18 / 29
第六話「別れた時のあなたのままで」PART1
しおりを挟む
少し時間を遡る。
ここは、迷宮最深部の迷宮守護者が居座っていた最下層のボスルーム。
サトルはアメリアと5人ほどの武装神父達と待機していた。
「やれやれ……どうもこの作戦……どうにも回りくどくていけないな……なんで、僕がダンジョンのボスキャラよろしくこんなとこで待ち伏せてなきゃいけないんだか……」
「サトル様、多少回りくどくても、ここは敵地のようなものですから……なるべく目立たないのが肝要です……なにより、戦果もちゃんと上がっているじゃないですか……」
そう言って、アメリアはメガネをクイッと直しながら、微笑む。
アメリアは……実妹のレインと同様金色の髪で顔立ちもよく似ており、一言で言えばメガネを掛けて育ったレイン……まさにそんな感じだった。
元々技術畑の人間で最前線に出てくるタイプではないのだけど……オルメキアでのスライム掃討戦での功績もあり、サトルの側近の一人のようになってしまった。
レインとは10近くも離れた姉妹ながら、教団内の序列ではレインの方が上と言う複雑な関係なのだけど、お姉さん気取りは止めるつもりはないらしく、良く喧嘩もしている。
それでも、基本的には仲の良い姉妹……と言うのがサトルの印象だった。
「けど……レイン達の定時報告だと、今回はハズレの可能性が高いらしいじゃないか……」
相変わらず、不機嫌そうなサトルが応えると、アメリアも困ったように苦笑する。
「そうですね……女エルフと人間の魔術師と剣士だそうですからね……ただ、剣士がちょっと怪しいと言う話です……最近、スライム側も擬態能力を進化させたようで、切って血を流すケースや浄化の炎を無効化するような事例があるみたいで……ホント、厄介な相手ですわ」
「なるほどね……僕のスライムの判別能力もオーラの色が見分けられるくらいまで近づかないと確実じゃないからなぁ……敵も日々進化している……か、面倒な話だな……下等生物のくせに無駄に高度だ」
「伊達に世界を席巻してないと言う事ですかね……けど、事情を知って、こちらに同調してくれる冒険者も増えてますからね。悪いことばかりじゃないですよ……せめて、ギルドが味方してくれると良いんですけどね……」
「やれやれ……目につくスライムを片っ端から狩っていくだけで良いって思ってたんだけどな……人間に紛れてるような奴が相手だと、どうしても人間が邪魔になってしまう……女神様も難儀な制約を課してくれたものだよ」
「……我々がサトル様の剣となりますから、ご安心を……我々をいくらでも使ってください」
そう言って、深々と頭を下げるアメリア……なにぶん、彼女達聖光教会の人間にとっては、サトルは女神様の御使い……けれども、あまりに実直すぎるのでサトル的には引き気味だった。
そんな風に無駄話をしていると、部屋に戻ってきた武装神父がアメリアに耳打ちする……アメリアも表情を厳しいものにする。
「……どうした? 何かあった?」
「いえ……地上の歩哨と連絡が取れなくなったそうです……それと一層に配置していた分隊からも……現在、二層に展開していた隊員を集結させています……敵襲の可能性が考えられます!」
「まさか……ここに敵襲だと? どう言う事だ……情報が向こうに漏れていたのか?」
「解りません……付近のスライムは掃討したはずなんですが……何ぶん敵の規模が解りません……サトル様、戦闘準備を!」
……ダンジョンの最深部……もっとも守りが堅牢と言えば聞こえが良いが、逃げ場もないとも言えるのだった。
二層に居た武装神父の残り5名が、広めのボスルームに駆け込んでくると、盾と剣を構えて臨戦態勢に入る。
10秒もしないうちに、スライムが押し寄せてくる!
たちまち、乱戦となり浄化の炎、アメリアの放つ小型爆弾……竜人形態となったサトルの吐く炎が飛び交う戦場となる。
サトル付きの武装神父も教会の精鋭……アメリアも司祭級とは言え、その戦闘力は低くない。
数に任せて押し寄せるスライム相手に誰もが奮戦し、その勢いが衰えかけるところまで行けた。
けれども、突然の冷気と共に現れた白い騎士のような姿の異形のスライムの登場で戦況は一気に逆転された。
現れるなりの怒涛のような勢いで放たれる剣手と呼ばれる刃物状の触手。
……たった一体の変異スライムその攻撃によって、アメリアを含むほぼ全員が負傷し、戦闘不能者も続出し……戦況は一気に逆転した。
「……アメリア、負傷者を連れて脱出するんだ……僕が時間を稼ぐ」
アメリア達はかねてからの戦訓を元に、緊急脱出用に使い捨ての転移魔法を封じた転移石を持っていた。
だから、彼女達だけなら、即時撤退が可能だった。
もちろん、サトルも同じものを持っているのだが……その為には、一度人間形態に戻る必要があった。
けれども、そんな隙を見せたら、確実に殺される……それが解っていたからこそ、サトルはアメリア達を先に撤退させると言う道を選んだ。
アメリア達を犠牲にすれば、サトルだけが脱出することも可能だったのだが……サトルは、そんな選択は選ばない……むしろ、彼には撤退という選択肢自体がそもそも頭になかった。
「い、いけませんサトル様……そのよう無茶をされては困ります!」
「いいから行けっ! 敵はスライムだ……僕も君達がいたんじゃ本気で戦えない……なぁに、こいつらを皆殺しにしたら、すぐに脱出するさ……」
すごみのある笑顔と共に睨まれたアメリアは息を呑むと、全員に撤退命令を下命する。
一人、また一人と武装神父達が転移の魔法陣の光と共に消えていく。
白い甲冑のようなものを身に纏った変異個体……敵は、サトル達の様子を興味深げに見てはいたが、サトルが牽制しているのもあって、おとなしく見逃してくれたようだった。
「さぁ、行くぞ化物っ! 全部ぶち殺してやるっ!」
……かくして、異形同士の戦いが始まった。
ここは、迷宮最深部の迷宮守護者が居座っていた最下層のボスルーム。
サトルはアメリアと5人ほどの武装神父達と待機していた。
「やれやれ……どうもこの作戦……どうにも回りくどくていけないな……なんで、僕がダンジョンのボスキャラよろしくこんなとこで待ち伏せてなきゃいけないんだか……」
「サトル様、多少回りくどくても、ここは敵地のようなものですから……なるべく目立たないのが肝要です……なにより、戦果もちゃんと上がっているじゃないですか……」
そう言って、アメリアはメガネをクイッと直しながら、微笑む。
アメリアは……実妹のレインと同様金色の髪で顔立ちもよく似ており、一言で言えばメガネを掛けて育ったレイン……まさにそんな感じだった。
元々技術畑の人間で最前線に出てくるタイプではないのだけど……オルメキアでのスライム掃討戦での功績もあり、サトルの側近の一人のようになってしまった。
レインとは10近くも離れた姉妹ながら、教団内の序列ではレインの方が上と言う複雑な関係なのだけど、お姉さん気取りは止めるつもりはないらしく、良く喧嘩もしている。
それでも、基本的には仲の良い姉妹……と言うのがサトルの印象だった。
「けど……レイン達の定時報告だと、今回はハズレの可能性が高いらしいじゃないか……」
相変わらず、不機嫌そうなサトルが応えると、アメリアも困ったように苦笑する。
「そうですね……女エルフと人間の魔術師と剣士だそうですからね……ただ、剣士がちょっと怪しいと言う話です……最近、スライム側も擬態能力を進化させたようで、切って血を流すケースや浄化の炎を無効化するような事例があるみたいで……ホント、厄介な相手ですわ」
「なるほどね……僕のスライムの判別能力もオーラの色が見分けられるくらいまで近づかないと確実じゃないからなぁ……敵も日々進化している……か、面倒な話だな……下等生物のくせに無駄に高度だ」
「伊達に世界を席巻してないと言う事ですかね……けど、事情を知って、こちらに同調してくれる冒険者も増えてますからね。悪いことばかりじゃないですよ……せめて、ギルドが味方してくれると良いんですけどね……」
「やれやれ……目につくスライムを片っ端から狩っていくだけで良いって思ってたんだけどな……人間に紛れてるような奴が相手だと、どうしても人間が邪魔になってしまう……女神様も難儀な制約を課してくれたものだよ」
「……我々がサトル様の剣となりますから、ご安心を……我々をいくらでも使ってください」
そう言って、深々と頭を下げるアメリア……なにぶん、彼女達聖光教会の人間にとっては、サトルは女神様の御使い……けれども、あまりに実直すぎるのでサトル的には引き気味だった。
そんな風に無駄話をしていると、部屋に戻ってきた武装神父がアメリアに耳打ちする……アメリアも表情を厳しいものにする。
「……どうした? 何かあった?」
「いえ……地上の歩哨と連絡が取れなくなったそうです……それと一層に配置していた分隊からも……現在、二層に展開していた隊員を集結させています……敵襲の可能性が考えられます!」
「まさか……ここに敵襲だと? どう言う事だ……情報が向こうに漏れていたのか?」
「解りません……付近のスライムは掃討したはずなんですが……何ぶん敵の規模が解りません……サトル様、戦闘準備を!」
……ダンジョンの最深部……もっとも守りが堅牢と言えば聞こえが良いが、逃げ場もないとも言えるのだった。
二層に居た武装神父の残り5名が、広めのボスルームに駆け込んでくると、盾と剣を構えて臨戦態勢に入る。
10秒もしないうちに、スライムが押し寄せてくる!
たちまち、乱戦となり浄化の炎、アメリアの放つ小型爆弾……竜人形態となったサトルの吐く炎が飛び交う戦場となる。
サトル付きの武装神父も教会の精鋭……アメリアも司祭級とは言え、その戦闘力は低くない。
数に任せて押し寄せるスライム相手に誰もが奮戦し、その勢いが衰えかけるところまで行けた。
けれども、突然の冷気と共に現れた白い騎士のような姿の異形のスライムの登場で戦況は一気に逆転された。
現れるなりの怒涛のような勢いで放たれる剣手と呼ばれる刃物状の触手。
……たった一体の変異スライムその攻撃によって、アメリアを含むほぼ全員が負傷し、戦闘不能者も続出し……戦況は一気に逆転した。
「……アメリア、負傷者を連れて脱出するんだ……僕が時間を稼ぐ」
アメリア達はかねてからの戦訓を元に、緊急脱出用に使い捨ての転移魔法を封じた転移石を持っていた。
だから、彼女達だけなら、即時撤退が可能だった。
もちろん、サトルも同じものを持っているのだが……その為には、一度人間形態に戻る必要があった。
けれども、そんな隙を見せたら、確実に殺される……それが解っていたからこそ、サトルはアメリア達を先に撤退させると言う道を選んだ。
アメリア達を犠牲にすれば、サトルだけが脱出することも可能だったのだが……サトルは、そんな選択は選ばない……むしろ、彼には撤退という選択肢自体がそもそも頭になかった。
「い、いけませんサトル様……そのよう無茶をされては困ります!」
「いいから行けっ! 敵はスライムだ……僕も君達がいたんじゃ本気で戦えない……なぁに、こいつらを皆殺しにしたら、すぐに脱出するさ……」
すごみのある笑顔と共に睨まれたアメリアは息を呑むと、全員に撤退命令を下命する。
一人、また一人と武装神父達が転移の魔法陣の光と共に消えていく。
白い甲冑のようなものを身に纏った変異個体……敵は、サトル達の様子を興味深げに見てはいたが、サトルが牽制しているのもあって、おとなしく見逃してくれたようだった。
「さぁ、行くぞ化物っ! 全部ぶち殺してやるっ!」
……かくして、異形同士の戦いが始まった。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる