【ゴミ拾い】と呼ばれ勇者パーティーを追放された俺…だがこのスキル、実はSSSランクの【万物拾得】だったらしい。

うはっきゅう

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第三章・魔王討伐編

第19話:灼熱のゴミ捨て場と、渇いた人魚姫

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 水の都を救い、新たな仲間メロディを加えた俺たち「銀の翼」は、次なる目的地を目指していた。
 呪われた羅針盤が指し示すのは、大陸の南東。
 活火山が連なる「煉獄山脈プルガトリオ」。その火口付近にあるとされる、「火の神殿」だ。

 スキフ(砂上船)を風魔法で改造した「空飛ぶゴミ船(リカルド命名)」で空を飛び、数日。
 眼下の景色は、青い海から一変して、赤黒い溶岩と岩肌が広がる地獄絵図に変わっていた。

「あづい……。死ぬ……。干からびるぅ……」
 甲板の日陰で、濡れ雑巾のようにぐったりしているのは、新入りのメロディだ。
 彼女は人魚族。陸上でも人型に変身して活動できるが、極度の乾燥と高温は大の苦手だ。

「メロディ、大丈夫ですか!? エディさん、氷! もっと氷を!」
 セシリアが、必死に冷却魔法をかけながら叫ぶ。
 フェンも、暑さで自慢の毛皮が汗ばんでおり、舌を出してハァハァ言っている。
「わたくしも……この暑さは、少々……厳しい、です……」

「……地獄だな」
 リカルドに至っては、酒瓶の中身がホットワインになってしまったことに絶望し、死んだ魚のような目をしている。

「お前ら、だらしねえな」
 俺は、涼しい顔で舵を取っていた。
 なぜなら、俺は以前「ジャンクヤード」で拾った【耐熱ヒート・レジスト】のスキルを、自分自身と、そして俺の服(装備)に付与しているからだ。

「大将だけズルいぞ! 俺たちにもそのスキルよこせよ!」
「生憎だが、このスキルは『譲渡』できねえんだよ。……だが、対策はある」

 俺は空間収納アイテムボックスから、巨大なガラスの水槽(元は貴族の観賞用・廃棄品)を取り出した。
 中には、水の都で精製した「最高純度の冷水」がなみなみと入っている。

「ほらよ、メロディ。特等席だ」
「み、水ぅぅぅぅぅ!」

 メロディが、人魚の姿に戻って水槽にダイブする。
 バシャーン!
「ぷはぁっ! 生き返りましたぁ……! エディ様、大好きですぅ~!」
 水槽の中から手を振る人魚姫。……シュールな光景だが、まあ命には代えられない。

「さて、到着だぞ」

 俺は船を、巨大な火口の縁へと着陸させた。
 ゴゴゴゴゴ……!
 地響きと共に、火口の底から灼熱のマグマが噴き上がっている。
 その中心に、黒い鉄でできた巨大な要塞のような建物――「火の神殿」が鎮座していた。

「……おい、大将。あれを見ろよ」
 リカルドが、神殿の周囲を指差す。

 そこには、信じられない光景が広がっていた。
 マグマの海に浮かぶ神殿の周りに、無数の「剣」や「槍」、「鎧」が突き刺さり、あるいは山のように積み上げられていたのだ。
 その数、数万、いや数億か。
 すべてが錆びつき、折れ、溶けかかっている。

「……武器の、墓場……?」
 フェンが息を呑む。

「なるほどな」
 俺の【万物拾得オールゲッター】が、その場所の「正体」を看破する。

『場所:廃棄処分場スクラップ・ヤード・イグニス』
『詳細:古代より、失敗作や破損した武具をマグマに投棄し、還元するための場所。別名、鍛冶神のゴミ箱』

「……気に入らねえな」
 俺は、眉をひそめた。
 俺は「ゴミ拾い」だ。だが、それは「価値あるゴミ」を救うためだ。
 ここは違う。ここは、作り手が愛情を失い、「失敗作」として切り捨てたモノたちの、無念の吹き溜まりだ。

「入るぞ。……この神殿の主、とんだ『職人崩れ』かもしれん」

 俺たちは、熱波を遮断する魔法(セシリア担当)と、移動用水槽(俺が担ぐ)で、神殿への一本道を進んだ。

 神殿の入り口には、扉がなかった。
 代わりに、巨大な「金床」と「ハンマー」が置かれ、一人の男が立っていた。

 全身が燃え盛る炎でできた髭面の大男。
 手には、身の丈ほどもあるハンマー。
 神殿の番人――「炎の鍛冶師フレイム・スミス」だ。

「――帰れ、定命の者よ」
 男の声は、溶岩が煮え立つような重低音だった。
「ここは『失敗作』が還る場所。生者が足を踏み入れてよい場所ではない」

「失敗作、ねぇ」
 俺は、一歩前に出た。
「俺たちは『火の宝玉』をもらいに来た。通してもらうぜ」

「宝玉だと? ……フン。あれもまた、我にとっては『失敗作』よ」
 鍛冶師は、鼻で笑った。
「完全なる美を求めて打ったが、熱量が足りず、ただの石ころと成り果てた。あんなモノに価値などない」

「……なんだと?」
 俺のこめかみがピクリと動く。
 こいつ、今、自分の作ったものを「価値がない」と言いやがったか?

「貴様……武器屋の親父さんが聞いたら、ハンマーでぶん殴られるぞ」
「我は神に仕える鍛冶師ぞ! 人間の尺度で測るな! ……去らぬなら、貴様らも『スクラップ』にして溶かしてくれるわ!」

 鍛冶師がハンマーを振り上げる。
 周囲のマグマが呼応し、巨大な炎の蛇となって俺たちに襲いかかった!

「フェン!」
「はいっ! 【白狼の城壁フェンリル・ウォール】!」
 ジュワアアアアア!
 フェンの盾が炎を受け止めるが、あまりの高熱に障壁が揺らぐ。
「あつっ……! エディさん、熱量が桁違いです!」

「メロディ、歌え!」
「は、はいっ! 水槽の中から失礼します! ……♪~(清涼の歌声)」

 メロディが歌うと、周囲の空気が一気に冷やされ、炎の勢いが弱まる。
 水属性の「鎮火バフ」。相性は抜群だ!

「小賢しいわ! 所詮は水遊び! この火山の全熱量をもって、蒸発させてやる!」
 鍛冶師がハンマーを金床に叩きつける。
 カーン!!
 その音が合図となり、神殿の周囲に積み上げられていた「廃棄された武器たち」が、ガシャガシャと動き出した。

「なっ……!? ゴミが動いた!?」
 リカルドが叫ぶ。
 錆びた剣、折れた槍が、宙に浮き、まるで意思を持ったかのように俺たちに切っ先を向ける。

「これらは皆、我が捨てた失敗作どもの怨念よ! 貴様らを道連れに、マグマへ還るがよい!」

 無数の鉄屑の雨が、俺たちに降り注ぐ。
 逃げ場はない。
 だが。

「……上等だ」
 俺は、ニヤリと笑った。
 俺の目の前には、数万、数億の「捨てられた武器」がある。
 そいつらが、「怨念」を持って襲ってくるだと?

「勘違いすんなよ、三流鍛冶師」
 俺は、右手を大きく広げた。

「こいつらは、お前に捨てられて『怒って』るんじゃねえ」
「何……?」
「『まだ使える』って……『まだ戦いたい』って、泣いてるんだよッ!!」

 俺は叫んだ。

「――【万物拾得オールゲッター】ッ!!」

 俺のスキルが発動する。
 対象は、襲い来るすべての「鉄屑」。
 拾うのは、物質じゃない。
 そこに宿る、作り手に見放された「魂(モノの心)」だ!

『対象:廃棄された数億の武具』
『拾得対象:【武具の魂ウェポン・ソウル】、【悔恨リグレット】、【再起への渇望リ・トライ】』
『実行:概念拾得コンセプト・ルート

 ピタリ。
 空中で、鉄屑の雨が止まった。

「な……バカな!? 我が支配下にある廃棄物どもが、なぜ止まる!?」
 鍛冶師が狼狽する。

 俺の手の中には、眩いばかりの「光の玉」が集まっていた。
 それは、このゴミ山に眠っていた、すべての武器たちの「叫び」の結晶。

「こいつらの声、俺が拾った」
 俺は、その光を、俺の愛刀「オリハルコンの短剣(元ゴミ)」に纏わせた。

「リサイクル・タイムだ。……お前が捨てた『失敗作』が、どれだけ強いか、その身で味わいな!」
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