メティス・ラヴァルの冒険書

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学生編

31話 脳筋達の祭典

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31話 脳筋達の祭典

今までコツコツと採取クエストで貯めていたお金と、この前のフォレストウルフの報酬が思ったより良くて、ついに片手斧のマァリッシュを買えた。
本当は夏休み前に買う予定だったけど、父さんが買えるなら早めに買っておきなさいって言っていた。多分早めに自分のを持って、手に慣らしておきなさいって事なんだと思う。

最近は早朝や休みの日に、父さんにマァリッシュを貸してもらって教えてもらっていたけど、やっぱ自分のを手に入れれると、嬉しいよね。大切にしなきゃ。

騎士学校の斧の先生もマァリッシュを買って、練習してくれていて、父さんが言うには、センスが良いから、夏休み明けにはある程度使えるようになるだろうって。


今日は各選択授業の先生による演武がある。
私は斧、ネアカ君は武道、ファムちゃんは槍と言ったように既に決めている生徒は結構少なくて、大半が悩んでいる。そんな生徒が後期の授業を選び易くするのが目的なんだって。

場所は学校のグラウンド。
いつもの何もない空間ではなくて、中心には舞台が用意されていて、その周りを囲む様に生徒が自由に座っている。
更にグラウンドの両端付近には食べ物屋や射的などの出店があって、お祭りみたいな雰囲気になっている。

一年生は強制参加で、上級生は任意だけど、結構来ている。お祭りだしね。

どうせなら楽しまないと!

「メティスちゃん、私たこ焼き食べたい!!」
ハシャギながらファムちゃんが屋台の方を指差している。

「あ!いいね!ねぇ、あれは?フルーツ串はいる?」

「いるーーー!」
ピョンピョン跳ねながら答えてる。かわいいなぁ~

「あーでも、ホーンラビットの唐揚げも捨てがたいよ。」

「大丈夫、二人で食べれば余裕じゃね?」

「よし、じゃぁあ買うぞー!」

「おーーー!」


フルーツ串、、、そういえばなんかフルーツ串で約束していたような、、、なんだっけ?
まぁいっか。

その後買い回っていたら
やたら人が集まっているブースがあって、覗いてみると、腕相撲大会をしていた。
参加料を払って、参加者同士が対決して、五人抜きすれば好きな装備を一つプレゼント。負ければジュースが貰える。
協賛はマルゴ商店。

「ねぇねぇファムちゃん。これ見て行かない?」

「腕相撲!面白そうじゃん。見よ見よ。」

「なんか大っきい人が多いね。原種人の人ばかり。」

「そりゃ腕相撲だから力自慢なんじゃない?」

参加しているのは大柄の上級生や混血人や原種人が多く、どれだけ強そうな人でも、大体三人抜きで負けている。五人抜きは相当微妙なラインなんだろうな。

「こんな時ってさ、あいつ居そうじゃない?」

「あいつってネアカ君?」

「そう、ネアカ君。あいつこーゆー脳筋系好きそうじゃん。」

「好きそうっというか、好きだよね、絶対。というかアレ、、、あそこ見て。」
指差した先に、準備運動中のネアカ君がいた。

「うわっ。本当にいるじゃん。流石過ぎて何も言えないわ。」

「というか、なんで出たんよ。絶対無理でしょ。」

「いや、意外とパワー!!って感じで行くかもね。」

「パワー。。。脳筋扱い酷くない?」

「はははっ。頑張れーネアカー」

こっちに気付いて手を振るネアカ君。
そんなネアカ君は意外にも原種人の方々と、いい勝負をしている。
接戦を繰り返し四人抜きをした時は大いに盛り上がって、もしかしたら!!
という空気になったけど、次に出てきたのは熊の原種人さん、、、うーん。無理でしょ。
という大方の予想を覆し、ネアカ君は接戦の末、、、
という事は一ミリもなく、秒殺されてた。
いい負けっぷりだ。
その後熊の原種人さんは五人抜きを達成していた。

「やっぱ無理だったねー熊さん強いよ。」

「熊さんはキングオブパワーじゃん。」

「あーでも楽しかったね。」

「確かに楽しかった。参加したいけど、あの人らに勝てる訳ないしね。」

腕相撲大会の優勝が決まり移動しようとしたら、
「それでは、次は腕相撲男子の部中量級を開催します。」
っていうアナウンスが、、、

「ネアカ君、、、なんで重量級出たの。中量級あるじゃん。」

「本当だねーさっきの感じだと、中量級だったら優勝できてたかもなのにね。流石にさっき出たから、もう無理だよね?!」

「いや、、、メティスちゃん。あそこ見てみ。」

「あ、、、居るね。参加するんだ。」
、、、、
「あー一応応援する?」

「いや、いいんじゃね?!優勝するでしょ。
というか、それなら軽量級とか女子の部もあるのかな?」

「ファムちゃん出るの?それなら応援するよ!」

「よし、聞いてくる!!」



「それでは続いて腕相撲女子の部軽量級の開催します。」

「ファムちゃんがんばれー。」
腕相撲は男女別と更に重量級中量級軽量級の計六部門に別れていた。

「やぁやぁやぁ!ファムさん腕相撲出るんだっ!」

「あ!ネアカ君、優勝おめでとう。重量級出てたのに、よく優勝できたね。」

「おっ!ありがとうっ!!疲れていたけど根性だっ!」

「あ、そう。。。優勝商品は何にしたの?」

「疲れた時の根性だっ!商品はトンファーにしたっ!優勝商品として貰えるランクの範囲内で一番いいやつにしてもらったっ!」

「へぇー取り寄せでもいいんだ。というか、なんで重量級も出たの?受付の時に中量級もあるって知ってたよね?!」

「大会を連覇したら、無料でオーダーも受けてくれるみたいなんだけど、そうなると最短で来年だろっ?!だから、今年中量級と重量級で優勝したら、オーダーできないかっ?て聞いたら、面白そうだからOKしてくれたんだっ!まぁ結局重量級で優勝できなかったから、オーダーは来年に持ち越しだなっ!」

「そうなんだ。オーダーかぁ、いいなぁ。」

「ちなみに重量級の優勝者は連覇らしいぞっ!しかも三連覇っ!あれは勝てる気がしないっ!
しかも妹はウチのクラスにいるオルサさんなんだってっ!
メティスさんも出たらいいのにっ!」

「えークマちゃんのお兄さんなんだっ!
私は無理だよ~。ファムちゃんに勝てる気がしないよ。ファムちゃん凄い力持ちなんだよ。きっと優勝するよ。」

「そうかっ!それなら応援しないとなっ!」


女子の部軽量級はファムちゃんの独壇場だった。試合開始と同時に瞬殺瞬殺瞬殺瞬殺瞬殺の一気に五人抜きの優勝。
そして、ファムちゃんはそのまま中量級にエントリーして今、四人抜きした所。

「すごいっ!すごいっ!ファムさんすごいなっ!後一人で二階級優勝だぞっ!」

「けど、ちょっと疲れてそうだよ。大丈夫かな?」

「わからないっ!けど、こんな時こそ根性だっ!」

「いや、根性じゃなくて、最後疲れた時のアドバイスはないの?疲れた時のでもなくていいから。ネアカ君が重量級の人らとやった時に意識してた事とかないの?」

「んー意識してた事っ?ないぞっ!」

「じゃぁ。ファムちゃんのを見て、もうちょっとこうしたらいいよ!って事はない?握り方とか立ち位置とか。どうしたら力入れやすいとか。」

「んーっ!ないかなぁっ!大体チカラ入れる時はヘソを意識するだろっ?腕相撲の時も肘をヘソの近くにもってくるだろっ?!そんなの感覚でわかるだろっ?!」

「それだよ。それ伝えてあげてよ。」

「えっ?!肘をヘソの近くにかっ?!」

「そうそれ。私はよく分からないから、ネアカ君は言ってよ。」

「んーっ!ファムさんっ!もう半歩外側に立って、肘をヘソの方にもってくる感覚でっ!」


ファムちゃんが声に反応してコッチを見て、頷いている。理解したの??
残念ながら、私にはさっぱり分からない。
だけど、ネアカ君の言葉がファムちゃんに通じてるならなんでもいいや。
頑張れファムちゃん。

ネアカ君のアドバイスが効いたのか、最後の五人目をあっさりと倒し、ファムちゃんが優勝し、見事オーダーの権利を手に入れていた。
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