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第43話 宣戦布告
「てか、ツレも女みたいな顔してんな。何? 前のガッコのトモダチ?」
自分の話題で金縛りが解けた。問うたのはミドリさんに対してのようだけど、代わりにオレが力いっぱい肯定してみせる。
「そう、友達!」
ミドリさんがハッとした表情でオレを見る。三人組の方は互いの顔を見合せて、それぞれ厭らしいニタニタ笑いを浮かべた。
「マジかよ、根暗の姫川に友達なんて居たのかよ」
「アレだろ? お姫さまだっけ? 女装カマ仲間だろ」
「カマ仲間! 傑作!」
下卑た笑いが沸き起こる。ムッとして、思わず言い返したくなるのを何とか堪えた。
落ち着け。ここで怒ったら、相手の思うツボだ。こういう時、どうするのが最適解だろう。棗先輩だったら……。
「そう、オレも〝姫〟なんだ」
思索の末、オレは微笑んでみせた。なるべく柔和に、ゆっくりと花弁が開くイメージで。
――もし棗先輩だったら、きっと自分の魅力でアンチだって黙らせるに違いない。
三人組が息を呑む気配があった。こちらを見つめたまま、惚けている。……効果はあったか?
オレは棗先輩ほどの美少年じゃないけど、御影さんが、学校の皆がオレを可愛いって言ってくれたんだ。男としてはどうなんだって感じだけど、今はそれを信じるしかない。
「ミドリさんと同じだよ。女顔だからって、気付いたら〝姫〟なんて呼ばれてさ。女装は慣れないし恥ずかしいし、参っちゃうよな。でも、それがオレ達に与えられた役目だし、やるからにはちゃんとやろうって決めたんだ。だから……そんな風に呼ばれるのは、ちょっと悲しいかな」
憂いを混ぜて、苦笑に変える。
三人組が言葉を無くしている内に、畳み掛ける。
「そうだ、写真見る? オレ高校からだから、まだ就任して日が浅くて、経験少ないけど。こんな感じで、行事を盛り上げる為に頑張ってるんだ」
スマホを取り出し、メッセージアプリでクラスの共有写真フォルダを開いて見せた。そこには、クラスメイト達が撮ったオレの女装写真がいっぱいアップされている。
選抜会と就任式のロリータ服、交流会の制服、体育祭のへそ出しチアガール……ついでに、コスプレ走のナース服。自分で見るのは小っ恥ずかしくて今まであまり見ないようにしてたけど、クラスメイト達も良い表情をしている。
「うわ、マジ女みてー」
「めっちゃ本格的」
「つーか、うちの学校の女共よりカワ……ん、んんっ」
おっ、今咳払いで誤魔化したな?
よし、好感触だ。後は……。
「期末テストが終わったら、今度は夏休み前に納涼祭があるんだ。〝姫〟は浴衣を着ることになってるんだけど、今年は諸事情で三年の姫が引退してるから、一人少なくてさ。二人だけじゃ寂しいから、ミドリさんに応援参加してもらうことにしたんだ。勿論、〝姫〟として」
ミドリさんがギョッとした様子でオレを見た。けど、ここは強行突破する。
「一般参加も自由だから、良かったらキミ達も来てくれると嬉しいな。屋台もいっぱい並ぶし、打ち上げ花火もやるんだって」
「花火!?」
「スゲ……」
「ミドリさんの友達ってことで、色々サービスするからさ、是非来て欲しいな。あ、LI〇E繋ご? 屋台のクーポンとか送るよ」
最後の方は多少強引に連絡先を交換して、
「それじゃあ、当日、待ってるから」
笑顔で暇を告げた。
彼らを残し、ミドリさんを連れて店を出る。
ずっと無言だったミドリさんが、ここでようやく口を開いた。
「なっ、何勝手に話決めてるんだよ!? 僕は参加するなんて言ってないぞ!!」
「うん。てことで、改めてお願いするよ。納涼祭、ミドリさんも〝姫〟として参加して欲しい」
「なんで……っアイツらが本当に来たら! またバカにされる! 気持ち悪いって、笑われるに決まってる!」
「そんなことない」
「あるよ! っ日向君はアイツらが認める程可愛いからいいだろうけど、僕は……っ!」
「ミドリさんは、綺麗だ」
言い切ると、ミドリさんははた、と止まった。
「緑の黒髪……艶のある美しい黒髪のおかっぱ頭で、切れ長の目をした和風美人。納涼祭は浴衣だ。おそらく、ミドリさんが一番似合う」
「で、でも……」
「アイツら、ミドリさんの〝姫〟モード見たことないんだろ? だったら、見せ付けてやろう! 誰よりも綺麗な浴衣姿を見せて、あっと言わせるんだ。もう揶揄ったり、バカになんて出来ないくらい! ……骨抜きにしてやろう!」
息巻いて、宣言する。ミドリさんは呆気にとられたようで、口を開いたまま固まっている。
「大丈夫! オレも居るし、四季折の皆もミドリさんを待ってる! ミドリさんは独りじゃない!」
そうだ。だから、怖がらなくていい。
「一緒にやろう! ミドリさん!」
手を差し伸べる。ミドリさんは少ししてからようやく氷解したように、深く長い溜息を吐いた。
「まぁ……これ以上悪くなることもないか」
参戦の意だ。オレはパッと笑みを浮かべた。ミドリさんがどこか照れ臭そうに視線を逸らして零す。
「でも、アイツら本当に来るのかな……」
「来てくれるようにメッセージでも誘いかけるよ。もし来なくても、オレがミドリさんの写真送るし」
その為に連絡先をGETしたんだ。後はどうにでもなる!
「そういうことでしたら、私も及ばずながら尽力させて頂きましょう」
ふと横合いから声が聞こえて、オレとミドリさんが同時に視線を向けた。変装のつもりだろうか、私服の御影さんが居た。普段見ない眼鏡姿に、思わず目を奪われる。
「み、御影さん。どこに居たんだ?」
「ずっとお傍で見守っておりましたよ。あの三人組が闖入してきた時は思わず飛び出してしまいそうになりましたが、ご自身で対処なされるとは、さすが陽様です」
うんうんと誇らしげに頷いてから、御影さんはレンズ越しにオレを見た。
「戦われるのですね、陽様」
今度はオレが大きく首肯を返す。
「うん」
戦う。オレなりのやり方で。
――全ては、納涼祭の夜に。
自分の話題で金縛りが解けた。問うたのはミドリさんに対してのようだけど、代わりにオレが力いっぱい肯定してみせる。
「そう、友達!」
ミドリさんがハッとした表情でオレを見る。三人組の方は互いの顔を見合せて、それぞれ厭らしいニタニタ笑いを浮かべた。
「マジかよ、根暗の姫川に友達なんて居たのかよ」
「アレだろ? お姫さまだっけ? 女装カマ仲間だろ」
「カマ仲間! 傑作!」
下卑た笑いが沸き起こる。ムッとして、思わず言い返したくなるのを何とか堪えた。
落ち着け。ここで怒ったら、相手の思うツボだ。こういう時、どうするのが最適解だろう。棗先輩だったら……。
「そう、オレも〝姫〟なんだ」
思索の末、オレは微笑んでみせた。なるべく柔和に、ゆっくりと花弁が開くイメージで。
――もし棗先輩だったら、きっと自分の魅力でアンチだって黙らせるに違いない。
三人組が息を呑む気配があった。こちらを見つめたまま、惚けている。……効果はあったか?
オレは棗先輩ほどの美少年じゃないけど、御影さんが、学校の皆がオレを可愛いって言ってくれたんだ。男としてはどうなんだって感じだけど、今はそれを信じるしかない。
「ミドリさんと同じだよ。女顔だからって、気付いたら〝姫〟なんて呼ばれてさ。女装は慣れないし恥ずかしいし、参っちゃうよな。でも、それがオレ達に与えられた役目だし、やるからにはちゃんとやろうって決めたんだ。だから……そんな風に呼ばれるのは、ちょっと悲しいかな」
憂いを混ぜて、苦笑に変える。
三人組が言葉を無くしている内に、畳み掛ける。
「そうだ、写真見る? オレ高校からだから、まだ就任して日が浅くて、経験少ないけど。こんな感じで、行事を盛り上げる為に頑張ってるんだ」
スマホを取り出し、メッセージアプリでクラスの共有写真フォルダを開いて見せた。そこには、クラスメイト達が撮ったオレの女装写真がいっぱいアップされている。
選抜会と就任式のロリータ服、交流会の制服、体育祭のへそ出しチアガール……ついでに、コスプレ走のナース服。自分で見るのは小っ恥ずかしくて今まであまり見ないようにしてたけど、クラスメイト達も良い表情をしている。
「うわ、マジ女みてー」
「めっちゃ本格的」
「つーか、うちの学校の女共よりカワ……ん、んんっ」
おっ、今咳払いで誤魔化したな?
よし、好感触だ。後は……。
「期末テストが終わったら、今度は夏休み前に納涼祭があるんだ。〝姫〟は浴衣を着ることになってるんだけど、今年は諸事情で三年の姫が引退してるから、一人少なくてさ。二人だけじゃ寂しいから、ミドリさんに応援参加してもらうことにしたんだ。勿論、〝姫〟として」
ミドリさんがギョッとした様子でオレを見た。けど、ここは強行突破する。
「一般参加も自由だから、良かったらキミ達も来てくれると嬉しいな。屋台もいっぱい並ぶし、打ち上げ花火もやるんだって」
「花火!?」
「スゲ……」
「ミドリさんの友達ってことで、色々サービスするからさ、是非来て欲しいな。あ、LI〇E繋ご? 屋台のクーポンとか送るよ」
最後の方は多少強引に連絡先を交換して、
「それじゃあ、当日、待ってるから」
笑顔で暇を告げた。
彼らを残し、ミドリさんを連れて店を出る。
ずっと無言だったミドリさんが、ここでようやく口を開いた。
「なっ、何勝手に話決めてるんだよ!? 僕は参加するなんて言ってないぞ!!」
「うん。てことで、改めてお願いするよ。納涼祭、ミドリさんも〝姫〟として参加して欲しい」
「なんで……っアイツらが本当に来たら! またバカにされる! 気持ち悪いって、笑われるに決まってる!」
「そんなことない」
「あるよ! っ日向君はアイツらが認める程可愛いからいいだろうけど、僕は……っ!」
「ミドリさんは、綺麗だ」
言い切ると、ミドリさんははた、と止まった。
「緑の黒髪……艶のある美しい黒髪のおかっぱ頭で、切れ長の目をした和風美人。納涼祭は浴衣だ。おそらく、ミドリさんが一番似合う」
「で、でも……」
「アイツら、ミドリさんの〝姫〟モード見たことないんだろ? だったら、見せ付けてやろう! 誰よりも綺麗な浴衣姿を見せて、あっと言わせるんだ。もう揶揄ったり、バカになんて出来ないくらい! ……骨抜きにしてやろう!」
息巻いて、宣言する。ミドリさんは呆気にとられたようで、口を開いたまま固まっている。
「大丈夫! オレも居るし、四季折の皆もミドリさんを待ってる! ミドリさんは独りじゃない!」
そうだ。だから、怖がらなくていい。
「一緒にやろう! ミドリさん!」
手を差し伸べる。ミドリさんは少ししてからようやく氷解したように、深く長い溜息を吐いた。
「まぁ……これ以上悪くなることもないか」
参戦の意だ。オレはパッと笑みを浮かべた。ミドリさんがどこか照れ臭そうに視線を逸らして零す。
「でも、アイツら本当に来るのかな……」
「来てくれるようにメッセージでも誘いかけるよ。もし来なくても、オレがミドリさんの写真送るし」
その為に連絡先をGETしたんだ。後はどうにでもなる!
「そういうことでしたら、私も及ばずながら尽力させて頂きましょう」
ふと横合いから声が聞こえて、オレとミドリさんが同時に視線を向けた。変装のつもりだろうか、私服の御影さんが居た。普段見ない眼鏡姿に、思わず目を奪われる。
「み、御影さん。どこに居たんだ?」
「ずっとお傍で見守っておりましたよ。あの三人組が闖入してきた時は思わず飛び出してしまいそうになりましたが、ご自身で対処なされるとは、さすが陽様です」
うんうんと誇らしげに頷いてから、御影さんはレンズ越しにオレを見た。
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今度はオレが大きく首肯を返す。
「うん」
戦う。オレなりのやり方で。
――全ては、納涼祭の夜に。
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