前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

文字の大きさ
82 / 221
動き出す時

封印魔法陣は厨病のロマン

そんなこんなで時間は過ぎ、俺はサルメライネン伯爵領に向けて出発した。護衛はヴァイナモとオリヴァとサムエル、それに他の近衛騎士団第四部隊の方々だ。

オリヴァは新婚なのにアスモ配偶者と1ヶ月も離れ離れで良いのかと思ったけど、オリヴァ曰く「アスモが『俺が行けない分、殿下をしっかりお護りして!』と言ったので」とのこと。アスモ薬師は忙しいし、そもそもアスモはもう騎士団第四皇子・皇女護衛専門部隊の所属じゃないから俺の護衛を出来ないんだよね。でも何かとアスモは俺を気にかけてくれる。多分薬師試験の恩だろうけど。

今回も遠出をする俺を心配してくれたらしく、オリヴァに俺の護衛としてついて行くことをお願いしたようだ。そしてオリヴァアスモ全支援botがアスモからのお願いを断るはずもなく。そこでアスモ恋人との時間を優先しないあたり、オリヴァはやっぱりオリヴァアスモbotだなと思う。

俺は今、カタコトと馬車に揺られている。

皇族の紋章をあしらった豪華な馬車で、周りに騎馬をぞろぞろ引き連れて移動するのはなんか居心地悪いけど、今回は公式な訪問だから仕方ない。せめて他の人の邪魔にならないよう、あまり人の通らない道をルートに選んでもらったけど。

まあ今はそんなことより。

「ふおっふぉふあ~!見てくだされヴァイナモ殿!封印魔法陣ですぞ!古代魔法陣の中でも最高難易度らしいですぞ!ふわっ!とても緻密!複雑!なのに線の一本一本がきちんと整頓されていて美しいですな!」

俺は父上から借りた魔法陣の書物を読みながら大興奮していた。これは古代魔法陣の研究を著した本で、今じゃ再現不可能とされる魔法陣が沢山載せられている。

なんでもこの書物はベイエル王国毒盛り王子の国の所蔵書物らしいが、父上が交渉(概念)の末に借りることが出来たらしい。最近新しい脅し……ゲフンゲフン、交渉の切り札を手に入れたらしく、父上は上機嫌だった。

てかそれ切り札を俺のために使ってくれたのか。1ヶ月魔法陣研究を我慢する息子のために。何だよ父上親バカかよ大好きだよ

でも流石帝国我が国より長い歴史を持つ、てか大陸一のご長寿王国とも呼ばれるベイエル王国だね。図書館の本には載っていないことが沢山載ってる。帝国我が国は比較的新しい国であるため、古代学問などの古い文献や資料とかはあまり残ってない。しかも血気盛んな初代皇帝が他国侵略帝国建国時にほとんどを焼き払ってしまった。御先祖様ながら、許すまじ。

古代魔法陣は古代学問エインシェント・スカラシップ分野、つまり遺跡などから発見された、一度失われた技術や学問を研究する分野である。特に古代魔法陣は失われた文明ロスト・シビリゼイションと呼ばれており、技術の大半が今に残っていないらしい。

この封印魔法陣も古代魔法陣の一種である。膨大な魔力を必要とする代わりに、どんな魔法や適正属性でも封印出来るらしい。『らしい』と言うのは、発見された資料にはこの封印魔法陣が実際に使われていたとされる記述があるが、それを真似しても再現出来なかったそうだ。他にも魔導具などの画期的なものが発見されたが、いくら研究しても再現出来ないとお手上げ状態らしい。

……多分今はない技術の中に、版画魔法陣かそれに似たような技術が含まれているんだろうな。

俺は読みながら夢を膨らました。こう言う古い資料を紐解いて研究するのも面白そうだけど、生憎様帝国我が国には研究出来るほどの資料が残っていない。ベイエル王国の資料を借りるのもたかが知れてるし。興味あるのに研究出来ないって、めっちゃ歯痒いな。

「エルネスティ様は封印魔法陣に興味があるのですか?」

「ええ!魔法陣を展開して『封印!』なんて叫ぶの、何だかカッコ良くありませんか!?」

「俗に言う『厨病』ってやつだな」

俺とヴァイナモの会話を聞いていたオリヴァか苦笑いした。いいじゃん別に!俺は13歳の、れっきとした思春期男子だもん!ちょっと拗らせててもおかしくないでしょ!

「帰ったらヤルノにこの魔法陣の版画板を彫ってもらいましょう!ヤルノも喜びます!」

「えっ、ですが作ったところで何に使うのですか?」

「使う使わないの問題ではありません!」

「要は完全なる趣味の範囲なんだな」

「それを言っては、魔法陣研究自体が趣味ですが!」

俺は爛々と目を輝かせて、本を抱きしめる。研究は出来ないけど、やはり魔法陣好きなことを考えるのは楽しい。幸せだ。父上に感謝しないと。

「あ~我が国にも古代学問の資料が沢山残っていたら、その研究をするのですが……」

「……やめてくださいね。古代魔法陣の研究のためにベイエル王国に行く、なんて言い出すのは」

「自分に致死量の毒を盛った王子のいる国に、どこの誰が行きたがるのですか」

「……それもそうですね」

俺は シーウェルト王子毒盛り第二王子を思い出しながら首を振った。ヴァイナモはホッとしたように目尻を垂らす。流石にそこまで馬鹿じゃないよ!

「……おいおい。毒盛られたって何だよ」

するとオリヴァが顔を引き攣らせて尋ねてきた。そう言やあれは極秘事項だし、その時まだオリヴァは俺の専属護衛騎士じゃなかったから、知らないのか。

「建国470周年記念式典にて、当時12歳だったベイエル王国第二王子に毒を盛られかけたのですよ。私の鑑定魔法と解毒魔法によって未然に防ぎましたが」

「……末恐ろしい王子だな」

「全くです。私は毒を盛りたくなる顔をしているのでしょうか。先日もエドヴァルド兄上に睡眠薬を飲まされて、傀儡にされかけました」

「ひえっ。実の弟にか!?ひでぇ兄貴だな!?」

「まあエドヴァルド兄上は疑い深い方ですし、最終的には和解して協力関係を結べたので気にしてませんが」

オリヴァら顔を歪めながら腕を摩った。余程恐ろしかったらしい。まあ皇族あるあるみたいなところがあるから、俺は本当に気にしてないけど。

すると今まで空気だった人物が手を少し挙げておずおずと尋ねてきた。

「……その、僭越ながらお尋ねしたいのですが、そのお話は私も聞いてよろしいのでしょうか……?」

彼は今回、海の死神タコ料理を作る料理人である。本当はウーノさん定食屋の料理人を連れて来たかったけど、ウーノさんには自分の店がある。1ヶ月も離れる訳にはいかない。と言うことで宮殿料理人の1人にウーノさんがレシピを伝授し、その者が俺たちともにサルメライネン伯爵領へ向かうことになったのだ。

……やばい。完全に存在を忘れてた。色々言っちゃいけないこと言っちゃったよどうしよう。

「……先程の話は忘れてください」

「……承知しました」

料理人は疲れたように頭を垂れた。ごめんねただでさえ勅命で皇子と馬車を同席する羽目になって胃痛必至なのに、存在を忘れられてグレーゾーンのやばい情報の聞かされるとか。マジ散々だな本当にごめんなさい!!




* * * * * * * * *




2022/03/16
誤字修正しました。
感想 179

あなたにおすすめの小説

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

外れ伯爵家の三女、領地で無双する

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。 だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。 そして思い出す―― 《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。 市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。 食料も、装備も、資金も――すべてが無限。 最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。 これは―― ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。