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第47話 勘違い
「御影さん、お願いです! 僕に、稽古をつけてください!」
――は?
「稽古?」
聞き返す御影さんの声で、我に返った。朝倉の言葉があまりに予想外だった為、一瞬惚けてしまった。果たして朝倉は、依然として真面目な顔で次のように主張した。
「御影さんって、護衛人をしているくらいですから、格闘技とか勿論お強いのですよね!? あのっ、僕、こんな細っこくて弱っちぃので、よく人から馬鹿にされるんです……だから、強くなりたいんですが、具体的に何から始めたらいいのか分からなくて……武道系の習い事や部活動をやろうにも、こんななよなよした僕なんかじゃ、皆に笑われそうで怖くて……それで、あのっ、よろしければ御影さんに稽古をつけて頂けないかとっ!」
「はぁ……」
早口で捲し立てる朝倉の勢いに、御影さんは珍しく気圧された様子で生返事をした。それから、当然の疑問を口にする。
「何故、私なのですか?」
それもそうだ。単に護衛人というのなら、巌隆寺さんだっていい訳で……ハッ、やっぱり朝倉は御影さんが好きで、稽古という口実で彼と二人きりの時間を設けようとしているとか!?
「それは……大変失礼ながら、御影さんが細身の体格をしていらっしゃるからです」
……およ?
「細身なのにお強いなんて、正に僕の理想通りなんです! その上、優しくてカッコよくって……貴方のようになれたらなって、ずっと憧れていたんです! 巌隆寺さんみたいな体格に恵まれた方のようにはどうしたってなれっこありませんが、御影さんになら……もしかしたら、頑張れば近付けるのではないかと! あ、いえっ、僕なんかがこんなことを言うのは大変おこがましいのですがっ! でも、あのっ! やるからには僕、本気で頑張りますから! どうか、よろしくお願いしますっ!」
最後に、朝倉は御影さんに向かって勢いよく頭を下げた。呆気に取られて事の成り行きを見守るオレ。御影さんは暫しの間の後に、小さく苦笑を漏らした。
「申し訳ございません。私はご存知の通り陽様の護衛人ですので、陽様をお守りする以外のことに時間を割くことは出来ません。仮に、朝倉様の申し出をお受けすることになったら、その間陽様をお一人にさせてしまうことになります。陽様に危険が及ぶようなことは、断じてあってはなりません」
朝倉は、「あっ」と気が付いたような顔をした。
「そっ、そうですよね! すみません、僕ったら自分のことしか考えていませんでした……日向くんにも申し訳ないです」
「いえ、分かって頂けたのなら幸いです」
眉を下げ、ついでにまたも頭を下げる朝倉を不憫に思ってか、御影さんは思い付いたように一言加えた。
「それと、直接稽古をつけることなどは致しかねますが、私の日課のトレーニング内容に関してならば口頭でお教えすることは可能です。実践なさるかは朝倉様のご意思にお任せ致しますが、よろしければお聞きになりますか?」
「!」
パッと顔を上げて、朝倉は瞳を輝かせた。
「っ是非!!」
それから、御影さんは朝倉に宣言通りの内容を伝えた。朝倉は熱心にメモを取りながら、赤べこ並に頭を頷かせて聞いていた。
「成程! 御影さんは、毎日こんなに沢山の努力をなさっておいでだったのですね! 勉強になります!」
「そうですね……武術の型などは習う必要があるでしょうから、初心者ならば、やはりまずはひたすら基礎の筋力トレーニングや走り込みからでしょうね。ある程度体力が付いてきたらボクササイズを始めるのも良いかもしれませんね」
「分かりました! やってみます!」
話が纏まったところで、「今日は大変お世話になりました!」と深々とお辞儀をして、朝倉が暇を告げた。
あ、やば、こっちに来る!
事の成り行きをぼんやり見守っていたオレは、焦ってその場を離れると、隣の教室に駆け込んだ。間一髪、扉を閉めた直後に朝倉が廊下を通る。足音が小さくなっていくのを確認し、オレは胸を撫で下ろした。何とかやり過ごせたようだ。
ていうか、今のやり取りは、一体何だったんだ?
てっきりオレは、朝倉が御影さんに愛の告白をするのかとばかり思っていたのに……。
そうではなかった。憧れは憧れでも好きな人ではなく、まさかの〝なりたい人〟だったとは。
――紛らわしいっ!
心中でツッコんだ後に、何だか脱力した。
なんだ……違ったのか。なぁんだ。
いや、それもそうだよな。朝倉だって男なんだ。男同士で恋愛感情なんて、そうそうあるもんじゃないだろ。
ホッとして気を緩めた時、不意に背後から扉越しに御影さんに名を呼ばれた。
「陽様」
「ッ!?」
――は?
「稽古?」
聞き返す御影さんの声で、我に返った。朝倉の言葉があまりに予想外だった為、一瞬惚けてしまった。果たして朝倉は、依然として真面目な顔で次のように主張した。
「御影さんって、護衛人をしているくらいですから、格闘技とか勿論お強いのですよね!? あのっ、僕、こんな細っこくて弱っちぃので、よく人から馬鹿にされるんです……だから、強くなりたいんですが、具体的に何から始めたらいいのか分からなくて……武道系の習い事や部活動をやろうにも、こんななよなよした僕なんかじゃ、皆に笑われそうで怖くて……それで、あのっ、よろしければ御影さんに稽古をつけて頂けないかとっ!」
「はぁ……」
早口で捲し立てる朝倉の勢いに、御影さんは珍しく気圧された様子で生返事をした。それから、当然の疑問を口にする。
「何故、私なのですか?」
それもそうだ。単に護衛人というのなら、巌隆寺さんだっていい訳で……ハッ、やっぱり朝倉は御影さんが好きで、稽古という口実で彼と二人きりの時間を設けようとしているとか!?
「それは……大変失礼ながら、御影さんが細身の体格をしていらっしゃるからです」
……およ?
「細身なのにお強いなんて、正に僕の理想通りなんです! その上、優しくてカッコよくって……貴方のようになれたらなって、ずっと憧れていたんです! 巌隆寺さんみたいな体格に恵まれた方のようにはどうしたってなれっこありませんが、御影さんになら……もしかしたら、頑張れば近付けるのではないかと! あ、いえっ、僕なんかがこんなことを言うのは大変おこがましいのですがっ! でも、あのっ! やるからには僕、本気で頑張りますから! どうか、よろしくお願いしますっ!」
最後に、朝倉は御影さんに向かって勢いよく頭を下げた。呆気に取られて事の成り行きを見守るオレ。御影さんは暫しの間の後に、小さく苦笑を漏らした。
「申し訳ございません。私はご存知の通り陽様の護衛人ですので、陽様をお守りする以外のことに時間を割くことは出来ません。仮に、朝倉様の申し出をお受けすることになったら、その間陽様をお一人にさせてしまうことになります。陽様に危険が及ぶようなことは、断じてあってはなりません」
朝倉は、「あっ」と気が付いたような顔をした。
「そっ、そうですよね! すみません、僕ったら自分のことしか考えていませんでした……日向くんにも申し訳ないです」
「いえ、分かって頂けたのなら幸いです」
眉を下げ、ついでにまたも頭を下げる朝倉を不憫に思ってか、御影さんは思い付いたように一言加えた。
「それと、直接稽古をつけることなどは致しかねますが、私の日課のトレーニング内容に関してならば口頭でお教えすることは可能です。実践なさるかは朝倉様のご意思にお任せ致しますが、よろしければお聞きになりますか?」
「!」
パッと顔を上げて、朝倉は瞳を輝かせた。
「っ是非!!」
それから、御影さんは朝倉に宣言通りの内容を伝えた。朝倉は熱心にメモを取りながら、赤べこ並に頭を頷かせて聞いていた。
「成程! 御影さんは、毎日こんなに沢山の努力をなさっておいでだったのですね! 勉強になります!」
「そうですね……武術の型などは習う必要があるでしょうから、初心者ならば、やはりまずはひたすら基礎の筋力トレーニングや走り込みからでしょうね。ある程度体力が付いてきたらボクササイズを始めるのも良いかもしれませんね」
「分かりました! やってみます!」
話が纏まったところで、「今日は大変お世話になりました!」と深々とお辞儀をして、朝倉が暇を告げた。
あ、やば、こっちに来る!
事の成り行きをぼんやり見守っていたオレは、焦ってその場を離れると、隣の教室に駆け込んだ。間一髪、扉を閉めた直後に朝倉が廊下を通る。足音が小さくなっていくのを確認し、オレは胸を撫で下ろした。何とかやり過ごせたようだ。
ていうか、今のやり取りは、一体何だったんだ?
てっきりオレは、朝倉が御影さんに愛の告白をするのかとばかり思っていたのに……。
そうではなかった。憧れは憧れでも好きな人ではなく、まさかの〝なりたい人〟だったとは。
――紛らわしいっ!
心中でツッコんだ後に、何だか脱力した。
なんだ……違ったのか。なぁんだ。
いや、それもそうだよな。朝倉だって男なんだ。男同士で恋愛感情なんて、そうそうあるもんじゃないだろ。
ホッとして気を緩めた時、不意に背後から扉越しに御影さんに名を呼ばれた。
「陽様」
「ッ!?」
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