51 / 101
第50話 休日お忍びデート!?
隠し扉の先から現れたのは、金髪にサングラスのイカついファッションの男性だった。派手な龍の柄シャツに黒のインナー、ラフなジーンズ。重たいシルバーアクセサリー。一見するとカタギじゃなさそうな不穏な空気を纏ったその人が御影さんだとは、すぐには気付かなかった。
「だ、誰かと思った……」
「驚かせてしまって、すみません」
そう言いつつも、彼は俺の反応を楽しんでいるようだった。
「ミドリさんの時みたいな眼鏡変装じゃないんですね」
「ええ、あれだと学内の方には私だと分かってしまうでしょうしね。気配を消す分にはいいのですが、今回はハル様と一緒に行動をするので、かえって近寄り難い雰囲気にした方が虫除けになるかと」
「はぁ……」
でも、何か金髪だと初めて会った頃を思い出すな。庭で倒れてた御影さんを拾って手当てした日。あの時はもっと白に近い金って感じだったけど。
確かにこれなら雰囲気違い過ぎて、学校の人達にもバレなさそうだ。
「……でも、何でオレまた女装なんですか?」
己の恰好を今一度見下ろして、困惑を示した。今日はプライベートなお出かけだというのに、オレの服装はフェミニンな水色花柄ワンピースだった。上に白いサマーニットを合わせて、足元は白いスニーカー。いつものふわふわウィッグまでしっかり装着済みで、私服風とはいえ、これだと仕事着と変わりない。
御影さんに渡されたから、とりあえず着たけど……。
「学校の人達はオレの女装見慣れてるだろうし、これだと変装になってなくないです?」
「そんなことはありません。皆様も陽様がまさかプライベートでまで女装しているとは思わないでしょうから。盲点というやつです」
「なるほど?」
「あと、単純に私が見たかったので。やはりとてもお似合いでいらして、大変お可愛らしいですよ」
「……」
良い笑顔で言われたけれど、どこまで本気なのかが分からない。
まぁ、いざという時は妹だと言い張ろう。実際の妹はこういう清楚系着ないけど。
「それで、この後どうするんですか?」
棗先輩にはオレが寮に居ることを印象付ける為、朝昼の食事は普通に食堂で摂ってある。その後例の本棚にある秘密の隠し扉を使って御影さんとやり取りをしている訳だが、まさか外まで続く秘密の脱出路みたいなものはさすがにないだろう。
校外なら良いが、学園の敷地内だとこの変装では逆に不審者だと思われて目を引いてしまいそうだ。
「ご心配なく。出入りの業者に話を通してありますので、これから彼らの車に乗り込んで、校外まで連れ出して頂きます。そろそろ到着している頃でしょうから、私達も移動致しましょう」
おお、何かスパイみたいだ。
御影さんの指示に従って部屋をこっそりと抜け出し、オレ達は姫寮の裏口まで向かった。正直、この行程が一番ハラハラした。
その後、業者さんのトラックの荷台にお邪魔して運んでもらい、駅からは電車と徒歩で移動する。目的地は聞かされていないので、オレはただ御影さんについて行った。
そうして約四十分程で到着したのは、巨大なマンタの像が乗った平たい長方形と、ドーム型の屋根を持つ円柱形の積み木を並べたみたいな白壁の建物。掲げられた看板は――。
「水族館?」
オレの呟きを拾って、御影さんが頷いてみせた。
「陽様、お好きでしたよね、水族館」
確かに好きだ。旅行先でもご当地の水族館は必ず巡るようにしている。何なら、中学の時水泳部に入ったのだって、水族館の魚達に魅せられたからだったりする。オレもあんな風に水の中を自由に泳げたなら、さぞや気持ち良いだろうなって。
「何で知って……って、愚問か」
この人、オレのストーカーだもんな。
「懐かしいな、ここ。小さい頃に来たことあったなぁ」
「都内で交通の便が良いですからね。ですが、今見るとまた新鮮な気持ちで見られるかもしれませんよ」
早速チケットを購入し、入場する。狭い通路の先、川のせせらぎを思わせる涼やかな水音が聞こえてきた。明るい室内に、大自然を模したアクアテラリウム。その中を悠然と泳ぐ魚達。最初に待ち受けていたのは川魚コーナーだ。
「おぉ……!」
テンション上がる!
「何だっけ、あれ、アロワナ!? あっ、あっちはピラニアも居る! 鱒美味そう~」
「陽様、昔キャンプで虹鱒掴み取り体験をしたら、転んで全身びしょ濡れになってしまわれたんですよね」
「何で知って……って愚問か」
まさか、キャンプ場までついて来てやしないよな?
暫く進んでいくと、今度は辺りが急激に薄暗くなってくる。
ライトアップされたいくつもの水槽が左右に立ち並び、奥の開けた空間には、更に巨大な丸い水槽が展開していた。
水族館といえば、これ! という感じの、珊瑚の海を模した熱帯魚ゾーンだ。色とりどりの魚達が舞い踊る、竜宮城もかくやという華やさに、思わず感嘆の息が漏れる。
「わぁ……!」
「陽様、あちらには海中トンネルを意識した、360度魚が見られる巨大水槽が……」
「マンタが! 頭上を泳いでる! あっ、サメ居た!」
「陽様、あちらにはペンギンやアザラシが……」
「可愛い!」
「陽様、あちらにはクラゲが」
「綺麗!」
「陽様」
「マンボウ!」
やっぱ、いいな! 水族館!
御影さんの言う通りだった。結構、どんな展示があったかなんて忘れているもんだ。
ふと横を見れば、御影さんが温かな微笑を湛えてこちらを見ていた。サングラスを外したその視線があまりにも優しげだったので、オレは怯んだ。
「な、何ですか?」
「いえ、陽様が楽しそうにしていらして、良かったなと」
「そりゃ、楽しいですけど……オレじゃなくて水槽見てくださいよ!」
「ちゃんと見ておりますよ」
そう言いつつも、やっぱりオレの方をニコニコ見てくる。
全く、この人は……。
その時、イルカショーが間もなく開始される旨のアナウンスが館内に流れた。
「あ、御影さん、イルカショーだそうですよ! 折角ですから、オレ達も観に行きましょう!」
これ幸いと話題を逸らし、御影さんの視線を振り切るようにして、ショーの会場を目指した。
「だ、誰かと思った……」
「驚かせてしまって、すみません」
そう言いつつも、彼は俺の反応を楽しんでいるようだった。
「ミドリさんの時みたいな眼鏡変装じゃないんですね」
「ええ、あれだと学内の方には私だと分かってしまうでしょうしね。気配を消す分にはいいのですが、今回はハル様と一緒に行動をするので、かえって近寄り難い雰囲気にした方が虫除けになるかと」
「はぁ……」
でも、何か金髪だと初めて会った頃を思い出すな。庭で倒れてた御影さんを拾って手当てした日。あの時はもっと白に近い金って感じだったけど。
確かにこれなら雰囲気違い過ぎて、学校の人達にもバレなさそうだ。
「……でも、何でオレまた女装なんですか?」
己の恰好を今一度見下ろして、困惑を示した。今日はプライベートなお出かけだというのに、オレの服装はフェミニンな水色花柄ワンピースだった。上に白いサマーニットを合わせて、足元は白いスニーカー。いつものふわふわウィッグまでしっかり装着済みで、私服風とはいえ、これだと仕事着と変わりない。
御影さんに渡されたから、とりあえず着たけど……。
「学校の人達はオレの女装見慣れてるだろうし、これだと変装になってなくないです?」
「そんなことはありません。皆様も陽様がまさかプライベートでまで女装しているとは思わないでしょうから。盲点というやつです」
「なるほど?」
「あと、単純に私が見たかったので。やはりとてもお似合いでいらして、大変お可愛らしいですよ」
「……」
良い笑顔で言われたけれど、どこまで本気なのかが分からない。
まぁ、いざという時は妹だと言い張ろう。実際の妹はこういう清楚系着ないけど。
「それで、この後どうするんですか?」
棗先輩にはオレが寮に居ることを印象付ける為、朝昼の食事は普通に食堂で摂ってある。その後例の本棚にある秘密の隠し扉を使って御影さんとやり取りをしている訳だが、まさか外まで続く秘密の脱出路みたいなものはさすがにないだろう。
校外なら良いが、学園の敷地内だとこの変装では逆に不審者だと思われて目を引いてしまいそうだ。
「ご心配なく。出入りの業者に話を通してありますので、これから彼らの車に乗り込んで、校外まで連れ出して頂きます。そろそろ到着している頃でしょうから、私達も移動致しましょう」
おお、何かスパイみたいだ。
御影さんの指示に従って部屋をこっそりと抜け出し、オレ達は姫寮の裏口まで向かった。正直、この行程が一番ハラハラした。
その後、業者さんのトラックの荷台にお邪魔して運んでもらい、駅からは電車と徒歩で移動する。目的地は聞かされていないので、オレはただ御影さんについて行った。
そうして約四十分程で到着したのは、巨大なマンタの像が乗った平たい長方形と、ドーム型の屋根を持つ円柱形の積み木を並べたみたいな白壁の建物。掲げられた看板は――。
「水族館?」
オレの呟きを拾って、御影さんが頷いてみせた。
「陽様、お好きでしたよね、水族館」
確かに好きだ。旅行先でもご当地の水族館は必ず巡るようにしている。何なら、中学の時水泳部に入ったのだって、水族館の魚達に魅せられたからだったりする。オレもあんな風に水の中を自由に泳げたなら、さぞや気持ち良いだろうなって。
「何で知って……って、愚問か」
この人、オレのストーカーだもんな。
「懐かしいな、ここ。小さい頃に来たことあったなぁ」
「都内で交通の便が良いですからね。ですが、今見るとまた新鮮な気持ちで見られるかもしれませんよ」
早速チケットを購入し、入場する。狭い通路の先、川のせせらぎを思わせる涼やかな水音が聞こえてきた。明るい室内に、大自然を模したアクアテラリウム。その中を悠然と泳ぐ魚達。最初に待ち受けていたのは川魚コーナーだ。
「おぉ……!」
テンション上がる!
「何だっけ、あれ、アロワナ!? あっ、あっちはピラニアも居る! 鱒美味そう~」
「陽様、昔キャンプで虹鱒掴み取り体験をしたら、転んで全身びしょ濡れになってしまわれたんですよね」
「何で知って……って愚問か」
まさか、キャンプ場までついて来てやしないよな?
暫く進んでいくと、今度は辺りが急激に薄暗くなってくる。
ライトアップされたいくつもの水槽が左右に立ち並び、奥の開けた空間には、更に巨大な丸い水槽が展開していた。
水族館といえば、これ! という感じの、珊瑚の海を模した熱帯魚ゾーンだ。色とりどりの魚達が舞い踊る、竜宮城もかくやという華やさに、思わず感嘆の息が漏れる。
「わぁ……!」
「陽様、あちらには海中トンネルを意識した、360度魚が見られる巨大水槽が……」
「マンタが! 頭上を泳いでる! あっ、サメ居た!」
「陽様、あちらにはペンギンやアザラシが……」
「可愛い!」
「陽様、あちらにはクラゲが」
「綺麗!」
「陽様」
「マンボウ!」
やっぱ、いいな! 水族館!
御影さんの言う通りだった。結構、どんな展示があったかなんて忘れているもんだ。
ふと横を見れば、御影さんが温かな微笑を湛えてこちらを見ていた。サングラスを外したその視線があまりにも優しげだったので、オレは怯んだ。
「な、何ですか?」
「いえ、陽様が楽しそうにしていらして、良かったなと」
「そりゃ、楽しいですけど……オレじゃなくて水槽見てくださいよ!」
「ちゃんと見ておりますよ」
そう言いつつも、やっぱりオレの方をニコニコ見てくる。
全く、この人は……。
その時、イルカショーが間もなく開始される旨のアナウンスが館内に流れた。
「あ、御影さん、イルカショーだそうですよ! 折角ですから、オレ達も観に行きましょう!」
これ幸いと話題を逸らし、御影さんの視線を振り切るようにして、ショーの会場を目指した。
あなたにおすすめの小説
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。