74 / 75
閑話 天使アーリンの憂鬱 その4
しおりを挟む
タケルと接触した天使アーリンは、彼の魔力に圧倒されてやむなく逃げ帰るという失態を、演じることとなった。
そして何よりも、タケルがネビュラ・メイガスでありダークマターの力に覚醒していることを告げられて、大きなショックを受けていた。
ネビュラ・メイガスは同じメイガスであっても他の系統とは決定的に違う。
光を信奉する天界の天使にとって暗黒物質を操るダークマターは、自分たちとは完全に相反する存在。当然、それを扱うネビュラ・メイガスは、禁忌にあたるものである。
タケルがネビュラ・メイガスであることが、天界に知られれば無事では済まないだろう。
だからといって、天使長様に嘘の報告をするわけにはいかない。
天界に戻るアーリンの表情は苦悩に満ちていた。
「アーリンよ。メイガスを名乗る異世界人の若者は拘束できたのか?」
「それが・・・」
天界に戻ったアーリンは下界でタケルと接触したが、彼の連行には失敗した事を天使長に報告する。
「その者、天界からの命令にも従わぬというのか、困ったことよ。」
「申し訳ございません。ゼブラ様」
「よい、そなたの責任ではない。アーリンよ。それにしても、その者はそこまでメイガスに固執するとは、どのような系統の魔法を修めているというのだ。」
「そ、それが・・・」
ついに恐れていた質問が来てしまった。
「うむ」
「ネビュラ・メイガスとのことでございます。」
「ネビュラ・メイガスだとォ!」
「ひぃッ?!」
それまで余裕のある態度で、報告を受けていた天使長ゼブラの表情が一変した。
怒りのあまり鬼のような形相で、アーリンを怒鳴りつける。
「何ということだ。異世界から転移した者が、一体、何故ネビュラ・メイガスとなることができるのだ。」
「そ、それは・・・」
「ネビュラ・メイガス、その系統の魔術だけは絶対に許すわけにはいかん。」
「ゼブラ様・・・」
アーリンの返答を待つこともなく、天使長ゼブラはブツブツと独り言を言いながら、思い悩み始める。
もはやアーリンの存在は、眼中にないらしい
「ザラキドゥを呼べッ!」
しばらく思案にふけった後に、突然大声で配下の天使に命令を伝える。
「お側に控えておりますよ。ゼブラ様。」
すると耳障りな声がして、すぐにどこからともなくザラキドゥが姿を現した。
「異世界より転移した人族の者、タケル・オオミヤを現時点をもって第1種警戒対象とする。ザラキドゥよ、お前にはタケルの抹殺を命じる。」
「ハイ、謹んでお受けいたしましょう。」
殊勝な言葉とは裏腹に、ザラキドゥはニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
ああ・・・恐れていた事が現実になってしまった。
天界に仇を成す者の抹殺を専門とするザラキドゥは地上の者にとってみれば、天使というよりも死神という敬称こそが相応しい。
その翼は天使とは思えぬほど黒く染まり、表情やしぐさは見る者を不快にする要素で満ちている。
天界よりも魔界の者といったほうが、はるかにしっくりとくるだろう。
今も抹殺という任務が楽しくてしょうがないというように、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべ続けている。
「それではアーリン殿、タケルとかいう人族のいるところまで案内していただきましょうかね。」
ザラキドゥに話しかけられて、アーリンは鳥肌が立った。
抹殺を生業とし、それを楽しむザラキドゥは心優しいアーリンが最も嫌悪する存在である。
どうしてこのような者が、天界に籍を置いているのか分からない。
だが、任務であれが従わないわけにはいかない。
まがりなりにも一度は、自分が担当した若者の抹殺に手を貸すことになる非情な役目に、アーリンの心はズタズタに引き裂かれそうになっていた。
そして何よりも、タケルがネビュラ・メイガスでありダークマターの力に覚醒していることを告げられて、大きなショックを受けていた。
ネビュラ・メイガスは同じメイガスであっても他の系統とは決定的に違う。
光を信奉する天界の天使にとって暗黒物質を操るダークマターは、自分たちとは完全に相反する存在。当然、それを扱うネビュラ・メイガスは、禁忌にあたるものである。
タケルがネビュラ・メイガスであることが、天界に知られれば無事では済まないだろう。
だからといって、天使長様に嘘の報告をするわけにはいかない。
天界に戻るアーリンの表情は苦悩に満ちていた。
「アーリンよ。メイガスを名乗る異世界人の若者は拘束できたのか?」
「それが・・・」
天界に戻ったアーリンは下界でタケルと接触したが、彼の連行には失敗した事を天使長に報告する。
「その者、天界からの命令にも従わぬというのか、困ったことよ。」
「申し訳ございません。ゼブラ様」
「よい、そなたの責任ではない。アーリンよ。それにしても、その者はそこまでメイガスに固執するとは、どのような系統の魔法を修めているというのだ。」
「そ、それが・・・」
ついに恐れていた質問が来てしまった。
「うむ」
「ネビュラ・メイガスとのことでございます。」
「ネビュラ・メイガスだとォ!」
「ひぃッ?!」
それまで余裕のある態度で、報告を受けていた天使長ゼブラの表情が一変した。
怒りのあまり鬼のような形相で、アーリンを怒鳴りつける。
「何ということだ。異世界から転移した者が、一体、何故ネビュラ・メイガスとなることができるのだ。」
「そ、それは・・・」
「ネビュラ・メイガス、その系統の魔術だけは絶対に許すわけにはいかん。」
「ゼブラ様・・・」
アーリンの返答を待つこともなく、天使長ゼブラはブツブツと独り言を言いながら、思い悩み始める。
もはやアーリンの存在は、眼中にないらしい
「ザラキドゥを呼べッ!」
しばらく思案にふけった後に、突然大声で配下の天使に命令を伝える。
「お側に控えておりますよ。ゼブラ様。」
すると耳障りな声がして、すぐにどこからともなくザラキドゥが姿を現した。
「異世界より転移した人族の者、タケル・オオミヤを現時点をもって第1種警戒対象とする。ザラキドゥよ、お前にはタケルの抹殺を命じる。」
「ハイ、謹んでお受けいたしましょう。」
殊勝な言葉とは裏腹に、ザラキドゥはニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
ああ・・・恐れていた事が現実になってしまった。
天界に仇を成す者の抹殺を専門とするザラキドゥは地上の者にとってみれば、天使というよりも死神という敬称こそが相応しい。
その翼は天使とは思えぬほど黒く染まり、表情やしぐさは見る者を不快にする要素で満ちている。
天界よりも魔界の者といったほうが、はるかにしっくりとくるだろう。
今も抹殺という任務が楽しくてしょうがないというように、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべ続けている。
「それではアーリン殿、タケルとかいう人族のいるところまで案内していただきましょうかね。」
ザラキドゥに話しかけられて、アーリンは鳥肌が立った。
抹殺を生業とし、それを楽しむザラキドゥは心優しいアーリンが最も嫌悪する存在である。
どうしてこのような者が、天界に籍を置いているのか分からない。
だが、任務であれが従わないわけにはいかない。
まがりなりにも一度は、自分が担当した若者の抹殺に手を貸すことになる非情な役目に、アーリンの心はズタズタに引き裂かれそうになっていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
18
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる