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タケル、町へ出る その2
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サックス商会との取引で大金を手にした俺達は、残りの時間で町の中心にある市場までやって来た。
「取引もうまくいったし、市場の店を見てみよう。色々と売ってるみたいだ。」
「ふふ、それは楽しそうですね」
「やったー」
「ウォン、ウォン」
考えてみればいつも森で狩りばかりしていて、皆でこうして楽しむのはこれが初めてだ。
臨時収入も入ったことだし、いつも頑張ってくれているセフィアルとレクイルに、市場で何か買ってあげたかったのだ。
俺達はアクセサリーを並べた店の前で足を止めた。
「レクイル、これなんかどうだい?」
俺は小さな魔法石の付いたネックレスを手に取って見せる。レクイルの年齢ならこれくらいがちょうどいいだろう。
「わあ、可愛いのです。」
「前にレクイルにも何か買ってあげる約束をしただろう。これにしようか」
「で、でも、そんな」
「レクイル、せっかくですから買っていただきなさい。」
レクイルが遠慮しているのを見て、俺の気持ちを察したセフィアルが、助け舟を出してくれた。
「いいのですか?ありがとう!タケルお兄ちゃん。」
レクイルは大喜びで、買ってあげたネックレスを首にかける。
「セフィアルには、これが似合いそうだな。」
「わ、私は前にこれを頂きましたし、今回は大丈夫です。」
俺が今度はセフィアルに髪飾りを勧めて見ると、セフィアルは慌てて以前、俺があげた魔法石で造った腕輪を見せる。今でも毎日つけているし、物持ちが良いんだな。
「いいからいいから、ちょっとつけてみな」
少し強引だがこうでもしないと、彼女は遠慮してしまう。
思った通り青色の髪飾りは、長い銀髪を一つにまとめている彼女には良く似合う。
「お姉ちゃん、綺麗」
「ウォン」
「本当に宜しいのですか?」
「ああ、良く似合っているよ」
「・・・ありがとうございます。タケルさん。」
セフィアルはぎゅっと自身の身を抱きしめると、静かに礼を言った。
「クゥゥゥン」
スノウが自分にも何か買ってくれという感じで見上げてくるが、首輪ではペットみたいになってしまうし、どうしたものか。
何かいい物はないだろうかと探していると、金色の鎖でできた腕輪を見つけた。
「おばちゃん、これを短く加工できないか、この子の脚に付けたいんだ。」
「どれ、お安い御用だよ。ちょっと待っておくれ」
屋台のおばちゃんは簡単に、スノウに合うように加工してくれた。
金色の鎖は足首の辺りにつけるので、邪魔にはならないだろう。
「どうだ、スノウ。これで満足か?」
「ウォン!ウォン!」
スノウも喜んで尻尾をブンブン振っている。
その後もしばらく市場を見て楽しんだ俺達は、夕食をベルモンお勧めの店でとることにした。
手ごろな値段で、美味しい物が食べられるとのことだ。
「ちょっと待ちなッ!アンタ、魔物を連れているのかいッ!?」
スノウを連れて店に入ろうとすると、女将さんからストップがかかった。
「スノウは魔物じゃない。結晶獣だ。」
「結晶獣。話には聞いたことがあるけど、この子がそうなのかい。」
女将さんはおっかなびっくりしながらも、スノウを店に入れてくれた。
注文した食事はどれも美味しくて、セフィアルとレクイルも満足そうだ。
スノウは別で出してもらった肉の塊に、夢中で喰いついている。
「おい、女将ッ、酒だッ!」
突然、男達の一団が入ってきた。
中年冒険者のパーティーだろうか、見るからにみすぼらしい服装であまり景気の良い連中ではないらしい。
男達の一人がふとセフィアルに眼を止める。
「おお、こんなところにえらく別嬪なお嬢ちゃんがいるじゃねえかよ。
そんな小僧と一緒にいるより、俺たちと一緒に飲もうじゃねえか」
「いえ、結構です。」
「まあ、そんなことは言わずに、俺達と飲めば色々と楽しい思いをさせてやるぜ。」
「アァ、なんだ小僧、文句でもあるのか?」
俺がスッと席を立ちあがると、凄んでくる。
「セフィアル、レクイル、スノウ」
俺が声をかけると、皆は一斉に俺のかたわらに身を寄せた。
「プロテクション・スフィア」
俺が魔法を唱えるとスフィアの守護球が俺たちを包み込む。
「うおっ、なんだッ?!」
突然現れた魔法の光体に押し返されて、後ずさる。
「オイ、オヤジ!」
「な、なんだ?」
「今すぐその手を引っ込めて、回れ右して仲間の方に戻るんだ。さもないとここから魔法をぶち込むぞ。」
「な、なんだとッ?!小僧、オマエ魔術師か?」
スフィアの光体を見ればすぐに分かりそうなもんだが、やはり大したことはないようだ。」
「よせッ!魔術師相手にいざこざを起こすな。おい、酒場を変えるぞ」
俺の魔法を警戒したリーダー格の男が、声をかけると一団はさっさと食堂から出て行ってしまった。
「トラブルに巻き込まれた時の対処法を決めておいて良かったな。」
「はい、まさかいきなり巻き込まれるとは思っていませんでした。」
そう異世界でチンピラ相手のトラブルに巻き込まれるのはお約束である。
セフィアルは見ての通りの銀髪美少女。
レクイルは可愛らしさは、ロリ属性のキケン人物の劣情を刺激するだろうし、スノウは結晶獣なので見る人が見れば大変な価値がある。
優良物件が三件、俺というまあ平凡な男子と一緒にいれば、トラブルに巻き込まれるのはテンプレである。
そのあたりの対策はしっかり練ってある。俺は用意周到な男なのだ。
トラブルの際は俺のかけ声で全員集合、プロテクション・スフィアの中に避難して身を守る。
それで相手があきらめればよし、引かないときは中から魔法をお見舞いするという段取りだ。
もちろん先手必勝で相手を蹴散らすという方法もあるが、毎回毎回イチャモンをつけてくる相手を半殺しというのも無理があるだろう。
こうして最初のトラブルを無難に乗り切った俺達は、美味しい食事を満喫した後、今晩予約してある宿へと向かった。
「取引もうまくいったし、市場の店を見てみよう。色々と売ってるみたいだ。」
「ふふ、それは楽しそうですね」
「やったー」
「ウォン、ウォン」
考えてみればいつも森で狩りばかりしていて、皆でこうして楽しむのはこれが初めてだ。
臨時収入も入ったことだし、いつも頑張ってくれているセフィアルとレクイルに、市場で何か買ってあげたかったのだ。
俺達はアクセサリーを並べた店の前で足を止めた。
「レクイル、これなんかどうだい?」
俺は小さな魔法石の付いたネックレスを手に取って見せる。レクイルの年齢ならこれくらいがちょうどいいだろう。
「わあ、可愛いのです。」
「前にレクイルにも何か買ってあげる約束をしただろう。これにしようか」
「で、でも、そんな」
「レクイル、せっかくですから買っていただきなさい。」
レクイルが遠慮しているのを見て、俺の気持ちを察したセフィアルが、助け舟を出してくれた。
「いいのですか?ありがとう!タケルお兄ちゃん。」
レクイルは大喜びで、買ってあげたネックレスを首にかける。
「セフィアルには、これが似合いそうだな。」
「わ、私は前にこれを頂きましたし、今回は大丈夫です。」
俺が今度はセフィアルに髪飾りを勧めて見ると、セフィアルは慌てて以前、俺があげた魔法石で造った腕輪を見せる。今でも毎日つけているし、物持ちが良いんだな。
「いいからいいから、ちょっとつけてみな」
少し強引だがこうでもしないと、彼女は遠慮してしまう。
思った通り青色の髪飾りは、長い銀髪を一つにまとめている彼女には良く似合う。
「お姉ちゃん、綺麗」
「ウォン」
「本当に宜しいのですか?」
「ああ、良く似合っているよ」
「・・・ありがとうございます。タケルさん。」
セフィアルはぎゅっと自身の身を抱きしめると、静かに礼を言った。
「クゥゥゥン」
スノウが自分にも何か買ってくれという感じで見上げてくるが、首輪ではペットみたいになってしまうし、どうしたものか。
何かいい物はないだろうかと探していると、金色の鎖でできた腕輪を見つけた。
「おばちゃん、これを短く加工できないか、この子の脚に付けたいんだ。」
「どれ、お安い御用だよ。ちょっと待っておくれ」
屋台のおばちゃんは簡単に、スノウに合うように加工してくれた。
金色の鎖は足首の辺りにつけるので、邪魔にはならないだろう。
「どうだ、スノウ。これで満足か?」
「ウォン!ウォン!」
スノウも喜んで尻尾をブンブン振っている。
その後もしばらく市場を見て楽しんだ俺達は、夕食をベルモンお勧めの店でとることにした。
手ごろな値段で、美味しい物が食べられるとのことだ。
「ちょっと待ちなッ!アンタ、魔物を連れているのかいッ!?」
スノウを連れて店に入ろうとすると、女将さんからストップがかかった。
「スノウは魔物じゃない。結晶獣だ。」
「結晶獣。話には聞いたことがあるけど、この子がそうなのかい。」
女将さんはおっかなびっくりしながらも、スノウを店に入れてくれた。
注文した食事はどれも美味しくて、セフィアルとレクイルも満足そうだ。
スノウは別で出してもらった肉の塊に、夢中で喰いついている。
「おい、女将ッ、酒だッ!」
突然、男達の一団が入ってきた。
中年冒険者のパーティーだろうか、見るからにみすぼらしい服装であまり景気の良い連中ではないらしい。
男達の一人がふとセフィアルに眼を止める。
「おお、こんなところにえらく別嬪なお嬢ちゃんがいるじゃねえかよ。
そんな小僧と一緒にいるより、俺たちと一緒に飲もうじゃねえか」
「いえ、結構です。」
「まあ、そんなことは言わずに、俺達と飲めば色々と楽しい思いをさせてやるぜ。」
「アァ、なんだ小僧、文句でもあるのか?」
俺がスッと席を立ちあがると、凄んでくる。
「セフィアル、レクイル、スノウ」
俺が声をかけると、皆は一斉に俺のかたわらに身を寄せた。
「プロテクション・スフィア」
俺が魔法を唱えるとスフィアの守護球が俺たちを包み込む。
「うおっ、なんだッ?!」
突然現れた魔法の光体に押し返されて、後ずさる。
「オイ、オヤジ!」
「な、なんだ?」
「今すぐその手を引っ込めて、回れ右して仲間の方に戻るんだ。さもないとここから魔法をぶち込むぞ。」
「な、なんだとッ?!小僧、オマエ魔術師か?」
スフィアの光体を見ればすぐに分かりそうなもんだが、やはり大したことはないようだ。」
「よせッ!魔術師相手にいざこざを起こすな。おい、酒場を変えるぞ」
俺の魔法を警戒したリーダー格の男が、声をかけると一団はさっさと食堂から出て行ってしまった。
「トラブルに巻き込まれた時の対処法を決めておいて良かったな。」
「はい、まさかいきなり巻き込まれるとは思っていませんでした。」
そう異世界でチンピラ相手のトラブルに巻き込まれるのはお約束である。
セフィアルは見ての通りの銀髪美少女。
レクイルは可愛らしさは、ロリ属性のキケン人物の劣情を刺激するだろうし、スノウは結晶獣なので見る人が見れば大変な価値がある。
優良物件が三件、俺というまあ平凡な男子と一緒にいれば、トラブルに巻き込まれるのはテンプレである。
そのあたりの対策はしっかり練ってある。俺は用意周到な男なのだ。
トラブルの際は俺のかけ声で全員集合、プロテクション・スフィアの中に避難して身を守る。
それで相手があきらめればよし、引かないときは中から魔法をお見舞いするという段取りだ。
もちろん先手必勝で相手を蹴散らすという方法もあるが、毎回毎回イチャモンをつけてくる相手を半殺しというのも無理があるだろう。
こうして最初のトラブルを無難に乗り切った俺達は、美味しい食事を満喫した後、今晩予約してある宿へと向かった。
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