前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

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学園生活をエンジョイする

ベイエル王国の2人

その後文化祭への準備はつつがなく進んだ。いきなり口調が変わったウェル王子にクラスメイトは少し困惑していたが、俺と親しく話す姿を見て、いい方向への変化だと察したのか、ウェル王子は今まで以上にクラスメイトと仲良くなった。今まで他国の王子で委員長って言うのもあり、話しかけずらい空気があったけど、それが改善されたようでよかった。

人力コーヒーカップも何度も試行錯誤を繰り返した後に完成した。安全性が最後まで心配だったが、最終試行では一日回し続けても故障しないほどの耐久力を生み出すことが出来た。マティルダ嬢の豊富な知識マジすげえ。

そんなこんなで順調に準備が整い、今日がいよいよ文化祭本番の日がやって来た。俺たちは朝から出し物の最終確認や衣装の着替えなどでてんやわんやしている。

「ええええエル皇子っ!すばっ、素晴らしいですね!まるでてて、天使のようです!」

「そうですか?テオドール、似合ってますか?」

「はい!それは勿論!」

「ふふっ。ペッテリに頼んだ甲斐がありましたね」

客引き要員としてコスプレ衣装に着替えた俺は、テオドールに褒められながら頭に付けた兎の耳のカチューシャを弄った。俺の衣装は某不思議な国の赤い服を着た白い兎である。懐中時計も常備している。この世界にあの物語は存在しないけど、俺の中ではコーヒーカップと言えばアリ……ゲフンゲフン、金髪少女が不思議な国へ行く物語のイメージがあるのだ。クラスのみんなピンときていなくて首を傾げていたけど、衣装が可愛いから良いよって言ってくれた。優しい。

テオドールは裏方要員だから普通のタキシードだ。まあテオドールはあがり症だから接客にはむいてないわな。俺的には一緒に白い兎のコスプレして欲しかったけど。

てかテオドールよ。俺は白い兎のコスプレをしてるんだ。天使はないだろ、天使は。

俺たちがそんな会話をしていると、ウェル王子がこちらに近づいてきた。

「エル皇子、衣装に不備はないか?」

「はい、問題はありません。……ふふっ」

「……何を笑っている」

「いえ、ウェル王子にはどう頑張ってもその衣装は似合わないんだなとしみじみ思いまして」

ウェル王子は片眉をピクっと動かした。ウェル王子の衣装はチ……どぎつい色のしましま猫のコスプレだ。これが面白い具合に似合っていない。ウェル王子はどちらかと言うと精悍な男顔だから、可愛らしい服装だとちぐはぐなのだ。でも細身だからまだなんとかなるかなって思ってたんだけど……なんでこんなにも似合ってないのだろ。顔立ち以外のにもなんか要因ありそうなのに、全然わかんないや。ただただ壊滅的に似合ってない。

これならトランプをモチーフにした兵隊さんとか、いっそハート柄の女王様の方が良いのでは?と思ったのでウェル王子に提案したのだが。

「将来、国王となる人間が一介の兵隊姿になどなれない。女装など以ての外だ。そもそもこの猫ですら似合わないのに、女性の服など笑い物でしかないだろう」

とのこと。プライドエベレストだあ……自分が次期国王って信じて疑ってないよ……。まあ話を聞く限りウェル王子の方が優秀っぽいし、父上皇帝変な執着空色狂人さえなければ優秀って言ってたし。多分ウェル王子の頭の中には第一王子お兄上を蹴落とす計画はまとまっているんだろうな。俺的にもウェル王子が国王になってくれた方が魔法陣研究の融通を効かせるためにも有難いから、頑張って欲しい。

「ほんとに似合ってないね、ウェル。逆に名物になりそう」

「うるさいぞテル」

テオドールの指摘にウェル王子は眉を潜めた。だが本気で不快と言った様子ではなく、弄られて不貞腐れているような感じだ。2人は幼馴染だって聞くし、王子と侯爵家子息以上の距離感のようだね。テオドールはウェル王子のこと心配してたようだし。

ウェル王子が吹っ切れた後、テオドールはウェル王子に内緒で俺にお礼を言いに来た。なんでもウェル王子は長年屈折した性癖空色異常執着で損をして来たそうな。上に立つ人間として相応しい能力と人格を持っていたのに、ウェル王子を王太子にと言う声が大々的に叫ばれなかったのは、一重に不治の病特殊性癖のせいだったそうな。性格に難ありだから、恒例を覆してまでウェル王子を王太子にしようと企む物好きが少なかったらしい。でも今のウェル王子なら、今までのマイナス評価をひっくり返す行いが出来るはず。テオドールはそう思っているそうだ。

俺はその時テオドールに、何故そこまでウェル王子が信じられるのかと聞いた。ウェル王子への盲信に近い期待に少し違和感を覚えたのだ。

するとテオドールは幼少期、自分がいじめられていた所をウェル王子に助けてもらったことを話してくれた。そのお陰で自分の名前にも自身が持てた、太陽みたいな存在だ、と。

確かにウェル王子を何かに例えるなら俺も太陽だと答えるだろう。光を遮る雲特殊性癖晴れた治ったウェル王子は、こっちが目を細めてしまうほど眩しい。これなら良い国王になるだろう、って無条件に確信してしまうオーラがある。このウェル王子を国王父親やベイエル王国の貴族を見たなら、考えを改めない方がおかしい。第一王子お兄上に会ったことはないけど、愚鈍だって聞くし。

まあそれはそれとして。俺としては聞き捨てならないことがある。

「ウェル王子、テオドールのことをテルと呼んでいるのですか?」

「ん?ああ、そうだな。テオはベイエル王家の象徴であり、ドールは人形って意味があるからな。少し変わった愛称の付け方だが、これが一番呼びやすくて、煩わしくない」

ウェル王子の説明に俺は成程、と呟いた。流石に侯爵家子息を王位継承権を示す名前で呼ぶ訳にも、人形傀儡と呼ぶ訳にもいかないもんね。

でも……テル、テルかあ……。

「私もそう呼びたいですね……」

「えっ、エル皇子!?」

「私にもテルと呼ぶ権利をくれませんか?」

俺のお願いにテオドールは目を丸くした。テオドールとは友達同士として、これからも末永く仲良くしたい。テオドールは俺のこと愛称エル皇子で呼んでるのに、俺は普通に名前呼びってなんだか……ねえ?言語化出来ないモヤモヤ

「えっえっと……その……エル皇子がよろしいのであれば、是非僕のことはテルとお呼びくださいっ……!」

「本当ですか!ありがとうございます、テル!」

もじもじしながらもテオドール……もといテルが許可してくれたので、俺は早速愛称で呼んだ。なんか良いな、こう言う距離感って。前世の友達ヲタクはお互い苗字で呼びあってたし。まああれはあれで親しさの証だったんだけどね。一周まわって苗字呼びに定着したと言うか、親しいが故にお互いに相手への扱いが雑になってただけだから。

テルは顔を真っ赤にして固まってしまった。あれ?どした?

「……これが人たらしと言うやつか……」

ウェル王子は神妙そうにそう零した。人たらし?何のこと?俺って自分と関係ない人のことなんてどうでもいいって思くタチの人間だから、人たらしではないんだけどな?
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