前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

文字の大きさ
41 / 221
波乱の建国記念式典

近衛騎士団の濃ゆい面々

「エルネスティ様。そろそろいじけてないで、ヴァイナモ様の所へ行きましょう。出て来てください」

「……ヴァイナモが来るまで私は出ません」

訓練場から飛び出した俺は現在図書館の小部屋にある小さな木箱の中に入り込んでいた。今は誰にも顔を見られたくない。涙と鼻水でモザイク必須な顔してる自信しかない。こんな自信いらねえよこんちくしょう!

ヤルノは木箱の上から宥めようと声をかけて来るが、俺はひたすらそれを拒否する。ごめんね、ヤルノ。俺の我儘に付き合わせて。

「確かに休みをとらないヴァイナモ様は良くありませんが、ヴァイナモ様もエルネスティ様のためを思って鍛錬していたのです。それを真っ向から否定されては、ヴァイナモ様が可哀想です」

「……だからいじけているのです。私のせいで、ヴァイナモに大きな負担をかけていました。私がヴァイナモに側にいて欲しいから、休みなく毎日私の護衛をしていたヴァイナモを見て見ぬふりをしていました」

そうだ。ヴァイナモが俺の側にいたいと言ってくれたことが嬉しくて、そのまま鵜呑みにしてたんだ。自分の良い様にヴァイナモの気持ちを使ってたんだ。最低だ、俺は。

「……そこでヴァイナモ様が全て悪いと仰らないのがエルネスティ様の美徳ですね。流石天使です」

「……ペッテリが真面目に話しているだなんて、珍しいですね」

「珍しいとお思いなのであれば、そこから出て来て直でご覧ください」

「それは難しいですね、ヤルノ」

ペッテリが珍しく崇拝口調語尾三点リーダじゃないから驚いていると、ヤルノから訳のわからないことを言われた。どんだけ俺をここから出したいんだよ!もっと他に手があるだろ多分!おそらく!きっと!!

「今は私の姿が見えてないのでに話すような口調ですが、私が出て来てしまえばたちまち天使・・を崇拝する口調に戻るでしょうに」

「流石エルネスティ様。ペッテリのことをよくご存じで」

おいコラヤルノ!しれっと俺を褒めてきたけど、小さく舌打ちしたの聞こえたんだからな!

「……あの、お言葉ですが、いくら殿下がお許しになっているとは言え、殿下に向けて舌打ちはいかがなものでしょうか」

すると俺を追いかけて来た近衛騎士の一人がヤルノに苦言を呈した。この声は確かさっきアスモとサムエルって人を呼んでいた騎士だから……オリヴァかな?良いぞもっと言ってやれ!

「……それもそうですね。すみません」

「……それで反省しているのですか?」

「まあまあ、オリヴァ落ち着いて。殿下がお許しくださってるんだから、別に良いでしょ」

「アスモがそう言うのならそうだな」

ヤルノが反省してるのかしてないのかわからない謝罪をしたのにオリヴァは尚も苦言を呈そうとしたが、アスモに宥められてあっさり引いた。オリヴァ、君はアスモ肯定botかなんかなの??

「あの~今凄く歌いたい気分なんで歌っても良いですかあ?」

「やめろ、サムエル。殿下の御前だ」

「え~やっぱり駄目ですかあ?」

そしてマイペースな発言をするサムエルをオリヴァが止めた。なんなの俺を追ってきた近衛騎士たちのキャラ濃すぎじゃない?

「……私を追ってきた近衛騎士の皆さん。オリヴァ、アスモ、サムエル、であっていますか?」

「あっ、はい!私はオリヴァ・クレーモラです。近衛騎士団第四部隊所属です」

「俺……じゃなくて、私はアスモ・カンナスです。オリヴァと同じく近衛騎士団第四部隊所属です」

「僕はサムエル・ランデルです~。所属は先輩方と同じです~」

「こらサムエル!殿下にはちゃんと挨拶しろ!」

「あ痛っ!」

3人の自己紹介の後、ゴツンという音とサムエルが悶絶する声が聞こえて来た。拳骨でもしたんだろうか。感じ的にオリヴァとアスモが同期で、サムエルが後輩かな?

俺はチラリと木箱から顔を出して3人の顔を見た。ペッテリが「天使のご尊顔を拝見出来た……!我が人生に1点の悔いなし……!」と訳のわからないいつも通りの言葉を発する中、彼らの顔に見覚えがあることに気づいた。

「3人ともよく私の部屋の夜番護衛をしていますね?」

「……我々のことをご存じでしたか」

「だいたい3人のローテーションでしたので、自然と顔を覚えてしまいました。私の前で畏まる必要はありませんよ。どうぞ自然体でいてください」

声的に多分オリヴァな人が目を丸くした。まあ確かに俺は興味ないことは全力で眼中に無いけど、俺を護ってくれる護衛騎士の顔くらいは覚えてるよ!

「ほんとッスか!殿下!じゃあ俺、その言葉通り自然体でいるッスよ!」

「やったあ。畏まるのって苦手なですよ~」

「おいコラそこの2人!いくら殿下がお許しだからと言っても、そんな態度はっ……!」

「良いじゃん、オリヴァ。殿下がお許しなんだし」

「まあアスモがそう言うならそうか」

俺が許した途端、アスモとサムエルは素に戻った。オリヴァも最初は注意したが、アスモが説得するとあっさり意見を変えた。本当にオリヴァはアスモ全肯定botなんです??

「……失礼なのはどっちだよ……」

「何か言いましたか?ヤルノさん」

「失礼なのはどっちなんですと申しました。それと私はただの平民彫刻師なので敬語は不要ですよ。ちなみにペッテリも平民衣装職人なので同じです」

ヤルノは毅然とした態度でそう言う。見た目チャラ男なのにめっちゃしっかりしてるよね、ヤルノって。でもさっきの独り言は素の話し方なのかな?そっちの方が楽なんだけど。

「ヤルノも自然体で良いのですよ?」

「いえ。私は公私をきちんと分ける性分でして。このままでいかせていただきます。ペッテリのが移って勝手に『エルネスティ様』とは呼ばせていただいておりますが」

「ああ、別に気にしてませんよ。寧ろ歓迎します」

偉いなヤルノ。見た目に反してめっちゃ真面目。ギャップが凄いな、色んな意味で限定的ドMとか

「貴方方は夜番が多いのですよね?何か理由でもあるのですか?夜型ですとか」

「以前は早寝早起きが常識の優等生でしたよ~」

「夜更かし出来ない体質ッス!」

「俺は別に普通です」

3人はなんてことないようにそう答えたが、普通に考えておかしい。特に前者2人!夜遅くまで起きていられないのになんで夜番なんて任されてんの!?

夜番なんて負担が大きい割に仕事ぶりが周りに伝わりにくいからって忌み嫌われるんだよね!?普通隊員全員でローテーションするモンでしょ!?

俺の疑問に気づいたオリヴァは苦笑いを浮かべて肩を竦めた。

「身も蓋もない話、左遷ですよ」

「左遷ですか?まあ……その、アスモとサムエルは何となくわかりますが」

俺は失礼を承知でそう言うと、オリヴァは何故か少し得意気に胸を張った。どうした?いきなり。

「俺はアスモについてきました」

「何でです??」

やっべちょっと口調が乱れた。でも本気でなんで?左遷された人間について行くって何?

俺の口調に気づかなかったオリヴァはそれはもう世界で一番の勝ち組のようなドヤ顔を見せた。これが先程まで俺に対する他2人の態度を注意してた奴とか、信じたくないんだけど。やっぱ濃ゆいわ、この3人。

「俺はアスモの親友で恋人ですから」

そしてオリヴァは堂々と爆弾を落とした。
感想 179

あなたにおすすめの小説

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

外れ伯爵家の三女、領地で無双する

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。 だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。 そして思い出す―― 《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。 市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。 食料も、装備も、資金も――すべてが無限。 最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。 これは―― ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。