7 / 9
冒険の果てに
しおりを挟む
***
――。
言葉が出なかった、それが初めて修哉が秘境を訪れた時の率直な感想だ。
今、修哉と錬がいる場所は山の頂上だ。
入口は険しく異様な雰囲気が漂っていて、歩く道のりも暗く不安になった。しかし、それでも諦めずに頑張った甲斐もあって、頂上からの景色は言葉で言い表せないほど素晴らしかった。
「どうだい、初めて見る場所は?」
錬は、景色に圧巻されている修哉に話しかけた。
「……すごい、の一言しか出てこないです。今まで生きてきた中で一番素晴らしい場所です」
修哉は自分で言って、自分の言葉に涙を流した。ようやく修哉自身がしたかったことに出会えた気がしたのだ。
「私も同じ感想だよ。特に、ここから見る景色だけではなく、あそこに岩があるというのも良い」
錬は少し離れた東側の場所にある岩を指差した。修哉は錬の指を追って、岩の方向を見た。
最初、修哉が見た時はただの岩にしか見えなかった。
しかし、修哉は顔の角度を変えてみたりと、注視して見ると何かの姿をしているように見えた。
その岩は、ライオンのような形をしていた。
さらに、それだけではなく昇って来る太陽に向かって雄叫びを上げている姿のようで、これから来る日を恐れずに堂々と歩むような姿でもあった。
まるで、ここに来た者を称え、祝福しているかのようだ。
少なくとも、修哉はそう感じた。
(俺と同じタイミングで登って来たのに、この人は一瞬でここまで判断したのか)
修哉は錬の観察力の深さに感動していた。
「でもね、世界には人に知られていないだけでもっと素敵な秘境だって実際にはある」
「もっと、あるんですか?」
修哉は錬の言葉に驚いて、言葉を反芻した。
「そう。自分が実際に足を踏み出してこそ、新しい秘境を発見することが出来るんだ。先ほども話したけど、私はまず自分の目で確認して、嘘偽りなく実際にあった美しい秘境を、人々に伝えて行きたいんだ」
錬は満面の笑みで、誰も到達したことがなかった頂上で夢を語った。
大きな夢で、なかなか人に共感されにくい夢。
時には、夢物語だと笑われて流されてしまうこともある。
それでも、東雲錬という冒険家は、その夢を成すまでに尋常ではない努力を積み重ねて来た。
「……俺も。俺にもその錬さんの夢の手伝いをすることが出来ますか?」
修哉は秘境に訪れることが出来た中で、発見した新たな目標を錬に話した。
「実際に秘境があると言っても信じられない人がいる、と先ほど錬さん言ってましたよね。なら、まだ若くて未熟な俺でも錬さんと旅をして秘境を発見することが出来るということを証明すれば、自分も秘境を見ることが出来るんだと信じてもらえると思うんです」
修哉は今見ている雄大な景色を見て、多くの人にも自身の目で見てもらいたいと思っていた。また、錬のことを疑う人がいるならば、少しでも減らしてあげたかった。
こんなに優しくて、人を想っている錬のことを、放っておくことは出来ない。
「俺にはまだ全然錬さんの苦労とか喜びとか分からないですけど、それでも俺は錬さんの力になりたいんです。だって、錬さんが見つけたこの素晴らしい景色が誰にも信じられないなんて、あまりにも勿体ないじゃないですか! だから――」
修哉は自分で話している内に何を伝えようとしているのか分からなくなり、もどかしくなって軽く頭を掻いた。
「えっと、何を言いたいのか良く分からなくなってきたんですけど……つまり」
「ありがとう」
修哉が言葉を選んでいると、錬は一言だけ言って修哉の言葉を切った。
「修哉の言いたいことは分かった。そう言って貰えて、素直に嬉しいよ。でも、私と共に冒険をするということは、修哉が思っている以上に簡単なことではないんだ。苦労は欠かせないし、命を落とす危険だってある……それでも良いんだね?」
「はい。俺は最後まで錬さんについて行きます」
修哉は迷わず答えた。
この機会を逃してしまったら、おそらく二度と変わる機会は訪れないだろう、と修哉は直感していた。
きっと錬以上に修哉を見つめてくれる人とも出会うことはない。
「絶対について行って見せます。だって、錬さんは俺の人生の師匠ですから」
修哉は絶景の秘境を見ながら錬に笑顔を向けた。
(この人と一緒なら、どこへでも行ける気がする)
この時、修哉は確信めいた想いを抱いていた。
――。
言葉が出なかった、それが初めて修哉が秘境を訪れた時の率直な感想だ。
今、修哉と錬がいる場所は山の頂上だ。
入口は険しく異様な雰囲気が漂っていて、歩く道のりも暗く不安になった。しかし、それでも諦めずに頑張った甲斐もあって、頂上からの景色は言葉で言い表せないほど素晴らしかった。
「どうだい、初めて見る場所は?」
錬は、景色に圧巻されている修哉に話しかけた。
「……すごい、の一言しか出てこないです。今まで生きてきた中で一番素晴らしい場所です」
修哉は自分で言って、自分の言葉に涙を流した。ようやく修哉自身がしたかったことに出会えた気がしたのだ。
「私も同じ感想だよ。特に、ここから見る景色だけではなく、あそこに岩があるというのも良い」
錬は少し離れた東側の場所にある岩を指差した。修哉は錬の指を追って、岩の方向を見た。
最初、修哉が見た時はただの岩にしか見えなかった。
しかし、修哉は顔の角度を変えてみたりと、注視して見ると何かの姿をしているように見えた。
その岩は、ライオンのような形をしていた。
さらに、それだけではなく昇って来る太陽に向かって雄叫びを上げている姿のようで、これから来る日を恐れずに堂々と歩むような姿でもあった。
まるで、ここに来た者を称え、祝福しているかのようだ。
少なくとも、修哉はそう感じた。
(俺と同じタイミングで登って来たのに、この人は一瞬でここまで判断したのか)
修哉は錬の観察力の深さに感動していた。
「でもね、世界には人に知られていないだけでもっと素敵な秘境だって実際にはある」
「もっと、あるんですか?」
修哉は錬の言葉に驚いて、言葉を反芻した。
「そう。自分が実際に足を踏み出してこそ、新しい秘境を発見することが出来るんだ。先ほども話したけど、私はまず自分の目で確認して、嘘偽りなく実際にあった美しい秘境を、人々に伝えて行きたいんだ」
錬は満面の笑みで、誰も到達したことがなかった頂上で夢を語った。
大きな夢で、なかなか人に共感されにくい夢。
時には、夢物語だと笑われて流されてしまうこともある。
それでも、東雲錬という冒険家は、その夢を成すまでに尋常ではない努力を積み重ねて来た。
「……俺も。俺にもその錬さんの夢の手伝いをすることが出来ますか?」
修哉は秘境に訪れることが出来た中で、発見した新たな目標を錬に話した。
「実際に秘境があると言っても信じられない人がいる、と先ほど錬さん言ってましたよね。なら、まだ若くて未熟な俺でも錬さんと旅をして秘境を発見することが出来るということを証明すれば、自分も秘境を見ることが出来るんだと信じてもらえると思うんです」
修哉は今見ている雄大な景色を見て、多くの人にも自身の目で見てもらいたいと思っていた。また、錬のことを疑う人がいるならば、少しでも減らしてあげたかった。
こんなに優しくて、人を想っている錬のことを、放っておくことは出来ない。
「俺にはまだ全然錬さんの苦労とか喜びとか分からないですけど、それでも俺は錬さんの力になりたいんです。だって、錬さんが見つけたこの素晴らしい景色が誰にも信じられないなんて、あまりにも勿体ないじゃないですか! だから――」
修哉は自分で話している内に何を伝えようとしているのか分からなくなり、もどかしくなって軽く頭を掻いた。
「えっと、何を言いたいのか良く分からなくなってきたんですけど……つまり」
「ありがとう」
修哉が言葉を選んでいると、錬は一言だけ言って修哉の言葉を切った。
「修哉の言いたいことは分かった。そう言って貰えて、素直に嬉しいよ。でも、私と共に冒険をするということは、修哉が思っている以上に簡単なことではないんだ。苦労は欠かせないし、命を落とす危険だってある……それでも良いんだね?」
「はい。俺は最後まで錬さんについて行きます」
修哉は迷わず答えた。
この機会を逃してしまったら、おそらく二度と変わる機会は訪れないだろう、と修哉は直感していた。
きっと錬以上に修哉を見つめてくれる人とも出会うことはない。
「絶対について行って見せます。だって、錬さんは俺の人生の師匠ですから」
修哉は絶景の秘境を見ながら錬に笑顔を向けた。
(この人と一緒なら、どこへでも行ける気がする)
この時、修哉は確信めいた想いを抱いていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる