前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

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学園生活をエンジョイする

推し語りに歯止めは効かない

「……例えば魔法陣は消費する魔力が魔法よりも格段に少なく、そして持続的に魔法を使えます。また自分が持たない属性の魔法も簡単に使うことが出来ます。それらの特性を活かせば、魔法と魔法陣を上手く使い分け、魔法だけを使うよりも幅広いことが出来るようになる、と作者は述べています。本に載っている具体例を挙げると、普通なら火魔法を一瞬しか使えない人でも、魔法陣を使えば一日中火魔法を使うことが出来る、ということです。これの何が良いかと言うと、例えば料理する上で、長時間火の加減を一定に保っていたい、という場面があるでしょう。今は火魔法で火を起こした後、常に火の状態を確認しておく必要がありますが、魔法陣を使えば初めに魔力を流し込んでおくだけで、後は放置していてもずっと一定の火加減を保つことができます。他にも……」

魔法陣好きな物は語り出したら止まらないもの。話したいことが次から次へと出てくる出てくる。最近学園のことで忙しくて中々研究に携われていなかった反動か、いつも以上に語るのが楽しい。みんな!魔法陣俺の最推しについてもっと知ってくれ!そして共に語り合おうぞ!

魔法陣の話はテルとよくするけど、テルはだいたい俺の話に共感してくれて、それはそれで有難いが、時々物足りなく感じるんだよな。ヴァイナモとかヤルノとかは俺の話を嫌な顔せず話を聞いてくれるし、時々別視点から指摘してくれたりして有難いけど、如何せん知識量が違いすぎる。俺の周りの、魔法陣について語り合える人たちとは、論争みたいなぶつかり合いにはならないのだ。やっぱり意見が対立して、話し合いを重ねることでより正しい理論を作り上げていってこその学問だと思うんだ。

俺も前世で高校の日本史の先生と白熱した論争を繰り広げたものだ。と言っても知識量が違いすぎて俺が論破されっぱなしだったけどな。その先生のことを俺は敬意を称して恩師と呼んでいる。あの頃の俺はめちゃくちゃ病んでたけど、恩師のお陰で立ち直れたし。本当、恩師には頭が上がらない。先に死んじゃうとか、恩師不孝な生徒でごめんね。

「……これまで実用性ばかり話してきましたが、魔法陣はそのデザイン性にも着目すべきです。作者も述べていますが、魔法陣は少し線の向きが違うだけで、また違った効力を発揮します。それ故に完成された魔法陣は絶妙なバランスが保たれています。何一つ違えば全く別物になっていたという唯一性は、それだけで魔法陣に神秘的な美しさをもたらします。魔法陣そのものに秘められた息も詰まりそうな程の綿密な均衡が魔力を帯び発動した時の高揚感たるや。他では味わえない魅惑の甘味。禁断の果実のよう。私はその瞬間のために魔法陣学を研究していると言っても過言ではありません。作者はこの感覚を……」

「……うじ、エル……、エル皇子!」

「……っうえっ?」

上機嫌で魔法陣について語っていると、誰かに名前を呼ばれて肩を叩かれた。俺はハッとなって声のした方を向く。そこには呆れた様子のウェル王子がいた。肩を叩いたのも彼のようだ。

「……ウェル王子?何故壇上に?」

「……エル皇子が制限時間を過ぎているのに司会の制止も聞かず話し続けるからだぞ。司会の子が可哀想になる程狼狽えていたからな。私が出張ったのだ」

ウェル王子の言葉に俺は司会の方を見ると、涙目になってアワアワしていた。気が弱そうな子だからな……。悪いことをしてしまった。

てかいつの間に時間が過ぎてたんだ?まだまだ発表時間は沢山あるって思ってたのに。なんで人って話すのに時間を消費しちゃうんだろ。時間が進まなきゃ良いのに。

まあとりあえず、迷惑かけた分は謝らないと。

「それはお手数をお掛けしました。そちらの方も、業務を妨害してしまい申し訳ありません」

「あっいえっ!その……大丈夫です!」

「ちなみにエル皇子はルール違反で失格だからな」

「ええ。甘んじて受け入れましょう」

司会の子に謝ると、恐縮した様子で首をブンブン横に振った。ウェル王子は肩を竦める。うーむ。やはり魔法陣のことになると止まらないなあ。いつもなら幾ら語っても問題ないけど、今回ばかりは大勢の人に迷惑をかけてしまった。運営側にも予定があっただろうに。

……皇族として、あまり畏まりすぎても駄目かもだけど、今回ばかりはきちんと謝らないといけない。俺一人のせいで全校生徒および先生方の時間を奪ってしまったんだから。

「この度は私のルールを遵守するという意識の低さが原因で多くの方々に多大なるご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。今後はこのようなことがないよう自分の意識改革を行っていきたいと思います。……この場に私が留まることでこれ以上進行に支障をきたすのも不本意ですので、私はこの辺で失礼します。本当に申し訳ありませんでした」

俺は胸に手を添えて一礼した後、失礼のない範囲での早歩きで舞台裏へと下がった。その時の会場の雰囲気はどうだったのか、俺は知らない。



* * *



「はあ……失敗しました」

「ああ、エルネスティらしい大失敗だったな」

昼休み、俺はカフェテリアでカレルヴォ兄上とユスティーナ義姉上と食事をとりながら反省会をしていた。気落ちしている俺を見て、カレルヴォ兄上はケラケラと笑う。ユスティーナ義姉上も生暖かい双眸をこちらに向けていた。

「まあそんな気落ちしなくても良いだろ。融通の効く学生の催しだしな。それにシーウェルト王子が迅速に行動してくれたお陰で、そこまで時間を食った訳でもない。そしてお前は直ぐに謝った。なら今回の件はここまで。次はもうしない、と肝に銘じるだけだ」

「……そう……ですね。後でまたウェル王子にお礼を言いに行きます」

「ああ、そうしな」

カレルヴォ兄上は我が子の成長を見守る父親のような目をしながら俺の頭をポンッと撫でた。

「……意外だな。お前ならあれくらいの失敗、どうとも思ってないかと思ってたんだが」

「……流石にあんな多くの人の時間を奪ってしまったのであれば、私でも反省しますよ」

「大事な式典前に魔法陣研究にかまけて皇帝を待たせたのに?」

「あれは別段迷惑ではなかったでしょう。家族ですし。その分他の方とのお話の時間が増えて、他の方々にとっては万々歳でしょう」

「あの面子に向かって『家族だしお前らにも得になったから許して♡』って言えるお前の肝っ玉には感服するな」

「カレルヴォ兄上も言えるでしょうに」

「まあな」

カレルヴォ兄上はカラカラと笑い、ユスティーナ義姉上もクスッと笑った。俺も何だか肩の力が抜けた。……俺の気を紛らわせてくれたのかな。流石兄上。頭が上がらないや。

「そういや文化祭2日目って夜に後夜祭があるんだったよな?俺も参加出来るか?」

「はい。学園の卒業生なら誰でも参加出来ますよ。まあ私は自分のクラスの所にいるので、カレルヴォ兄上とは一緒に居られませんが」

「……そっか。教室に行った時も思ったが、クラスメイトと仲良く出来てるんだな。安心した」

カレルヴォ兄上はもう一度俺の頭を撫でた。……そっか。兄上は俺がクラスに馴染めてるか心配で、昨日来てくれたんだ。……本当、優しいな。理想のお兄さんだ。

カレルヴォ兄上の温もりを感じながら、俺は前世の年の離れた弟妹のことを思い出し、胸がチクリと痛んだ。
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