永遠の夜

土八坂

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4章 過去と罪と

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◆クラウディオ



 マンションに着き、ソファの上で項垂れる私を後ろから彰紀が抱きしめた。

「ごめん……酷いところを見せて」
「いいんだよ」

 彰紀は嬉しそうに声を弾ませる。

「俺のこと選んでくれたね……かわいいクラウ」

 頬にキスをして擦り寄ってくる温もりにただ身体を預けた。

「ほら、キスして? あいつのことなんて忘れよう」

 耳元で響く彰紀の声に応えたいのに、ほろりとまた涙が溢れてきた。
 別れ際に交わした口づけ。
 ヴィンセントの深い愛情が、真っ直ぐな言葉が胸を締め付けた。
 今まで理解しきれなかった彼の考えを知れて、本当に嬉しかった。
 それと同時に、側にいてはいけないのだとはっきりと理解してしまった。

「ほーら、浮気って思っちゃうじゃん、いいの?」

 彰紀は目の前にやってくるとソファに腰掛ける私の上にまたがり、涙で濡れる頬を掴んで上を向かせた。
 深く怒りを滲ませた瞳に見つめられぞくりとする。

「い、意地悪ないい方しないで……私が今どんな気分か」

 どれだけ泣いても溢れてくる涙を止められず、視界がぼやける。

「わかってるから言ってるんだよ?」

 少し冷たさの残る声色だった。

「自分で昔の男じゃなく俺を選んだんだよね? 言葉だけじゃ信用しきれないよ」

 鼻先が触れ、すぐ唇が触れそうな距離で囁かれる。

「証明して、ね? クラウ? 俺さ殴りたいの我慢してたんだよ? アイツお前にべたべた触ってくれちゃってさ……ね? 怒ってんのよ?」

 彰紀の気持ちをいつも考えられてないんだと思い知らされる。
 だけどそんなこともどうでもいいくらい、心が沈んでいた。
 彼がしたいなら、満足するなら、それでいいのだと……軽く触れるだけの口付けをする。

「ごめんなさい……嫌な思いさせて」

 苦しくて涙が溢れ出す。
 彰紀のこともヴィンセントのことも裏切っているような気持ちになる。
 何が苦しいのかもわからなくなりながら、それでも涙は溢れて止まらない。

「あー、ほんとムカつく。俺以外のために泣いてんじゃねえよ」

 低く呟く声がして抱き寄せられる。
 顎をすくわれて、深く貪るようなキス。涙で少ししょっぱい。
 その口づけに身を預け、求められるままに応えた。

「ふぁ……ぁ、はぁ……」

 荒く息をつく。
 服を乱暴にずらされて彰紀の歯が首筋に触れた。

「いっ……んぅっ」

 容赦なく噛まれて痛みに顔を歪めた。

「しょう、き……っ」

 人間の彼が真似して噛んでも痛いだけなのに、なのに彼のものだと印をつけられているようで興奮してしまう。

「クラウも噛んで……」

 シャツをはだけさせて露わになる彼の傷だらけの首筋。これだけ彼と身体を重ねて、求められたんだという証のようだ。
 そこにまた傷を増やす。
 ソファに押し倒されてキスをしながら服を剥ぎ取られる。
 下衣を全て引き抜かれ、足を持ち上げられた。
 いつの間に持ってきていたのかローションが後ろに垂れて、身がすくんだ。

「っ、ふぁ……あぁっ」

 指が滑り込んできて、解されていく。
 泣きすぎて頭がボーッとしていて、何もかもどうでもよくなった。
 ただ彰紀の触れる感覚だけに集中する。
 ぬちぬちと水音が響き、興奮が高まっていく。

「生でしたい、いいでしょ……?」

 彰紀は言いながら指を増やして前立腺をぐりぐりと捏ね回した。

「んあぁっ……ん、すきに、して……彰紀のっ」

 快感に身悶えながら言うと、彰紀は意地悪く微笑む。

「ふふ、いい子だね……クラウは俺のもんだよ。一生離さない」

 指が引き抜かれて、溶けそうなほど熱い生の彰紀に一気に貫かれる。
 首筋に肩に胸に吸い付かれ、じんじんと痛む。
 奥を何度も確かめるように押し上げられ、快感に身体が震えた。

「好き、愛してる……」

 耳元で囁かれる言葉がじわじわと心を満たす。

「んぁっ……はぁ、あぁっ」

 背中に手を回してしがみつきながら快楽に耐えた。
 ごりごりと中を擦り上げられ、繰り返し打ち付けられる。

「愛してる……クラウ」

 荒い吐息にまじり彰紀が囁く。
 頭が真っ白になって限界が近付いていった。

「あっ、イく……っ、イく、んあぁっ……!」

 のけぞって電気が走るように快感が身体を突き抜ける。
 強い衝撃に彰紀の背中に爪を立てながら、びくびくと震えた。
 彰紀の固い屹立がはっきりと分かるくらい熱を持っていて内側から焼けてしまいそうなほど熱い。

「はぁ……はぁ……しょう、き……っ」

 キスをしたくて強請るように首に手を回すが、その表情は暗く私を見下ろしていた。

「彰紀? ……ん、あっ」

 ぐいと足を持ち上げられ、更に深く奥に押し付けられて、圧迫感に息を飲む。

「なんで、愛してるって言ってくれないの?」

 冷たい瞳が私を見下ろした。

「あいつには言ってたのに、なんで俺には言ってくれないの?」

 奥に押し当てられたままもどかしくて、居心地が悪い。それに加えて怒ったような声に再び気持ちが沈んでくる。

「ヴィンセントには愛してるって」
「やめてくれ、あいつのことなんて思い出させないで」

 去り際の悲しそうな姿を思い出し涙が滲んできた。
 引き止めてくれた彼の手を離したくなんて……。

「ほんとうはあいつのとこに行きたいんだろ? くそ……」

 怒りに顔を歪ませる彰紀にどう応えたら良いのかわからなくて、ただ必死に涙を堪えた。
 愛してると、確かに私は、ヴィンセントに言った。本心からの言葉だった。
 じゃあ彰紀には……。

「なんで黙るんだよ、このタイミングでさぁ……あぁ、ほんと、どんだけ俺がクラウのこと好きか」

 ずるりと引き抜かれ身震いする。そして荒っぽく身体を持ち上げられ、ローテーブルにうつ伏せに投げられる。

「あ、あぁっ……ああぁっ!」

 そして腰を持ち上げられ、後ろから一気に突き上げられた。うまく力を抜けないままのそこを押し広げられて不快感と快感に身体を震わせた。

「んぁっ……はぁ、あ……あぁっ!」

 それでも遠慮なく深く突き上げられると否応なく快楽が広がった。
 こんな荒っぽい抱き方されて興奮してる自分が馬鹿みたいに思う。
 だけど、これくらいのほうが落ち着く。
 優しく愛されるよりも、激しく執着される方がいい。

「あっ、は、ふ……んあぁっ……――っ!!」

 声にならない声を上げて絶頂の快感が全身を支配する。
 また、引き抜かれ、テーブルの上に仰向けにされた。足を持ち上げられローションと体液で濡れた肛孔に彰紀が擦り付けてくる。ガチガチに膨れて熱を持ったそれを、ゆっくりとゆっくりとしのびこませてくる。

「あぁぁっ……しょう、きて……奥にっ」

 じれったく入口のあたりを擦られて、もどかしさに彼の手を掴む。

「しょうきぃ……おねが、い……んぁっ」

 その手がだらしなく体液を滴らせる私のものに触れ、撫でられる。
 ぬるぬるとした感触ともどかしい後ろの刺激も相まって、腰が動いてしまう。
 もっとめちゃくちゃに、乱暴に、彰紀のものだと刻み込まれたい。
 にやりと口元を歪める彰紀にぞくっとした。

「クラウ……好きだよ。愛してる……俺だけのものにするから。どんな手を使ってでも」
「あぁ……く、んん――っ!!」

 一気に奥に押し込まれ圧迫感に息を飲む。
 後ろを犯されながら前も一緒にいじられ、激しい快感に身悶えた。
 彰紀の言うように確かに私はヴィンセントの元に行きたかった。
 引き止めてくれなかったのも、話してくれなかったのも、愛してないからではなかった。私のためにいつも、いつも、自分を犠牲にして尽くしてくれていたのだ。
 別れてからもずっと、今の今まで私のために彼は行動してきたんだ。
 どこまでも不器用で、バカな男だ。
 だからこそ、私は彼の側にはいられない。
 私のために生きるのも、私のために自分の命を軽んじるのもやめて欲しい。
 だから、私は……。 
 耐えられないくらいの快楽に、脳みそが揺さぶられ、頭が真っ白になった。
 彰紀に抑え込まれ、強すぎる快感から逃げることも出来ず、すぐにでも果ててしまいそうだった。

「ああ……! んぁっ、はぁ……しょ、うき……あぁっ!!」

 身体が壊れてしまいそうなくらい激しく攻められると、白濁した液体が溢れ出し、がくがくと痙攣したように身体が震えた。
 同時に、奥に熱が放たれる。内側から焼けてしまいそうなくらい熱く、眼の前がチカチカと揺れる。

「はぁ……はぁ……っ」

 身も心もぼろぼろに疲れ切って、苦い独占欲に身を預けながら……目を閉じた。


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