前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

文字の大きさ
177 / 221
学園生活をエンジョイする

デートしましょう

「あっ!殿下!お疲れ様ですー!」

俺が驚いて声を上げると、ヴァイナモの向かい側に座っていたダーヴィド恋バナ騎士が俺に手を振ってきた。俺は呆然としながらも反射で手を振り返す。するとダーヴィドは目を見開いた後、嬉しそうにヴァイナモの方を見た。

「ねえねえ!珍しく殿下が私に手を振り返してくれたよ!いつも皇族スマイルだけだったのに!」

「それは良かったですねダーヴィド先輩」

「ええ~反応薄い~。まあヴァイナモはいつも激甘な反応貰ってるんだろうけど~殿下って割と塩対応なんだよ~」

「それはダーヴィド先輩の第一印象がアレだったからでは?」

「もうっ!このカップル揃いも揃って私に塩対応なんだから!」

ダーヴィドは唇を尖らせてヴァイナモも指差してプンスコ怒る。この反応は女子がやるから可愛いのであって、いい歳した男がやるモンじゃない。確かにダーヴィドは可愛らしい顔立ちだけど、ガタイが良いから……ね。ちょっとキツいのよ、絵面的に。まあこれがダーヴィドだから今更変わって欲しくないけど。

ヴァイナモはダーヴィドの抗議を右から左へ受け流してコーヒーのカップを机の上に置くと、座ったまま俺の方に身体を向けた。

「それより、エルネスティ様。クラスの出し物の方はよろしいのですか?」

「あっ、はい。今は休憩中です。ヴァイナモこそ、ここにいていいんですか?ヴァイナモはこの学園のOBじゃないですよね?」

「大丈夫ですよ。俺は今日非番なのですが、騎士団第四部隊隊長からのヘルプを受けて、カレルヴォ殿下の護衛として来ていますので」

ヴァイナモの説明を聞いてもいまいちピンとこない俺は、こてんと首を傾げた。その様子に気づいたカレルヴォ兄上が補足を入れてくれる。

「学園の文化祭には卒業生である皇族がよく来るからな。特に皇子皇女は必ずと言って良いほど来る。そりゃ護衛を担当する第四部隊もてんやわんやで人手が足りねえ。だから本来お前の専属護衛騎士であるヴァイナモに俺の護衛を頼めるか声がかかったんだ」

「とんだご冗談を。辺境に行く訳でもないのであまり豪勢な護衛も要らない上に、騎士団第四部隊には皇子皇女がこぞって別々の敵国に乗り込んだとしても護りきれるほどの人手と能力が揃っているでしょうに」

俺が冷静に指摘すると、カレルヴォ兄上はふいっと視線を逸らして口笛を吹き始めた。これは絶対、俺に会わせるためだけに連れて来たな。てかカレルヴォ兄上の実力なら護衛なんて必要ないでしょ。

「そもそもヴァイナモたちをここに置いてきて校内を回っていたのなら護衛の意味がないでしょうに。もっとマシな言い訳無かったのですか?」

「……いや、エルネスティのクラスの前の廊下が混んでいたから、5人でぞろぞろと歩くのに気が引けてな。なら一度俺たちで偵察してくるから待ってろって命令したんだ」

「……確かにその気遣いは有難いですが、カレルヴォ兄上は反則技でヴァイナモをここに連れて来てる自覚はないんですか?」

「エルネスティよ。世の中は本音と建前が大事なんだぞ」

「その建前が不良建築だから本音を支えきれてないのですよ」

俺は呆れてため息をついた。カレルヴォ兄上は気にする様子もなくカラカラと笑う。カレルヴォ兄上って基本的に常識人だけど、どっかそういうとこあるよね。

「まあいいじゃねえか。ヴァイナモは無理矢理連れて来たんじゃなくて、ちゃんと本人に提案して、是非ともよろしくって訳で連れて来たんだし。お前も、折角の文化祭なんだし、ヴァイナモと遊びたいだろ?それともなんだ?ヴァイナモは連れて来て欲しくなかったのか?」

「まあ、ヴァイナモを連れて来てくれたことには感謝してます。……最近文化祭の準備で忙しくて、あまりゆっくり2人の時間を満喫してませんでしたし」

俺がそっぽを向いてそう答えるとカレルヴォ兄上はにんまりとご満悦な表情を浮かべた。隣りではユスティーナ義姉上が優雅な微笑みのまま木材を粉砕しており、ダーヴィドは「これぞまさしくてぇてぇ……!」と天を仰いで崩れ落ちた。その場はカオスである。遠くでユルヤナがいつ助け舟を出すべきかと緊張した面持ちでこちらを静観していたので、なんだか申し訳ない気持ちになった。ごめんね、俺の周りって濃ゆい人が多いから決して人のことは言えない……。

「……エルネスティ様。もしお時間があるのでしたら、これから俺と2人で文化祭を回りませんか?」

収拾不可能となったと察したのか何なのか、ヴァイナモが控えめにそう提案してきた。こっ、これはっ!ででで、デートだよね!?デートのお誘い……で良いよね!?

「えっと、良いんですか?」

「はい。元々カレルヴォ殿下にはエルネスティ様と2人で回ることに関して許可を事前にとってありますし、俺は文化祭を経験したことないので……是非エルネスティ様と楽しみたいんです」

ヴァイナモは年相応に笑って言った。いやガチでイケメェェェン……。うぐぅ……。ヴァイナモの紳士スマイルが俺の心臓を鷲掴みにする……!

カレルヴォ兄上は呆れたように息をつくと、我が子を見守る父親のような慈愛に満ちた双眸を向けて来た。ユスティーナ義姉上は顔ぐらいの大きさの木の板をバキッと真っ二つに割り、ダーヴィドは机に突っ伏して手足をジタバタとさせた。カオスって増幅するんだなあ……(遠い目)

「……なら、よろしくお願いします」

「はい。パンフレットは持っているので、今から回る場所を決めましょう」

ヴァイナモがパンフレットを取り出すとダーヴィドは空気を読んで席を俺に譲ってくれた。その表情は「我が生涯に一点の悔いなし」と物語っていた。……勢い余って天に召されないでね?

「……じゃあ、邪魔者な俺たちはさっさと退散しますか」

「そうですね!私も一人で気侭に楽しんできます!」

「あら、貴方は私たちとは別行動ですの?」

「婚約者水入らずを邪魔するほど野暮じゃないですよ」

ダーヴィドは「やだな~」と手をヒラヒラさせた。ちょっと軽いとこがあるが、ダーヴィドは空気を読める人間だ。と言うかカレルヴォ兄上とダーヴィドってほぼ接点ない。俺経由の知り合いって程度だから、文化祭を一緒に回るのはちょっと気まずすぎる。

……そう言えば。

「ダーヴィドって他人の恋愛事情でキャーキャー言ってますけど、そう言う自分には恋人とかいるのですか?」

俺はふと疑問に思ったことをダーヴィドに聞いた。ダーヴィドが話す恋バナはいつも他人のことで、ダーヴィド自身の話を聞いたことがなかったのだ。ダーヴィドが話さないのでは不公平でしょ!いないのであれば、ちょっくら弄ってやろうかな。

その問いは俺にとっては何気ない会話の延長線だった。けれど意外なことに、俺の問いかけにダーヴィドは一瞬暗い表情を見せた。だが瞬きした次の瞬間には元通りに戻っており、俺は見間違えかと首を傾げる。

「……いないですよ!私自身が恋愛するのは別に興味ないと言いますか、他人のを見て悶えるのが楽しいと言いますか。……兎に角、私に恋人は必要ありません」

ダーヴィドが堂々といないと発言しても、俺は弄ることが出来なかった。

いつものように明るく話すダーヴィドだったが、俺にはなんだか空元気なように見えて、俺の胸の中にひっかかりを残したのだった。
感想 179

あなたにおすすめの小説

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

外れ伯爵家の三女、領地で無双する

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。 だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。 そして思い出す―― 《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。 市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。 食料も、装備も、資金も――すべてが無限。 最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。 これは―― ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。