前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

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人間関係が広がるお年頃

盲目シスター見習いご令嬢

パルヴィアイネン公爵令嬢との邂逅で正体を明かされた俺は、このままその場で会話する訳にもいかないので、急いで孤児院の中に入らせてもらい、通された応接室らしき部屋に防音魔法と結界魔法をかけた。ちなみに子供たちは外でオリヴァとサムエルが見ている。サムエルは不服そうだったが、「歌っておけば何とかなります」と伝えると目を輝かせて子供たちの元に向かった。今頃子供たちに褒められながら、伸び伸びと歌っているところだろう。

「……それで、ロヴィ。この方は本当に皇子殿下であられるの……?」

どこにでもいそうな平民坊主な外見である俺を見て、聖母シスターは訝しげにシスター見習い令嬢に耳打ちをする。まあ皇族って感じはしないわな、今の俺は。逆になんでわかったの?

「……えっ?一目でわかりませんか?」

「……その、とても言いづらいのだけど……」

「……殿下、もしかして変装なさってますか?」

「え?ええ、変装してますよ。見てわかりませんか?」

俺は解除魔法を使って変装魔法を解いた。ついでにヴァイナモのも解除しておく。聖母シスターは目を見開いて慌てて跪いた。

「申し訳ございません!お姿を変えていられるとは知らず、失礼な言動を!」

「大丈夫ですよ。逆に平民と遜色ない姿に変装出来ていたと言う証拠ですから、安心しました」

俺の素顔見せただけで皇族ってわかったって、そんなに俺の顔って皇族顔かな?まあ確かに天使顔だからそんじょそこらにはいないだろうけど。

「……変装魔法、でしょうか」

「はい。私の護衛騎士の一人が変装魔法の使い手でして」

「……なるほど。殿下ほどのお方がこのような場所を歩かれていては大騒ぎでしょうから、納得です」

シスター見習い令嬢はうんうんと頷くが、その言葉には違和感しかない。なんか俺の姿が見えていないみたいだ。いや、目を閉じてるから見えるはずがないんだけど。それならまず、皇子ってことがわからないはずだし。

俺が怪訝そうにシスター見習い令嬢をまじまじと見ていると、彼女は苦笑いした。

「……私がおかしなことを言っているようにお思いでしょう。少し長くなりますが、私が殿下に出会ってこの方、どのようなことが起きたか説明致しますね」

そうして彼女は語り出した。


* * *


彼女……ロヴィーサ・ミッラ・パルヴィアイネン令嬢の話を要約するとこうだ。

式典にて俺に注意されてから暫く、ロヴィーサ嬢は自室に引きこもったらしい。今まで蝶よ花よと育てられた彼女にとって、余程のショックだったそうだ。そこまであの時の俺って怖かったかな?

同時に彼女は酷い人間不信に陥ったそうだ。彼女曰く、今まで天使だと煽てられて育ったのに目の前に正真正銘の天使が現れたのだから無理もない、とのこと。待って俺も別にマジモンの天使じゃないからね?天使顔のれっきとした人間だからね??ロヴィーサ嬢の中での俺ってどんな位置づけなの?ペッテリ天使崇拝と似た感じなの??

底知れない恐怖と人間に対する不安から彼女はどんどん追い詰められていったそうだ。家族は自分が失敗して落ち込んでいると思っているせいで、この気持ちを共有出来ない。それ以前に家族すら信用出来ない。自分が倨傲に育った一番の原因が、家族の溺愛にあったからだ。彼女は完全に塞ぎ込んで、不安定な心を落ち着かせる術をなくしてしまった。

そんなある日、彼女は突如として後天性魔法属性が開花した。精神的に追い詰められたのが原因だろう。待って俺の説教がそこまで引き起こしちゃったの!?そこまで怖かったの!?自分の無自覚が末恐ろしい!

そしてその開花した後天性魔法属性、それは真実透視魔法であった。

つまりその魔法を使っている彼女には真実しか視えて・・・いない。嘘や誤魔化しを並べても、彼女の目にはその先の真実しか視えないのだ。それは何も視覚的なものだけではなく、五感全てが真実を自動的に暴いてしまう。嘘は本音に変換され、香水で誤魔化している体臭を嗅ぎ取り、絵などの美術作品は作者や材料などの情報が脳裏に流れて来るから、一目で真贋がわかるらしい。

それは逆に、相手が偽っていたり嘘をついていることに気づくことが難しい場合があるってことに繋がる。全て勝手に真実に変換されて彼女に認識されるからね。俺の変装に気づけなかったのもこれが原因だ。

しかもそれは目を閉じていても、耳を塞いでいても、鼻を摘んでいても、効果を発揮するらしい。魔法を展開することで、自分の中にある魔力だけで五感の機能を完全に担うことが可能だからだ。本来の五感とは全く別の所で、魔法は発動しているらしい。

だからかその反動で、本来の五感の機能を完全に失ってしまったらしい。パッと見だけでは盲目なことしかわからないが、魔法を発動していない彼女は目も耳も鼻も口も皮膚すらも何かを感じ取ることは出来ない。それは言い換えれば彼女は常に真実透視魔法を展開していないと、生きていけないことになる。そしてそれは膨大な魔力量を必要とする。彼女は元々魔力量は高い方だったらしいが、それでも普通に生活するには魔力が圧倒的に足りないそうだ。

だから彼女は魔力温存と回復のために一日に18時間は寝る。6時間以上起きていると、いつぷっつり魔力がなくなって気を失うかわからないそうだ。そして激しい運動や、真実透視魔法以外の魔法の展開も出来ない。体力は魔力に直結するからね。直ぐにぶっ倒れるのだ。

社交界から追放され、このような身動きの取りにくい体質に9歳という若さでなってしまった彼女。普通なら自分の運命を嘆き絶望してもおかしくないが、彼女は逆だった。

厚顔無恥で愚かだった自分に、神はもう一度人生をやり直すチャンスをくださった。彼女はそう解釈したのだ。そうして彼女は素行を徹底的に改めた。周りを慮り謙虚に倹約に振る舞うようにしたそうだ。そのチャンスを無駄にしないように。

うん。キングオブポジティブだな。何事も良い方向に捉えるその姿勢、嫌いじゃないよ。……いや何様やねん自分。自分で言っておいてびっくりした。
 
そして自分に情けをかけてくださった神々に感謝の意を伝えるべく、こうしてシスター見習いとして教会に奉仕し、孤児院の運営を手伝っているらしい。元より社交界を永久追放された身だから、端的に言って暇だそうだ。まあ貴族のご令嬢はお茶会とかに参加するのが仕事だからね。

彼女は話を終えるとこう付け加えた。

「私は殿下のお陰で自らの愚かさと過ちに気づくことが出来ました。感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。貴方の寛大な施しに対し、神の御前にて感謝致します」

ロヴィーサ嬢は跪いて両手を胸の前で握り、深く頭を下げた。この行為は宗教界における最上級の礼だ。神の御前で感謝を名言するとこでその意を確固たるものにし、相手に誠意を表するものである。宗教上一度この礼をすれば撤回することは許されない。もし反故にしたら神から天罰が下されるらしい。いやっ!ちょっと重いよロヴィーサ嬢!俺はそこまでのことしてないからね!?

俺はただ前世の年の離れた妹思い出して和んでただけだから!やめて!そんな俺を神格化しないで!?
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