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女装とアブない俺の家族

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俺は楠本祐也。
ただいま高校二年生の男子である。
そして家族は父と母と姉の4人家族。

とある夏の昼下がり、今日は自分の部屋で勉強……という名のゲームをしてる。(あえて言うが勉強半分とゲーム半分ってところだ。全くしてない訳では無い。)
正直、この部屋はエアコンというものは存在しない。あるのは扇風機だけだ。汗ダクダクで、体力も当たり前のように消費していく中、
ふと俺は漫画が読みたくなった。

「あー……暑い」
さて、漫画でも読んで暑さを何とか忘れてやろう。ぼーっとしてきた頭には丁度いいかもしれない。
そう考えついて本棚に手を伸ばし、漫画を取ろうとした。
次の瞬間、バサバサバサバサッと音を立てて本が倒れてきた。
そして一際目立つ色の……これはアルバム?

アルバムらしき物を手に取り、パラパラとページをめくった。どうやら俺自身が幼い頃の写真が沢山あったようだ。
懐かしいな、これはいくつの時だっけ。
なんて見ていると中に見られない初めて見た写真を目にすることとなった。
これは衝撃的だ……
多分俺。
いや間違いなく俺。今から13年前の3歳の頃だと思う。
まるで見た目は女の子。
と言っても、今も女々しい顔つきなのは俺は自覚してる。(不本意ながら。)
体型も男子と言うよりは女子に似てる気もする。あと行動が女々しいらしい。
うるさいな、ほっとけ。

わなわなしながら写真を見ている。
「いや……マジで……な、なにこれ……?!!」
その写真にはピンクのワンピースを来ている笑顔の自分と、満面の笑みの姉と母が写ってたからだ。

1度もこの俺の記憶の中では全くと言っていいほど、親や姉の行動は理解不能なことが多かった。反抗するととってもいい笑顔で倍返しが来る。マジで怖い。

例えば昨日の話。
姉は手には斧を持って俺の部屋に来た。
「ねぇ!!この女の子なに?!私こんな子見た事ないんだけど!!」

「いや、なんで手に斧?!」というツッコミは届かぬ前に、スマホ画面を見せられた。
SNS上に投稿した幼なじみとの3人の写真。
俺と幼なじみの男友達と女友達だった。

「あー……コイツか。それ、俺の幼なじみだよ。姉ちゃん会ったことあっただろ?俺が年長の頃だっけ?」

俺はリアルに彼女を作ったことない。
というより二次元の女の子しか興味無い。
寧ろ俺の嫁は画面越しだ。マジで出てきて欲しいと何度願ったことか。

だから幼なじみや男友達としか写真は撮ったことがない。
 
「なんだ、琴音ちゃんと大樹くんか。大きくなったなぁ。お姉ちゃん、ここ数年会ってなかったからわかんなかったよー。」

手に持つ斧はどこへやら。
安心したのかこれは誤解で終わったからよかったものの……この幼い俺の写真は説明してもらわないと俺の人生ここで男としては終わる気もする。

心配なのも分かるが、過保護なのだ。そう、俺の姉と母は。
過保護すぎて、たまに喧嘩する。これ俺のせいじゃないのに。……やべえ。俺不憫すぎない?

というか、昨日の件も姉の被害妄想が激しいせいでもある。
“女の子”という3文字が出てきたのならば、二次元の女の子のキャラだろうが、リアルな同じクラスの女子だろうが、近所のおばさんだろうが許さないと思われる。

そうだ、ここで姉の紹介をしよう。(話がややこしいので)

姉の名前は楠本綾。社会人のOLである。
姉曰く、腐女子(重度の)だそうだ。俺はあんまり知らんけどな。
そしてアブないのは俺の姉はブラコンなところだ。前に話した通り俺が可愛いらしく、毎日ハイテンションでやってくる。別に病んではないらしいが、俺から見るとマジでやばい末期な人に見える。お粗末。
だけど、ハイテンションの割にはポーカーフェイスをキメてて、そのおかげ(?)かモテるらしい。彼氏も以前居たとか。
今は居ない……一ヶ月前に別れたと聞いている。
内容はよく知らないが、

「私には大事な弟がいるの!私がいないと泣いてしまうくらいの子なの。とにかく寂しがり屋で、とても甘えたで、そんな弟を放っておけない!だから別れましょ?」

なんて言ったそうだ。
ちょっと待て、ツッコミどころが満載だなオイ。
俺は寂しがり屋でも甘えん坊でも泣き虫でもない。
くそ、その彼氏が可哀想だろうが。
本当に被害妄想も甚だしいな。姉には言わないけど。

まあ、そんな訳で姉の紹介は終わり。話を戻そう。

さて、今回のこの幼い俺の写真はどうしようか。女の子に見えるからこそかもしれないが、生まれた時は女の子だったのではと思ってしまう程だった。生まれた直後に性別転換とか、なんかされたのでは?なんて考えるほど。
俺は凄くげんなりしてるから、捨ててしまおうかと思った。
その時、背後から物音も立てずに気配を感じた。

「ね、姉ちゃん?!」

びっくりした……。心臓止まるかと思った。
この人暗殺者になれるんじゃない?(褒め言葉)
姉の視線が俺の頭に突き刺さった。

「ふっふっふー!あんな小さい頃の写真をまんまと見つけてしまうとは。可愛すぎてしまい込んでたというのに。祐也、お前やるな?お姉ちゃん褒めてあげる!というかご褒美あげようか?」

いや要らんわそんなご褒美!
そう思いながら嫌な顔してる俺を無視して話を続けた。


「ねぇ、祐也。いつかは話しようかなって思ってたんだー。“こんな女の子だった頃もあったんだ”ってね。お姉ちゃんが着せてあげたんだよ」

いや、俺そんな話聞きたくないし、聞いちゃいけない言葉を聞いた気もするんだけどさ……

「姉ちゃんがこれ着せたのかよ!!」

ムッとした顔で渾身のツッコミ。

「え?そうよ。だってぇ、私ぃ~ブラコンだしぃ?もちろんこの可愛い弟のために彼氏なんていらないって思ったしぃ、ね~?」

“ね~?”じゃない。
本当に姉は末期なようだ。










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