前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

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波乱の建国記念式典

注目の的

会場入りした麗しいエルネスティちゃんは案の定会場中の視線を独り占めしているでござるよ!

……すんません調子乗りました自分にちゃん付けとかキモいキモい万死万死。面白いくらい瞠目した顔がそこら中に広がってるから照れちゃったぜ。

……すんません真面目にやります。

会場入りした俺を待ち構えていたのは驚愕と憧憬の視線の雨。みんな俺の格好にびっくりしてるのかな?ペッテリ自慢の一張羅だから俺の天使度も爆上がりしてるだろうし。いやあ困った困った(棒)

ふとヴァイナモを見上げると彼はもう緊張していないらしく、堂々とした様子で俺をエスコートしていた。多分この視線の半分はヴァイナモに向けてのものだね!ヴァイナモのイケメン度が恐ろしいくらい爆上がりしてる!この姿を見たら誰もヴァイナモを変人って呼ばなくなるだろ!

「……どうかなさいましたか?殿下」

俺がじっと見つめていると視線に気づいたヴァイナモが屈んだ。今は公然の場だから殿下呼びだ。寂しいな。周りが騒がしいから声が聞こえるように顔を近づけようとしてるのだろうけど……近い!近いって!

「……いえ。もう緊張していないのですね」

「……どうでしょう。ですが先程、殿下が私のことを『かっこいい』と仰ってくださったので、少し気持ちに余裕が出来ました。周りがどう見ようが、殿下は私をお側にいさせてくださる。そう思うと気分が楽になりまして。……ありがとうございます」

ヴァイナモはへにゃりと笑った。女性陣から悲鳴のような声が漏れる。わかる!ヴァイナモのこの笑顔って破壊力半端ないよね!俺なんか目の前でされて心臓が破裂しそうだよ!

「そうですよ。ヴァイナモはもっと堂々としていれば良いのです。私の隣は貴方以外の誰にも譲りませんから」

「……ご信頼に応えられるよう、精進して参ります」

ヴァイナモは手を胸に添えて頭を下げた。その洗練された動きは正に主を前に忠誠を誓う騎士そのもので。多分ヴァイナモはこれから先もずっと、俺だけの騎士でいてくれるんだろうなと感じた。

俺は嬉しくて、そして。

何故か少し、寂しく感じた。


* * *


式典は慎ましく執り行われ、今は賑わいを見せる立食パーティーの時間だ。各々歓談に華を咲かせる。

そんな中俺はと言うと、ヴァイナモと2人で寂しく楽しく食事していた。

……だって誰も俺に話しかけくれないし。めっちゃこっち見られてるけど、こっちが見たらすぐ目を逸らされる。いやそりゃ今まで恐ろしい冷酷少年だったけど。そして今は研究馬鹿だけどさ。もっとこう……話しかけてくれても良いんだよ??

ヴァイナモも知り合いはいないらしい。出る杭は打たれる方式で近衛騎士団では孤立してたらしいし、帝国騎士団時代の知り合いはほとんどが平民とか貴族の五男六男とかで、この式典に参加出来ない人ばかりらしい。

実家の方は?父親は伯爵なんだから来てるんじゃ?

俺がそう聞くとヴァイナモは渋い顔して「家出同然で帝都に出てきたので……」と答えた。多分未だに仲違いしてるのだろう。大丈夫?式典中にかち合わない?

俺がそう心配するとヴァイナモは微笑んで「殿下の同伴者である私に父親とは言え気軽に話しかけられません」と返ってきた。何故?普通に皇族に伯爵が話しかけれるでしょ?

そう疑問を零したら「殿下は特別ですから」と言われた。……あれか!まんま天使な俺に気軽に話しかけられる度胸のある奴はいねえってことか!なるほどね!だから俺は誰にも話しかけられないんだ!……悲しくはないぞ、全然。

そんなこんなでパーティーなのにパーティーらしいことをせず2人でせっせと美味しいご飯を食べている。特にヴァイナモは普段、騎士寮の質より量な料理ばかり食べていたため、目を輝かせて食べている。年相応で可愛いな、おい。

「どうです?美味しいですか?」

「ええ。どれもとても美味しいです。特にこれが好きですね」

ヴァイナモが手の皿に持っていたのは、何か魚の料理だった。なんだこりゃ?白身魚かな?ハーブかなんかで味付けしてあるのか?

「一口ください」

「えっ!?あっ、その……流石に公的な場で食べかけを殿下に食べさせるのは……」

「……あっ。それもそうですね」

ヴァイナモが焦るので俺もハッとなった。そうだったここは式典会場だった。皇族としてそんなことしちゃいけないわな。てかヴァイナモの首が飛ぶ。俺が庇う前にヴァイナモの頭と胴体が切り離されちゃう。

「その料理、どこにありましたか?」

「ええっと……どこだっけな……」

ヴァイナモはきょろきょろと辺りを見渡した。だが人混みで料理の場所が見つけられない。

俺がヴァイナモを見上げていると、ふと俺に影がかかった。俺は影の主の方へ振り向く。そこには穏和そうな青年が皿を片手に立っていた。

「皇子がお探しなのは、こちらの料理でしょうか?」

「あっ。そうです、そうです」

「ではこちらをどうぞ。ご安心を。口は付けておりません」

青年に差し出された皿の上には先程ヴァイナモが食べていた料理が乗っていた。俺は戸惑いながらも受け取る。この人、誰だろう?顔立ちからして、この国の人ではなさそう。他国からの来賓かな?俺のことを『殿下』じゃなくて『皇子』って呼んでたし。

前世の世界じゃどうだったかよく覚えてないけど、この世界では他国の王族・皇族へ敬称は基本的に使わない。自国の王への敬意を疑われるからだ。

俺が疑問を込めて視線を送ると、青年はパチリと目を瞬かせた後、何かに気づいたようにハッとなって頭を下げた。

「申し遅れました。私、ベイエル王国のマールテン・メンノ・フェルベルネと申します。この度は我が国の第二王子のシーウェルト・レフィ・エリアン・テオ・ベイエル共々、お招きいただきありがとうございます」

ベイエル王国と言えば昔は敵対国だったが、先代皇帝俺の祖父の代で友好条約を交わした国だ。今回の式典にも両国の仲の良さをアピールするために来たのだろう。

……待って確かベイエル王国の第二王子って俺とあまり歳が違わなかったような……。少なくとも、この国の基準では未成年だったはず。そんな子供を国の代表としても大丈夫なの?あっ、でも確かベイエル王国第二王子は大人顔負けの優れた頭脳の持ち主で、噂ではベイエル王国参謀をしているのではないかとも言われてたな。まあ真実はどうかわかんないけど。

悲しきかな。カレルヴォ兄上の婚約者は知らないのに他国の第二王子は知ってるって、どうなのよ。まあ次期皇帝目指す上で他国との関係は超重要だもんな。以前の俺なら仕方ない。

……ふむ。ベイエル王国の使者が、 この料理・・・・を俺に渡すのか。

俺は周りに気づかれないよう解毒・・魔法を使った。マールテンは俺が魔法を使ったのに気づいたのか目を見張る。俺は笑顔を崩さすに、料理を口に含んだ。……美味しい。

「確かに美味しいですね、ヴァイナモ」

「えっ、ええ。そうでしょう?」

ヴァイナモも俺の魔法に気づいたようだ。当惑した様子でも俺の話に乗ってくる。俺は皿をヴァイナモに渡すと、くるりとマールテンの方へ振り返った。

「未遂ですし初犯なので今回は見逃します。どのような意図がそちらにあったか知りませんが、標的が俺で良かったですね?」

天使が如く微笑む俺を見たマールテンは雪のように顔を真っ白にさせ、そそくさとその場を去って行った。




* * * * * * * * *




2020/07/11
一部誤字修正しました。
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