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第七話「宰相フランネル」PART3
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それにしても、こうやって情報を統括していくと、ルメリアとオルメキアの国境付近の情報網が穴だらけになっているのは地味に痛手だった。
擬装情報と思われる情報も多数あり、現地の状況はフランネルですら、完全には把握出来ていなかった。
けれども、オルメキアで実施されたスライムの駆除作戦については、フランネルはその全容を掴みつつあった。
その際使われたスライムだけに効く毒物入りの餌をばら撒いたり、流通網に毒入り餌を混入させる手口。
どうもルメリアでも同じ手口が使われているようで、国境近辺の町中で飼われている愛玩種や野生種が激減、さらに冒険者に浸透させていた擬態種が不自然な形で行方不明になっていた。
冒険者に擬態したスライムは、国の垣根を自在に超えて、自在に動かせる非常に有用な手駒だったのだが、それをピンポイントで狙って来るとは……厄介な話だった。
それに加えて、スライムに対する毒物も極めてタチが悪かった。
毒物を摂取したスライムは、浸透圧が狂わされて干からびたようになってほぼ確実に死滅する……摂取したらほぼ最期……致死率98%にも及ぶ凄まじいものだった。
その毒は無味無臭の水溶性と推測されており、スライムもつい無警戒で摂取してしまうらしく、スライムの繁殖力以上の被害をもたらしていた……。
その上、遅効性の上、伝染性でもあるのか、感染したスライムが接触するだけで、非感染状態の個体も同様の症状を起こして高確率で死ぬと言う非常に質の悪いものだった。
他にも即効性のものも作られているようで、こちらは体液の異常温度上昇を引き起こし、体液が沸騰したようになって死ぬ……要は火炙りにするような効果があるようだった。
これは実験データが得られたと言うより、各方面からの報告からのフランネルの予想なのだが……素晴らしく合理的だと、フランネルはむしろ感心するばかりだった。
おまけにボールスライム共は知能が低い上に基本的に飢えているので、餌があれば何も考えずに食ってしまう……この有様では対策なぞ出来るはずもなかった。
スライムも休眠の際などに一箇所に集まる習性があるので、一つのコロニーがまるまる全滅したケースも続出している上に、擬態種や大型種と言った高等なスライムにまで感染して、死ぬケースすらも出ていた。
ここまで来ると、単純な化学物質の毒物ではなく……生物兵器のたぐいの可能性もあった。
この悪辣さと合理性……相手は本気でスライムを根絶やしにするつもりでいるようだった。
フランネルにも、その凶悪な意志がひしひしと伝わってくるようだった。
恐らく、この毒はますます巧妙化し凶悪化するだろう。
現状、餌を経由する形だからいいものを……気体化され空気感染するものが開発されて、帝国全土に無差別にばら撒かれたら、帝国は国民の暴発を抑えている監視網を失うのみならず、支配者層を一気に失う事になり、良くて群雄割拠……悪ければバランティのような無法地帯化するだろう。
まさに最悪のシナリオ……早急に対策を考えるべきだった。
頭の痛い事案がまた一つ増えてしまった……。
この件については、フランネルはガズマイヤーに伏せておくつもりだった。
……どうせ、感情的になって餌の流通業者を処刑するとか、スライムを保護、隔離させると言った的はずれな指示を出すのは目に見えている。
そんな事で対策できれば苦労しない……。
スライムを隔離させて一箇所に集めてしまっては、その主目的と言える監視網として機能しなくなってしまう。
その上、万が一生物兵器だった場合、たった一匹でも感染している個体が紛れ込めば根こそぎ全滅してしまう。
そのような本末転倒な愚策……論外だった。
毒の気体化や帝国全土へばら撒かれる可能性なぞ口にしようものなら、恐らく発狂……しばらく、使い物にならなくなるだろう。
ガズマイヤーでなければ、スライム共の統括は非常に困難を伴う……そう言う意味ではその役割は重要だった。
そう簡単に使い物にならなくなっては、フランネルも困る……ガズマイヤーへ与える情報は厳選した上で、不要な情報は与えない……あの男を操るにはそう言う方法が最適だった。
そうなると、この案件に関しては、スライム共には一切内密で進める必要があった……毒物サンプルを入手し、旧知の賢者達にでも分析、対策を考えさせる……この方向性が良いだろう。
フランネルはそう結論付ける。
それまでの被害は目をつぶる……どうせ、スライムなどいくらでも増える……帝国内では、むしろ保護政策の結果、増えすぎた野生種スライムの食害が問題になっているくらいなのだ。
……保護名目で、大量捕獲して足りないところへ移送すれば穴の空いた情報網の補完も出来る……一石二鳥だった。
そう考えれば、さしたる問題ではなかった。
フランネルは二通の文書を作成すると、部下を呼び出し所定のルートで届けるように厳命する。
一通は大賢者サルイーンへの私信、もう一つはルメリア方面の密偵の統括者への命令書だった。
前者は、後日届けられるサンプルに含有された毒物の分析とその対策依頼。
……サルイーンはエルフの古老のひとりでフランネルにとっても旧知の仲だった。
世俗の事に一切興味を持たず、自らの学術的探究心に導かれるままに、研究三昧の日々を送る一種の狂人なのだが、こう言う話なら、むしろ飛びついてくると言う確信があった。
後者は、毒物サンプルと毒で死んだスライムの死骸を回収し、幾多もの人物を経由する複雑なルートを経由してサルイーンに届けるように指示しておいた。
実験用のスライムの生体サンプルも送る必要があったが、そのあたりは追々手配すれば済む。
命令を受ける当人は、どこの誰からの命令かすら理解していないのだが、金で仕事を受ける代々裏稼業を専門にしているような男だ……この手合は、金さえ払えば忠実だから、むしろ信頼できた。
スライム毒への対策は、現状出来る範囲としてはこの程度だった。
例の女神の使徒……こちらについても対策は必要だった。
それについては、すでにクリスタリアと言う最強クラスの個体を送り込んでいたが。
あれはあれで、ガズマイヤーの支配力すら及ばない化け物となっており、扱いに困る存在だった。
ひとまず手をこまねいている訳にはいかないので、問題のレベル5個体、クリスタリアを呼び出す事にした。
擬装情報と思われる情報も多数あり、現地の状況はフランネルですら、完全には把握出来ていなかった。
けれども、オルメキアで実施されたスライムの駆除作戦については、フランネルはその全容を掴みつつあった。
その際使われたスライムだけに効く毒物入りの餌をばら撒いたり、流通網に毒入り餌を混入させる手口。
どうもルメリアでも同じ手口が使われているようで、国境近辺の町中で飼われている愛玩種や野生種が激減、さらに冒険者に浸透させていた擬態種が不自然な形で行方不明になっていた。
冒険者に擬態したスライムは、国の垣根を自在に超えて、自在に動かせる非常に有用な手駒だったのだが、それをピンポイントで狙って来るとは……厄介な話だった。
それに加えて、スライムに対する毒物も極めてタチが悪かった。
毒物を摂取したスライムは、浸透圧が狂わされて干からびたようになってほぼ確実に死滅する……摂取したらほぼ最期……致死率98%にも及ぶ凄まじいものだった。
その毒は無味無臭の水溶性と推測されており、スライムもつい無警戒で摂取してしまうらしく、スライムの繁殖力以上の被害をもたらしていた……。
その上、遅効性の上、伝染性でもあるのか、感染したスライムが接触するだけで、非感染状態の個体も同様の症状を起こして高確率で死ぬと言う非常に質の悪いものだった。
他にも即効性のものも作られているようで、こちらは体液の異常温度上昇を引き起こし、体液が沸騰したようになって死ぬ……要は火炙りにするような効果があるようだった。
これは実験データが得られたと言うより、各方面からの報告からのフランネルの予想なのだが……素晴らしく合理的だと、フランネルはむしろ感心するばかりだった。
おまけにボールスライム共は知能が低い上に基本的に飢えているので、餌があれば何も考えずに食ってしまう……この有様では対策なぞ出来るはずもなかった。
スライムも休眠の際などに一箇所に集まる習性があるので、一つのコロニーがまるまる全滅したケースも続出している上に、擬態種や大型種と言った高等なスライムにまで感染して、死ぬケースすらも出ていた。
ここまで来ると、単純な化学物質の毒物ではなく……生物兵器のたぐいの可能性もあった。
この悪辣さと合理性……相手は本気でスライムを根絶やしにするつもりでいるようだった。
フランネルにも、その凶悪な意志がひしひしと伝わってくるようだった。
恐らく、この毒はますます巧妙化し凶悪化するだろう。
現状、餌を経由する形だからいいものを……気体化され空気感染するものが開発されて、帝国全土に無差別にばら撒かれたら、帝国は国民の暴発を抑えている監視網を失うのみならず、支配者層を一気に失う事になり、良くて群雄割拠……悪ければバランティのような無法地帯化するだろう。
まさに最悪のシナリオ……早急に対策を考えるべきだった。
頭の痛い事案がまた一つ増えてしまった……。
この件については、フランネルはガズマイヤーに伏せておくつもりだった。
……どうせ、感情的になって餌の流通業者を処刑するとか、スライムを保護、隔離させると言った的はずれな指示を出すのは目に見えている。
そんな事で対策できれば苦労しない……。
スライムを隔離させて一箇所に集めてしまっては、その主目的と言える監視網として機能しなくなってしまう。
その上、万が一生物兵器だった場合、たった一匹でも感染している個体が紛れ込めば根こそぎ全滅してしまう。
そのような本末転倒な愚策……論外だった。
毒の気体化や帝国全土へばら撒かれる可能性なぞ口にしようものなら、恐らく発狂……しばらく、使い物にならなくなるだろう。
ガズマイヤーでなければ、スライム共の統括は非常に困難を伴う……そう言う意味ではその役割は重要だった。
そう簡単に使い物にならなくなっては、フランネルも困る……ガズマイヤーへ与える情報は厳選した上で、不要な情報は与えない……あの男を操るにはそう言う方法が最適だった。
そうなると、この案件に関しては、スライム共には一切内密で進める必要があった……毒物サンプルを入手し、旧知の賢者達にでも分析、対策を考えさせる……この方向性が良いだろう。
フランネルはそう結論付ける。
それまでの被害は目をつぶる……どうせ、スライムなどいくらでも増える……帝国内では、むしろ保護政策の結果、増えすぎた野生種スライムの食害が問題になっているくらいなのだ。
……保護名目で、大量捕獲して足りないところへ移送すれば穴の空いた情報網の補完も出来る……一石二鳥だった。
そう考えれば、さしたる問題ではなかった。
フランネルは二通の文書を作成すると、部下を呼び出し所定のルートで届けるように厳命する。
一通は大賢者サルイーンへの私信、もう一つはルメリア方面の密偵の統括者への命令書だった。
前者は、後日届けられるサンプルに含有された毒物の分析とその対策依頼。
……サルイーンはエルフの古老のひとりでフランネルにとっても旧知の仲だった。
世俗の事に一切興味を持たず、自らの学術的探究心に導かれるままに、研究三昧の日々を送る一種の狂人なのだが、こう言う話なら、むしろ飛びついてくると言う確信があった。
後者は、毒物サンプルと毒で死んだスライムの死骸を回収し、幾多もの人物を経由する複雑なルートを経由してサルイーンに届けるように指示しておいた。
実験用のスライムの生体サンプルも送る必要があったが、そのあたりは追々手配すれば済む。
命令を受ける当人は、どこの誰からの命令かすら理解していないのだが、金で仕事を受ける代々裏稼業を専門にしているような男だ……この手合は、金さえ払えば忠実だから、むしろ信頼できた。
スライム毒への対策は、現状出来る範囲としてはこの程度だった。
例の女神の使徒……こちらについても対策は必要だった。
それについては、すでにクリスタリアと言う最強クラスの個体を送り込んでいたが。
あれはあれで、ガズマイヤーの支配力すら及ばない化け物となっており、扱いに困る存在だった。
ひとまず手をこまねいている訳にはいかないので、問題のレベル5個体、クリスタリアを呼び出す事にした。
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