【ゴミ拾い】と呼ばれ勇者パーティーを追放された俺…だがこのスキル、実はSSSランクの【万物拾得】だったらしい。

うはっきゅう

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第一章・覚醒 編

第9話:廃棄物たちの結束と、聖女の涙

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 ズズゥン……! ズズゥン……!

 森の木々をなぎ倒し、その巨体が姿を現した。
 全長約五メートル。全身が錆びついた黒金で構成された、人型の殺戮兵器。
 頭部の赤い魔石が、不気味な光を明滅させている。

『警告。排除対象ヲ確認。抹殺モード、起動』

 機械的な音声と共に、ゴーレムの腕が変形し、回転する刃となった。
 その切っ先が、俺たちの後ろで震えているセシリアに向けられる。

「ひっ……!」
 セシリアが悲鳴を上げ、俺の背中にしがみつく。
「ご、ごめんなさい……私のせいで、あなたたちまで……!」

「謝るな、セシリア」
 俺は、短剣を逆手に持ち直し、ニヤリと笑った。
「俺たちは『ゴミ拾い』だ。粗大ゴミの処理なら、お手の物だぜ」

「フェン、いくぞ!」
「はいっ! お任せください!」

 俺の合図と同時に、フェンが地を蹴った。
 ゴーレムが反応し、巨大な回転刃を振り下ろす。
 その一撃は、大岩すらバターのように両断する威力だ。

 だが。

「させません! 白狼の城壁フェンリル・ウォールッ!」

 ガギィィィィィィンッ!!

 凄まじい金属音が森に響き渡る。
 フェンが展開した白銀の障壁が、ゴーレムの一撃を完全に受け止めていた。
 一歩も引かない。
 かつてホブゴブリンの一撃に怯えていた少女は、もういない。

『障害ヲ検知。破壊不能。破壊不能』
 ゴーレムの思考回路が、理解不能な硬度にバグを起こす。

「今だ、エディさん!」
「おうよ!」

 フェンが作った一瞬の隙。
 俺は、その巨体の懐へと潜り込んだ。
 【身体強化フィジカル・ブースト】(筋力LV7×体力LV5)。
 今の俺の速度は、Bランクの魔物すら凌駕する。

 俺は、ゴーレムの胴体に手を触れた。
 斬るんじゃない。
 「拾う」んだ。

(解析開始……構造把握……)
 【万物拾得オールゲッター】が、瞬時にゴーレムの情報を丸裸にする。

『対象:魔導機兵ゴーレム・改』
『所有権:アルトリア教会(放棄済み)』
『状態:暴走(制御魔石のひび割れ)』
『構成素材:ミスリル合金(劣化)、古代動力炉、殲滅プログラム』

(……教会が所有者、ね。やっぱりな)

 俺は、心の中で舌打ちをした。
 だが、重要なのはそこじゃない。
 「所有権:放棄済み」。
 つまり、こいつは誰のものでもない、ただの「落ちているゴミ」だ。

「なら、俺がもらっても文句はねえよな!」

 俺は叫びと共に、スキルを発動させた。

「――強制拾得フォース・ルート解体ディスマントル!」

 バシュゥゥゥンッ!!

 俺の手のひらから放たれた青い光が、ゴーレムを包み込む。
 次の瞬間。

『エ……ラー……動力、ロ……消失……』

 ゴーレムの動きが、ピタリと止まった。
 その巨体が、砂の城が崩れるように、バラバラとパーツごとに分解され、地面に落ちる。
 そして、一番重要な「心臓部」――赤く輝く動力魔石は、すでに俺の手の中にあった。

『スキル【金剛外殻アダマンタイト・シェル】の欠片を拾得しました』
『スキル【自己修復オート・リペア】の欠片を拾得しました』
『アイテム【古代動力炉(極小)】を拾得しました』

「……ふぅ。大漁だな」
 俺は、手の中で明滅する魔石を空間収納アイテムボックスに放り込み、振り返った。

 そこには、口をあんぐりと開けたまま固まっているセシリアと、誇らしげに尻尾を振るフェンの姿があった。

「え……? え……?」
 セシリアが、分解されたゴーレムの残骸と、俺の顔を交互に見ている。
「う、嘘……あの『殺戮兵器』が、一瞬で……? 勇者パーティー全員でも、苦戦する相手なのに……」

「言っただろ。ゴミ拾いには、ゴミ拾いのやり方があるんだよ」
 俺は肩をすくめ、セシリアに歩み寄った。
 そして、泥だらけになった彼女の前にひざまずき、目線を合わせた。

「さて、セシリア。……一体、何があった?」

 俺の問いかけに、セシリアの瞳が揺れた。
 堪えていた涙が、その美しい瞳から溢れ出す。

「……エディさん……私……私……っ!」

 セシリアは、子供のように泣きじゃくりながら、ポツリポツリと語り始めた。

 王都への呼び出しは、嘘だったこと。
 実際は、街はずれの教会の地下施設に連れていかれたこと。
 そこで、司教から告げられた非情な宣告。

『セシリア。君はもう、聖女としては用済みだ』

 理由は、勇者パーティーの不振。
 レオンたちが結果を出せないのは、聖女である彼女の「祈り」が足りないからだ、と。
 そして何より、彼女が「追放されたゴミ(俺)」をいつまでも気にかけていることが、「不純」だと断罪されたらしい。

『君の代わりに、もっと従順で、優秀な聖女が見つかった。君は、この新型兵器の「生体魔力炉」として、最後に神に仕えなさい』

 そう言って、彼女は起動実験中のゴーレムの前に突き出された。
 必死の思いで拘束を解き、逃げ出してきたが、執拗に追跡され……そして、ここで俺たちに助けられたのだという。

「……ひどい……」
 フェンが、怒りで拳を震わせていた。
「使い捨てにするなんて……人間は、どこまで腐っているんですか……!」

「……ああ。全くだ」
 俺の中にも、どす黒い怒りの炎が燃え上がっていた。
 レオンたちだけじゃない。
 この街の権力者どもは、どいつもこいつも、人を「道具」としか見ていない。
 役に立てば使い、使い終われば捨てる。
 俺も、フェンも、そしてセシリアも。

「……私、もう帰る場所がないの……」
 セシリアが、消え入りそうな声で呟く。
「教会にも追われ、パーティーにも……きっと、もう私の居場所なんて……」

 彼女は、絶望に打ちひしがれていた。
 泥に汚れ、着の身着のまま、命からがら逃げ出した元聖女。
 世間から見れば、彼女もまた「落ちぶれたゴミ」なのかもしれない。

 だが。

「……なら」
 俺は、セシリアの手を取った。
 その手は、冷たく震えていたが、俺がかつて怪我をした時、優しく包み込んでくれた温かさを、俺は覚えていた。

「俺が、拾うよ」

「……え?」
 セシリアが顔を上げる。

「俺のスキルは【万物拾得オールゲッター】。世界中が『いらない』って捨てたものでも、俺にとっては『宝物』だ」
 俺は、真っ直ぐに彼女の瞳を見つめた。

「お前が帰る場所がないなら、俺たちのところに来い。教会が、勇者が、お前を捨てたって言うなら……俺が拾って、あいつらが後悔して泣き叫ぶくらい、最高に幸せにしてやる」

「エディ、さん……」

「それに、俺たちには優秀な回復役《ヒーラー》が必要なんだ。……俺の背中を守ってくれるのは、お前しかいない」

 それは、かつてパーティー時代、俺が彼女に言いたくても言えなかった言葉。
 荷物持ちと聖女という身分差で、飲み込んでいた本音。

 セシリアの瞳から、また涙が溢れた。
 でも、今度の涙は、絶望の色じゃなかった。

「……はいっ……! 私でよければ……あなたの、力に……っ!」

 セシリアが、俺の胸に飛び込んできた。
 俺は、その震える体を、しっかりと受け止めた。
 隣では、フェンがもらい泣きしながらも、優しく微笑んでいる。

 こうして。
 俺たちのパーティーに、三つ目のピースが埋まった。

 規格外の攻撃力を持つ「拾得者オールゲッター」、エディ。
 鉄壁の守りを誇る「盾役タンカー」、フェン。
 そして、慈愛と最高峰の治癒魔法を持つ「聖女ヒーラー」、セシリア。

 全員が、誰かに捨てられた「ゴミ」。
 だが、今の俺たちは、間違いなく――世界最強のパーティーだ。

「よし。涙は拭け、セシリア」
 俺は、セシリアの涙を指で拭った。
「まずは、お前をそんな目に合わせた教会と……ついでにレオンたちにも、きっちりと『お礼』をしなきゃな」

「……はい!」
 セシリアが、力強く頷く。その顔には、もう迷いはなかった。
 かつての気弱なだけの聖女じゃない。
 理不尽に抗う、覚悟を決めた女の顔だ。

 俺たちは、森を出て、アルトリアの街へと戻ることにした。

 だが、街の方角からは、不穏な黒煙が上がっていた。
 そして、俺の【危機感知デンジャー・センス】(これも拾った)が、強烈な警報を鳴らしている。

『警告。アルトリア市街地に、多数の敵性反応』
『反応:魔物(スタンピード)……および、勇者レオンの魔力反応(衰弱)』

「……ハッ。どうやら、俺たちがいない間に、留守番も満足にできなかったみたいだな」

 俺は、ニヤリと笑った。
 最高の舞台シチュエーションが、整ったようだ。

「行くぞ、二人とも! 街のピンチを救って、ついでに勇者レオンの化けの皮を、完全に剥がしてやる!」
「はいっ、エディさん!」
「私も……戦います! 今度こそ、自分の意志で!」

 捨てられた3人が、英雄として凱旋する時が来た。
 これより始まるのは、大逆転の英雄譚。
 そして、復讐劇だ。
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