スライムスレイヤーZ! スライムに転生して俺Tueeeとかやってる馬鹿が影で支配する世界を僕はブチ壊す。

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第五話「迷宮事変」PART4

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「ふむ、君達はパーティを組んで長いのか? それに神官抜きでたった三人とはな……良く今まで生き残れたものだ」

 愛玩種スライム付きとなると、不自然な言動は禁物だった……けれど、この三人を見て、不安になるのはむしろ当たり前だった……Cクラス以上と言っておいたはずなのに、受付の者は何を聞いていたのだろうと、むしろ不満を覚えたが、彼らが首から下げたドックタグは銅……つまり、Cクラス冒険者を意味していた。
 
「前は六人くらいいたんだけどな……色々あって、この三人だけになっちまった。一緒に組んでってなると半年くらいかな……神官連中は最近、評判悪いからなぁ……いれば何かと便利なのは解るんだけど、特に聖光教会の奴らは色々問題あってね……連れていると、検問で引っかかったりと面倒ばかりなんだよ。
それに、あいつら、スライム目の敵にしてるんだろ? こんな可愛いらしいのに、何が悪の手先なんだか……回復もサレナが精霊魔術を使えるから、なんとかなってる……昔みたいに冒険者パーティに神官が必須って訳じゃないんだ」

 聖光教会は……主にレイン達過激派の空気を読まないテロ活動と、帝国が教会勢力の排除運動を進めている関係で、各国での扱いもその評判も極めて悪い……それは半ば自業自得の面もあるのだけど、さすがにそこまで言われて、心穏やかな訳がなくレインの表情が引きつる。
 
 さすがに、そんなレインの様子に気付いたようでサレナの表情がさっと青ざめる。

「ちょっとルーク! あんたね……話があるから、ちょっとこっち来なさいっ!」

 彼女はルークの耳を引っ掴みながら、隅の方に連れて行くと耳打ちする……ルークがバツの悪そうな顔をして、肩に乗せていたスライムを背嚢にあわてて隠していた。
 
 なんとも素人くさい反応で、こいつらには悪いが、適当に難癖付けてお引取り願うべきだろう……そんな風にミリアも思い始める。
 
「なぁ、レイン……彼らは多分外れだろうな……他を当たってみないか?」
 
 けれど、レインは真剣な表情で首を横に振る……何か察するものがあったらしい。
 
 ルーク達は、壁の方で何やら相談しているようだった……なにせ、ミリア達の方にこそ選ぶ権利があるのだから。
 その気になれば、他の冒険者にしてもらう事も出来るのだ……いわゆるチェンジと言う奴だ。
 
 冒険者側も依頼人にチェンジなんてされてしまうと評価が下がってしまうから、避けたい所なのは理解できる。
 相談が終わったのか、ルークもミリア達のところへ戻ってくると引きつった顔をしながらも、了解する。
 
「すまない……こちらも無神経だった……ペロー君……じゃなくて、スライムは宿屋に置いていくし、謝罪もさせてもらうから、チェンジとか言い出すのは、勘弁して欲しい」

「あの……私からも、謝罪させていただきます……ルークもいつも言ってるじゃない……スライムなんて、捨ててきなさいって! あ、私はスライムなんて大嫌いですからねっ!」

 申し訳なさそうに頭を下げるサレナ……ついでとばかりにルークの髪を掴んで強制的に頭を下げさせる……なんとなく、この三人の力関係が垣間見えるようだった……どうも、このサレナと言うエルフ……無愛想だったのは演技だったようだ。
 
 ルークがリーダーのように見えて、その実、完全に尻に敷いているあたり、なかなか大したものだと思いつつ、ミリアも頷く。

「あ、あの……わたしは、気にしませんから……スライムは確かに我々の教義では、邪悪なる生き物とされていますが……ペットとして飼われてるものを即打ちのめすとかそこまではしません……触られたり、視界に入らなければ良いので、そのスライムは宿屋にでも置いていってください」

 そう言ってレインは、にこやかに笑いかける。
 
 実際、オルタンシアでレインは、愛玩種のスライムの飼い主が、泣きながら助命嘆願するのを無視して、喜々として浄化の炎で焼き払ったり、錫杖で叩き殺すような真似をしていたのだけど。
 ……そんな事はおくびにも出さない。
 
 とは言え、スライムについては、保護政策を打ち出している帝国はともかく、他の国では基本的に賛否両論……似たようなものをダンジョンで見かけることもあるし、野生種は基本的に凶暴な為、旅人が襲われることも珍しくない。
 
 冒険者をやっていて、スライムを可愛がる時点で余程解ってないか……それこそ、スライムのどちらかだろう。
 レインは意外に切れる……伊達に司教の称号持ちではないと、ミリアは彼女の評価をワンランク引き上げた。

「ああ、そうする……いや、むしろそうさせてもらいます!」

 ルークが改めて、頭を下げる……双方納得、問題なしだった。

「ああ、そう言う事なら、それでいいさ……では、早速だが出発したい……準備はもう出来ているようだしな……フォーメーションなどは道中で決めればいい……ダンジョンは、ここから西の「暗がりの迷宮」なのだが、構わないな?」

 ミリアがそう言うとルークも問題ないと返答する。
 かくして、即席パーティでサトルが待ち受ける「暗がりの迷宮」と向かう事となった。
 
 
「まったく……ここらは、スライムがやけに多いな」

 木の上でこそこそと、ミリア達の様子を伺っていた小型スライムを手に持ったクロスボウで仕留めたミリアが面倒くさそうに呟く。
 
「あの……ボールスライムなんてそこら中にいますから、いちいち相手してたらキリがないと思いますよ」

「そ、そうだ! 何もしてないのに殺すなんて、可哀想じゃないか!」

 サレナの言い分はもっともだったが、ルークの言い分はミリア達にとっては論外だった。
 ミリアがどう返すべきか考えあぐねていると、レインが妙に明るく可愛らしい声をあげる。
 
「うふふっ……あのスライム……明らかにこっちを監視してましたわ……だから、ブッ殺すのは当たり前ですのっ! なにより、わたし達、聖光教会は女神様の使徒様からありがたいお言葉を頂いていますからね……ふふふっ」

 笑顔で放たれる物騒な言葉……思わず振り返ってそれを目にしたルークは、見なかったにするとでも言いたげに、前を向く。

「……し、使徒様のお言葉ですか……ど、どんなお言葉なんでしょう?」

 隣りにいたファトリがおずおずと尋ねてくるので、レインはファトリに向き直るとにこやかに応える。
 
「はい! 「死んだスライムだけがいいスライムだ」……もはや、この言葉は我々のスローガンになりつつあります……スライムは人類の敵です……だから、見かけ次第ブッ殺します! 街の外にいるのは、基本的に所有者のいない野生種ですからね……気兼ねなんて必要ないですから!」

 まるで、害虫はぶち殺すとでも言うような調子のレインに、ファトリはドン引きと言った様子になる。
 ファトリとしては……ルークの飼っているスライムと遊んだりする程度には馴染んでいるので、さすがにこの物言いには、同調しきれなかった。

 例えれば、猫は悪魔の使いなので見かけ次第殺す……等と言われて、同意できるものは少ないだろう……ファトリの感覚は市井の一般市民と似たようなものなので、ドン引きするのもむしろ当然だった。

 けれども、サレナは真剣な表情で小声でミリアに訪ねてくる。

「……あの……人に成り代わるスライムがいるって噂……あれって本当なんですか? 樹や石壁に擬態するスライムを見た事あるんで、まんざらヨタ話でもないって思うんですけど……ミリアさんはご存知ですか?」

 サレナの質問に、ミリアも少し考えこむような素振りを見せると口を開く。

「……どうかな……君は見た事があるのかな?」

「いいえ……けど、噂はよく聞くんです……もし……それが本当ならとんでもない話だと思います……誰も信用出来なくなっちゃうじゃないですか! 出来れば、居て欲しくない……と言うのが正直なところです」

 このサレナについては、エルフの時点でほぼシロだとミリアは判断していた。
 
 ただし、話をするにしても今はタイミングが悪い……そう感じていた。
 どうもスライム共の監視の目が気になってしょうがない。

 なにより、彼女の仲間のルークについては、レインは始めから疑ってかかっているようだし、ミリアも確信は持てなかった。

「そうだな……隣に化物が居るかもしれない……そう思ってしまうと、全てが疑わしくなるからな……」
 
 ミリアも同僚がいつからスライム化していたのか全く気付けなかったし、総隊長や町長も頻繁に会っていて、その正体を見抜けなかったのだ……自分がどれだけ無防備だったが……後になって背筋が凍るような思いをしたものだった。
 
「そ、そうですよね……私も正直、怖いです……例えば、もしミリアさんやレインさんの正体が化物で、私達に害意を持ってるとしたら……そんな風に思ってしまうと、護衛どころじゃ無くなってしまいます……」

 どうやらサレナは、疑心暗鬼になっているようだった……これはあまり、いい傾向とは言えなかった。
 そう判断したミリアは少しだけ情報開示する事にした。

「ふむ……それはそうだな……これは、証明にならないかな?」

 そう言って、ミリアは右手をかざすと魔術回路を励起させる……それは複雑な紋様を描いており、いわば人体に内蔵された魔法陣のようなものだった。
 魔術の行使にはこれを発現させることが必須となっている。
 
 これは、後天的に埋め込むことも可能だが、基本的には親から子へ受け継がれる遺伝のようなもの。
 先天的に魔術回路を持つものと後天的に埋め込んだものとは、天と地くらい能力に差があった。

「魔術回路……それも相当高位の物じゃないですか……凄いっ!」

 サレナが驚いたように、ミリアの魔術回路の光を見つめる。
 
「うん、これは我が家伝来の固有魔術ユニークマジックで一時的に身体能力を超人レベルまで引きあげると言う代物だ……実はこれしか使えないのだが……君もエルフなら、これがどういう意味か解るだろう?」

 サレナが納得したように、頷く。
 先天型の魔術回路は、ある種の個人証明……それは魔術の使い手ならば常識レベルの話だった。

「……解りました、けど、そうなるとファトリやレインさんは大丈夫だとしても……」

 サレナの視線が先頭を行くルークの背中に向かう。
 
「……止めておけ……仮にも命を預けあった仲間なんだろう? 変な疑いを持つと、いざと言う時危うい」

 仲間を信頼出来ない状態で戦う……それは、冒険者にとって命取りになる。
 仲間を疑って、助けられる場面で躊躇ったばかりに、死なせてしまう……ルークがシロだった場合、その後悔がどれほどのものとなるか……やりきれない話だった。

「そ、そうですね……付き合いだって長いんだし、おかしな事だって、別に……大丈夫……大丈夫だから……信じよう……うん」

 半ば自分に言い聞かせるようにサレナが呟く。
 
 それに、何よりどんなに割り切っても、知り合いと同じ顔したスライムを斬るのは難しい。
 目の前で死体がスライムになっても、それでも理解が追いつかないのだ。

 オルメキアの各地でそんな光景は見てきたし、ミリア自身その体験は記憶に新しい……だから、万が一の時は、自分が斬る……ミリアはそう誓った。
 
 そして、目的地……「暗がりの迷宮」に到着。
 周囲を森に囲まれた、苔むした石造りの入り口が見えてくる。
 
「……皆、止まって……」
 
 そう言って、唐突にサレナが立ち止まると、すっと手を上げて、真上に向かって立て続けに矢を放った!
 
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