前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

文字の大きさ
44 / 221
波乱の建国記念式典

なんとかまとまった

俺が交渉内容を説明した後、ヴァイナモは思い詰めた表情で考え込んだ。待ってヴァイナモ?歌いたいから専属護衛騎士になるって、普通に考えておかしいからね?ツッコミどころ満載だからね?なんで順応してるの?

「……なるほど。それで専属護衛騎士を2人増やして、どうなさるのですか?俺は……その、用済みでしょうか?」

深い思考の後、ヴァイナモは消え入りそうな声で尋ねてきた。待って今までの話の流れでなんでそうなるのかな!?自分に自信なさすぎじゃない!?

「違います!ヴァイナモには週に一度休みをとってもらいます。そして毎日の護衛時間も少し減らしてもらいます。2人にはその分の補填をしてもらうのです」

「……休み、ですか……」

「はい。そうすれば毎日夜遅くまで特訓する必要がなくなるでしょう?」

ヴァイナモは形容し難い複雑な表情を浮かべた。喜んでいるようで、悲しんでいるようで、不満に思っているようで。表情に情報量がありすぎて何を思っているのか全然わかんないな!

「……エルネスティ様が俺を気遣ってくださっているのが嬉しいのと、エルネスティ様のお側を離れる時間が増えるのが寂しいのと、他の者がエルネスティ様を護衛すると言うのに少し不満を感じるのとで、頭がいっぱいです」

何思ってんだ?って疑問に思っているのが伝わったのか、ヴァイナモが丁寧に教えてくれた。素直かっ!?そうだヴァイナモは基本的にお口つるっつるだった!最近人前にいることが多かったから忘れてた!

「……この提案を呑んでくださりますか?」

「……エルネスティ様の決定に俺が意見する立場にはございません。お気遣い、ありがとうございます」

ヴァイナモはキュッと表情を引き締めてそう言った。その瞳が真っ直ぐ俺を見ていることに、俺は少しドキッとした。イケメンがイケメンな表情したら、そりゃイケメン割増だわな!どうしようイケメンのゲシュタルト崩壊しそうだ!

……でも、俺の決定に意見出来ないのか。まあ皇族と騎士なら当たり前なんだけど、その……ちょっと寂しい、なんて思ってみたり。

「……団長さんも、それでよろしいでしょうか」

「……近衛騎士団の人事を司っているはずの私が、どうして蚊帳の外なのでしょうか……。まあアスモが薬師になってくれるのは有難いですし、殿下の専属護衛騎士は少なすぎると存じていた所なので、異論はありませんが。逆に我々騎士には交換条件なして、専属護衛騎士になるよう命令するだけでも良かったのですが……」

団長さんは肩を落とした。ごめんね、確かに団長さんには何も確認をとらずに話を進めちゃった。近衛騎士団のことに俺がこんだけ口出しするのは良くなかったかな?

交換条件云々の話は完全に前世の感覚に引っ張られている。まあ一方的な関係に信頼は生まれないから、必要ない訳ではないでしょ!

「……殿下はお気になさらず。殿下は良い判断をしてくださりました。ですが、普通であればこのような対応を私がすべきだったのです。先程のは、そんな不甲斐ない自分に少し不満が垂れてしまっただけです」

俺が心配そうに団長さんを覗き込むと、団長さんは自嘲気味にそう言った。そんなに落ち込む必要はないと思うけどな。団長さんも立場上、平等に騎士たちを見なくてはいけないだろうし。

皇族を怒らせたサムエルや皇族以外に関心が向いているアスモやオリヴァを優遇したり、皇族のために無理をするヴァイナモを止めることは、皇族に忠誠を誓う近衛騎士団団長として難しいことだ。

「……団長さん。ヴァイナモとアスモをよろしくお願いしますね。サムエルとオリヴァの手網は私が握りますから」

「……僭越ながら、オリヴァ相手なら殿下が手網を握られる方かと」

「……失礼ですね。言い返せませんが」

俺は唇を尖らせた。団長さんが失礼すぎる。でもオリヴァは基本的アスモ関連以外まともだからそうなるよね。俺も言ってて思ったよ!悲しくなんてないからな!


* * *


そして数日後、オリヴァとサムエルが正式に俺の専属護衛騎士となった。アスモは薬師試験に向けて暫く有給をとる。これまでに溜まりに溜まった有給を一気に消費するらしい。薬師試験まで有給をとっても余りあるって、どんだけ休んでなかったんだ?アスモは。アスモが休んでないと言うことは、オリヴァも休んでないことを意味する。俺の周り社畜精神の持ち主多くない?ちゃんと休もうね??

そしてただ今、ヴァイナモの代わりにサムエルとオリヴァが俺を護衛している。ヴァイナモは団長さんと特訓中だ。そう言や魔法耐性の特訓って何やるんだろ?ひたすら魔法を受けるのかな?……危なくなければ良いんだけど。

「~~♪~~~♫~~~~♩」

俺の斜め後ろで熱唱するサムエルを通り過ぎる人全員が三度見ぐらいしていく。眉を顰める人もいるが、皇族が何も言わないので、文句も言えない状況である。中には俺の顔を見て納得の表情を浮かべる人までいた。ちょっとそこの君、何に納得したのかな??

「……よくそんなに歌って喉が潰れないな、お前」

「定期的に~水属性の魔法で~喉を潤しています~」

「魔法が使えるんだな。……羨ましい」

「ちょっと才能の無駄遣いな気がしますけど」

オリヴァの問いかけにも歌ったまま答えたサムエルは曲の盛り上がりに差し掛かったのか声量を上げた。定期的に魔法使ってるって言ってたけど、いつ使ってるの?歌うのやめてないよね?

「歌いながらでも~出来るように~練習しました~」

サムエルは気持ち良さそうに歌う。普段はほやほやした雰囲気をまとっているが、今は生き生きとしている。本当に歌うのが好きなのだろう。

でも言わせて。

その練習って本当に必要??

オリヴァは「努力の方向が違う……」とボソリと呟いたので、そう思ったのは俺だけじゃなかった。良かった良かった。

そんなこんなで図書館に着いたので、俺はサムエルの周りに防音魔法をかける。流石に図書館で声高々と歌うのは良くないからね。え?止めさせる手はないのって?あんな楽しそうなサムエルを止めるなんて、同じ変人として出来ないよ(キリッ)

それにひとつ確かめたいことがあるし。

「……」

「どうしましたか?殿下。サムエルをじっとご覧になっていますが」

「……いえ。何でもありません。行きましょうか」

オリヴァの声掛けに俺はいつも通りの笑顔で首を振った。そして何事もなかったかのように小部屋へ向かう。オリヴァは不思議そうにしながらも何も聞き返さずについてきてくれた。サムエルは歌に熱中している。

……もう少しだけ、様子見かな。
感想 179

あなたにおすすめの小説

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

外れ伯爵家の三女、領地で無双する

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。 だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。 そして思い出す―― 《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。 市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。 食料も、装備も、資金も――すべてが無限。 最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。 これは―― ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。