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冒険の発端は
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彼ら――柊修哉と東雲錬は秘境を求めて冒険をしている。
錬は六十歳を超えながらも、未だ現役で冒険家を続けている。人生の半分近くを冒険に捧げ、様々な秘境をその目に焼き付けて来た。冒険家の間でも、錬の名前は知られているほどでもある。
一方、修哉はまだ二十代前半で冒険歴も浅い。修哉が見てきた秘境はまだ二桁にも達しておらず、自分一人では冒険に出たことさえもなかった。いや、正確に言うのであれば、一人の冒険家としては未だ秘境を訪れたことがなかった。
年齢も離れ家族という間柄でもない二人が、どうして一緒に冒険をしているのか――、それを説明するためには、時を数年は遡らなければならない。
修哉は大学生の時、自分探しをするために世界を旅していた。親や友達からは猛反対を受けたが、今行かなかったら後悔するような感覚が、ずっと心を締め付けていた。だから、親や友達の反対を押し切って、大学生活でバイトをしていた貯金を全部はたいで、世界へと足を向けた。
最初は本を片手に、観光案内に従いながら自分がまだ見たことのない世界を見て楽しんでいた。人、建物、食事、文化、そして圧倒的なスケールの自然。修哉が目にするもの全てが新鮮で、その時の修哉は満足していた。やはり自分の直感を信じて、世界に旅立って正解だった。
しかし、いくつかの国を巡っていくにつれ、徐々に修哉は虚無感に襲われた。ただ目的もなく旅をしていた故に、何も得るものがなかったのだ。言い換えるのならば、ただ知らない国を観光して楽しんでいただけであった。そして、その楽しかったという想いも、今の虚無感に塗りつぶされて意味を為さなくなっている。
元々、修哉は自然を見ることが好きだった。だから、こうして世界中を旅しているのも自分探しと言い訳をしながら自分の好きなことだけをしているのではないかという風に考えるようになった。
自分の好きなことだけをただ何となくしているのでは日本にいた頃と何も変わらないと思った修哉は手に持っていた本を捨てて、現地の人から話を聞くようにした。
話を聞いていく内に、修哉が滞在している国では誰も足を踏み入りたがらない場所があると聞いた。その理由は、どうやらその場所だけ独特の、人を寄せ付けない不穏な空気を放っているからだそうだ。
だから、その話を聞いた修哉は、その場所へと向かうことを決めた。
当然、現地の人は修哉を止めようとした。しかし、親や友達からの反対を押し切って世界へ旅立った時よりも、その場所に行きたいという想いが修哉の心を突き動かしていた。修哉はせっかくのアドバイスに、聞く耳を傾けなかった。
熱い修哉の想いに、何を言っても無駄だと判断した現地の人は、地図だけ書いて修哉に渡した。
地図を頼りにその場所へ行くと、確かにこの場所だけ空気が違っていたのが、好奇心旺盛なだけでただの一般人である修哉にも感じられた。この場所に入ったら恐ろしい何かが起こってしまうような嫌な予感が胸を締め付ける。無意識に、足が一歩後退ってしまった。
臆していることに気が付いた修哉は、弱気になった心をリセットするように頬を叩き、その不穏な空気が流れる場所へと力強く足を踏み出した。
これが、修哉が初めて秘境に訪れた瞬間である。
最初は何もなかった。ただの森を散策しているような感覚は、現地の人が誇張され過ぎた噂を単純に鵜呑みしているだけだと思っていた。
しかし、少し奥に足を踏み入れていくと、空気が一変するのを肌に感じた。
突然、来るものを拒むような動物達の鳴き声が、空間を占め始めた。森に佇む木々も、生暖かい風に揺らされ、音を上げる。まるで明確な意思を持って、修哉という異物を排除しようとしているかのようだ。
その自然離れした現象に不気味さを覚えた修哉は、とんでもない過ちを犯してしまったのではないかと後悔した。
だが、それと同時に好奇心もあった。誰もが昔感じていた子供の時のように心を燻ぶられる感覚が、修哉の心に宿っていたのだ。
不安な感情よりも子供のような好奇心が勝ってしまった修哉は、更に奥へと歩み始めた。
しかし、奥に歩いて行くにつれ、あんなにも騒ぎ立てていた動物達の鳴き声がいつの間にか消えていた。風さえも吹いていない。さすがに、この状況は危険だと思った修哉は来た道を戻ることにした。
修哉はただ真っ直ぐ来た道を戻ればいいと安逸な考えでいた。
だが、その安逸な考えを抱いていたことが甘かったということにすぐ修哉は気づいた。歩いても歩いても、最初に足を踏み入れた入口に戻ることが出来なかったのだ。
疲れも募ってか、二度と戻れないという絶望が修哉の心を支配していった。そして、ついに歩くことを止め、近くにあった木にもたれかかった。
そして、この立場に立たされて、ようやく現実を見直すことが出来た。
いつの間にか夜になっていたのか、ほぼ周りが見えないという状況に陥っていた。星の光さえ届かない、辺鄙な森だ。
食べるものも寒さを防ぐものもない修哉は、冗談ではなく死を覚悟した。途端、修哉は体の力が抜け、木を背もたれにしながらズルズルと滑り落ちていった。そして、その場に座り込んでしまった。立ち上がる気力は、この時の修哉にはなかった。
座り込むと同時、修哉の目からは涙が零れ始めていた。
(なん……で……)
自分の頬に伝う涙に触れて、自分に問いかけた。けれど、答えは返ってこない。
修哉は自分が泣いている理由が分からなかったのだ。いくら頭の中で考えても見当さえ付かない。
(あぁ、そうか)
しかし、思考を巡らせている内に、修哉の中で一つの答えに辿り着いた。
(俺は何も分からないんだ。どこへ行けばいいかも、何をすればいいかも)
その一つの考えが浮かんでくると、修哉は自分が何のために生まれてきたのかも分からなくなってしまった。そして、これから何をどう生きようとも正解がないように思えた。
修哉は頭を上に向け、目から零れる涙を止めようと手で覆い隠そうとした。
しかし、涙が止まるということはなかった。今流している涙だけで人生一生分の涙を流しているのではないかと疑ってしまうほどの量だ。
目を開いても目を閉じても、修哉には暗闇しか見えることが出来なかった。
(なら、いっそ)
もう全てを諦めようと目を閉じた。
「君、こんなところで大丈夫かい?」
何もかも諦めた瞬間、誰かに声をかけられた。
その声に反応しようと目を開けると、ライトの光が当てられていた。何も見えない暗闇の状況の中で、そのライトの光は希望の光のように感じられた。
「どうして泣いているんだい?」
ようやくライトの光に目が慣れて、修哉は目の前にいる人を見た。
初めて見る人だった。
その人は、修哉が今まで見た事のないくらい優しい表情を浮かべ、心の底からたった今出会ったばかりの修哉のことを心配しているようだった。
「……あなたは?」
修哉は目の前にいる人のことが気になって、質問をした。
「私は東雲錬といって、世界中を旅している冒険家なんだ」
錬は修哉の質問に嫌な顔を一つせず答えてくれた。
修哉と一回りも変わらない年齢であろうはずなのに、修哉は錬のことが今まで出会って来た人と全く違って見えた。また、どんな有名人であろうとも錬よりも素晴らしい人はいないだろうとさえ思えた。
錬のことをまだ一目しか見ていないのに、そういう直感さえ与えるような人だった。先ほどまで抱いていた人生への絶望も、いつの間にか修哉の心の中から溶けて、消えていた。
修哉が心を奪われたように錬のことを見ていると、錬は背負っていたリュックの中から簡易食料を修哉に渡した。
「ほら、こんな夜遅くまで外にいて、お腹が減っているだろう」
錬は優しく修哉に微笑みかけると、修哉は何も疑いを持たずに錬から受け取った簡易食料を、恥じることなく急いで口に頬張った。
食料を噛み締める度に、先ほどとは違った涙が修哉の目から溢れてきた。
先ほどの涙が死への恐怖から来たとするならば、今流している涙は生きることへの希望から来るものだろう。
「まだ足りなかったら遠慮なく言っていいからね」
そう言うと錬はリュックから別の食料を取り出し、屈託のない笑顔で修哉に見せた。
「ありがとうございます……ありがとうございます……」
その錬の優しさに触れて修哉は、ただ涙を流しながら、ただただ礼を言うことしか出来なかった。
彼ら――柊修哉と東雲錬は秘境を求めて冒険をしている。
錬は六十歳を超えながらも、未だ現役で冒険家を続けている。人生の半分近くを冒険に捧げ、様々な秘境をその目に焼き付けて来た。冒険家の間でも、錬の名前は知られているほどでもある。
一方、修哉はまだ二十代前半で冒険歴も浅い。修哉が見てきた秘境はまだ二桁にも達しておらず、自分一人では冒険に出たことさえもなかった。いや、正確に言うのであれば、一人の冒険家としては未だ秘境を訪れたことがなかった。
年齢も離れ家族という間柄でもない二人が、どうして一緒に冒険をしているのか――、それを説明するためには、時を数年は遡らなければならない。
修哉は大学生の時、自分探しをするために世界を旅していた。親や友達からは猛反対を受けたが、今行かなかったら後悔するような感覚が、ずっと心を締め付けていた。だから、親や友達の反対を押し切って、大学生活でバイトをしていた貯金を全部はたいで、世界へと足を向けた。
最初は本を片手に、観光案内に従いながら自分がまだ見たことのない世界を見て楽しんでいた。人、建物、食事、文化、そして圧倒的なスケールの自然。修哉が目にするもの全てが新鮮で、その時の修哉は満足していた。やはり自分の直感を信じて、世界に旅立って正解だった。
しかし、いくつかの国を巡っていくにつれ、徐々に修哉は虚無感に襲われた。ただ目的もなく旅をしていた故に、何も得るものがなかったのだ。言い換えるのならば、ただ知らない国を観光して楽しんでいただけであった。そして、その楽しかったという想いも、今の虚無感に塗りつぶされて意味を為さなくなっている。
元々、修哉は自然を見ることが好きだった。だから、こうして世界中を旅しているのも自分探しと言い訳をしながら自分の好きなことだけをしているのではないかという風に考えるようになった。
自分の好きなことだけをただ何となくしているのでは日本にいた頃と何も変わらないと思った修哉は手に持っていた本を捨てて、現地の人から話を聞くようにした。
話を聞いていく内に、修哉が滞在している国では誰も足を踏み入りたがらない場所があると聞いた。その理由は、どうやらその場所だけ独特の、人を寄せ付けない不穏な空気を放っているからだそうだ。
だから、その話を聞いた修哉は、その場所へと向かうことを決めた。
当然、現地の人は修哉を止めようとした。しかし、親や友達からの反対を押し切って世界へ旅立った時よりも、その場所に行きたいという想いが修哉の心を突き動かしていた。修哉はせっかくのアドバイスに、聞く耳を傾けなかった。
熱い修哉の想いに、何を言っても無駄だと判断した現地の人は、地図だけ書いて修哉に渡した。
地図を頼りにその場所へ行くと、確かにこの場所だけ空気が違っていたのが、好奇心旺盛なだけでただの一般人である修哉にも感じられた。この場所に入ったら恐ろしい何かが起こってしまうような嫌な予感が胸を締め付ける。無意識に、足が一歩後退ってしまった。
臆していることに気が付いた修哉は、弱気になった心をリセットするように頬を叩き、その不穏な空気が流れる場所へと力強く足を踏み出した。
これが、修哉が初めて秘境に訪れた瞬間である。
最初は何もなかった。ただの森を散策しているような感覚は、現地の人が誇張され過ぎた噂を単純に鵜呑みしているだけだと思っていた。
しかし、少し奥に足を踏み入れていくと、空気が一変するのを肌に感じた。
突然、来るものを拒むような動物達の鳴き声が、空間を占め始めた。森に佇む木々も、生暖かい風に揺らされ、音を上げる。まるで明確な意思を持って、修哉という異物を排除しようとしているかのようだ。
その自然離れした現象に不気味さを覚えた修哉は、とんでもない過ちを犯してしまったのではないかと後悔した。
だが、それと同時に好奇心もあった。誰もが昔感じていた子供の時のように心を燻ぶられる感覚が、修哉の心に宿っていたのだ。
不安な感情よりも子供のような好奇心が勝ってしまった修哉は、更に奥へと歩み始めた。
しかし、奥に歩いて行くにつれ、あんなにも騒ぎ立てていた動物達の鳴き声がいつの間にか消えていた。風さえも吹いていない。さすがに、この状況は危険だと思った修哉は来た道を戻ることにした。
修哉はただ真っ直ぐ来た道を戻ればいいと安逸な考えでいた。
だが、その安逸な考えを抱いていたことが甘かったということにすぐ修哉は気づいた。歩いても歩いても、最初に足を踏み入れた入口に戻ることが出来なかったのだ。
疲れも募ってか、二度と戻れないという絶望が修哉の心を支配していった。そして、ついに歩くことを止め、近くにあった木にもたれかかった。
そして、この立場に立たされて、ようやく現実を見直すことが出来た。
いつの間にか夜になっていたのか、ほぼ周りが見えないという状況に陥っていた。星の光さえ届かない、辺鄙な森だ。
食べるものも寒さを防ぐものもない修哉は、冗談ではなく死を覚悟した。途端、修哉は体の力が抜け、木を背もたれにしながらズルズルと滑り落ちていった。そして、その場に座り込んでしまった。立ち上がる気力は、この時の修哉にはなかった。
座り込むと同時、修哉の目からは涙が零れ始めていた。
(なん……で……)
自分の頬に伝う涙に触れて、自分に問いかけた。けれど、答えは返ってこない。
修哉は自分が泣いている理由が分からなかったのだ。いくら頭の中で考えても見当さえ付かない。
(あぁ、そうか)
しかし、思考を巡らせている内に、修哉の中で一つの答えに辿り着いた。
(俺は何も分からないんだ。どこへ行けばいいかも、何をすればいいかも)
その一つの考えが浮かんでくると、修哉は自分が何のために生まれてきたのかも分からなくなってしまった。そして、これから何をどう生きようとも正解がないように思えた。
修哉は頭を上に向け、目から零れる涙を止めようと手で覆い隠そうとした。
しかし、涙が止まるということはなかった。今流している涙だけで人生一生分の涙を流しているのではないかと疑ってしまうほどの量だ。
目を開いても目を閉じても、修哉には暗闇しか見えることが出来なかった。
(なら、いっそ)
もう全てを諦めようと目を閉じた。
「君、こんなところで大丈夫かい?」
何もかも諦めた瞬間、誰かに声をかけられた。
その声に反応しようと目を開けると、ライトの光が当てられていた。何も見えない暗闇の状況の中で、そのライトの光は希望の光のように感じられた。
「どうして泣いているんだい?」
ようやくライトの光に目が慣れて、修哉は目の前にいる人を見た。
初めて見る人だった。
その人は、修哉が今まで見た事のないくらい優しい表情を浮かべ、心の底からたった今出会ったばかりの修哉のことを心配しているようだった。
「……あなたは?」
修哉は目の前にいる人のことが気になって、質問をした。
「私は東雲錬といって、世界中を旅している冒険家なんだ」
錬は修哉の質問に嫌な顔を一つせず答えてくれた。
修哉と一回りも変わらない年齢であろうはずなのに、修哉は錬のことが今まで出会って来た人と全く違って見えた。また、どんな有名人であろうとも錬よりも素晴らしい人はいないだろうとさえ思えた。
錬のことをまだ一目しか見ていないのに、そういう直感さえ与えるような人だった。先ほどまで抱いていた人生への絶望も、いつの間にか修哉の心の中から溶けて、消えていた。
修哉が心を奪われたように錬のことを見ていると、錬は背負っていたリュックの中から簡易食料を修哉に渡した。
「ほら、こんな夜遅くまで外にいて、お腹が減っているだろう」
錬は優しく修哉に微笑みかけると、修哉は何も疑いを持たずに錬から受け取った簡易食料を、恥じることなく急いで口に頬張った。
食料を噛み締める度に、先ほどとは違った涙が修哉の目から溢れてきた。
先ほどの涙が死への恐怖から来たとするならば、今流している涙は生きることへの希望から来るものだろう。
「まだ足りなかったら遠慮なく言っていいからね」
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