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『僕は父親が嫌いです』

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僕は父親が嫌いです
亭主関白の父親が嫌いでした
母親を悩ませる父親が嫌いでした
そんな父親から昔言われた事がありました

右目の失明のハンデがあるという事は
人よりも苦労するということ
人よりも苦労するということは
人の何倍も努力しないと人並になれないという事

僕は高校の農業実習の時に先生によく言われた
みんなが休憩している時は 一緒に休め
みんなが休憩している時は 作業をするな
僕は不器用で人より作業の進みが遅く
作業が早く終わった人は僕のところを手伝う
僕はみんなが休んでる時も作業をしておかないと
人と同じような作業ができないと思った

僕は母親からも言われていた
目が悪い事を言い訳にして諦めるなと
誰かが助けてくれると思うな 自分の力でやろうとしろと
僕は小学生の時から言われていた
目が悪いのではなく お前の心が弱いんだと

僕は父親が嫌いだけど
僕の心を強くさせようとするのは
母親と同じだった
僕が歌手になりたいと打ち明けた時も
歌手になるために東京行くと打ち明けた時も
父も母も反対をしなかった

時は経ち 大人になり 僕は東京で自立した
人よりも仕事ができるようになった
人よりも仕事がさばけるようにもなった
僕も社会の中で信頼される大人になった

右目の失明があったからこそ
父も母も僕を強くさせようとした
もし僕の目が悪くなかったら
きっとこんな育てられ方はしてないだろう

それでも僕は父親が嫌いです
母親を悩ませてきた父親が嫌いです
どんなに自分にとってプラスになる事があったとしても
母親を悩ませてきたという事実は消えないのだから

僕は絶対に亭主関白になりたくない
僕は絶対に女性を傷つけたくない
僕は絶対に女性を悲しませたくない
僕は絶対に女性を悩ませたくない

僕は父親を反面教師にして
父親から学んだんだ
僕は父親が嫌いです
僕は父親が嫌いです



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