前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

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動き出す時

オバケが出るらしい

ユリウスさんと別れた後、オリヴァに貰った胃薬をこっそり使用人に渡したら、平謝りした後感激の涙を流された。自分の主が皇族の前であんな言動してたら、生きた心地しないわな。お疲れ様です。

てかサルメライネン伯爵家兄弟、めちゃくちゃ濃ゆいな問題児すぎないか?純粋無垢な天然マイペース不思議ちゃんに殺傷能力バカ高いガキ大将に感覚がズレてる最強家出近衛騎士て。なんで?サルメライネン伯爵夫妻はあんな常識人だったのに?どこでどう突然変異したんだ?

まあそれはそれとして。

ヴァイナモはお父上に呼び出されたついでに俺が別荘へ行く許可を貰って来てくれた。早速明日からそちらに向かっても良いとのこと。何時でもユリウスさんが療養に移れるよう、別荘はこまめに清掃しているそうな。そこまでユリウスさんの体調って浮き沈みが激しいのか。心配だな。

そして夜遅くになってパレンシア侯爵の元へ行っていた料理人が帰って来た。ぐったりとしていたので何があったのかと聞くと、パレンシア侯爵が一日中ハイテンションだったらしく、そのノリについて行くのが大変だったそうだ。でもやり切ったような、清々しい表情をしていたので、彼にとってとても良い経験になったのだろう。

料理人にパレンシア侯爵の元で料理を振るわないかと聞いてみると、少し戸惑う素振りを見せたが『許可が出るのであれば是非』とのこと。今日一日ずっとベタ褒めで恥ずかしかったらしいけど、それ以上に認められてとても嬉しかったらしい。まあ宮殿料理人って一流料理人が集まってるから、出来て当たり前って思われたり、没個性になりやすいからね。褒められることは大切だよね。モチベーションにも関わるし。

でもこれは雇い主である皇帝父上への裏切り行為なのでは、と料理人は心配していた。俺は大丈夫だと思うけどね。父上はそう言うの気にしないし。逆に変に自分の気持ちに嘘をつく方が嫌いそう。

まあ料理人の意思も聞いたし、後はパレンシア侯爵と皇帝父上に返事と許可を貰わないと。てことで俺は2人に手紙を送ることにした。ヴァイナモに『しっかり魔法郵便で出してくださいね!』と念を押して便箋を渡すと、凄く微妙な表情をされた。ごめんねちょっと意地悪しちゃって。ちょっとした出来心でござる!

これから俺たちは別荘へ行くが、料理人はそのまま伯爵邸に残るつもりらしい。なんでもまたパレンシア侯爵の元へ料理を作りに行く約束をしてしまったさせられたそうな。強引にだったら俺が文句言いに行くよ?と聞いたが、料理人は自分の意思だとはっきり言った。なんか凄く生き生きしてる。夢へ突き進む若者みたいだな。眩しいジジイか

そして翌日の早朝、俺は別荘へと向かう馬車に乗り込んだ。ヴァイナモとオリヴァとサムエルも一緒に乗り込む。なんだかサムエルと一緒に行動するのって久々だな。伯爵邸ではずっと警備を任せていたし。まあ一週間かそこらの話だけど。

なんでもサムエルは伯爵邸で憩いの場癒しのBGMになっていたそうで、よく仕事に疲れた使用人たちが集まって来たそうだ。サムエルは誰が聞いてようがお構い無しに歌い続けるから、本人にはそのつもりはないのだろうけど。絶対時々全く癒しじゃない歌とかもあっただろ。ハーララ帝国戦歌初代皇帝のぶっ飛び伝説記録とか、アムレアン童謡別名『血なまぐさい童謡』とか。まあでもサムエルの声自体が癒し効果があるからね!どんな歌でも癒しになるか!

ああ、それと。オリヴァに帝都にいるアスモ配偶者から『寂しい』と手紙が来たそうな。魔法郵便かな、金かかってんな、と思ってたらなんと普通郵便だったので俺氏困惑。

あれ?普通郵便なら2週間かかるんじゃない?てことはオリヴァが旅立って直ぐに手紙書いたの?ちょっと落ち着こうアスモ薬学一直線?気が早すぎるよ?そんな直ぐに寂しくなるんだったら、なんでオリヴァを送り出したんだ?オリヴァはオリヴァアスモbotだから、引き止めたらどんな手段を使っても帝都に留まったぞ?

いや、オリヴァを俺の護衛に就かせたの、他でもないアスモだけど。何でだよそんなに俺が心配だった俺に恩を感じてんのかよ過保護だなあありがとう


* * *


「到着しました。ここがサルメライネン伯爵家別荘です」

色々話をしているうちに、別荘までやって来ていた。例の如くヴァイナモが自然な動きで手を差し伸べて来るので、俺はエスコートされて馬車から降りる。ぐうイケメンめ。ぐう騎士(ただの事実)め。俺の心臓を爆死させる気か!?

馬車を降りた先に広がっていたのは、一面森。森、森、そして立派な建物。なんかホラーゲームで主人公が森の中で遭難した時に辿り着いた洋館みたいな。外観はとても綺麗なんだよ?庭もちゃんと手入れされてるし。落ち着いた雰囲気でとてもよろしなんだけど、率直に言って、その……。

「なんか出そう、ですね」

「よく言われます」

「あっ。すみません」

失礼な感想が口から零れてしまい、ヴァイナモに聞かれてしまったので俺は慌てて口を手で塞いで謝るが、ヴァイナモは困り顔で首を横に振った。

「……その、実際にユリウス兄上が何度か幽霊を見たと言っていたので、その感想は間違いではないかと……」

「ひえっ!?大丈夫なのですかこのお屋敷!?お祓いして貰った方が良いのでは!?」

「……おはらい、とはなんでしょうか?」

俺がガクブル震えながら提案すると、ヴァイナモがキョトンと首を傾げた。他の騎士たちも不可解そうな表情を浮かべる。あっ!そうだった!この世界では『お祓い』って言い方はなくて、『除霊・浄霊』って言った方が良いんだった!どうしようどう誤魔化そう!?

「えっと、除霊とか浄霊のことです!ほら!オバケをしっしっ!と!払い除ける感じで!」

「……なるほど。『払い除ける』で『お払い』ですか。初めて聞きました」

「……俺も聞いたことねえな」

「僕もです~。殿下の造語ですかあ?」

俺の誤魔化しに皆は納得してくれたが、ちょっぴり懐疑的な視線を送って来る。俺はそれを曖昧に微笑んで流した。やっべえ気を抜いたら前世の知識がポロリしちゃった。気をつけないと。

「……まあそれはそれとして。オバケが出るのであれば先に言っておいて欲しかったです……」

「……エルネスティ様は幽霊が苦手なのですか?」

「いいえ!別に!そう言う訳ではございませんが!?」

ヴァイナモが戯言図星を口にしたので、俺は大袈裟に反応して否定した。ヴァイナモ含め、騎士の皆から生暖かい、『殿下にも子供っぽい所あるんだなあ』みたいな視線を送られたので、俺は顔を真っ赤にしてジト目になった。なんだよ皆して!俺は否定してるじゃん!オバケなんて怖くないよ!

「大丈夫ですよ。ユリウス兄上のことです。多分珍しい虫とか動物を見て、それを幽霊だと勘違いしたのだと思いますよ」

いや、ヴァイナモ?俺は!別に!オバケの心配なんて!してないからね!?
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