ぜいたくを言うと、〝僕たちだけの家〟がほしい」
「えっ……家!?」

 不意に、後ろからついて来ていた足音が止んだ。
 振り返ってみると、ミュウを抱えたクロリアが、なぜか頬を染めてその場に立ち尽くしていた。
 遅まきながら、僕は自分が口にした台詞せりふが誤解を招きかねないものだと気が付いた。

「あっ、いや、別に深い意味はないよ! パーティー専用の家があれば、色々と便利だし。パーティーホームとしての家ってことだよ」

 まあパーティーホームは本当に夢みたいなものだから、当分はクロリアが言った通り安い宿屋を転々とすることしかできないだろうけど。

「そ、そうですね。あったら、便利ですもんね」

 補足の説明で微妙な空気を迅速じんそくに払いのけると、僕らは移動を再開した。
 家だろうが宿だろうが、今はとにかくお金が必要だ。
 テイマーズストリートで暮らすなら、冒険者として装備やアイテムもそろえなきゃいけないし。
 僕たちはフローラフォレストの奥からUターンして、探索しながら帰路にいた。
 何度か野生モンスターと出くわしたが、追加でフェイトの花、チュリムの花、他にカージョンの花やビスカの花まで見つかったので、首尾は上々だ。
 そんな中、僕はふとあるものを見つけて足を止めた。
 またしても地面に誰かの足跡。
〝荒々しい男のもの〟と〝小さな子供のもの〟。
 ここに来るまでにも散々見掛けてきたけど、その二つは不思議なことに、必ずと言っていいほどセットになっている。
 綺麗な花のそばの地面が踏み荒らされていると、なんだか複雑な気持ちにさせられる。
 僕は隣を歩くクロリアをの重そうなカバンをちらりと見る。

「そろそろ、カバンが一杯になってきたね」
「はい、そうですね」

 魔石がたくさん集まってよかったね、という解釈をしたのだろう。クロリアはカバンを揺らしてガラガラと音を立てた。

「ねえ、クロリア。それを持って、先に帰ってもらえないかな?」
「えっ?」

 当然クロリアは不思議そうに首を傾げる。
 わずかに眉間みけんにしわを寄せて聞き返してきた。

「なんでですか?」
「いや、少し気になることがあって、もう少しエリア探索を続けようかと。魔石は重たいでしょ」
「一緒に行けばいいじゃないですか? 私はまだまだ平気ですよ」

 クロリアはそう言うと、男の僕が持っても重そうなカバンを背負いながら、軽々とジャンプしてみせる。
 自分で魔石を持つと言っていたから少しは力に自信があるんじゃないかと思っていたけど、まさか僕より力持ちじゃないだろうな。
 さすがにその光景には冷や汗を流してしまうが、ここで押し負けるわけにはいかない。
 僕は正直に目的を話すことにした。

「あっ、いや、その……この足跡。小さいのが交ざっているでしょ? 迷子まいごじゃないかと思うんだよね」
「迷子、ですか……」

 クロリアは僕が指差した足跡を覗き込む。

「心配だから少し遠回りして、さがしながら帰ろうかと思ったんだよ」

 もっとも、遠くから聞こえてきた声の雰囲気からすると、そんなに穏やかじゃない可能性もあるけど、森に迷い込んだ子供が心配なのは事実だ。
 それに、僕たちは冒険者としてエリア探索を任されている。エリア内で何か事件が起きているなら、把握しておくのも僕らの仕事だ。
 状況が分かったら、ギルドに報告すればいい。手にえないなら、自分でなんとかする必要はない。
 しかしクロリアは、心配そうな――それでいて、どこか疑わしげな目を僕に向ける。

「また、置いてけぼりなんですか?」
「えっ……」

 突然彼女の口からこぼれた呟きに、僕は目を丸くする。
 モンスタークライムと初めて対面したとき、僕は危険を察知してクロリアとミュウを先に帰らせた。クロリアはそのことを言ってるんだ。

「また、私とミュウを置いてけぼりにして、何かするつもりじゃないんですか?」
「……そ、それは」

 なんとも情けないことに、僕はその質問に胸を張って即答することができなかった。
 僕が一人で無茶な真似をすれば、自分だけじゃなくて、他の誰かにも迷惑をかけてしまう。
 何より、この二人に、またあんな悲しい顔をさせたくない。
 ――少しは反省しろ、僕はもっと強くなるって決めたんだ。

「じゃ、じゃあ、こうしよう」
「……?」

 僕は、首を傾げるクロリアの前まで歩み寄ると、ライムを彼女の頭の上に乗せてあげた。
 突然の行動に、クロリアは目を丸くして固まってしまった。

「本当に、少し迷子を捜すだけ。もし何か事件に巻き込まれたとしても、僕は絶対に戦ったりしないって、約束するよ」

 従魔を手放すことによって、僕は戦う手段をなくした。
 これはつまり、戦わないあかし。争わない約束。
 それに――

「ライム、クロリアとミュウが街に帰れるように、僕の代わりに守ってあげてね」

 これなら、暗い中を女の子一人(ミュウを合わせて二人)で帰らせることにもならないからね。

「本当に少し見てくるだけだから、心配しないで先に帰ってて!」
「ちょ、ルゥ君!? 余計に心配なんですけど!」

 ライムをたくし終えた僕は、有無を言わさぬ速さで森の奥へと駆けていく。
 従魔もなしに森を進んでいく、バカな僕を制止しようとするクロリアの声を背中に受けながら……


 ********


 日が沈みかけて薄暗くなった森の中を、僕は息を殺して進んでいく。
 こうして一人で暗い夜道を歩いていると、パルナ村にいた頃を思い出す。
 よく友達に置いてけぼりにされて、一人で帰っていたから。
 野生モンスターの唸り声が聞こえるたびにビクビクしていたのは、なんとも情けなかったなぁ。
 まあ、大抵は大木の根元に座り込んで泣いているところを、おさな馴染なじみのファナが見つけてくれたんだけど。
 もし迷子になった小さな子供が昔の僕みたいに泣いていたら、今度は僕が見つけて街に連れ帰ってあげたい。
 過去の恥ずかしいエピソードと密かな願いを胸に、僕は足を動かし続ける。
 それでも、穏やかとは言いがたい足跡を追っていると、どうしても嫌な予感がしてしまう。
 杞憂きゆうならそれでいいし、もう無事に街に帰っているならそれに越したことはない。
 しかし、どうやら冒険者と事件は切っても切れない関係らしい。

「おい、あのガキはどこに行った!?」

 不意にどこからか男の怒声が聞こえてきた。
 僕はすかさず足を止めて、耳をすました。

「間違いなくこっちに来たはずだ!」
「急いで探し出せ!」

 どうも声の主は一人ではないようだ。
 僕は今度こそ、声のする方向を見定めると、気配を殺しながら近づいていった。
 大木に身を隠して様子を窺ってみると、少し開けた草地に物騒ぶっそうな武器を手にした三人の男の姿があった。
 かたわらには彼らが連れているとおぼしき従魔も見える。
 とてもじゃないけど、迷子になった子供を探している雰囲気ではない。
 むしろ、小さな子が不届ふとどき者に追われている事件と言ってもいい。
 彼らが冒険者ならば、その追われている子がよほどのお尋ね者という可能性もあるけど。
 状況がはっきりしない上に、今はライムもいないから、迂闊うかつに男たちの前に出て事情を聞くのはかなり危険に思える。
 とりあえず、いったん街に戻ってシャルムさんあたりに報告するのが良さそうだ。
 僕は足音を立てずにこっそり大木から離れてその場を後にした。
 今さらながらに気づいたけど、僕って結構ピンチなんじゃないの?
 装備はいつもの布服と木剣一本のみ。所持アイテムはこのフローラフォレストで取れた数種の花だけ。
 ここまでほとんど野生モンスターと出くわすことがなかったから、軽い気持ちでライムを預けちゃったけど、もし今の状態でマッドウルフなんかと鉢合はちあわせたら……
 嫌な予感に背筋がぞくっと凍りつく。
 自業自得とはいえ、さすがに従魔なしで単独行動するのは無理があったかな。
 でもまあ、出会いさえしなければ大丈夫……そう思っている奴のところに限って、モンスターが姿を現すのはお約束である。

「グルルゥ」
「げっ……」

 聞き慣れた唸り声を耳にして、僕は思わず声を漏らし、一歩後退あとずさる。
 前方に目をらしてみると、そこには狼型のモンスターが立っていた。
 どうせバッタリ出会うなら、珍しい花にしてほしい。


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