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12話 風邪
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ガチャンッ
「リナッ!!」
俺は、靴を脱ぎ捨てて部屋に上がった。リビングにはリナの姿はない。
焦りは頂点に達し、必死にリナを探す。勢いよく、和室の扉を開けるとリナの姿が。
「うう……」
リナは布団に包まって、苦しそうな呻き声を上げていた。
俺はすぐに駆け寄り、リナの様子を伺う。
「大丈夫か、リナッ!」
「う……体が苦しい、熱い……」
リナは辛い表情で返事を小さく返す。試しにリナの額に手を当てる。
「すごい熱だっ。ちょっとここで待ってろ」
俺は、自分の部屋に駆け込み、物入れから救急セットを取り出した。
確か、風邪薬があったはずだ。本当は病院に連れて行きたいところだが、リナを病院まで運ぶ手段がない。
ここで、応急処置を施さなければっ。
風邪薬を片手に、急いでコップに水を汲み、薬2錠と一緒にリナに差し出す。
「これは薬だ。水と一緒に飲むんだ」
リナは、慣れない様子で薬を飲む。
「ゴホッゴホッ」
リナも思わず咳き込んでしまう。そんな彼女の背中を優しくさする。薬をしっかり飲み込んでくれたようで安心した。
「これで、熱は下がるから安心しろ」
リナに大丈夫と伝えると、風呂場から風呂桶を持って来て、水と氷を入れる。その氷水でタオルを濡らした。
しっかりと絞ったタオルをリナの額に乗せる。
「これ、冷た過ぎたら言ってくれよ」
「ありがと……ごめん、学校だったのに……やっぱり私はこの家の邪魔者だよね」
リナは悲しげな表情でこちらを見る。
「これぐらいで、重大なことやらかしたみたいな顔すんなよ。別に邪魔じゃないし」
「成は優しいわよね」
俺は、早くリナに伝えようとしていることがあった。
「ごめんっ」
「え?」
突然の俺の言葉にリナは困惑している。
「俺、リナのことを知ろうともしないで、気持ちも考えずに勝手なこと言ったりして……」
「何言ってるのよ。私は成の優しさでここにいさせてもらっているのに」
「でも、俺泣かせちゃったし……」
リナは目を細める。そして、そのまま淡々と語り始めた。
「私ね、前世では冒険者だったの」
「知ってるぞ」
俺もリナの話に耳を傾ける。思えば、リナから自分の話をするのは初めてかもしれない。
「でもね、私奴隷だったの」
俺は、耳を疑った。
リナが奴隷??
ゴクリと唾を飲み込み、俺は緊張する。
「私は元々、貧しい農民の家族に生まれたの。そこを治めていた領主はとてもひどい人だった。作物がモンスター達のせいで荒らされる酷い土地に住む農民からも惜しみなく多額の税を払わさせる」
俺は、異世界という言葉を勘違いしていたのかもしれない。異世界と聞いた時はゲームのような美しいファンタジーな世界を想像していた。
「それで税が払えなくなったから、私は奴隷商に売られた。そんな私を買ったのは勇者と呼ばれる冒険者だったの。そこで私は盗賊として冒険者になったんだよね」
リナは、あの時のように弱々しく、声を震わせる。
目尻からは、ポロポロと涙を溢す。
「でも、勇者は私を仲間として扱わなかった。戦いの時は私をほったらかしにして、夜になったら私はっ……」
「それ以上言うなっ!!」
俺は彼女に最後の一言を言わせなかった。思えば、彼女を胸の中に抱いていた。
リナは苦しみながらもここまで話してくれたんだ、なら俺はっ。
「俺の家にいろっ」
「え」
「お前を狂わせるそのしがらみから解放されるまで、俺の家にいろっ」
俺はこの日初めてリナのことを深く知り、もっと知りたいと思った。
そして、彼女のドロドロとした過去を拭いとってやろうとも思った。
「ありがとう……ぐすんっ……ありがとうっ」
リナは今まで以上の涙を流しながら、俺の胸の中で笑ってくれた。
明日からまた、同居生活が始まる。
【余談】
ここまで読んでいただき感謝します!!
これで一区切りつきました。第二章を書くかはまだ迷っています。(この作品の伸び率が悪いので……)
「リナッ!!」
俺は、靴を脱ぎ捨てて部屋に上がった。リビングにはリナの姿はない。
焦りは頂点に達し、必死にリナを探す。勢いよく、和室の扉を開けるとリナの姿が。
「うう……」
リナは布団に包まって、苦しそうな呻き声を上げていた。
俺はすぐに駆け寄り、リナの様子を伺う。
「大丈夫か、リナッ!」
「う……体が苦しい、熱い……」
リナは辛い表情で返事を小さく返す。試しにリナの額に手を当てる。
「すごい熱だっ。ちょっとここで待ってろ」
俺は、自分の部屋に駆け込み、物入れから救急セットを取り出した。
確か、風邪薬があったはずだ。本当は病院に連れて行きたいところだが、リナを病院まで運ぶ手段がない。
ここで、応急処置を施さなければっ。
風邪薬を片手に、急いでコップに水を汲み、薬2錠と一緒にリナに差し出す。
「これは薬だ。水と一緒に飲むんだ」
リナは、慣れない様子で薬を飲む。
「ゴホッゴホッ」
リナも思わず咳き込んでしまう。そんな彼女の背中を優しくさする。薬をしっかり飲み込んでくれたようで安心した。
「これで、熱は下がるから安心しろ」
リナに大丈夫と伝えると、風呂場から風呂桶を持って来て、水と氷を入れる。その氷水でタオルを濡らした。
しっかりと絞ったタオルをリナの額に乗せる。
「これ、冷た過ぎたら言ってくれよ」
「ありがと……ごめん、学校だったのに……やっぱり私はこの家の邪魔者だよね」
リナは悲しげな表情でこちらを見る。
「これぐらいで、重大なことやらかしたみたいな顔すんなよ。別に邪魔じゃないし」
「成は優しいわよね」
俺は、早くリナに伝えようとしていることがあった。
「ごめんっ」
「え?」
突然の俺の言葉にリナは困惑している。
「俺、リナのことを知ろうともしないで、気持ちも考えずに勝手なこと言ったりして……」
「何言ってるのよ。私は成の優しさでここにいさせてもらっているのに」
「でも、俺泣かせちゃったし……」
リナは目を細める。そして、そのまま淡々と語り始めた。
「私ね、前世では冒険者だったの」
「知ってるぞ」
俺もリナの話に耳を傾ける。思えば、リナから自分の話をするのは初めてかもしれない。
「でもね、私奴隷だったの」
俺は、耳を疑った。
リナが奴隷??
ゴクリと唾を飲み込み、俺は緊張する。
「私は元々、貧しい農民の家族に生まれたの。そこを治めていた領主はとてもひどい人だった。作物がモンスター達のせいで荒らされる酷い土地に住む農民からも惜しみなく多額の税を払わさせる」
俺は、異世界という言葉を勘違いしていたのかもしれない。異世界と聞いた時はゲームのような美しいファンタジーな世界を想像していた。
「それで税が払えなくなったから、私は奴隷商に売られた。そんな私を買ったのは勇者と呼ばれる冒険者だったの。そこで私は盗賊として冒険者になったんだよね」
リナは、あの時のように弱々しく、声を震わせる。
目尻からは、ポロポロと涙を溢す。
「でも、勇者は私を仲間として扱わなかった。戦いの時は私をほったらかしにして、夜になったら私はっ……」
「それ以上言うなっ!!」
俺は彼女に最後の一言を言わせなかった。思えば、彼女を胸の中に抱いていた。
リナは苦しみながらもここまで話してくれたんだ、なら俺はっ。
「俺の家にいろっ」
「え」
「お前を狂わせるそのしがらみから解放されるまで、俺の家にいろっ」
俺はこの日初めてリナのことを深く知り、もっと知りたいと思った。
そして、彼女のドロドロとした過去を拭いとってやろうとも思った。
「ありがとう……ぐすんっ……ありがとうっ」
リナは今まで以上の涙を流しながら、俺の胸の中で笑ってくれた。
明日からまた、同居生活が始まる。
【余談】
ここまで読んでいただき感謝します!!
これで一区切りつきました。第二章を書くかはまだ迷っています。(この作品の伸び率が悪いので……)
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